IPEの果樹園2006

今週のReview

10/23-10/28

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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IPE方法論 :多文化主義

安全保障 :朝鮮半島統一北朝鮮アメリカ外交,アジア外交

貿易・投資 :ユヌス

通貨・金融 :フェルプス

世界統治 :中国

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


Foreign Policy In Focus, Special Report, September 18, 2006

North Korea and the Politics of Famine

John Feffer, IRC

Foreign Policy In Focus, Commentary, October 10, 2006

Pyongyang 1, Bush 0

John Feffer, IRC

(コメント) 北朝鮮の行動を説明する最も重要な要因とは,その深刻な飢餓であり,孤立した北朝鮮に関与する道は,飢餓救済と人権回復とのリンクである,とJohn Fefferは考えます.

6カ国協議という外交交渉の枠組みはすばらしい舞台でしたが,ブッシュ=チェイニーの辞典には,二国間協議に応じることは北朝鮮への譲歩であり,譲歩=宥和=ミュンヘン,という理解ですべて終わるのです.ブッシュ政権は北朝鮮との話し合いを拒否しました.

それこそが間違いだった,とFefferは主張します.北朝鮮は飢餓に苦しみ,早急に合意を求めていました.その焦りが核兵器開発を急がせた,というわけです.アメリカの攻撃を防ぎ,食糧や経済援助を得るために,金正日は交渉の手段を求め続けてきました.

なぜブッシュ政権はこの信号に応えないのか? それは,それぞれが国内の観衆を意識しているからです.金正日は核兵器の開発と実験成功を示さなければなりませんでした.父から受け継いだ国が飢餓によって崩壊寸前であることを含めて,すべての悪いニュースを吹き飛ばす必要がありました.その日は朝鮮労働党の設立記念日です.

アメリカは北朝鮮を攻撃するのか? 軍事攻撃は北朝鮮からの報復と多大な犠牲者をもたらし,それでも,核兵器や核施設をすべて破壊することは望めない,と分かっています.しかし,イラクに関して,ペンタゴンの忠告をすべて無視してブッシュ政権は戦争を決めました.どのように厳しい制裁を課しても,金正日がブッシュ政権よりも長生きする可能性は高いのです.

核実験はチェイニー副大統領にとって福音であったかもしれません.中国は北朝鮮に対してますます懲罰的な態度で臨み,韓国も政策転換を強いられるでしょう.日本の外交・安全保障政策はさらに攻撃的になります.議会に対して,外交交渉は失敗した,同盟諸国とミサイル防衛網を築き,軍事費を増額せよ,と求めるでしょう.

しかし,核実験は外交交渉の道を閉ざすものではない,とFefferは主張します.北朝鮮は交渉を望んでおり,核兵器は飢餓や破綻した工場を救うものではないからです.二国間でも,多国間でも,交渉のドアを開くべきだ,と.


Oct. 11 (Bloomberg)

This Nobel Prize Sends a Stark Signal to Columbia

Amity Shlaes

Oct. 13 (Bloomberg)

Nobel Winner Phelps Speaks Key Word for Investors

Chet Currier

The Japan Times: Tuesday, Oct. 17, 2006

The false hopes of tax cuts

By EDMUND S. PHELPS

(コメント) ノーベル経済学賞を受賞したのはフェルプスEdmund Phelpsでした.E.フェルプスは,M.フリードマンと並んで,インフレと失業とのトレード・オフを示すフィリップス曲線を否定したことで有名です.実際,1970年代には高インフレと高失業が同時に襲い,1990年代には低インフレで低失業が実現したわけです.

もう一つの貢献を,Amity Shlaesは「資本主義の脱神秘化」と書きます.成長は「天気」のように,不可避の,自動的な減少ではなく,むしろ「脆弱な花」である,と.資本主義のダイナミズムを理解するためには,さまざまな制度や文化を知らなければなりません.

コロンビア大学でフェルプスが望んだ,ヨーロッパの経済疾患を治癒するための研究飢饉は集められませんでした.しかし電話に答えて,彼は三つの分野を研究するべきだ,と示しました.1.アメリカのダイナミズムを阻むものの研究.2.ヨーロッパの低成長の原因.3.外国為替からデリバティブまで,投機的な市場の研究.

Chet Currier は,フェルプスのマジック・ワードを「ダイナミズム」と指摘します.それが長期の成長や繁栄をもたらします.フェルプスは137万ドルの賞金を受け取った授賞式で,``Good entrepreneurship plus good financiership equals dynamism.''と述べたそうです.しかし反対に,党派に分裂して停滞するヨーロッパ経済の方が,アメリカの「カウボーイ資本主義」よりも,人間的である,と主張する者もあるでしょう.

フェルプスは,「企業家精神」だけでなく,「金融家(投資家)精神」を唱えました.資金をどの投資に役立てるべきか,正しい選択が重要です.その意味では,インデックス投資する人は「フリー・ライダー」に過ぎません.

