IPEの果樹園2005

今週のReview

11/7-11/12

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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IPE方法論 :ユートピア

安全保障 :アメリカ兵の死者2000,大統領への制限

貿易・投資 :ウォルマート,貿易自由化,インド・中国貿易企業の適正規模

通貨・金融 :バーナンキ,不均衡と調整

世界統治 :バーミンガムの暴動EUの調整基金,知的所有権

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, JTJapan Times, CSMChristian Science Monitor


The Guardian, Wednesday October 26, 2005

This conflict has been 30 years in the making

Gus John

FT October 28 2005

A bad sense of community

By Christopher Caldwell

The Observer Sunday October 30, 2005

Politics of the ghetto

Nick Cohen

BG November 2, 2005

Educating immigrants

NYT November 3, 2005

Yes, Immigration May Lift Wages

By VIRGINIA POSTREL

(コメント) イギリス,バーミンガムの最貧地区Handsworth-Lozellsでは,1985年に暴動が起き,放火された郵便局で二人の死者が出ました.今は,人種問題として,若者たちのギャング抗争やレイプ事件が起きています.

アフリカ・カリブ系のコミュニティーとアジア系のコミュニティーが敵対しています.政府が整備したコミュニティーのためのファンドも,互いの敵対関係を緩和する形で運営できていないようです.黒人の若者は,多くの商店や工場がアジア系の移民によって経営される一方で,彼らが黒人に雇用を提供しないという不満を強めていました.同時に,地方議会もエスニック・グループの指導者と話し合うだけで,彼らの支配を強めてしまい,逆に,彼らの組織に反発する若者をさらに離反させました.若者たちは,しばしば人種的な偏見と暴力犯罪に手を染め,ギャング団を組織して,互いに抗争を繰り返しました.住民たちもまた,問題が起きると,警察よりも彼らに頼ったのです.

Lozells 17歳のパキスタン人青年に,14歳の黒人少女がレイプされた,という話に,捜査が進む前から,エスニック・ラジオやウェブサイトが話を広め,襲撃のために商店に武器を持った若者たちが集まりだした,と言います.Christopher Caldwellは,イギリスが公式に主張してきた「コミュニティー育成型の多文化社会」「社会的結束」という移民の受け入れ姿勢は,まったく機能しないことが露呈した,と主張します.

人種間の対話は促されてきましたが,エスニック集団が武器を持って集まるのを止めることはできませんでした.イギリス型の自由主義,コミュニティー尊重ではなく,アメリカのように,「積極的な是正策affirmative actions」を法律によって強制するしかない,という考え方に向かうかもしれません.

1985年の'Handsworth riots'は人種暴動ではなかった,とNick Cohenは書きます.それは失業や貧困で社会の底辺から抜け出せない黒人たちが示した怒りでした.それは「暴動」ではなく「反抗(抗議)」であった,と報告書でHerman Ouseley and Keith Vazは書いています.イギリス社会の労働をもたらさない強制収容所,黒人下層階級としての抑圧,見えないアパルトヘイトに対して,彼らは抗議しました.

Nick Cohenは,今回の暴動が示すまったく異なる性格に注目します.もはや対立は黒人と白人との間ではなく,警察も関わりません.Warren Gが果たしたラジオ局や,聖職者と信者の集まり,さまざまな偏見が増幅される過程を指摘します.「見知らぬ者への人種的な憎しみは,繁栄する者への階級的な憎しみ,異教徒への宗教的な憎しみと結びついて,強められた.」 それはヨーロッパにおける新しい反ユダヤ主義です.

グローバリゼーションは,こうした憎しみを世界中で強めています.ミロシェビッチがクロアチア人にやったように,東南アジアではしばしば華僑の商店が襲われ,ジンバブエや南アフリカの白人農場が襲われ,ラテン・アメリカではスペイン系の白い連中,ロシアのユダヤ人,ナイジェリアのイボ族,そして世界中でアメリカ人が襲われます.人々は互いにゲットーの壁をレンガで積み上げています.

アメリカではどうか? 移民の家族は,子供たちにも高等教育の機会を平等に与えて欲しい,と要求しています.またVIRGINIA POSTRELは,移民労働者の流入が雇用を奪うより,アメリカ人労働者の賃金水準を引き上げた,と示しています.1990年から2000年までに,アメリカの労働人口は約900万人(8%)増えたが,それは移民労働者の増加で投資が増え,また,新しく高賃金の職場も増えたからです.


John Mueller 2,000 dead -- will it doom the war? LAT October 26, 2005

BOB HERBERT Driving Blind as the Deaths Pile Up NYT October 27, 2005

VICTOR DAVIS HANSON 2,000 Dead, in Context NYT October 27, 2005

ROSA BROOKS The 2,000 dead aren't the only victims LAT October 29, 2005

(コメント) イラクにおけるアメリカ兵の死者が2,000人を超えました.大統領は説明しなければなりません.彼らは何のために死んだのか?

