IPEの果樹園2006

今週のReview

7/31-8/20 A

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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IPE方法論 :外交=国際協調

安全保障 :イスラエルのレバノン侵攻,アメリカ要塞,イスラエル

貿易・投資 :ドーハ,開発

通貨・金融 :ドイツと中国,国際収支不均衡,ドルより世界通貨

世界統治 :経済モデル,日本,移民規制

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


FT July 21 2006

Benign US slowdown

FT July 22 2006

No apocalypse now

(コメント) バーナンキ議長は上院で,アメリカ経済が無難に軟着陸するだろうという期待と,それを示すデータを示しました.しかしFTは慎重です.インフレ期待がどうなるか分からないし,企業はコストを価格に転嫁したがっている.石油価格(中東情勢)もどうなるか分からない.さらに,FTは金融政策の不思議な心理作戦を指摘します.1.バーナンキは金利の引き上げ過ぎを是正するほうが,金利を抑制してインフレを放置し過ぎるよりも,代償が少ないと考えるべきだ.2.バーナンキは市場に金融引き締めの打ち止めを予告してしまったと解釈されるより,金利引き上げへの警戒感を常に残しておく方が良い,と.

イラク,イラン,北朝鮮,レバノンも,それが石油価格に影響しない限り,世界経済にとっては些細な変化です.バーナンキ議長が恐れるのは,第一に,アメリカの住宅市場におけるバブルの破綻,アメリカ経常赤字の拡大だ,とFTは考えます.もちろん,楽観する意見によれば,新興市場は豊かになったのに資本市場の整備が遅れているから,アメリカの資産に対する海外の需要はまだまだ増える,というわけですが.


IHT FRIDAY, JULY 21, 2006

The failure of Israeli unilateralism

Manuel Hassassian the Palestine Liberation Organization representative to Britain

市民生活のインフラを破壊し,市民を殺戮する.イスラエルは,安全保障を平和ではなく,戦争によって築けると思うのか? なぜイスラエルの強硬派は,レバノンやPLOと和平交渉するよりも,一方的な戦闘行為が好ましいと信じるのか? 北朝鮮は中国の制止を無視してミサイルを発射したかもしれないが,イスラエルはアメリカによって抑制されたのか? 入植地の拡大や編入を公然と支持しながら,アッバスのパレスチナ自治政府と共存する話を誰が信じるのか? アメリカに指導された援助拒否は,パレスチナの民主体制をこのまま破壊するまで続くのか?

ヨルダン川西岸地区には200万人,ガザ地区には140万人が,囚人のように監視されて生活している.ハマスの勝利後に,ファタハとハマスが二国家独立案を継承する合意に達したとき,この祝福すべきニュースをイスラエルの爆撃が紙面から追放した.この事態を抜け出す方法はある.20052月のthe Sharm el-Sheikhサミットで合意した政治犯の釈放を続けることだ.しかし,イスラエルは囚人の交換を拒み,逆にパレスチナの閣僚や議員33人をガザから誘拐した.

パレスチナ人の自由や独立を無視して,自分たちだけが平和を築けるというイスラエルのユニラテラリズムは間違いだ.

NYT July 23, 2006

Spanish Lessons for Israel

By NICHOLAS D. KRISTOF

The American Prospect 07.23.06

Stumbling Into Armageddon

By Robert Kuttner

(コメント) NICHOLAS D. KRISTOFは,1982年にもイスラエルはレバノンに侵攻したが,それは長期の安全保障を得る結果にならなかった,と指摘します.それがハマスやヒズボラのような武装勢力の台頭を招いたからです.イスラエルは多くのレバノン人を殺し,反イスラエルと反アメリカの気運を強めることはできるだろう.しかし,イスラエルが殺すテロリストよりも,この侵攻が新たに生み出すテロリストの方が大いに違いない,と.またイスラエルは,アラブ諸国との平和共存を合意することに長期的な利益がある.しかし,この侵攻はイスラエルの生存自体を否定する勢力を増やすものだ,と.

スペインやイギリスはテロに対してイスラエルのように侵攻作戦を繰り返しませんでした.むしろ,スペインはバスク地方に一層の自治を認めました.またイギリスの首相であったサッチャー女史はIRAとの協定を認めました.こうしたソフトな宥和政策は成功であったとは評価されませんでしたが,長期的に見れば,強硬派の侵攻作戦よりも成果を生んだのです.それは政府の姿勢を優位に導き,テロリストたちを孤立させました.

今回のイスラエルによるレバノン侵攻は,ブッシュ政権の中東政策による破局であった,とRobert Kuttnerは批判します.イラク戦争で示したアメリカの力,民主主義のモデル,穏健派への支援,イスラエルの安全保障,などは,むしろ強硬派を増やし,穏健派を孤立させました.イスラエルの首相は,外交よりも軍事力の行使を信じるブッシュをまねただけです.アメリカのボルトン国連大使は,直ちに停戦を求めるアナン事務総長の呼びかけを拒みました.それどころか,政権に近い右派の戦略家たちは,イランとの戦争を主張しています.

ブッシュ氏は,イスラム過激派を鼓舞し,イランの核開発や北朝鮮のミサイル発射に大きな動機を与えました.かつてソ連は数千発の核ミサイルを擁し,冷戦を続けましたが,イデオロギーではなくプラグマティストによる政府が直接の軍事衝突は回避し,封じ込めによる勝利をもたらしました.自己のイデオロギーを賛美するブッシュ政権には,歴史に負の遺産をもたらす,とKuttner警告します.