確立されている薬品の認証制度と違って,どのような経済理論も確実な証拠を示していない,とフェルプス自身は述べています.ラディカル・ケインジアンが間違いであったように,サプライ・サイド経済学やリアル・ビジネス・サイクルも同じ間違いを犯すだろう,と.この講演では,減税と労働供給・失業との関係について,サプライ・サイダーを批判しています.


FT October 13 2006

Nobel Peace Prize for microcredit pioneer

By Jo Johnson in New Delhi

NYT October 13, 2006

Microloan Pioneer and His Bank Win Nobel Peace Prize

By ANAND GIRIDHARADAS and KEITH BRADSHER

FT October 14 2006

Credit to microcredit

Oct. 19 (Bloomberg)

Nobel for Yunus Is Not a Defeat for Adam Smith

Andy Mukherjee

(コメント) ノーベル平和賞を受賞したのはユヌスMuhammad Yunusと彼の設立したグラミン銀行Grameen Bankです.受賞理由には,「経済的・社会的発展を下から作り出す彼らの努力」を挙げています.

「人口の大部分が貧困を抜け出す道を見出せないなら,持続的な平和を達成することは不可能である.マイクロ・クレジットはそうした手段の一つである.下からの発展はまた,民主主義や人権を前進させることにも役立つ.」 つまり,ブッシュ政権とは逆方向から進む平和です.

1970年代の半ば,バングラデシュの村の住民たちが受けた融資は全部でたったの27ドルでした.こうして,フルブライト留学を終えた聡明な若者,ユヌスが,貧しい者の中でももっとも貧しい,融資など受けられない人々に,無担保で小額の融資を始めたのです.

グラミン銀行の融資契約には破産条項が含まれず,地方の貧しい女性に対して融資を行い,多くの同様の借り入れを促しました.「銀行の融資総額は650万ドルに達し,借り手の97%が女性です.ほとんどの融資は130ドルに過ぎず,99%が返済されます.」 バングラデシュの貧困を過去5年間で10%減らし,7000万人の貧しい女性を救った,と言われます.

ユヌスの銀行は,従来の銀行が無視してきた貧しい人々の小さな事業に注目しました.たとえば,乳牛を飼ってミルクを売るとか,編み機を買って洋服を作るとか.彼らは余りにも貧しいから(また,融資の煩雑な手続きに見合わないから)融資できない,という伝統的な考えを,ユヌスは拒みました.

貧しい者は,豊かな者と同じように信用できる.もし融資のルールを彼らの条件に合わせ,金融資産よりも,信頼の原則に依拠するなら.グラミン銀行は1983年に設立され,小額の融資によって572000万ドルの融資を行い,わずか3年で利益を出すようになり,2005年には1500万ドルに達します.

裕福な金細工師(goldsmith,しばしば金貸し)の家庭に生まれたユヌスは,貧しい者への母の寛大さにより,自分も貧しい者に対する責務を感じるようになった,と言います.ユヌスがそのアイデアを得たのは,1976年,厳しい飢饉に陥ったバングラデシュの村Jobraを訪れたときでした.貧しい農婦が竹の椅子を編んで売ろうとしたのですが,材料を買うお金がありません.彼女は貧しく,資産もないために,銀行で融資を受けられず,地域の金貸しに頼れば,高金利で利益が残りません.

ユヌスは彼女と村人たちに27ドルを無担保で融資しますが,驚いたことに,彼女たちは約束どおり全額を返済しました.グラミン銀行の融資は,抵当を抑えたり,信用力を評価したりするのではなく,隣人や親戚の前で恥をかきたくない,という貧しい村の信用に基づきました.

Andy Mukherjee は,このことはアダム・スミスの「見えざる手」が貧しい村でも働くことを示した,と考えます.グラミン銀行が,多くの人がそう思いたがっているような,貧しい者に対する資本主義やグローバリゼーションに代わる道ではない,と.


BG October 13, 2006

A reunified Korea is the solution

Ross Terrill

核実験を行った北朝鮮に対して,6カ国協議を再開し,韓国政府には金正日をなだめる「太陽政策」を続けさせるしかないのか? ブッシュ政権がボタンを押したがっている「体制転換」ではなく,北朝鮮を変える良い選択肢が存在する.北朝鮮の核から始めるのではなく,朝鮮半島の再統一を目指すことだ.分断国家が統一を回復することは可能性を転換する.それは魅力的な体制転換である.

北朝鮮が核を放棄するとは思えないし,どのような合意も検証できないだろう(リビアと違って,北朝鮮には8000もの地下トンネルや洞窟がある).たとえ核を放棄したと検証できたとしても,北朝鮮はミサイルで生物・化学兵器をロサンジェルスに撃ち込める.

北朝鮮の安全保障をめぐる関心は,韓国を占領する際にアメリカが邪魔するな,というものであり,許すことはできない.1950年に,彼らがやったことである.

だから協議は北朝鮮の意図や核兵器を扱うのではなく,統一朝鮮に向けるべきだ.南北ともにその計画を示している.再統一は「One Korea」に向けた多くの可能な経路を提供する.