支持率で見れば,イラク戦争の死者2000人はベトナム戦争の死者2万人よりも深刻なダメージを与えています.また,その後の各地におけるテロも,ブッシュ政権の支持率を回復させることは無かったのです.もし本当の価値の二倍で最初に車を買わされたことを知ったら,たとえその車を気に入っていたとしても,前ほど嬉しくはならないでしょう.

大統領や副大統領の側近が絡む情報漏えいや偽証スキャンダルは,2000名の若者が何のために死んだのか,ますます国民の不信感を高めます.彼ら一人ひとりと家族の思い出を紹介する記事に,ブッシュ政権は何か答えられるでしょうか? ましてや,3万人とも言われるイラク人の死者,その多くの子供たちに対して?

83歳になったニクソン政権の元国防長官Melvin Lairdでさえ,ブッシュ大統領は明確な脱出策を考えておくべきだ,とForeign Affairsで主張しました.

Valletta, Maltaは,歴史的に比較します.独立戦争,南北戦争,冷戦.沖縄戦では5万人以上のアメリカ兵が死亡しました.イラクと比べて,アメリカは17倍の死者を朝鮮半島で,29倍の死者をベトナムで出しました.どちらの場合も,共産主義の北を倒して民主化することには失敗しています.そして,もし4年目に及ぶテロとの戦争を第二次世界大戦に比べるなら,その死者は40万人に及んだことを忘れてはいけない,と言います.

アメリカは軍事国家ではない.戦争は将軍や個人を英雄にする.しかし多くの大統領は,たとえ戦争に勝利しても,その地位を失った.多くの犠牲を払って硫黄島を征服したときと比べて,世論を導くマスコミの姿勢も変わった.情報通信技術の進歩は,戦場や犠牲者の苦しみを直ちにリアルな形で伝えて,国民感情を動かすようになった.将軍たちは,これまでも,装備の不十分な兵士を送り込んで敵に殺させた,と責任を問われてきた.今や,多くのアメリカ人は静かな郊外に居住し,85歳まで生きるのが当然だと思っている.2000人の若者が死んだことで,アメリカ社会は戦争を支持しなくなった.しかし,世界の多くの政治システムはもっと多くの死者に堪えられる.だから,アメリカは苦しむのだ,と.

ROSA BROOKSは書きます.「片腕を失った若者が,うつむいたまま,通りを歩いていた.私は車に乗り,後ろを走っていた.兵士の髪型,失った腕,硬く閉じた口元を私は見た.彼が楽しいことを考えているのではないと分かった.そのとき信号が変わり,私は車を進めてたち去った.」

数日後,BROOKSはまた片腕の青年が歩いているのを見ます.違う人でした.三度目に腕のない若者を見たとき,後ろの座席では娘がシャボン玉を吹いていました.そして母親に尋ねます.「ママ,どうしてあの人は片腕なの?」 そこには兵士の病院(the Walter Reed Army Medical Center)がありました.

ベトナム戦争の死者数に比べて,イラクはましだ,という意見をBROOKSは疑います.当時も死者が2000名に達したのは5年経って戦争が激化したときでした.当時と比べて現代の医療技術は進歩しています.かつて死亡したような怪我でも,今では命を取り留める.それは良いニュースだが,戦死者の数で戦争のコストを測ってはならない,と.

彼は,娘に答える適当な言葉を探します.たとえ答えたとしても,政府への疑問が残るのです.


WP Wednesday, October 26, 2005

Trouble in Wal-Mart's America

By Harold Meyerson

ウォルマートが動揺し始めたのか? この何週間か,アメリカ最大の企業,低賃金で,利潤もない,アメリカの新しい規範を広める要であったウォルマートが,驚くべき方針転換を発表した.H. Lee Scottが,ますます汚される企業イメージを払拭したい,というわけだ.

彼は,ウォルマートがもっと環境に配慮する,と言う.トラックの配送やパッケージにもっと配慮する.さらに,従業員の健康保険を利用しやすくする.海外のサプライヤーにも環境や健康,安全の管理を求める.そして,ウォルマートは連邦最低賃金を引き上げるロビー活動を始める,と言う.

この発言は偶然ではない.ウォルマートの無数のサプライヤーが行うひどい労働条件は苦汗工場として問題になっている.それはアメリカの労働者階級全体に影響する.北東部や西海岸で新店舗を開設するために,労働条件が精査され,労働組合や零細店,教会,リベラルな団体などが監視している.ウォルマートの株価は今年になって13%下落した.11月には,ウォルマートの内外における行動を酷評する映画"Wal-Mart: The High Cost of Low Price"が公開される.

130万人のアメリカ国内の従業員に対して,わずか44%しか健康保険がない.環境や労働現場の条件に配慮する,と言うが,海外のサプライヤーには疑問が多い.ウォルマートは中国に3000の工場を持つが,それは賃金がどこよりも安いからだ.ウォルマートは中国から150億ドルの輸入を行い,アメリカ向けの中国輸出額の11%を占める.