LAT July 24, 2006

It's Not World War III, but It Could Be Almost as Bad

Niall Ferguson

The Guardian Tuesday July 25, 2006

We are defending our sovereignty

Ali Fayyad, Hizbullah leadership

The Guardian Tuesday July 25, 2006

Now is the time to think big

Joschka Fischer

WP Tuesday, July 25, 2006; A15

. . . No, It's Survival

By Richard Cohen

(コメント) Niall Fergusonは,その名も聞いたことがないような辺境の小国における人々の争いに関わって大国同士が世界戦争を始めた時代,を回想します.19148月,セルビアとオーストリアがボスニアを争い,世界戦争に至りました.また19399月,チェンバレンの宥和政策にもかかわらず,ドイツとポーランドはダンチッヒを争って,第二次世界大戦が始まります.

イスラエルとヒズボラによるレバノンの武力衝突は,第三次世界大戦を引き起こすでしょうか?

それはない,とFergusonは考えます.新しい中東戦争も起きないでしょう.シリアやイランがアメリカの積極的な関与を招くような紛争の激化を望まない,と.紛争当事者を支援する,アメリカに匹敵するほどの大国(とその同盟)は存在しません.

イスラエルの戦闘は常に短期です.だから,ライス女史は中東訪問も予定していません.むしろ中東で起きているのは,国家による宣戦布告ではなく,文明やエスニシティーによる戦争状態です.しかも,その最大の衝突はイスラエルとアラブの間ではなく,シーア派とスンニー派の間に起きています.

ヒズボラの幹部Ali Fayyadは,イスラエルの攻撃は拉致された二人のイスラエル兵士を救出すると言うより,レバノン領内の抵抗勢力を壊滅することが目的である,と考えています.イスラエルやアメリカは,ヒズボラをシリアが支援した外国勢力やテロリストと主張します.しかし,住民たちはヒズボラをイスラエルに占領された地域の抵抗運動を指導する勢力と見ている,と反論します.イスラエルやアメリカの圧倒的な軍事力に対して,住民たちは抵抗運動を組織する必要を感じている,と.

この戦争は,アラブとイスラエルの戦争ではなく,イスラエルの生存を認めない過激派との戦争である,とJoschka Fischerは考えます.もしイランが核兵器を開発して,こうしたイスラエルを拒否する勢力に核の傘を提供すれば,地域の安全保障は新しい均衡に達するでしょう.イスラエルが阻止するはずだった事態は,いくつかの誤算を生んでいます.1.地上軍を投入して占領した.2.国連決議1559の枠を超えた.3.穏健派を含む反イスラエル同盟が形成された.4.中東4大国の政治・経済・安全保障に関する合意をアメリカは求める.

しかしFischerは,イスラエルがこの戦争で地域の新しい安全保障を達成するだろう,と期待します.シリアとの関係を正常化し,イランを孤立させる.パレスチナにも,穏健派の指導部が確立されるから,と.

イスラエルは「均衡を逸した報復を行う国」として有名になってしまった,とRichard Cohenは危惧します.ミサイルが利用されるなら,もはや壁やフェンスが安全を保障しません.イスラエルは抑止力を求めます.それは「均衡を欠いた報復」を含み,その結果,中東とヨーロッパで反ユダヤ主義を強めてしまいます.アメリカも含めて,世界には旧住民を追い出したり,大量に殺戮したりして住み着いたケースが多くあります.それでも支配者は平和と民主主義を実現することに成功しました.イスラエルは?

The Guardian Thursday July 27, 2006

We Europeans must never forget that we created the Middle East conflict

Timothy Garton Ash

(コメント) 中東における紛争の歴史はいつから始まったのか? 712日,水曜日の午前9時.イスラエル兵二人が誘拐されたとき? 69日,金曜日.イスラエルの砲弾がガザ地区の市民少なくとも7人を殺害したとき? 今年の1月,ハマスがパレスチナの選挙に勝利し,アメリカの中東民主化計画が頓挫したとき? あるいは,1982年にイスラエルがレバノンに侵攻したとき? 1979年のイランにおけるイスラム革命? 1948年,イスラエル建国? そして,1881年の春,ロシアにおけるユダヤ人虐殺(ポグロム)はどうか?

独裁者,独裁者,・・・ 王朝,また王朝,・・・ 悪党,悪党,さらに悪党による殺戮,・・・ そして,さまざまな政策の失敗,新政策,また新政策,・・・

Timothy Garton Ashは,中東世界の殺戮にうんざりするヨーロッパ人たちに,紛争の起源をたどればヨーロッパに至る,と指摘します.ヨーロッパにおける反ユダヤ主義.中東政治への介入.シオニズムの興隆とユダヤ人のパレスチナ流入.イスラエル建国とその承認.・・・もしヨーロッパ人がユダヤ人を受け入れていたら,中東紛争の多くは起きなかったのではないか?

真の友人であれば,間違いを指摘するべきだ.第三次世界大戦を警告したり,テロリストの同盟を描いたり,イスラエルを批判するだけで「反ユダヤ主義」と非難するような過度の単純化を避けて,真実を見るべきだ.アラブ世界における問題点,難民キャンプで育つ子供たち,イスラエルの爆撃やヒズボラのミサイルで死傷した家族の子供たちが抱く感情を無視してはいけない.

ヨーロッパは中東の安定化に貢献するべきだ,とAshは考えます.その起源に関わり,今も,石油,核,テロに関して重要な利益を共有しています.ヨーロッパも中東に平和維持群を送るべきです.しかし,和平に関する基本的合意と,アメリカの全面的な関与がなければ,その条件は満たせません.


LAT July 21, 2006

Bush's Burned Bridges

Rosa Brooks

NYT July 21, 2006

The Price of Fantasy

By PAUL KRUGMAN

(コメント) ブッシュ氏の「力による平和・民主化=アメリカの利益」という狭隘な外交政策(帝国建設)が破綻した,という厳しい批判です.イラクの次は自分たちか,と彼らは恐れ,北朝鮮と同じように,あらゆる抵抗を試みるでしょう.他方,アメリカは第二次世界大戦でドイツを降伏させるために費やした以上の時間と資金と軍隊をイラクに注ぎ込む!