北朝鮮が暖める統一構想は疑わしいものだ.韓国の「太陽政策」がにわかに北朝鮮のひび割れた全体主義的殿堂に祭られ,北朝鮮の住民たちは希望の光を見る.あらゆる妥協と取り引き,変節,再編が起こりうる.アメリカと中国との取り引きが再統一の鍵である.

これまで中国政府は,見知らぬ悪魔(統一朝鮮)よりも,旧知の悪魔(スターリニストの同盟国)を好んできた.しかし今週,その境界を越えた.中国政府は北朝鮮の核実験を非難し,外交官を派遣し,北朝鮮との過去の交渉は失敗だったと公表した.胡錦涛主席は,統一朝鮮というリスクと,北東アジアにおいて核兵器が使用されるというより大きなリスクとを,選択しなければならない.

確かに,中国は北朝鮮のスターリニズムが破滅するのを受け入れなければならない.しかし,アメリカ政府と同盟諸国は,統一朝鮮からアメリカ軍を撤退させる,と中国に提案するだろう.日本は統一後の朝鮮に対して,国連,世界銀行,IMFとともに,融資するだろう.日本の安全保障を確保するためである.朝鮮の合意は,また,日中関係の悪循環を食い止める.中国にとって,日本が世界の大国に復帰することこそ将来の問題であり,北朝鮮は過去の問題だ.

共産主義体制ではない統一朝鮮がどのような位置に立つか,彼らに任せるべきだ.中国との友好を望むが,その同盟国にはならないだろう.アメリカ軍が撤退すれば,朝鮮はアメリカにも親しみを示し,経済的・文化的な関係を維持したいと思うだろう.

体制を粉砕するのは余りにも危険であるから,共存すればよい,という意見もある.確かに,100万人の軍隊はまだ忠誠を保っている.しかし,連邦を取り巻く国際構造が変われば,統一朝鮮がその危険を緩和する.

忘れてならないのは,北朝鮮を維持することの道義性である.北朝鮮の人民は飢餓に苦しみ,軍事共産主義の60年間がその原因である.北朝鮮を延命する援助は,その抑圧と傲慢を長引かせる.

5カ国で北朝鮮を助けの必要な子供のように扱うことは無駄である.制裁が機能するなら,それも良い.しかし,朝鮮半島の再統一に向けた前進が,北朝鮮による核の脅迫を砕き,北の人民に希望をもたらす.それは最終的に北東アジアの中心にある苦しみを取り除く.統一朝鮮は,誰もまだ知らないが,その解決策である.アメリカと中国の「グランド・バーゲン(壮大な取り引き)」がその開始を告げるだろう.


Rosa Brooks A Good Week for the Axis of Evil LAT October 13, 2006

Charles Krauthammer What Will Stop North Korea WP Friday, October 13, 2006

Robert B. Reich Without Sanction The American Prospect 10.13.06

Brad Glosserman Nuclear-armed Japan? Forget it Asia Times Online, Oct 13, 2006

Thor Nay North Korea - pick your godfather Asia Times Online, Oct 13, 2006

Halting the nuclear rot FT October 14 2006

Simon Tisdall Price of a broken deal The Guardian Saturday October 14, 2006

JON B. WOLFSTHAL Behind Enemy Reactors NYT October 14, 2006

RALPH COSSA Get tough with Pyongyang The Japan Times: Saturday, Oct. 14, 2006

(コメント) 北朝鮮が核実験を行った以上,6カ国協議や韓国による援助だけで問題を解決できるとは思えません.

Rosa Brooksは考えます.北朝鮮の"Dear Leader"は成果を誇り,アメリカの"Dear Leader"であるブッシュ大統領は,単純化しすぎた,硬直的な政策の結果を知りました."Dear Leader"は,いつでも,現実世界を見ようとしない.

Charles Krauthammerは,北朝鮮への「抑止」を考えます.キューバによる攻撃を受ければ,アメリカはソビエト連邦に対して報復する,と,1962年のキューバ危機に際して,ケネディー大統領が断言しました.敵の武装解除が不可能であれば,その武器を使わせないように,攻撃に対して報復することを明確に伝えておくこと.ただし,二つの新しい点として,アメリカの同盟諸国に対する攻撃にも報復すること,アメリカの敵やテロリストへの武器流出にも責任を取らせること,です.

これは難しい問題です.アメリカ自身に脅威がないとすれば,それでもアメリカ国民は北朝鮮との戦争を選択するでしょうか? 北朝鮮とテロリストとの関係を(今度こそ?)示せるでしょうか?

経済学では,人が合理的な選択を行う,と仮定しています.もちろん,北朝鮮では難しいでしょう.しかし,とRobert B. Reichは考えます.もし金正日が精神を病んでいるのでないなら,中国が説得できるはずです.核武装を諦め,投資と近代的なインフラにより,経済的な繁栄を受け入れよ.北朝鮮をもう一つのアジアの虎にして,中国自身にとっても安全な国にするべきだ,と.

さあ,不安で眠れない人は,大きく息を吸って,3回,ゆっくり唱えてください.「日本は核武装しない.・・・日本は核武装しない.・・・日本は核武装しない.」 気分が良くなりましたか?