Scottは,中国工場もアメリカの基準に従う,と言うが,どうやって中国を導くというのか? 記録の上では中国が環境や労働基準を満たしている,と主張できる.しかし,スターリンだってソビエト憲法の下で市民お自由を弾圧したのだ.ウォルマートが中国に工場を移転したのは,共産党国家が安全基準を重視するからではない.その反対に,安全基準の改善を求める労働者たちが中国では逮捕され,拷問さえ受けることを知っている.中国にウォルマートがあるのは,その不潔で貧しい,どうしようもなくずさんな労働基準と,労働者の権利に対する共産党政府の全体主義的な抑圧とが,共生関係を形成してきたからだ.

Scottの約束が重要であるとしたら,それは連邦最低賃金引き上げという主張だ.ウォルマートは自分で作り出した問題に直面している.低所得の常連客に商品を売りつけるのであるから,ウォルマートの収益はアメリカ労働者階級の最底辺の富とともに変動する,ということだ.それは悲観的なものだろう.石油価格の上昇,製造業の衰退,この何年もアメリカの家族は所得の中央値を下げている.1997年以来,連邦最低賃金は引き上げられず,ウォルマートがそれを決めてきた.

ウォルマートは労働者に賃金を引き上げても良かったはずだが,それを拒んできた.今,連邦政府が,狂信的なウォルマートの作った低賃金・低消費経済の問題解決を助けるわけだ.なぜなら,ウォルマート型のアメリカでは,ウォルマートでさえも繁栄できないのだから.

NYT November 1, 2005

A New Weapon for Wal-Mart: A War Room

By MICHAEL BARBARO

(コメント) 映画や市民団体のウェブに対抗して,ウォルマートは中産階級の消費者が強く影響を受ける企業イメージを防衛するために,レーガン政権とクリントン政権の幹部からそれぞれメディア担当者を雇い入れた,ということです.他方,Wakeup Wal-Martはハワード・ディーンの元政治顧問が指導しています.


Ian Bremmer White House crisis is just beginning FT October 27 2005

DAVID BROOKS Patching the Presidency NYT October 27, 2005

Anne-Marie Slaughter Degrading our soldiers and ourselves IHT THURSDAY, OCTOBER 27, 2005

Scot Lehigh A heap of trouble for George Bush BG October 28, 2005

President Bush and the Hall of Shame FT October 29 2005

Robert Kuttner Bush's imploding presidency BG October 29, 2005

Kenneth M. Duberstein Breaking the second-term curse LAT October 29, 2005

What Have We Learned? NYT Oct. 30, 2005

Robert Kuttner Bush Just Doesn't Learn The American Prospect 10.31.05

Scot Lehigh Can Bush change? BG November 1, 2005

KENNETH M. DUBERSTEIN Reagan's Second-Half Comeback NYT November 2, 2005

Sidney Blumenthal Inside the bunker The Guardian Thursday November 3, 2005

(コメント) 今回のブッシュ政権に関する元CIA工作員Plameの情報漏えいスキャンダルthe Plame investigationは,レーガン政権のイラン・コントラ事件や,クリントンの弾劾裁判と,三つの点で異なる,とFTは指摘します.@捜査が現在進行中の軍事行動に深く関わっている.Aアメリカは1987年,1998年よりも,国際的な軍事紛争に深く関わっている.Bブッシュ政権の国内支持率が低い.政府は共和党内からも支持を得にくくなっている.

最高裁判事の指名失敗や,カール・ローブとキリスト教右派との関係など,ブッシュ政権は完全な政治混乱をもたらす前兆を示している,とFTは警告します.

法に従うことで,アメリカ人は,大統領もその兵士たちも,一つの文明を代表しているはずでした.しかし,ブッシュ氏はどうか? 世界を邪悪と文明に分け,自ら法を無視して,恥じるところがない,とAnne-Marie Slaughterは批判します

DAVID BROOKSは考えます.レーガン政権も二期目のイラン・コントラ事件で崩壊の危機がありました.政権外部から人を入れて,レーガンと個人的に何度も話し合い,大統領は責任を認めて調査の開始と改善策を国民に訴えます.その演説の直後から,支持は回復しました.レーガンはジェイムズ・ベーカーを外交に用いて,アメリカの歴史的な課題に取り組み,ゴルバチョフとともにベルリンの壁を倒し,冷戦を終わらせた栄誉を受けたのです.

アメリカ大統領の激務は,次第に現実から遊離した感覚に染まり,人々の賞賛と権力の濫用によって崩壊に近づく,と言います.ブッシュ政権も,この心理的なサイクルから自由ではありません.ブッシュ氏は危機を乗り切り,対中関係,財政健全化,イラク再建,など,アメリカの歴史的課題に取り組めるでしょうか? ・・・そして,小泉政権も.

Scot LehighRobert Kuttnerは,無理だろう,と.


The Guardian, Thursday October 27, 2005

The loss of utopia

Dylan Evans

プラトン以来,西洋の思想家は理想社会を夢想し,完全には実現できないけれど,少なくともわれわれを勇気付ける,いつか社会はこうなるだろうという,高貴な,美しいビジョンを,ユートピアとして示してきた.トマス・モア,カンパネラ,フランシス・ベーコン,マルクス,すべて将来の夢を描いて,そこで働き,賢明かつ創造的な形で余暇を楽しむ,強い意味でのコミュニティーを示したのだ.21世紀の幕開けにおいて,この理想主義という長い伝統が失われてしまった.われわれには,消費万能論を強化するという惨めなビジョンしかない.