これはまだ端緒に過ぎません.ヒズボラを救うためにシリアやイランが関与を深め,イランの核施設をイスラエルが空爆するかもしれません.こうした事態が起きないとしても,戦闘は新しい不信と自爆テロの世代を生むでしょう.冷戦後のアメリカの優越とチャンスは,その傲慢と失策によって,これほど短期に消滅してしまったのです.

PAUL KRUGMANは,ブッシュ政権が成立したとき,今ではネオコンと呼ばれる集団の思想はきわめて特異で,どちらの政党からも危険すぎると見なされていた,と書きます.多くの人がチェイニーやラムズフェルドは「クレイジー」と考えたのです.しかし,ブッシュ氏は9・11をクレイジーな幻想(ファンタシー)実現のためにチャンスと見ました.その成果が,われわれを流血の惨事に巻き込んだのです.

それは十分に予想されたことだ,とKRUGMANは自分の予言も引いて批判します.そしてネオコンの言説は,今やイランに向けて殺到しつつあります.


NYT July 21, 2006

Order vs. Disorder

By THOMAS L. FRIEDMAN

LAT July 23, 2006

Could This Be the Start of World War III?

By David Bosco

(コメント) イスラエルは長期戦に備えて塹壕にインターネットを引き,ヒズボラは12000発のロケット弾で国境線を消し去った.これは普通の戦争ではない.ヒズボラは,国境や国家主権という,国際秩序の基本原理を無視した集団である.つまり,ブッシュやイスラエルは「秩序ある世界」の同盟,ヒズボラやイランは「無秩序の世界」の同盟である,とTHOMAS L. FRIEDMANは考えます

FRIEDMANは単純化された世界像に酔っ払っているのか? あるいは,これは事態の深刻さを伝えるための表現力? もう一人の戦略家,M.Naimに刺激されたのかもしれません.

David Boscoは,第三次世界大戦シナリオを考えます.@イスラエルのイラン空爆.A北朝鮮ミサイルの中東輸出.Bパキスタンから核技術が流出.Cロシアなど旧ソ連圏の反民主主義諸国が逆襲.とはいえ,アメリカの圧倒的な軍事的優位を翻せる国はいません.第三次世界大戦は起きないのです.

しかし,すべての紛争が大国による関与を背景としていた冷戦期と違い,冷戦後の世界で,大国は地域紛争をうまく管理できるのか? という疑問が残ります.


NYT July 22, 2006

In the Hearts of Leaders

(コメント) NYTは,その論説で,A級戦犯を祀った靖国神社に参拝する小泉首相や後継者を目指す安倍氏を,明確に断罪しました.そして,戦争に加担した天皇裕仁でさえ,A級戦犯の合祀を理由に参拝を止めたことを称え,プレスリーで話題を作るような小泉よりも度量があった,と評価しています.


The Japan Times: Saturday, July 22, 2006

UNSC passes the test, so far

By RALPH COSSA

FT July 24 2006

Why China is reluctant to apply pressure on Pyongyang

By Richard McGregor and Anna Fifield

FT July 25 2006

China to freeze N Korean accounts

By Anna Fifield in Seoul and Stephanie Kirchgaessner in Washington

(コメント) 国連安保理(UNSC)は,国際紛争の解決に役立つのでしょうか? レバノンに限らず,北朝鮮であれ,イランであれ,イラクであれ,・・・ 国連や安保理が解決を主導したケースなどありません.安保理は大国の交渉の場であり,それに加えられることは交渉の条件であるかもしれません.しかし,解決を約束するものではないのです

北朝鮮のミサイル発射に対する国連決議は,それが軍事的威嚇を含むかどうかではなく,中国が賛成し,六カ国協議への即時復帰を北朝鮮に強く求めた,ということに意義があります.日本とアメリカは強硬姿勢を崩すことなく,要求の実行を中国と韓国の宥和政策に求めました.矛盾した戦略が一定の交渉テーブルを共有して,決議に参加できたのは,UNSCがあったからです.

なぜ中国は,もっとはっきり,北朝鮮に国際秩序の不安定化を招くような行動を取るな,と言えないのか? つまり,たとえ食糧やエネルギーを供給していることを脅しの種にしても,それでは北朝鮮の体制が崩壊することを望むか,と言えば,決してそうではない.そのことを北朝鮮は知っているのです.

それは,中国が朝鮮半島の不安定化にどれほど耐えられるか,アメリカや日本とどこまで協力して半島統一を実現できるか,にかかっている,と思います.中国自身が,そうした事態が起きることを,まだ当分望まない以上,北朝鮮は宥和政策の逆転という示唆を,実際に脅威とは感じないのです.北朝鮮は,中国の自慢する経済改革を信用せず,他方,いまだ自壊することで中国政府を震撼させる切り札を手放しません.

スノー財務長官が賞賛したように,中国は北朝鮮の金融封鎖に協力したのでしょうか? その暗闘の中身が伝えられるのは,もっと時間が経ってからでしょう.


FT July 23 2006

What Asia can learn from Europe’s experience

By Wolfgang Munchau

こんな風に描かれるのは,どこの国だろうか? 政府はますます増大する巨大な経常収支黒字を出している.成長率が急速に高まっている.中央銀行は為替レートを目標にしている.賃金上昇圧力が蓄積されてきた.政治家たちは,ビジネス界からの圧力を受けて,変化を拒んでいる.「私が首相の地位にある限り,切上げは行わない.」と,政治指導者は公言している.

この国は中国ではない.1960年代後半の西ドイツだ.指導者とはクルト・G・キージンガーであり,ドイツで最初の左派が主導する連立政権であった.彼は切上げないという約束を守ったが,それは彼が1969年に選挙で落選したからだ.その後すぐに,ドイツはマルクを切上げ,数年にわたって積み上げてきた黒字を解消し,均衡を回復する過程に入る.