Brad Glossermanは,日本が核武装によって得られるものは何も無い,と書きます.それは地域をますます不安定にし,安全を損なうでしょう.日本の国土は小さく,人口は集中しています.どこであれm核戦争の引き金を聞けば,日本は大きな犠牲を払うでしょう.日本は非核三原則を損ない,アジアにおける平和国家としての信用を傷つけるでしょう.アメリカによる核の傘と,ソ連に対しても友好であった核抑止戦略は,安全保障を確立しています.

唯一つ,もしアメリカの核政策が,中国やアジアをめぐって動揺していると感じたとき,日本は姿勢を変えるかもしれない,と.

北朝鮮は,いつもアメリカや世界に言うように,ソウルの2200万人を人質にとっているつもりだろうが,・・・中国から攻撃された場合は,対抗する手段が無いのだ,とThor Nayは指摘します.

FTも,北朝鮮を変革する道を求めます.食糧と燃料を供給している中国がその決定権を握っています.他方,アメリカは,この機会に,その核政策と核不拡散体制(NPT)を一貫した形に整理しなければなりません.

まだ誰も明確に述べていないが,さまざまな話し合いには北朝鮮の「体制転換」が意図されています.「もし10人の北朝鮮専門家に質問すれば,12の異なった答えを得ることができるだろう」と,RALPH COSSAは書きます.彼らが一致しているのは,金正日の目的が体制維持であること,です.しかし,先制攻撃を意味するわけではありません.

ベルリンの壁や,東欧・ソビエト連邦が解体したのは,その社会の内部から起きた「民主化」でした.あるいは,北朝鮮に「中国モデル」を採用させることができるかもしれません.それ以外に,「非核化」を検証する方法もないのです.

NYT October 15, 2006

Restraints Fray As Nuclear Age Grows Globally

WILLIAM J. BROAD and DAVID E. SANGER

(コメント) 北朝鮮の核実験は,核不拡散体制を解体するものです.すでに世界には,49カ国も核保有の能力を持っており,今後も増える,とIAEAのエル・バラダイ事務総長は言います.北朝鮮が追随者を生まないよう,こうした国々の善意だけに頼ることはできません.

この問題は1953年,朝鮮戦争の休戦後,数ヶ月で,アイゼンハワー大統領が提唱した,核兵器の技術を軍事的に利用させない仕組みに始まります.インターネットなどで,既に核兵器を作る技術は蔓延しており,問題は燃料を得られるかどうか,です.そのためには,ウランを濃縮するか,あるいは,原子力発電所からプルトニウムを得ることです.

既に443基の原子力発電所が稼動しており,21世紀の世界では5000基に達するでしょう.日本の非核政策を堅持すると安倍首相は答えていますが,日本は核武装のすべての条件を既に用意している,とNYTの記事は指摘します.すなわち,日本は何トンものプルトニウムを保有し,短期間に核兵器を製造できる,究極の「核オプション国家」なのです.同様のオプションを持ちながら核兵器を製造していない諸国が,北朝鮮の行動について何を考えるでしょうか?

それゆえ,IAEAの提案は単純です.いかなる国も核兵器の原料を保有してはいけない.それは国際的に管理された貯蔵庫(バンク)だけが供給する.ロシアはこの提案に積極的であり,億万長者のウォーレン・バフェットもIAEAの国際燃料バンク設立のために5000万ドルを寄付しました.

しかし問題は,核保有諸国はその能力を維持するつもりだ,ということです.

William Langewiesche More North Koreas? Get Used to It LAT October 15, 2006

Joseph Cirincione Bush Unleashes the Nuclear Beast LAT October 15, 2006

North Korea’s nuclear folly The Asianage (10/16/2006 9:46:44 PM)

The think-twice sanctions on North Korea CSM October 16, 2006

Brahma Chellaney Japan flexes its foreign-policy muscle CSM October 16, 2006

John M. Berry North Korea's Test Bomb Binds U.S., China, Japan Oct. 16 (Bloomberg)

James Carroll The makings of a nuclear standoff BG October 16, 2006

Nuclear proliferation: Expediency's toxic fallout The Guardian Monday October 16, 2006

Choe Sang-Hun Tussle Over a Vanished Kingdom The International Herald Tribune, 16 October 2006

TOM PLATE Expect more shocks from North Korea The Japan Times: Monday, Oct. 16, 2006

Niall Ferguson Security Council in Name Only LAT October 16, 2006

Aaron L. Friedberg An Offer Kim Can't Refuse WP Monday, October 16, 2006; A21

'North Korea Should Be More Realistic' WP Monday, October 16, 2006; A21

(コメント) William Langewiescheは,北朝鮮が核実験を行ってもアメリカには選択肢がない.だから,北の核保有を認めるしか無いだろう,と考えます.既に,核の拡散は戦後に実現することが予想されていましたが,冷戦による米ソの核の傘がそれを50年間遅らせました.世界的規模の核戦争をもたらすリスクは急速に実現するでしょう.

核兵器は強力な割に,常識に反して,単純で,しかも安価な武力(貧者の武器)なのです.だから不安定な貧しい諸国が核武装に近づきます.オッペンハイマーは,核爆弾が1ドルあたりの破壊力を大幅に強める,と指摘しました.それはテロリストによっても容易に利用されるでしょう.