想像力を欠いたリアリズムなど,まったく幻滅させるものでしかない.西洋の暮らしを見るがよい.ますます分断されたコミュニティーの中でわれわれは育つ.隣の人ともほとんど話さない.自分で自動車の中に体を押し込み,職場に向かう.決まりきった事務的な仕事をこなし,帰りにスーパーマーケットへ寄って,何の風味もない,流れ作業でできた食料品を買う.惨めな貧民もいないし,飢餓も戦争もない.しかし,そこには情熱も喜びもないのだ.史上空前の富を得ていながら,ますます多くの人々が抑鬱に苦しむ.

主要政党はどれも現行のシステムを認め,同じような細部の改革を唱える.彼らの唯一の目標とは,同じものをより多く,ただほんの少しだけ,より安く.そこには大きな構想など存在しない.

理想主義の欠如は,イスラム過激派が西洋社会を心から嫌う原因となっている.ジョージ・ブッシュは民主主義を中東に輸出する,と主張したが,彼は自由民主主義そのものが損なわれた,生気を欠いたアイデアでしかないと知るべきだ.もし西洋がもっと精神を鼓舞する理想を示そうと思うなら,われわれはもっとプラトンやモア,マルクスのユートピアから学ぶべきだ.どのようにして仕事に報いるべきか? どのようにして余暇を増やすべきか? そして,どのようにしてコミュニティーをより友好的なものにできるか?


NYT October 27, 2005

Cow Politics

IHT FRIDAY, OCTOBER 28, 2005

Europe's final offer

By Peter Mandelson

NYT October 29, 2005

New Offer by Europe on Trade Is Assailed

By DAN BILEFSKY and EDMUND L. ANDREWS

FT October 31 2005

Doha failure harms Asia most

By Guy de Jonquieres

FT November 1 2005

If trade liberalisation fails

By Martin Wolf

(コメント) オーストラリアの通商大臣Mark Vaileは,EUの牛は一日2.20ドルの補助金を受け取っており,世界の12億人がそれ以下の所得で暮らしている,と批判しました.さらに世界の裕福な諸国は,一日10億ドルの補助金を与えて農産物を過剰に生産させ,それを世界市場に供給して価格の下落を招いています.過剰農産物は貧しい諸国に流れ込み,農民たちの生活を脅かします.それでも交渉では「自由で公正な貿易」といったリップ・サービスが繰り返されています.

香港まで45日しかない,という時点で,EU通商代表のPeter Mandelsonは主張します.EUは農産物に対する関税を大幅に(46%)引き下げる,と.さらに,免除されている項目を減らすように交渉する,と言います.他方で,EUは農民の生活にも責任を負っているから,アメリカが示したような自由化をいい気に進めることには反対します.また,そのような自由化は,カリブ海やアフリカの諸国にとって破滅的なものとなります.発展途上諸国の輸出品は農産物に限られず,むしろ工業製品です.それゆえ,暗に,アメリカやオーストラリアが農産物自由化をWTOの争点にする姿勢を批判します.バランスを踏まえた,漸進的な自由化交渉が重要だ,と.

それは交渉決裂に向けた政治的紛糾を意味するのでしょうか? Guy de Jonquieresは,EUだけでなく,中国やアジアの自由化を重視します.交渉決裂を予想して,アジアでは急速に二国間協定が増えています.こうした特恵協定はなかなか廃止されません.国際的ルールや制度が軽視されるなら,結局,相互の不信感が強まるでしょう.

WTOの自由化交渉は,アメリカ政府が貿易に関する一括承認手続きを議会から認められた期限を越えることはできません.国際機関を通じた合意形成によって,貿易自由化を行うルールを実現することは重要です.中でも農産物の自由化は,それが世界の貧困を減らし,発展途上諸国の貿易を増やす点で,また,補助金の大部分がここに集中しているという事実によって,交渉の焦点となるわけです.Martin Wolfは,@何よりも香港で合意を得ること,A世界貿易で重要な役割を果たしている,いくつかの発展途上諸国が,三つの主要分野(農産物・非農産物・サービス)について条件を示すこと,B小国が合意に参加してもその施行を免除されること,を提案しています.

IHT TUESDAY, NOVEMBER 1, 2005

Europe's self-sabotage on trade

Philip Bowring

The Asian Age, 4 November 2005

Fate of the Farmers in Balance

- By Edward Gresser

WP Thursday, November 3, 2005

French Monkey Business

FT November 3 2005

Bilateral deals destroy global trade

By Victor Fung

(コメント) EUは,その政治的な硬直性によって,国際交渉に十分な役割を果たせないのでしょうか? 日本や韓国の態度は言うまでもなく.フランスのシラク大統領のように,自由化に合意するなら,EUやWTOを解体することも辞さない?