ここには中国と西ドイツとの間の興味深い類似性がある.もちろん違いも明白だ.中国の人口は膨大で,発展水準も低い.国内労働力の余剰は豊富にある.土地,水,エネルギーの価格は人為的に安くされ,独立した中央銀行も無い.さらに,中国には,切り上げを拒んだからという理由で落選する者はいない.しかし,戦後のヨーロッパの経験は,アジア一般に適用できるし,特に中国に適用できる.

ヨーロッパ中央銀行(ECB)の理事であるLorenzo Bini Smaghiは,最近,北京で開かれたアジア・ヨーロッパ経済フォーラムで,この問題を取り上げた.彼は中国にドルに対する切り上げを要求する前にやめた.しかし「新興のヨーロッパ」は,今日の中国で支配的な政策合意とよく似た位置から,政策合意へと収斂した,と彼は述べた.

それは4つの綱領からなっていた.1.金融政策は国内で決定する.2.金融政策は物価を安定させるために動かす.3.財政政策は一時的な経済ショックを吸収するために動かす.4.成長を確保する主な手段は構造改革である.彼が述べたことは,多分,単に中央銀行家たちのコンセンサス以上のものであった.しかしヨーロッパのエコノミストたちは中国政府の経済政策について合意できないだろうし,1960年代後半のドイツ政府についても同様であった.その当時は,エコノミストのほとんどが連合政府の為替レート政策に反対であった.

中国経済は当時のドイツ経済よりも,さらに一層,維持不可能な経路にある.2006年前半,その成長率は年10.9%にもなった.輸出は今年前半の6ヶ月間で年率25.2%に達した.固定投資も29.8%の増加.M2は18.4%,銀行融資は15.2%の増加である.中国は今,世界最大の外貨準備を保有している.6月末には,外貨準備が9411億ドルに及ぶ.中国の経常収支黒字は2005年にGDPの7.1%であった.石油価格の上昇にもかかわらず,今年もその水準に近く,さらに増えそうである.

中国もまた企業が熟練労働者の雇用に苦しんでおり,労働市場で不足が生じている.これは1969年のドイツの状況と非常に良く似ている.その頃,失業率は0.8%にまで低下していた.それに対して,ドイツは,まさに今,中国がしているように,その差を埋めるため大規模に外国人労働者を雇用した.

最も重要なマクロ経済対策とは,ドイツ・マルクの切上げであったし,それは1969年に新政府が行った最初の決定の一つであった.選挙から数週間で,ドイツ・マルクは1ドルに対して4マルクから3.66マルクに,9.3%切上げられた.1973年のブレトン・ウッズ体制崩壊後,ドイツ・マルクは急速に増価し続け,その年に2.40マルクに達した.4年を経て,ドイツ・マルクはドルに対して66%も増価したのだ.

1年前,中国は人民元を2.05%だけ切上げた.その後は,さらに1.47%増加している.そのように小さな切上げでは,中国の不均衡を是正するのに不十分であろう.

ドイツでも1960年代後半,今の中国と同じように,通貨の増価は国内輸出産業を死滅させる,とビジネス界が警告していた.ドイツではそのようなことは起きなかった.逆に,1970年代にも輸出黒字を維持した.2005年,統合ドイツは世界最大の財輸出国であった.もちろん,ドイツは多くの自ら招いた問題に苦しんだし,中国はそれらを回避するのが良い.しかし,当時の経済政策には理由があった.

おそらく最大の相違点は,ドイツが完全な自由で民主的な体制を取っていたことだ.1969年秋に,経済政策の将来に関する,激しい,国民的に開かれた論争が行われた.中国にも論争はあるが,制度的な問題に触れないように抑えられている.権威主義的政府が間違った経済政策により長期間にわたって固執するのは偶然ではない.

FT July 27 2006

Rebalancing China

(コメント) 中国政府が,内外の不均衡拡大と景気過熱にもかかわらず,財政政策や金融政策,為替レートを使う制度や知識をまだ確立していないことを,FTは危惧しています.


July 24 (Bloomberg)

China's Schizophrenic Boom Would Baffle Keynes

William Pesek

(コメント) 中国にはインフレ加熱の危険があります.しかし,過去のいかなる経済学者も,中国のような経済を見たことがないのは明らかです.中国には一方でデフレの懸念があり,他方でインフレやバブルの懸念があります.中国の金融政策は縛られ,財政政策は整備されていません.それでも政府は第二の天安門事件を避けるために,雇用の拡大を続ける必要があるのです.

輸出が衰えたとき,中国は肺炎になる?


FT July 25 2006

Central banking model for neither gods nor monkeys

By Paul de Grauwe

(コメント) Paul de Grauweは,ルーカスの批判から生じた「合理的期待モデル」を否定しています.市場における個人に完全な知識や合理的判断を仮定することで,経済変動を予測できる,というモデルは現実を無視しています.経済変動がそれぞれ非常に異なった要因によって影響されることを認めれば,もっと大雑把なモデルの方が,多くの経験的な知識を追加して分析できるわけです.


Free trade's best defence is the truth FT July 25 2006

Nobody Wants Free Trade LAT July 26, 2006

TOM WRIGHT Trade Focus Now Shifts to Regional Deals NYT July 26, 2006

Bilateral trade deals: a dangerous affair FT July 27 2006

Jeremy Seabrook In a world of wealth, poverty has become a necessity The Guardian Thursday July 27, 2006

Pascal Lamy What now, trade ministers? IHT THURSDAY, JULY 27, 2006

Walden Bello Why Monday’s Collapse of the Doha Round Negotiations Is the Best Outcome for Developing Countries Focus on the Global South, 27 July 2006

(コメント) ドーハ・ラウンドの行き詰まりが明白になって,危機意識を持つ論説もあれば,自由貿易の弊害を指摘し,自由化交渉の停滞を歓迎する論説もあります.