偽ることなく言えば,核武装する諸国は増え,それと共存するしかありません.核時代の幕開けです.

ブッシュ政権は,NPTなどの国際条約や機関を,小人の国のガリバーと同じように,アメリカを制約するもの,と考えました.それが誤算を生んだのです.

日本は経済復興においてアジアに多くの影響を及ぼしました.しかし,核を保有しなかったために,国際政治において重要な役割を担えていません.北朝鮮では金正日への制裁を求めていますが,戦後外交において,日本の役割は大きく制限されました.靖国参拝は日中関係を悪化させて,一層,その力を奪っています.

中国,インド,アメリカが,将来のアジアの秩序を形成するでしょう.日本はその間で,どのように発言するべきでしょうか?

Stephen Bosworthの新しい共著(``Chasing the Sun, Rethinking East Asian Policy'')は,米中と日中の協力が拡大する,と予想します.冷戦期において中心的な役割を担ったアメリカは後退し,イラクと中東に力を殺がれるでしょう.「アメリカは中国を支配できないし,封じ込めることもできないが,影響力を行使できるだろう.」

むしろ,もっとも深刻な問題は,日本が1930年代のアジア諸国に与えた影響を真摯に反省することもなく,日本国民の一般的見解も悔悟や謝罪を示さないことです.その結果,日本は貿易や投資における重要性に比べて,余りにも小さな信頼しか得ていません.

統一朝鮮が予想される中で,中国と韓国はその領土を問題にしつつあるようです.たとえば,歴史上の国家Koguryoについて,それが朝鮮の起源であったのか,それとも中国の属国であったのか?

TOM PLATEは主張します.たとえ現時点では不可能に見えても,後から振り返れば理解できるはずだ.北朝鮮の主権と朝鮮半島の非核化を条件に,国交を正常化し,その経済開発を助けるほうが,交渉は単純であった,と

Niall Fergusonは,国連安保理決議の力を否定します.5つの常任理事国は,北朝鮮の核実験に対してさえ,統一した姿勢を示せませんでした.イランについてもそうでした.拒否権を持つ5大国による安全保障理事会は,60年も前に作られた時代錯誤の制度なのです.

冷戦は激化し,大国の地位が変化し,中国も共産主義国になった以上,安保理が合意をなしえず,決議も実行できなかったのは当然です.ただし,唯一の例外は,彼らがNPTによって核保有を独占したことでした.Niall Fergusonは,地域の大国でしかない中国とロシアがもはやNPTに従わず,イランや北朝鮮の核保有にも反対しなくなった,と考えます.彼らにとって,アメリカを牽制し,イランの石油資源と結託する利益は十分に大きいのです.

それゆえ,NPTが崩壊しただけではありません.国連安保理が破綻したのです.これについて,G. John Ikenberry and Anne-Marie Slaughterの提案を紹介しています.ブラジル,ドイツ,日本,アフリカの2カ国を常任理自国に加え,拒否権も廃止し,多数決で決める.それは非常に賢明な提言です.しかし,Fergusonはアレクシス・ド・トクヴィルの言葉を引用します.「悪い政府がもっとも危険な瞬間とは,それ自身が改革を始めるときだ.」 ・・・つまり,国連安保理の機能はますます低下するだろう?

William Pesek Kim Jong Il Helps Comedians, Boeing, Lockheed Oct. 17 (Bloomberg)

Ehsan Ahrari Pyongyang and the 'p' word Asia Times Online, Oct 17, 2006

Bruce Bennett What's to stop Kim now? International Herald Tribune, Oct. 17, 2006

North Korea on Notice LAT October 17, 2006

Anne Applebaum It's China's Problem WP Tuesday, October 17, 2006; A21

John Hughes Questions - and answers - about the threat from North Korea CSM October 18, 2006

Aidan Foster-Carter From Sunshine to sunset Asia Times Online, Oct 18, 2006

China pulls its punches on North Korea Asia Times Online, Oct 18, 2006

The sanctions fallacy BG October 18, 2006

Name of the game is nuclear dominoes The Asianage (10/18/2006 10:08:11 PM)

Joschka Fischer The fallout of nuclear testing The Guardian Thursday October 19, 2006

Nuclear logic fails The Japan Times: Thursday, Oct. 19, 2006

RAMZY BAROUD America's double standard fuels crises The Japan Times: Thursday, Oct. 19, 2006

Daniel Schorr The price of past US threats against North Korea CSM October 20, 2006

(コメント) 壷から出てしまった魔法使いを元に戻す方法は,アメリカにも日本にもありません.唯一,中国とロシアが北朝鮮に強く要求することです.中国は,国境に戦車を並べる必要もありません.北朝鮮への食糧と燃料を絶つことです.あるいは,東ドイツ崩壊を真似ても良いでしょう.800マイルの中朝国境を,物だけでなく,人に対しても開放することです.毎年,数万人,既に約30万人が中国側に逃れて暮らしている,と言います.

