IPEの果樹園2004

今週のReview

3/8-3/13

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『たそがれ清兵衛』を観て,これを『ロード・オブ・ザ・リング』と比較することはできないな,と思いました.神話や魔法で話を作らなくても,日常の中に,ドラマチックなものが秘められています.藩命に従うしかない清兵衛は,労咳のため,16歳で骨と皮にやせ衰えて,亡くなった娘の遺骨をかじる男と切り合います.死闘の末,ようやく子供の元に帰り,幼馴染の女性とも一緒になれた,そんな清兵衛の幸せな生活がわずか3年しか続かず,官軍の鉄砲で殺されてしまうのであれば,どのような魔法も虚しいと思います.

人間は,もちろん,自分の生き方を自由に選択し,個人としても社会としても,豊かさを求めるものでしょう.成長は市場を拡大し,大規模な工場や流通・在庫システムの管理を必要とし,貿易や金融における特殊なサービスを都市に集中させます.急速な技術革新や流通経路の変化は,多くの移民と貧民を生み出し,田舎でも都市でも,富と秩序を維持するための強権的な支配が拡大します.都市的な生活こそ,私たちの満足と不幸を作り変えてしまった人間の溶鉱炉,あるいは養鶏場です.

25万羽ものニワトリが,生きものではなく,生産物となって卵と鶏肉を市場に供給し,海辺や川原をコンクリートで埋め立て,魚の住めないような濁った海や河にしてしまい,山林を放棄して,ヘドロに埋まったダムが洪水を防ぐのか,と思うと,こうした暮らしに背を向けたい感情に駆られます.しかし,私の快適な暮らしは,地下からくみ上げられた石油を燃やして大気を汚しながら,子供を塾に送ったり,お昼ご飯にラーメンを食べるため自動車を走らせたりする毎日から成っています.

アメリカ人は,妊娠中絶や同性愛の婚姻を法的に認めるか,禁止するか,激しく論争します.フランスでは,イスラム教徒のスカーフ着用を,他者に信仰を強要する行為と見なすのか,それとも不当な社会的差別とそれを黙認する政府やマスコミへの抗議の表明と見るのか? 議論しています.監視されることも,規範を問われることも無いインターネットの利用者は,子供のポルノを売買し,匿名性を利用した犯罪や,仮想空間の恋愛,憎悪,偏見,狂信,などに走るのではないか? と不安が広がります.

アメリカのBSEで牛丼が食べられない? タイやベトナム,丹波町の鶏インフルエンザで焼き鳥が食べられない? SARSが流行れば,たちまち,日本の家電産業や景気回復も脅かされる? しかし,本当にこのような巨大化偏愛症が正当な根拠を持つでしょうか? 最適規模は,宣伝や流通のコスト,融資の選別など,私たちの満足以外の点で歪められていると思います.マイクロソフトやウォル・マートより,本当は,少人数でもっと良い製品・サービスを提供できる企業があるはずです.街中に溢れるスターバックやマクドナルドに,たとえ小さくても,誇りを持って仕事をする無名の人々は,悔しい思いをしているでしょう.

雪のちらつく土曜日.パパと公園で暴れてくること,というのが宿題だ,と末っ子が言うので,寒風が吹きまくる公園に出て,二人でボールを蹴りました.突風でグニャリと曲がる球筋に大騒ぎし,寒さで参ったと思うまで,少しの間,一緒に走り回りました.こうして見事に!宿題を果たしたわけです.ホンマに,これが宿題か!?

『たそがれ清兵衛』の最後で,これは娘の観た父母たちの物語だ,と分かったとき,よくできた作品だ,と思いました.もし社会や環境が将来どうなるのかを具体的に想像する力を失えば,自由貿易やグローバリゼーションも,虚構のドラマに過ぎません.そして,理解できない世界に不満を抱く私たちこそ,さまざまな矛盾した説明が取り巻く,魔法の世界に生きる住民です.