貧困を解消するとか,自国産業を保護できるとか,勝手な主張によって政治家たちは自由化交渉を混乱させてきました.しかし,誰も外国の製品かどうかによって,消費を妨げられる必要は無いのです.自由貿易を真実と現実に立脚させて支持するべきだ,と.

主要な貿易国が自由化交渉の条件を合意できない限り,交渉は決裂します.しかし,自由化はなくなるとも思えません.再び真剣に取り上げられる日が来るのです.

大国の政治家たちの間では,二国間貿易協定や地域主義の議論も活発です.あるいは,合意可能な形で,ミニ自由化協定を実現するか? さらに,発展途上諸国の発言と利益をより公平に実現する?


NYT July 25, 2006

Raise Wages, Not Walls

By MICHAEL S. DUKAKIS and DANIEL J. B. MITCHELL

The Guardian Wednesday July 26, 2006

Immigration's real frontline

John Denham

LAT July 26, 2006

When Immigrants Become Humans

(コメント) MICHAEL S. DUKAKIS and DANIEL J. B. MITCHELLは,二つの主要な移民政策を批判します.一つは,下院が主張するような,メキシコ国境に壁を築くこと.もう一つは,ブッシュ政権が主張し,上院が承認した,一時雇用の外国人労働者を増やすことです.しかしそれも,IDカードを普及させるコストと実効性を軽視しています.

もっとシンプルな代替案があります.すなわち,最低賃金を引き上げ,労働条件を改善することです.低賃金の3K労働にはアメリカ人が就きたがらないでしょう.しかし,そうでなければ雇用を望んでいます.John Denhamも,同じように,国内の苦汗工場を取り締まるよう求めます.

移民たちは,経済的・政治的権利を回復して,人間になります.

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The Economist, July 15th 2006

The G8 Summit: Living with a strong Russia

Russia: Richer, bolder ? and sliding back

The Koreas: Sunshine and storms

Falkland Islands: A new war of words

Israel, Palestine and Lebanon: The crisis widens

Immigration: The wrong side of history

Global markets: Tightening the reins

(コメント) 戦争,大国,移民,金融市場,・・・ 国際秩序を動かす要因は,地底を流れるマグマのように,ときにはその力を噴出させ,常に蓄積しています.プーチンのロシアは共産主義を復活させませんが,秘密警察による支配の強化を再現しています.韓国の大統領や「太陽政策」の支持者は,ミサイル発射によっても冷戦時代のレトリックには戻らない,と断言します.アルゼンチンのキルチネル大統領は,第二次フォークランド紛争を画策します.移民とは,コミュニティーや雇用の維持,世界の治安悪化,エネルギー問題,社会保障など,さまざまな問題と関わるでしょう.世界の金融市場は引き締めがもたらす不安定さに緊張しています.

The Economist, July 15th 2006

Economic models: Big questions and big numbers

(コメント) 最近,経済学者,という名称には,経済モデルを扱う人々,という響きがあります.経済モデルは,実際に投入量と産出量の技術的な依存関係を描写するものと,さまざまな数式を同時に解いて,一般均衡の変化を予測するものとがあります.前者は配管工.後者は神官です.配管工たちは,1976年の「ルーカスの批判」によって職を失いました.他方,神官たちも,多くの現実を切り捨てた抽象的な神を解釈しているに過ぎません.

政治学者はもっと経済学から知識を得られるはずです.しかし結局,自分に必要なとき,自分が必要だと思うことを示すモデルにしか興味はないのです.

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LAT July 28, 2006

4 Lessons to Make Us Safer

Rosa Brooks

(コメント) もし自分たちの子孫のためにより安全な世界を作りたいと真剣に願う大統領がいて,彼がこの5年間の悲劇と失敗から学んだとしたら,何をするだろうか?

教訓1.軍事的な優位は平和を保障しない.弱者は弱者の方法で戦い続ける.インターネットを見れば,誰でも簡単に爆弾やロケットを作れる.

教訓2.もし軍事的に敵を屈服させることができないのであれば,その動機を取り除く必要がある.世界には完全な警察官も,完全な警察国家も存在しない.敵を愛する必要はないし,テロリストを信用するわけでもない.それは「ソフト」ではなく,「リアリスト」になることだ.

教訓3.不完全な答えでも,何もないよりましだ.最初は小さな一歩でも良い.双方が手足を吹き飛ばしているときに,「根本原因」を争うのは間違いだ.

教訓4.最後に,われわれはその資本や政治力を「アメリカ要塞」の中に投入するだけではいけない.すべての人民に平和と繁栄を実現するように投資するべきです.われわれは世界の一部であり,運命を共にすることを認めるべきです.そしてグローバリゼーションの闇の部分に対処しなければなりません.貧困,抑圧,紛争,テロ.それゆえアメリカは,もっと援助や災害救援,紛争回避,人道的介入,平和維持,再建,経済発展,衛生,環境保護,民主主義,法の支配,を助けるべきです.それは同時に,アメリカが国際機関に積極的に関与することを意味します.

そんなことは不可能だ?

しかし,もし指導力が正しく発揮されるなら,実現の可能性はあるはずです.第二次世界大戦後に,アメリカ政府が国際機関を育てたように.


WP Friday, July 28, 2006; A25

'Disproportionate' in What Moral Universe?

By Charles Krauthammer

LAT July 30, 2006

Why Good Countries Fight Dirty Wars

By Caleb Carr

Agence Global, 2 August 2006

What Can Israel Achieve?