これはアメリカの問題ではない,とAnne Applebaumは考えます.北朝鮮が核開発を続けたのは中国がその体制を維持したからです.北朝鮮が暴発したときに犠牲となるのは韓国と日本です.彼らが問題を解決するべきであって,北朝鮮と貿易も投資もしていないアメリカではないのです.


NYT October 13, 2006

China Drafts Law to Boost Unions and End Abuse

By DAVID BARBOZA

FT October 17 2006

A domestic spending surge is the best thing for China

By Martin Wolf

FT October 17 2006

Chinese supermarkets/Wal-Mart

Asia Times Online, Oct 19, 2006

China plays catch-up in energy game

By Kent Ewing

FT October 19 2006

China should marshal its reserves to do good

By Jeffrey Garten

Oct. 20 (Bloomberg)

China Expansion Will Test Wal-Mart's Darwinism

Mark Gilbert

(コメント) 中国政府は,1980年代に市場改革を導入してから初めて,苦汗工場の禁止や労働者の権利保護,労働組合の結成を促す法律を導入する,ということです.これは,政府が貧富の格差拡大や社会不安の増大に対して真剣に取り組む姿勢を示したものです.ただし,中でも最悪の条件を強いられている移動労働者・出稼ぎ労働者については,こうした法律が実際に適用されるのか疑問が残ります.

人民元の為替レート制度を修正するように求められていますが,その目標は何か?  Martin Wolfは,中国は国内需要に頼った成長路線を取り,周辺諸国にも市場を開放するべきだ,と考えます.このままでは過剰な投資と,雇用に比べてエネルギー消費が過大になり,不良債権を将来累積させ,アメリカの成長が衰えれば悪影響を受けます.

中国政府は,外貨準備を減らして,特に貧しい地域における貧困対策や年金・医療制度の構築に支出することが最も望ましいでしょう.

中国のエネルギー需要は世界の資源争奪戦をどのように変えるのでしょうか? 貿易のルール,外国為替や市場介入のルールをめぐっても,中国の行動は波紋を広げます.特に,もうすぐ1兆ドルを越えてしまうドル建の外貨準備は,Jeffrey Gartenを苛立たせます.これは「中国風のマーシャル・プラン」なのか?

しかし,世界の援助機関が貧困救済やエイズ撲滅に与える資金と比べても,中国が受け取っている援助と比べても,この外貨準備は逆立ちした印象を強く与えます.そこで中国は,アフリカに「緑の革命」を促し,世界の「エネルギーと環境」の問題を解決するためにも,この資金を提供しなければなりません.

もちろん,これは中国政府が世界に政治的な影響力を拡大する手段となっている,と批判されるでしょう.しかし,中国が世界経済や社会問題の解決に貢献して政治的にも社会的にも参加を強めるほうが,資源戦争や貿易戦争を加速させるより,はるかに良いのです.


Muslims in Britain: Behind the veil The Guardian Saturday October 14, 2006

Anthony Giddens Misunderstanding multiculturalism The Observer Sunday October 15, 2006

Behind the Veil NYT October 19, 2006

(コメント) イギリスのJack Strawがイスラム女性のヴェールを社会的隔離の一因として禁止する提案に言及しました.イギリスで強まる「イスラム嫌いIslamophobia」や多文化主義見直しの背景もあって,論争となっています.

多文化主義を支持するAmartya Senも,文化的な違いをすべて受け入れるように強制されるなら,多文化主義は嫌われるだろう,と考えています.文化的自由を主張できる権利も含めて,人々は互いの文化を批判できるし,社会的な統合に貢献することが重要です.イスラム教徒こそが,この社会で最も貧しく,高度な技術を持たず,はるかに高い失業率に苦しんでいることを忘れてはなりません.

Anthony Giddensも,イギリスで左右の政治家や大衆紙が流布する粗悪な多文化主義批判を糾弾します.そしてギデンスは,イギリスこそEU内で最も多様な文化を一つの社会に包み込むことに成功している国だ,と主張します.そして,多文化主義の起源であるカナダの実践を紹介しています.

しかしNYTは,議会の指導者がイスラム教徒をこうして非難することは,社会的な差別や偏見を煽ることになる,と警告します.


NYT October 15, 2006

After Years of Growth, What About Workers’ Share?

By EDUARDO PORTER

FT October 19 2006

Globalisation depresses western wages

By Samuel Brittan

(コメント) アメリカに限らず,景気が回復しても労働者の賃金は上がらず,労働条件は不安定・不確実です.経済学者は適当な答えを示せません.

Samuel Brittanは,グローバリゼーションを考えます.それは結局,世界が一つの大きな市場として統合していくことです.さまざまな制度的違いも,通信・情報伝達・物資輸送の技術革新が急速に克服しつつあります.世界の労働市場には中国,インド,旧共産主義圏から労働者が追加供給され,労働・資本の要素賦存や報酬率を根本的に変えました.

グローバリゼーションは,大きな利益をもたらすけれども,不平等と分配上の対立を強めています.その正貨をより多くの人が共有しなければ,政治的な混乱や市場介入が爆発するでしょう.もし政治的な再分配を政府が単独で行うとすれば,資本は逃げてしまいます.そこで,グローバリゼーションの利益を集積しながら,しかも空間的に移動できない富の媒体として,Brittanは土地に注目します.