Victor Fungは,アジアの二国間協定を批判します.それは,現代の世界的な生産システムを破壊する危険がある,と.「多角主義は価値を生み出すが,二国間主義はそれを破壊する.」


NYT October 28, 2005

Bernanke and the Bubble

By PAUL KRUGMAN

(コメント) PAUL KRUGMANは,ブッシュ政権がバーナンキを議長候補に指名した意図を疑います.彼は金融政策の専門家で,共和党員ではあるが政治的ではないし,ブッシュ政権が好む市場の自由放任や右派のサプライサイダーとまったく反対の意見を持っているからです.ブッシュ一族との繋がりが何もない.他の人事(クローニズム)と余りに違うのではないか?

ブッシュ大統領が余りにも弱り果てて,まともな人事をしたのである,と考えておこう.しかし,バーナンキの指名とアメリカ経済の将来とは別である,と.アメリカの景気を支えてきたものとは,住宅価格の上昇と,アジアからの資本流入です.不幸にして,彼の力によっても,アメリカ経済の不安定化を救うことなどできないだろう・・・

FT October 30 2005

Crisis-management skills will be needed at the Fed

By Jeffrey Garten

ブッシュ大統領がベン・バーナンキを議長候補に指名したことはとても良かった.ひときわ優れた経済学者にして,連銀の理事でもあった,独立した思想家である.しかし,彼には金融市場の経験が浅い.最も必要とされる世界的な知識と国際的な外交術を,彼は示せるだろうか?

ポール・ボルカーもアラン・グリーンスパンも,各国の市場を結ぶ世界的な資本移動が爆発的に増大し,ハイテク金融手段が途方もなく増加する時期に,議長を務めた.たとえば,今や,外国為替市場の一日の取引は2兆ドルに及び,わずか5年前に比べても倍増した.金融デリバティブの取引額は1990年代には無いに等しかったが,1兆ドルを超えている.ヨーロッパも株式市場の資本発行額はその40-50%が外国投資家に支配されており,アメリカは毎日約20億ドルを海外から借りている.

バーナンキはさらに国際化する市場で仕事をすることになる.過去には,アメリカの金融的相互依存が工業化された諸国との関係に限られていた.しかし今後の10年には,アメリカと中国,インド,ブラジル,韓国との金融関係が最もダイナミックに変化する.

新興市場のパワーが増大して,製品やサービスをどこで生産するかも変化し,貿易や金融のパターンに基本的な変化が生じる.これらの国では数十億もの新しい労働者が世界経済に参加し,世界の成長とインフレのバランスを変えるのだ.こうした展開がアメリカや世界の金利に決定的な意味を持ち,ドルやその他の通貨の価値を変える.

ヨーロッパ,日本,そしてアメリカでも,高齢化する人口は世界の貯蓄と投資に実質的な影響を及ぼすから,資本移動も変える.さらに,エネルギーから電子部品まで,地球の果てまで広がった供給の連鎖が,今,次第に明らかになりつつあるような,新しい経済的脆弱性を創り出す.

バーナンキが直面する最大の危機とは,強烈な世界的危機であるだろう.ボルカーはメキシコ経済のメルト・ダウンを食い止め,円とドルの通貨摩擦を鎮めた.グリーンスパンは1987年の株価暴落,1990年代後半のアジア通貨危機,2001年のITバブル破綻,そして9・11を乗り切った.しかしボルカーには財務省とニューヨーク連銀における長い経歴があったし,グリーンスパンは企業や金融機関のコンサルタントであったし,ウォール街のインサイダーだった.バーナンキはさまざまな危機に直面するだろうが,国際的な危機管理の技能を求められるだろう.

また,この時期,どこでも指導力が不足しているが,次期議長には優れた外交手腕も必要とされるだろう.IMFが道に迷い,指導的な工業諸国によるG8が理想の無残な影でしかないときに,この多角的システムを指導しなければならない.

確かに,主要国の中央銀行には,アメリカの次期議長の責務を助けるという,緊密な協調の長い伝統がある.しかし興味深いのは,強化されたグローバリゼーションの中において,まだ,連銀が制度的な革新の開拓者となる必要があるかどうか,である.

アジアにおいて外貨準備と経済的パワーが蓄積されるなら,その時間帯の差を考えても,連銀がアジアに前線基地を築き,何よりも,中央銀行や投資家との人的交流を保てるだろうか? バーナンキが引退する約20年後に,彼は中国と日本,そしてヨーロッパの中央銀行総裁を招待して,最新の意見を交換し,アメリカが世界wどう観ているかについての彼らの理解を促しているだろうか?

こんなことを,今,聞けば,何とも幻を見ているようでしかないが,グリーンスパンが就任した1987年に,誰がユーロの誕生や日本の10年に及ぶ停滞,中国の世界進出を予想していたか?

バーナンキが厳しい試練を受けるのは確実だ.


NYT October 28, 2005

Green Dreams in Shangri-La

NYT November 2, 2005

China's Little Green Book

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) THOMAS L. FRIEDMANによる二つの論説です.テーマは,中国の成長と環境問題.

もし中国が環境問題を解決できたら,多くの発展途上国の重要なモデルを提供できます.もし解決できなければ,世界は悲観的な未来を避けられません.