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune


FT February 24 2004

The social costs of globalisation

By Joseph Stiglitz

NYT February 24, 2004

U.N. Study Finds Global Trade Benefits Are Uneven

By ELIZABETH BECKER

FT February 26 2004

Labour pains

FT March 2 2004

Martin Wolf: Painful choices, not platitudes

By Martin Wolf

(コメント) グローバリゼーションとは何か? それは,モダニゼーション(近代化)やアーバニゼーション(都市化),デモクラタイゼーション(民主化)と同様に,定義する者を拒みます.

Stiglitzは,ILOの組織した委員会においても,彼の主張を繰り返しました(A Fair Globalization: Creating Opportunities For All).グローバリゼーションは,正しく管理されなければ,政府の能力を低下させ,多くの人々を不幸にする,と.それは自動的に高い成長や安定した社会をもたらしません.それどころか,ラテン・アメリカやアジアで示されたように,既存の富を破壊し,社会秩序を転覆したのです.裕福な諸国は貧しい諸国を助けて,援助を増やし,債務を免除し,さらに資本や技術が移転することを促さなければなりません.そして,貧しい諸国も,多国籍企業を優遇したり,安易に資本移動を自由化したりするのではなく,正しい制度や政策を実施しなければなりません.また,国際機関はこれまでのような自由市場崇拝を反省し,貧しい諸国が持続的な成長を実現する過程を助けるべきなのです.

Stiglitzは,グローバリゼーションの社会的結果にもっと関心を払うことだ,と言います.そして,それに正しく対処できなければ,政治的な不満が高まり,(彼は明記していませんが)グローバリゼーションは崩壊します.私は,もし正しい対応が取れなかったとしたら,それは「政治的な意志」が足りなかったからではなく,グローバリゼーションに対応する「政治的な意志」を形成し,伝達するメカニズムが欠けていたからだ,と思いました.

BECKERの記事は,アメリカ大統領選挙とダブらせながら,この報告書の内容を少し紹介しています.すなわち,グローバリゼーションは人々の意見を対立させます.国内でも世界でも,対話は上手く成立しません.世界には1億8800万人(労働力の6.2%)も失業者が居ます.貧富の格差は拡大しています.世界人口の14%を占める諸国が貿易と直接投資の半分を独占します.グローバリゼーションにより,女性が不利益を強いられます.企業はますます税金を納めなくなりました.

しかし,グローバリゼーションは転換点にあります.その浮動性は,貧しい国だけでなく,豊かな国も傷つけます.国際的にガバナンスを改善し,貿易には透明なルールを,国境を越える人々や財を守る必要があります.開発援助と,国際的な労働基準,そして移民たちの権利が尊重されるべきです.

このILOのレポートは,特に国際的な労働基準を重視します.それは労働者の四つの基本的権利,@労働組合,A団体交渉,B強制労働の廃止,C児童労働や差別の撤廃,を実現するよう各国に求めます.実際,ケリーもエドワードも,ブッシュも,労働法や国際的な労働基準を唱えています.世界には,2億4600万人の子供たちが,農場や軍隊,セックス産業で働いているのです.

しかし同じ報告書について,FTは,その質を批判します.その内容は,しばしば間違った通説でしかなく,証明されないようなグローバリゼーションへの不平不満である,と.グローバリゼーションがもたらす機会と結果の区別もしないし,国際機関や豊かな国の政府を安易に非難する.しかし,競争には短期的に敗者が伴うし,しばしば政策が間違っていた.すなわち,グローバリゼーションによって豊かになる機会が与えられたにもかかわらず,貧しい諸国は教育の無視や疫病の蔓延,制度の脆弱さ,無能な経済政策,指導者の腐敗などで失敗したのだ,と.

改革は,もっと内側から必要である,とFTは主張します.ILOの報告書は,その意味で,具体性に欠けた,長文の嘆願書でしかありません.