21世紀には,世界土地課税と再分配システムが,アメリカでも中国でも,貧しい移民や出稼ぎ労働者,老人への社会保障の財源となるわけです.


FT October 15 2006

Anatol Lieven and John Hulsman

America’s world role has to be realistic and moral

(コメント) 神学者Reinhold Niebuhr,国際政治・思想家Hans Morgenthau,大戦略家・外交官George Kennanがともに支持したのは,リアリズムと道義性とのある関係でした.彼らは道義的なリアリズム(ethical realism)により,朝鮮戦争を支持し,ベトナム戦争に反対したのです.

アメリカは国民の安全を守らねばなりません.しかし同時に,アメリカは理想を掲げて戦いました.イラク戦争の結果,この二つが矛盾するという批判をネオコンやリベラル左派は受けています.しかし,道義的なリアリズムは異なります.国際戦略は慎重に建てる.すなわち,良き意図よりも可能な成果に目標を絞り,他国の性質,考え方,利益を詳細に検討し,それらがアメリカの真に重要な価値と矛盾しないなら,進んで受け入れること.そして,アメリカ人の愛国心と,同様に,アメリカのパワーや価値に対する限界を深く意識して,融合させること.」

その理想とは何でしょうか?  Lieven and Hulsmanはそれを「資本主義的な平和」(the Great Capitalist Peace)と呼びます.この理念に従って,アメリカは各地域の大国と手を結びます.パックス・ブリタニカ,パックス・アメリカーナに続くのは,唯一の覇権国ではなく,こうした「資本主義による平和」なのでしょうか?

FT October 16 2006

A troubling Middle East era dawns

By Richard Haass

(コメント) 国際秩序というのは歴史的にだけ見出せるものだと思います.たとえばRichard Haassがこの論説の冒頭で書いているように.

ナポレオンがエジプトに来て中東に近代を告げて以来,200年以上経って,オスマントルコの崩壊から80年,植民地支配の終焉から50年,冷戦終結から二十年足らずの今,この地域におけるアメリカの時代も終わった.

アメリカの掲げた平和や繁栄,民主主義は実現せず,中東の未来は世界に大きな災厄をもたらしそうです.これが現実であるなら,備えるしかありません.アメリカはEU,ロシア,中国から挑戦されているだけでなく,各地域に跋扈する国家やラディカルな武装集団からも挑戦を受けます.

イラン,イスラエル,レバノン,パレスチナ,イラク,サウジアラビア,スンニー派,シーア派,さまざまなテロリスト集団,・・・ それでも,中東における国家間の安定した秩序を重視し,イランの支配的な地位を阻むことが,アメリカの目標として選択されるべきでしょう.

軍事力だけに頼らず,民主化が平和をもたらすなどと吹聴しないことです.そして外交を重視して,中東の災厄が他の地域に及ばぬように,封じ込めることを主張します.

H.D.S. Greenway A foreign policy meltdown BG October 17, 2006

Michael T Klare Beware empires in decline Asia Times Online, Oct 19, 2006

Eyeing the Exits From Iraq LAT October 19, 2006

Jonah Goldberg Iraq Was a Worthy Mistake LAT October 19, 2006


Peter Skerry Immigration realities BG October 15, 2006

Andrew M. Sum and Paul E. Harrington Two kinds of immigration BG October 16, 2006

Stefan Wagstyl Romanian and Bulgarian migrants buoy home growth FT October 18 2006

(コメント) Peter Skerryは,多くのメキシコ系移民たちが短期的な出稼ぎの性格を強く保持しており,英語の習得や子供の学校に無関心であることを指摘します.しかし,さまざまな現実の問題により,アメリカへの定住化を選びます.彼らの意図は,できるだけ多く稼いで,早く帰国することでした.その選択は困難で,彼らにとっても矛盾したものです.

それゆえアメリカは,移民たちに対する英語教育の充実に投資しなければならない,とSkerryは考えます.英語を修得することで,彼らの社会参加は容易になり,子供たちも学校にとどまり,その市民権取得を促すでしょう.

Sum and Harringtonは,移民政策論争に正確な情報と分析を求めています.たとえば,移民と言っても,合法移民と非合法移民の役割はまったく異なる.単純労働力の国内供給が乏しいというのは虚言である.非合法移民を雇うことで利益を受ける者は,それによって国民が失うものを見ていない.など.

ルーマニアの外相も,北部の町Feldruの町長と同じように,国民が自国で働けることを望んでいます.しかし財源は乏しく,仕事もありません.労働人口の約20%,200万人の労働者が外国,主にイタリア,スペインで働きます.町長は,彼らが故郷との関係を維持して,早く戻ってくることを願っています.

WP Thursday, October 19, 2006; A29

A Military Path to Citizenship

By Max Boot and Michael O'Hanlon

(コメント) アメリカの世界的な軍事展開を支える将来の方針として,外国人への勧誘とアメリカ市民権へのリンクを提唱しています.世界中で反アメリカ主義が高まっているけれど,アメリカ市民権は今も圧倒的な競争力を持つ商品です.