チベットに展開される,理想郷「シャングリラ」を新しい名前にした,環境と共存するグリーン観光・開発モデルが紹介されています.もちろん,企業やNGOとの積極的な連携を組織できるかどうか,が鍵だとFRIEDMANは理解します.それは,言い古された環境ビジネス命題です.

既に北京の人々や政府も環境保護の重要性に気づき,今の中国では,まさに雨後の竹の子のように,環境ビジネスが誕生しています.私は,中国の環境ビジネスが先進工業諸国と異なる経過をたどれるようには思いません.しかし,FRIEDMANは,日本の環境技術と結びついた「グリーン・チャイナ」を,「レッド・チャイナ」以上に,アメリカにとっての脅威として重視したようです.


FT October 29 2005

What globalisation?

FT October 30 2005

Hell is EU talking globalisation

By Wolfgang Munchau

(コメント) EUの指導者たちは,共通農業政策とEU予算について,その意見対立を解決しなければなりません.グローバリゼーションで論争するのは,それからです.

ヨーロッパで最悪の状態,もしくは地獄,を表す旧いジョークがありました.「イギリスの食べ物と,ドイツの警察と,フランスの自動車」.しかし,あれからすべてが変わった,とWolfgang Munchauは書きます.今では地獄をEUで示せます.そこでは「25カ国の代表がテーブルに集まってグローバリゼーションを議論している.イギリスはR&Dについて,フランスは貿易問題を,ドイツは世界資本主義について話し始める.」・・・ なるほど,地獄だ.

ハンプトン・コートにおけるEUサミットを観たMunchauの二つの結論は,ヨーロッパの指導者たちは,グローバリゼーションをどう扱ったらよいのか,何も分かっていない.EUがこの問題を扱うのは間違いだ,というものです.ユーロ圏よりも世界単一通貨を採用して,各国が独自の生き残りを模索するほうが良い,と.


FT October 30 2005

Prepare now for a Sino-Indian trade boom

By Niraj Dawar

Nov. 2 (Bloomberg)

Open Border May Spur India-Pakistan Commerce

Andy Mukherjee

(コメント) インドと中国が貿易を拡大して成長を分かち合うとしたら,西側の覇権など顔色を失うことになります.

たとえば,繊維や鉄鋼だけでなく,情報・ハイテク産業や,自動車産業が,西側からすべて失われる? 市場に合わせて,世界の多国籍企業はその配置を大幅に変えることになります.中国を安価な工業製品の生産拠点として利用し,インドを安価な情報サービスの集積拠点として利用する欧米・日本の企業戦略は破綻するでしょう.中国企業が直接に価格競争でインドの消費者をつかむからです.また,インドのハイテク技術者と中国の生産工場が協力して,直接に世界市場向けの輸出を始めるでしょう.そして西側の多国籍企業は,高級品やブランドを重視した世界市場の分割戦略を進めるかもしれません.


NYT October 31, 2005

War Powers in the Age of Terror

By ANDREW J. BACEVICH

(コメント) Andrew J. Bacevichは,アメリカ憲法によれば,大統領は戦争を始める権利を持たない,と確認します.確かに,特に冷戦時代,ソ連の脅威を認識して,議会は大統領が軍事的に対応することを広く認めました.しかし,イスラム原理主義者によるテロとの戦いでは,軍事力の行使は慎重に行われるべきです.ジョンソン大統領がトンキン湾事件で軍事介入を正当化し,ニクソン大統領がカンボジアまで空爆を行ったような形で,9・11はブッシュ大統領にフセイン政権打倒を容認し,大きな経済的・政治的コストを払っています.アメリカの安全保障という見地からも,シリア,イランへの軍事力行使を大統領に認めてはなりません.ブッシュ・ドクトリン,特にテロを理由とした先制攻撃には,アメリカ議会が有権者を代表して判断しなければならない,とBACEVICHは主張します.


Oct. 31 (Bloomberg)

Toyota Trounces Detroit in a Million Little Ways

Doron Levin

Lex: Toyota FT October 30 2005

Lex: McDonald’s FT November 3 2005

(コメント) トヨタ,マクドナルド,・・・ 企業とは,大きければ大きい方が良いことなのでしょうか?

もちろんトヨタはアメリカの三大自動車会社よりも効率的な生産ラインを開拓し続けてきたわけでしょう.しかし,だからといって,企業はどこまで拡大するのが適当なのでしょうか? ・・・無限に? たとえば,マクドナルドやウォルマートが世界中に展開するように?

成功した企業は市場競争によって,他社に,破綻か「合理化」「改善」か,という圧力を及ぼします.しかし,巨大企業になればなるほど,生産コストは労使関係や地域社会にも影響を及ぼし,金融システムや政治までも動かします.しかし,企業の利潤追求が,社会や国家にまで「破綻か改善か?」という選択を迫るわけでしょうか?

FT November 1 2005

Simon London: Why size isn’t everything

By Simon London

「どこまで大きくなれば,企業は悪化するのか?」という疑問に,成長する企業の幹部たちが関心を持つはずだ.成功は企業を拡大する.しかし,企業の拡大は複雑さをもたらす.従業員が増え,生産ラインが増え,部門が増え,系列会社が増える.経営が複雑になれば,顧客に奉仕するという,本来のビジネスから関心がそれてしまう.