Immanuel Wallerstein

(コメント) Charles Krauthammerは,「イスラエルの均衡を欠いた報復」という非難に反論します.どの国であっても,自国の民間人を殺害し,恐怖に陥れることを狙って発射された1500発ものロケット弾を放置することなどありえない.その爆弾や発射装置を破壊するためにと必要な行動が,やむを得ずもたらす民間人への被害を「不均衡」と呼ぶのは,何を基準にイスラエルを非難しているのか?

真珠湾を攻撃されたアメリカは,日本海軍への「均衡」報復にとどめたか? 4年に及ぶ数百万人の死傷者と東京の壊滅,広島・長崎に原子爆弾を投下した.

「もしイスラエルがレバノンの市民生活を支えるインフラを破壊したかったのであれば,戦争の最初の時間でベイルートを焼き払い,数十億ドルの電力輸送網を破壊して,二十年前に引き戻しただろう.しかし,そうしなかった.橋や道路,滑走路を破壊し,港を封鎖した.ヒズボラの軍事力を増強させないように.」

「イスラエルは最新鋭の兵器で正確な爆撃を行った.レバノン市民を殺傷する意図は無い.・・・イスラエルはビラや警告により民間人の避難を促し,それによりヒズボラの兵士が攻撃を避け,再結集するのを知っている.その結果,イスラエル兵士の死傷者も増えた.それでも国際社会はイスラエルを責めるのか?」

Caleb Carrは,戦争と文明に関する,さまざまな大量破壊・殺人の正当化を歴史的に扱っています.ギリシャやローマの時代から,民主主義国家による戦争は奴隷化や強姦,略奪,戦利品の分配と結びついていました.戦争と軍事技術,権力・政治システムの大衆化,情念(たとえば愛国心)やイデオロギーは,破壊や殺戮,責任と補償の様式を変えてきました.必ずしも改善されわけではありません.戦争は,人間の野獣性を利用します.現実にあった訓練と厳格な規律が無ければ,軍による支配は常に市民を脅かします.

Immanuel Wallersteinは,イスラエルが国家として存続できた理由を考えます.それは,軍事的な優位と大国による支援,でした.しかしそれは,今後,いつまで続くのか? ソ連,フランス,アメリカと,イスラエルを支援する国は代わりました.フランスがアルジェリアで疲弊したように,今,アメリカはイラクと中東から手を引きたがっています.イスラエルが生き延びるとしたら,ハマスやヒズボラと協力し,パレスチナ人を守ることによってであろう,と.


Warren Christopher A Time To Act WP Friday, July 28, 2006; A25

MAUREEN DOWD Fetch, Heel, Stall NYT July 29, 2006

A Right Way to Help Israel NYT July 29, 2006

Brent Scowcroft Beyond Lebanon WP Sunday, July 30, 2006; B07

Jimmy Carter Stop the Band-Aid Treatment WP Tuesday, August 1, 2006; A17

John Hughes Disarming Hizbullah is key to Lebanon's peace CSM August 02, 2006 edition

David S. Broder Doubling Two Bad Bets? WP Thursday, August 3, 2006; A27

(コメント) アメリカの政治家や外交官が,アメリカの外交に期待するのは当然です.しかしライス国務長官は何度も介入を拒み,イスラエルの行動を容認し,さらに和平の条件を極めて難しいものにして,事実上,戦争状態が続くことを承認したわけです.

Warren Christopherは,その基本姿勢を批判します.日々,民間人にも死傷者が増え,レバノンの社会インフラは破壊され,脆弱な民主主義システムが解体しつつあるのです.最優先目標は,双方の殺害を止めることです.19936月と19964月に,同じような戦闘にいたったイスラエルを止めることに成功しました.その際,アメリカがシリアを仲介して,また,フランスを含む複数国の関与により,武装グループのイスラエルへの殺傷行為を抑制することができたのです.

軍事攻撃がテロリストの反撃を抑えるものではないと気づけば,イスラエルは和平と抑制を求めて交渉を模索します.その際,アメリカの言葉だけをイスラエルは信用するでしょう.他方,ヒズボラの指導者たちを説得するのはシリアを動かす必要があります.和平が遅れれば遅れるほど,レバノンに限らず,イスラエルへの反感は深まるでしょう.

おおっと,またやった.ワシントンで会談したブッシュ大統領とブレア首相は,マイクロフォンの電源を切り忘れて,私的な会話が世界に流れてしまったぞ・・・!? というMAUREEN DOWDの政治風刺です.

NYTは,ブレアがブッシュに求めたように,イスラエルによるレバノンへの空爆をやめさせて,即時停戦を求め,NATOでも国連軍でも派遣して先頭集団を分離するべきだ,と考えます.

Brent Scowcroftは,根本的な解決策に必要な要素は既に2000年のクリントン大統領による仲介によって示された,と考えます.1967年の境界線に戻す.パレスチナ人は帰還の権利を放棄し,イスラエルは請願から撤退する.相互の国家を承認する.エルサレムは両国の首都として共有する.など.

もし根本的な和平が成立すれば,それはパレスチナ問題だけでなく,中東世界そのものを大きくかえるでしょう.各国の政治家たちは,もはや中東紛争を言い訳にできず,制度の近代化や市場改革によって成長を競い合うのです.これまで破壊されてきた莫大な資本と人材が,人々の暮らしを改善することに注がれます.

多数派は和平を望んでいるのに,戦闘の激化によって強硬派が政治を支配しています.だからこそ国際社会の支援と,大国や国連の介入が重要です.イラクでも,レバノンでも,他方の勝利を絶対に認めない,という集団が土地・権力を奪い合う限り,戦闘は終わりません.


The Guardian Friday July 28, 2006

Lessons for Beijing emerge from the Dickensian smog

Tristram Hunt

July 31 (Bloomberg)

China's Lack of Monetary Policy Is a Liability

Andy Mukherjee

(コメント) イギリスの町が黒いのはなぜか? それは産業革命の時代に石炭で暖房し,真っ黒な煙がレンガや石畳を染めたからです.現代でも,改築する際に,わざわざ黒く塗ることがある,と聞きました.