Wolfも,報告書は「ラクダを馬だ,と決めるようなもの」と批判します.彼らは,グローバリゼーションや市場自由化を必要と認めながら,「右寄りの思考」ではなく,「左寄りの思考」を求めます.しかし,本気で問題を考えたのか? たとえば,確かに民主化は重要だが,世界で最も成長した中国の民主化は遅れている.主権も重要だが,彼らの夢想する北欧型の社会民主主義がどこでも可能だとは思えない(砂漠に馬は育たない!).ILOが世界中の労働基準を高めたいと思うのは当然だが,彼らは未熟練労働者が膨大に余っている国で,労働市場がどのように機能するか,考えたことがあるのか? 規制を増やせば,深刻な二重経済が生じて,インフォーマルな経済が拡大するだけだ.

民主主義も,主権も,労働基準も,必ずしも急速な成長をもたらさないし,必要な条件でさえない.ときには,その選択を迫られる,と.


FT February 23 2004

Keeping Fannie and Freddie safe

By Gregory Mankiw

NYT February 24, 2004

Mortgage Giants' Debt Is Big Risk, Greenspan Says

By EDMUND L. ANDREWS

FT Feb 25 2004

Lex: Fannie/Freddie

FT February 26 2004

Fannie and Freddie make Alan worried

NYT February 29, 2004

Freddie And Fannie: Healthy or Overweight?

By KENNETH N. GILPIN

FT March 2 2004

Fannie Mae is a bargain for house buyers

By Franklin Raines (chairman and chief executive of Fannie Mae)

(コメント) Fannie Mae, Freddie Macそしてthe Federal Home Loan Bank systemについて,ブッシュ政権を支える経済政策の最高責任者G.マンキューとA.グリーンスパンが改革を唱えました.しかし,この制度が肥大化し(約2兆ドルの債務),システムを危険に陥れていることは,以前から指摘されていました.なぜ今,そして,何が目的なのでしょうか? また,日本の金融改革や郵貯問題と比べて,何を学べるでしょうか?

マンキューは,住宅融資への補助を,政府が支援する民間企業形態で行うこと(GSE:"government-sponsored enterprises")に反対します.規制や税金が民間と異なり,金利も以上に低いため,競争が歪められている,と考えるからです.こうした補助金の分配方式が,民間金融機関を不当に差別し,また金融システム全体を不健全で脆弱なものにしているわけです.さらに,マンキューは,それを一気に民営化しなくても,最低限の自己資本を決めて,独立の監査機関が検査すればよい,と考えます.

議会証言として行われたグリーンスパンの警告も厳しいものです.彼は,GSEではなく,完全に民間企業と同じ条件で競争させることを主張します.これに対してFannie Maeは,FRBの間違った研究に依拠した偏見だ,と反発しています.Freddie Macの会計問題がその発端でしたが,FTに限らず,金融市場を人質に取ったような論争が過熱するのを,機関投資家たちは危惧しているでしょう.金融危機は困ります.しかしまた,もしグリーンスパンが言うような保守的な監視機関が融資を抑制すれば,その場合も成長を損ない,株主の利益にはなりません.

問題は,政府やFRBがこの「政府保証」という幻想を積極的に破壊できない,ということです.すなわち,魔人を壺に戻せない(It will be hard to put the genie back into the bottle.).S&LやLTCMが引き起こした金融市場の危機が例示されます.それゆえ,Fannie Mae, Freddie Macはロビーストたちの軍団を選挙戦に投入して,問題に蓋をするのではないか? 日本の政治なら,それでおしまいです.

実際,Gilpinのインタビューを受けた専門家Jonathan E. Grayは答えています.@改革が法制化する見込みは少ない.A自己資本を増やして競争せよ,と言うが,それでもS&Lや銀行では長期の固定金利で住宅購入資金を提供できない.Bその場合,住宅融資は変動金利となり,融資額が減って,住宅価格が暴落する危険がある.Cもしサイズが問題なら,CitigroupやJ. P. Morgan Chase, Wal-Martでもシステム危機につながる.・・・だから心配するな?