このジレンマを解決するには,企業を小さくするしかない,というのではない.今や,大企業はどの国でも自由に商品を生産し,販売している.そのような機会を生かすためには,世界的な規模で拡大することによる複雑さを管理する仕事が必要だ.一瞥するだけなら,大企業はそれに成功しているように見える.世界の大企業150社が,マッキンゼーの調査に拠れば,2003年に6000億ドルの利潤を上げた.それは上位2000社が上げた利潤の約半分に達し,1994年の38%から増大していた.

しかし,平均のデータは誤解をもたらす.詳細に見れば,多くの大企業は利潤を出すのに苦しんでいる.想像するよりは複雑でない企業が,莫大な利潤を上げている.たとえばマイクロソフトのように.年間収益が440億ドルで,その市場価値は2750億ドルに及ぶが,従業員はわずか6万人である(ウォルマートは130万人を雇用する).その利益は大部分がたった一つの商品,パソコンのOS,ウィンドウズだけから生まれる.

ビル・ゲイツは,複雑さを制御しつつ,新しい収益源を見出せるだろうか? それこそハイテク産業で最も熱い論争になっている.

マッキンゼーの数字では,わずか4社,GE,IBM,トヨタ,シティグループ,だけが20万人以上を雇用し,しかも一人当たり2万5000ドル以上の利潤を確実にもたらしている.この4大企業に共通するのは,物事を単純化することに全力を注ぐ点だ.戦略的な優先順位から外れた部門を切り捨てる.たとえばIBMは,自分で開拓したディスク・ドライブやパソコン分野から撤退した.また,労働の標準化を重視する.コンピューターが異なる部門のパフォーマンスを評価する.トヨタの有名な生産システムはその代表例であり,世界中で採用されている.

しかし彼らにも,極端な規模拡大や事業の分散化により問題が起きる.GMを抜いて世界最大の自動車会社になるであろうトヨタは,その品質に対する信頼性を維持することに挑まねばならない.IBMも,その利益を上げ続けられるか,市場は注目している.

それほどわずかしか巨大化と複雑さを確実な利益に結びつける企業が無いのであれば,多くの企業は小さなまま利益を上げるほうが良いのではないか? 原則的には,それが正しいだろう.しかし実際は,株式を市場で売買されている企業の場合,拡大するしか選択肢は無い.投資家たちは事業の拡大を求める.

個人企業であれば,ときには,もっと選択の余地がある.Small Giants誌は,拡大して失敗するよりも,小規模にとどまって好調を維持することを選択したアメリカの14社を紹介している.その一つ,Clif Bar 社の共同創設者であるGary Erickson氏は,登山家にして自転車乗りであるが,ビジネスとは雇用者一人当たりの利益とともに,コミュニティーを支援し,環境を守るものだ,と信じている.たった一人の所有者として,彼は会社の優先順位を決めることができる.

こうした開明的な投資家に恵まれる企業は少ない.しかしこの話は,ビジネスを健全に保つには拡大するしかない,という法則など無いことを思い出させてくれる.大企業は,より小さな競合企業よりも,しばしば病気の兆候(モラルの低下,顧客の不満,低利潤)を示している.非常に大きな組織が非常に良好であり続けるのは,例外であって法則ではない.


Black reputation FT October 31 2005

Lex: China’s railway FT October 31 2005

Philip Dodd In the grip of a very different cultural revolution FT October 31 2005

Nokia at 200 million Asia Times Online, Nov 1, 2005

John Gapper Chinese contradiction on capitalism FT November 2 2005

Keep China on track FT November 2 2005

(コメント) 中国に関するいろいろな記事です.その経済改革と外交方針には,日本以上に,高い関心と,さらに強い警戒,それゆえ期待があふれています.日本には・・・?


FT October 31 2005

The rising risk of a hard landing

By Stephen Roach

(コメント) 世界の不均衡を憂えることは「狼少年症候群」なのか? Stephen Roachは,安心する者をたしなめます.

不安をむしろ強めるべき理由として,1.赤字はアメリカに集中し,黒字は多くの国に分散してきた.つまり,交渉や協調政策による不均衡の維持と調整が難しくなった.2.カトリーナ・ショック以後,アメリカの貯蓄はさらに低下する.3.黒字国である日本とドイツの景気回復と投資が復活し,中国政府は国内消費の増大を促している.

理論は「調整」を求めているけれど,その引き金や具体的な過程がどうなるかは分かりません.歴史が示すように,不均衡を長引かせるほど,その調整は厳しいものになるわけです.


FT November 1 2005

Japanese reform at risk

JT Thursday, November 3, 2005

A sign of Japan's decline

By DAVID WALL

FT November 2 2005

Lex: Japanese yen

(コメント) FTは,小泉の改革を継ぐ者はいないのではないか? と,内閣改造や後継者論議に疑問を示します.タカ派の安倍晋三が次期首相となれば,中国との摩擦は強まるだろうが,改革を進めるとは思えない.つまり,小泉政権の負の遺産?