この提案はすべての利益を満たす,と彼らは考えます.移民希望者は市民権を得て,軍は愛国的で優秀な兵士を得て,政府は予備役を経済過程から奪う必要がなくなり,余分な財源を節約できます.こうして優秀な人材は,外国に居ても,どんどんアメリカ市民に変えてしまうのです.


The American Prospect 10.18.06

We Answer to the Name of Liberals

By Bruce Ackerman and Todd Gitlin

(コメント) 中間選挙に関する論説も多くありますが,すべて削除しました.ただ,この論説は面白い,と思ったので指摘します.

アメリカのリベラルとは何・誰か? 選挙を前にして,その自己定義を明確にしよう,という宣言です.署名したい者は随時更新されます.すなわち,

George Akerlof, Berkeley Jeffrey Alexander, Yale Eric Alterman, City University of New York Kenneth Arrow, Stanford Ian Ayres, Yale Benjamin Barber, Maryland Yochai Benkler, Yale Joshua Cohen, Stanford and Boston Review Lizabeth Cohen, Harvard Robert A. Dahl, Yale Norman Daniels, Harvard Michael Doyle, Columbia Cynthia Fuchs Epstein, Graduate Center, CUNY James K. Galbraith, Texas Robert W. Gordon, Yale Jorie Graham, Harvard Adam Hochschild, Berkeley Arlie Hochschild, Berkeley G. John Ikenberry, Princeton Christopher Jencks, Harvard Pamela S. Karlan, Stanford Michael Kazin, Georgetown Chang-Rae Lee, Princeton Margaret Levi, University of Washington Sanford Levinson, Texas Doug McAdam, Stanford Jane Mansbridge, Harvard Katherine S. Newman, Princeton Robert Post, Yale Robert B. Reich, Berkeley Susan Rose-Ackerman, Yale Ruth Rosen, Berkeley Elaine Scarry, Harvard Arthur Schlesinger Jr, Graduate Center, CUNY Richard Sennett, LSE and NYU Kim Lane Scheppele, Princeton Jane Smiley, Carmel Valley Christine Stansell, Princeton Charles Tilly, Columbia Michael Tomasky, The American Prospect C.K. Williams, Princeton William Julius Wilson, Harvard Alan Wolfe, Boston College George M. Woodwell, Woods Hole Research Center,・・・

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The Economist, October 7th 2006

Talking at last

The cold war in Asia: In dangerous waters

The UN’s new secretary-general: Enter Mr. Ban

Negative campaigning: The same to you, with knobs on

(コメント) 草原で向かい合った馬上の二人の騎士が,日中それぞれの旗を構えて,席に着こうとしています.「もし中国,韓国,日本が核実験の脅迫に対応する優れた合意を得るのでないなら,週末の首脳会談は儀礼的な握手でしかなく,何ももたらさないだろう.」 と,The Economistは書きました.北朝鮮に限らず,東アジアでは主要国間で,驚くほど多くの紛争処理・合意・妥協が必要なのです.アメリカを待つのではなく,自分たちで担うべきだ,と.

「北アジアにおけるバランス・オブ・パワーと影響力はかつてないほど変化しつつある.」 中国の台頭,安全保障,貿易,投資における相互依存の深まり,アメリカによる覇権の後退,日本の憲法改正論議,北朝鮮の脅し,・・・ The Economistの巻頭記事は,小林よしのりの漫画『戦争論』をも挙げて,日本の世論が転換しつつある,という日本研究者の警告を紹介します.日本人の欧米観やアジア観における歪み,政府に促された中国人の反日感情が暴走する危険,それでも日中衝突を回避する点で両国指導者の合意はできる.しかし,台湾海峡の衝突,靖国神社をめぐる過激なナショナリズムの相互作用など,現実は,歴史を忘却し,偽る者を許しません.

国連内の政治や,アメリカ中間選挙における政治の重要性は,無表情で,意志を感じさせない,官僚タイプの潘基文事務総長と,選挙戦終盤のネガティブ・キャンペーンによる潰し合いに入ったアメリカの民主主義が,世界政治を動かす(あるいは,止める)鍵であると示唆します.


The Economist, October 7th 2006

The battle for brainpower: A survey of talent

(コメント) W.チャーチルの言葉が印象的です.「未来の帝国は,知力の帝国であろう.」 タレント(才能ある人間)をもとめる戦いが世界的な規模で激化しています.企業だけでなく,国家も,バランス・オブ・パワーではなく,バランス・オブ・ブレインに加わっています.

世界市場における競争で,ますますタレントは多くの報酬を支配し,企業や国家を渡り歩きます.しかし,タレントを得るために最も重要なことは,彼らがさらにタレントを集め,磨けるような環境を用意することだ,と記事は指摘します.また,世界で見られる分配の不平等に対して,政治的な介入は失敗するだろうと批判し,逆に,教育機会の平等さを確保することで,さまざまなタレントの活躍を祝福するべきだ,と主張します.