急速な都市化と工業化によってヴィクトリア期のイギリスが発展したように,今日中国の漆黒の工業都市が誕生していることは驚くまでもないでしょう.それでは,経済発展によって中国からも人間と自然を苛む破壊的な影響は取り除かれつつあるでしょうか? Tristram Huntはそれを心配します.イギリスの改革を指導したように,宗教勢力や新興政治家・官僚,市民社会を代表するメディアなどが,中国では同様の役割を果たせないのではないか?

世界大4位の中国経済が,金融政策もないのに,年11.3%という途方も無い成長率を実現し,しかもインフレを懸念するような危機にも至らないのか? 金融システムのハード・ランディングや資本逃避は起きないのか? Goodfriend and Prasadは,中国が独立した金融政策を効果的に使うよう求めています.


The Guardian Friday July 28, 2006

Poor thinking on trade

Liz Stuart

The American Prospect 07.31.06

Doha's Death

By Robert Kuttner

(コメント) 自由貿易体制はどうなるのか!? と悲観する声が強いですが,そう思わない者もいます.パラグアイを次の韓国にしたい.バマコ(アフリカの都市)を次のバンガロールにしたい.そのためには,1.裕福な諸国の農業補助金を認め,貧しい国には被害を補償する基金を用意する.2.EPA(Economic Partnership Agreements)により地域経済圏を作る.そこでは貧しい国からの輸入を完全に免税とする.さらに自由化交渉でも,3.貧しい諸国のグループが貿易交渉で優位を得ること,です.

世界中で企業の進出を容易にするだけでなく,世界中で労働者に公正な報酬を与えよ.異なる開発戦略を認め,知的所有権で技術の修得を妨げるな.貧しい人々を切り捨てるな.そして,アメリカの巨額の経常赤字は,自由な貿易だけでは十分でないことを示している.・・・


NYT July 28, 2006

Chicago’s Message

FT July 29 2006

Back to economics

(コメント) アメリカでは低賃金が裁判所でも争われるようです.シカゴの裁判所は,生活費用や市民の関心を反映して,大型小売店に賃金引き上げを命じました.

他方,G8が集まっても,ドーハ・ラウンドを推進する意志はなく,イスラエルのレバノン侵攻を止めるわけでもありません.ドイツのメルケル首相は,こうしたG8の役割を最初の目的に戻すよう求めました.1975年から始まったG7は,マクロ政策の協調,国際収支の不均衡,為替レートの安定化などを主要な議題としていました.1980年代にはプラザ合意やルーブル合意を実現したのです.

しかし,冷戦終結後のG7にはエリツィンのロシアを安定化するためG8に拡大され,さまざまな政治問題が取り上げられました.メルケル女史は,アメリカの経常収支赤字が世界の貿易や投資に大きなかく乱をもたらし,ドイツ経済が影響されることを心配します.同時に,G8の議題や参加国が拡大して,たとえば中国を追加することに反対します.


Robert Madsen Japan must curb the backlash against reform FT August 1 2006

William Pesek Why Isn't Japan Flying High? Ask Japan Airlines Aug. 1 (Bloomberg)

William Pesek Barbarians Aren't at Japan's Gate, But Inside Aug. 4 (Bloomberg)

(コメント) 日本経済の改革は成功した,という賞賛の声は聞かれません.

日本の停滞は,有効需要が不足していることでした.政府と日銀は,構造改革とマクロ政策の関係について対立し続けました.需要の刺激には,累積国債や銀行の不良債権を前提すれば,民間投資を刺激することに重点を移さねばなりませんでした.その際,竹中=ホリエモン=村上ファンド=福井日銀・・・の資本市場・自由化モデルが,伝統的な自民党の政治基盤と齟齬を生じてきたのは確かです.小泉劇場政治の終幕は,こうして改革の逆流に呑み込まれる情勢となりました.財政再建を一層の構造改革によって成長率を高めることで実現するべきだ,と考えるFTは,改革の不足と逆転を嘆きます.

その様子をアメリカの投資家が見れば,日本の資本市場が活発に経済活動を再編している,とは言えない状態でしょう.


FT August 1 2006

Europe has to face threat of US trade deficit

By Martin Feldstein

(コメント) 国際収支における不均衡を放置して省みない意見と,それを計画的に,少なくとも急激な逆転や不況を回避して,協調によって調整する政策を支持する意見とが,時代を追って交代します.それをアメリカの身勝手と見るか,世界経済の市場型統治と見るか,対立した評価は避けられません.

ヨーロッパから見れば,世界の不均衡はアメリカとアジアに責任があります.それゆえ,その調整コストはヨーロッパが担うものではないわけです.しかもヨーロッパには,ECBや財政政策を動かして調整コストを吸収する余地がありません.

・・・それはかなわぬ願いだ,とMartin Feldsteinは釘を刺します.アメリカは赤字を解消する過程でドル安を生じ,ユーロ高とEUへの輸出増をもたらすでしょう.最も回避するべきは,EU諸国が個々に保護措置へと向かうことです.

それを回避するためには,WTOを強化し,自由化交渉を進めるだけでなく,ECBが金融緩和を行うべきだ,とFeldsteinは主張します.ところが,調整過程は各国で異なり,不況になって財政赤字を出す国が現れます.金融政策と財政政策の責任がEUと各国に分解している現状では,安定化協定も加わって,調整過程を円滑に維持できないだろう,とFeldsteinは警告します.このことは,EU規模の財政基盤や財政政策の調整,財源移転を必要としています.

アメリカの不況やドル安が,これまでも,ヨーロッパ通貨危機の引き金でした.今度も?