David Wallも,小泉首相の靖国参拝や内閣改造に,強い失望と危機感を示します.これは中国の副首相が日本訪問をキャンセルしたことに対する報復ではないか? 少なくとも,この人事が日本の対中姿勢を硬化させ,アジア諸国にも支持を失うことは避けられない.まったく愚かな選択である,と.

他方,景気回復が円安をもたらしていることに意外な印象を持ちました.日本に資本が流入しないのか? FTの記事は,日本からの投資や融資が漸く正常に行えるようになったのだ,と指摘しています.アメリカの金利引き上げに反応し始めたわけです.他方,日本の量的金融緩和がいつ終わるのか,円高を招くものであり,慎重な判断を求めています.


FT November 2 2005

Fund to protect threatened workers is good plan

By Loukas Tsoukalis

EUが改革のための有効な機関であるために,より強力な福祉領域を開拓する必要がある.急激な変化の時代に,新しい機会から利益を得る多くの人々がいる.しかしまた,新しい技術や激しい競争にその生活を脅かされる人々もいるのだ.経済の変化と再編成は,血を流さずには行えない.

乏しい経済成長と社会的苦悩,改革に向けた信頼できる政治対話の欠如が,いくつかのヨーロッパ諸国で悪循環を創り出した.変化についての不安が広がり,ヨーロッパ中に悲観論が満ちている.ますます多くの人々が自分を敗者であると考える.こうした人々こそがヨーロッパの統合を逆転させる.

欧州委員会は,この問題を解決するために,「グローバリゼーション調整基金」を創設するように提案した.最近では珍しいことだが,フランスとイギリスがこれを支持している.その目的は人々を守り,力づけることだ.余計になった労働者たちが移動し,新しいビジネスを起こし,新しい技能を得たり,教育や訓練を受けたりするのを助ける.だから,これは職場を保護することとまったく違う.すべての加盟国に開かれており,新しい官僚組織を必要としない.なぜなら既存の手段を使うだけだから.

もちろん,グローバリゼーションのせいで職を失った労働者だけを分離するのは難しい.ある程度,ヨーロッパ内部の競争や,他の原因が重なっている.選択基準を狭く取れば基金は重要でなくなるし,広すぎると基金が足りなくなる.

問題はいつも財源だ.委員会は年度予算を建てず,財源は必要なときに,EUの他の政策に与えられて使用されていない財源から利用するよう提言した.基金は,EU外への生産移転や,輸入との競争で生じた,重大な社会・経済的ショックに対する危機対応メカニズムのように機能する.最終権限は議会と閣僚会議が握り,EU予算に対する懸念を回避するように工夫されている.

その地域の失業者の比率とともに,部門・地域への集中,など,EUの介入を正当化するには,一定の限界が必要だ.資源は再訓練に充てられ,日々の生活費ではない.こうして委員会は,各国の福祉政策には関わらないようにした.

基金には多くのメリットがある.グローバリゼーションや経済再編成に苦しむ人々を気遣い,EUの機関は市場自由化にしか関心がない,という彼らの批判に答えなければならない.ヨーロッパ社会政策を,言葉だけでなく実際の支出によって裏付けることだ.それは変化を促し,貿易により大きな自由を許すのであり,変化に逆らうものではない.その政策手段は各国や国際的に既に実施されているから,集中と補完性をめぐる不毛な論争に関わらなくて良い.基金には重要な象徴的意味がある.しかしながら,解決すべき問題は現実に存在するのだ.

失敗した者に褒美をやるのか? 貴重な財源を無駄にする? いろいろな批判はあるだろうが,EUは既存の政策手段を革新しなければならない.それは困難な闘いであるが,やってみる価値はある.

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The Economist, October 22nd 2005

Russia and the Caucasus: Try being tender as well as tough

The International Criminal Court: Catching a Ugandan monster

Japanese stockmarkets: The last, best game

Economics focus: A foreign affairs

(コメント) コーカサスにロシア軍が介入し,その政治指導者たちを弾圧するより,プーチンは国連平和維持軍を要請してはどうか? 子供たちに肉親の血や肉まで食べさせたという,ウガンダの民兵指導者を捉えるために,国際刑事裁判所は役立つでしょうか?

日本の株式市場には既に外国投資家の資金が流入しており,むしろ日本人の動きに関心が向けられています.他方,アメリカのインフレは,グローバリゼーションの結果として,従来の国内要因から単純に導けなくなった,と言います.


A survey of patents and technology: A market for ideas

(コメント) 余り関心も無く読み始めましたが,非常に重要な記事でした.知的所有権や特許に関する対応が遅れている日本では,こうした新しい知識や技術の所有権とその交換,オープン・ソース化,売買,市場形成,などについて理解を深める必要があるでしょう.

ヴァーチャル世界にまで所有権を拡大し,ビル・ゲイツのような情報地主を増やしても仕方ないだろう,と思う一方で,革新を促し,それを普及させるために,さまざまなシステムが整備され,オープン化が知的共有地と革新的企業家の積極的な参入,インドや中国,世界中からの知的爆発を準備している,という予測に圧倒されます.