FT July 31 2006

Migrants mean money

The Taipei Times, 1 August 2006

Migration Laws May Be the End of Globalization

Branko Milanovic

(コメント) 移民が増えても住民から雇用を奪うことはないし,賃金を下げているとも言えません.むしろ移民が増える国は成長している国です.しかし,移民を支持する側も,反対する側も,その結論を変えません.労働市場や年金制度にはプラスの影響があり,他方,社会インフラや住宅にはマイナスの影響がありそうです.しかし,移民のもっとも大きな貢献は,その社会にダイナミズムをもたらすことです.

Branko Milanovicは,今回のグローバリゼーションが移民規制の強化によって停滞に向かうだろう,と予想します.なぜなら貿易や投資,企業による技術移転のもたらす所得の国境をはさんだ不平等は,国際的な移民を増やします.それにもかかわらず,豊かな諸国の政治家が移民を規制する法律を競って作るからです.それは世界の貧しい人々をグローバリゼーションから離反させ,非合法移民や人身売買が広まり,犯罪組織やテロの温床となります.


Beginning of the End in Cuba NYT August 2, 2006

Engaging Cuba FT August 2 2006

Jim McGovern Transition to nowhere BG August 3, 2006

Bidding Fidel Farewell LAT August 3, 2006

(コメント) 79歳のフィデル・カストロが死ぬとき,キューバの社会主義も終わるのでしょうか? ゲバラ,アラファト,ホー・チ・ミン,毛沢東,金日成,・・・? 彼らを評価するのは歴史家の仕事です.マイアミでは早くもそれを祝う亡命キューバ人たちの集会があるようです.おそらくキューバの将来にとって,アメリカのラテン・アメリカに対する姿勢が,もっとも重要です.

カストロ後のキューバは,独裁体制を排して,民主的で高度な知識や熟練を駆使したダイナミックな経済を構築できるでしょうか? あるいは,その弟が権力を継承するだけで,大規模な難民の流入がマイアミで起きるのでしょうか? アメリカ政府は,キューバの経済改革と中産階級の台頭を支援するために,経済封鎖を緩和し,むしろ積極的な支援に向かうべきときだ,と主張されます.


IHT THURSDAY, AUGUST 3, 2006

The case for a global currency

Robert H. Wade

(コメント) 「アメリカが自国の利益を一方的に主張することに対して世界中で反対の声が上がっている.しかし,アメリカをもっと責任ある国にするためには,世界経済が現在のドル本位制から世界通貨に移行する必要がある,と理解している者は少ない.

アメリカの支配は軍事的優位と経済の規模や生産性だけでなく,ほとんどの国際取引がドルによって行われているという事実,そして世界の外貨準備の60%以上が,アメリカの短期国債のようなドル資産でアメリカに保有されているという事実にも依存している.

世界にとって問題であるのは,こうしたドル本位制がアメリカにいいかげんな金融・財政政策を取らせることである.」

そこでRobert H. Wadeは考えます.一国が通貨を過剰に発行しても,インフレや金融危機は自国で発生するだけだ.しかし,アメリカのように自国通貨を国際的に利用させると,過剰発行されたドルを外国が保有し,インフレや通貨危機も波及する,と.1990年代には資本自由化によって資源を効率的に利用することで成長を加速できる,と宣伝していたアメリカ政府が,資本流入やアメリカ企業に新興市場を依存させ,また,危機の際に資産の売却を強いた,と.

問題の根本には,アメリカの帝国主義的行動より,ドルの国際通貨としての利用がある,とWadeは主張します.金本位制と同じくらい通貨の過剰発行に依拠した放漫財政を規制し,同時に,金本位制より不況の回避には厳格でない制度が望まれます.

それをGCU(世界通貨単位)と呼び,主要国のインフレ調整したGDPに依拠して発行します.各企業や政府はGCU建の債券を発行しても良いし,自国通貨に依拠したまま,国際取引にはGCUで清算同盟を介しても良い.その場合,為替レートは将来の期待ではなく,コストの国際比較によって決める.

ACU(アジア通貨単位)のような提案もあるけれど,それだけではアメリカの行動は変わりません.Wadeは,世界通貨が必要だ,と考えます.

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The Economist, July 22nd 2006

The accidental war

Crisis in the Middle East: Ending will be harder

Japan’s economy: Free at last

Japanese diplomacy: Assertiveness training

Japan’s economy: Time to arise from the great slump

(コメント) 何度も見た戦争の光景ですが,それは新しい戦争です.国境も,軍隊も,国家も,勝利と敗北さえ曖昧な戦争です.破壊された都市の光景に圧倒されます.イスラエルは,既に戦争の形態を適用させてきました.しかし,双方の強硬派は戦闘を止めるつもりがないのです.日本が国連決議を主導した,という成果も,積極的な主張より,限定的な,条件付の成功という評価に落ち着きそうです.

日本に関する特集記事は,歯切れが悪く,運ぶには大き過ぎたクジラの腐った死体をやむなく解体する作業を遠くで眺める,といった風情です.官僚,政治家,銀行,企業,すべてが時間による回復を待つだけで,失敗を認めたがらなかった.記事が強調する点は,失われた繁栄の途方も無い大きさ,です.世界第二の経済国家が,なぜこれほど再生に時間を浪費したのか? なぜ政府も日銀も,政策を失敗し続けたのか? 漸く訪れた「正常化」や景気回復は,本物だろうか? 多分,今度こそは・・・


The Economist, July 22nd 2006

The baby-boomers retire: Of gambling, grannies and good sense

(コメント) アメリカのベビー・ブーマー世代が引退したら何が起きるか? 資本市場,社会保障制度,住宅市場,・・・ しかし,この記事は高齢者の新しい職場と消費を,老人たちの強烈な政治組織を,ラスベガスの繁栄を紹介します.さすがにこれが,アメリカの老人パワー,なのか? ・・・信じられない,というべきか?