Fannie Mae のchairman and chief executive であるRainesは,その存在理由を明確に主張します.すなわち,アメリカ人の住宅所有を増やすというのは,政治的に合意された目標である.各国が住宅融資を強化し,安定させる上で,Fannie Maeを見習いつつある.Fannie Maeは,住宅モーゲージ市場に特化し,長期の固定金利を可能にしている.Fannie Maeが実現した低コストの資金は,アメリカ人の住宅購入にだけ利用されている.他の資金を取り入れ,他の分野にも融資する民間の銀行に,これはできない.アメリカに流れ込む外国の資本も利用している.Fannie Maeは,税金からの補助を受けていない.Fannie Maeこそアメリカ住宅市場の成長の中心にあり,21世紀においても有益な仕組みである,と.

・・・なるほど.しかし批判は続くでしょう.金利は適正か? リスクが集中しているのではないか? 競争を妨げ,金融革新を排除していないか? 特定の利益に結びつくのではないか? すでに私物化され,腐敗している?


Feb. 22 (Bloomberg)

Japan Gets Wish With Dollar Short Squeeze

David DeRosa

FT Feb 24 2004

Lex: US dollar

IHT Tuesday February 24, 2004

Asia should be worrying about its dollar reserves

Philip Bowring

(コメント) 日本の外国為替市場における円売り・ドル買い介入は,その規模(1670億ドル)と言い,その方針(景気回復でも円高を拒否する)と言い,世界の注目を集めて(ヒンシュクも買って?)います.DeRosaは,日本が輸出によって成長を維持するパターンを抜け切れないことを指摘しつつ,このまま偏った円高阻止政策を続けるなら,結局,株式市場を不自然なまで外国投資家に安く見せ,再び1980年代のような株価急騰を引き起こすだろう,と警告します.

他方,ドル安で輸出企業や製造業の雇用を刺激するはずであったアメリカも,ドル安が一服しました.なぜか? 早くもドル安による調整は終わったのか? アメリカが対外不均衡の改善を示すには,もっと長い目でドル安傾向が続くはずです.しかし,購買力平価で見たユーロは,ドルよりも過度に強いので,ヨーロッパの投資家たちがアメリカの株式に再び投資しているのではないか,と考えられます.こうして,ドル安によって,アメリカの株価も上昇するのかもしれません.

アジアの政府や中央銀行は,膨大なドル建資産を保有して,本当に大丈夫か? ドル安で慌てて逃げ出す? そして,もっとも深刻な不安は,アメリカの選挙が高める雇用確保と保護主義への誘惑です.もしアメリカに輸出できなければ,アジア諸国がドル建の準備をこれほど保有し続ける理由はなくなるはずです.フランクリン・D・ルーズベルトやリチャード・ニクソンが何をしたか,アジアは忘れていないでしょう.しかしドルに代わる準備が無ければ,アジアは繰り返しドル建資産を自国通貨建てで減額するばかりです.


FT February 24 2004

Second-class citizens

LAT February 26, 2004

A Stranger in His Own Lands

By Amir Hussain

(コメント) 東欧のEU新規加盟諸国に対して,イギリスやEU諸国は,「おめでとう新加盟諸国の皆さん! どうぞ,二流市民の席へ!?」と歓迎しています.

イギリスでは,タブロイド紙の盛んな宣伝,「東から押し寄せる移民の洪水!」「社会福祉は彼らに騙し取られる!」が街に氾濫しています.ブランケット内相は,国内雇用を守るために,イギリスの一時雇用許可発行を拒み,また,福祉国家を守るために,移民に対して社会給付が行われることは無い,と明言しました.これらは,タブロイド紙が載せる,間違った記事に反論しつつも,それに刺激された有権者の不安を解消するために,彼らの要求に従ったものです.

アメリカも,大量に「二流の市民」を生産しています.Amir Hussainはパキスタンに生まれ,4歳でカナダに移住し,27年間をバンクーバーで暮らしました.その後,カリフォルニアで教職に就いています.しかし,パキスタンに生まれた(あるいは有色人種,イスラム教徒)という理由により?彼は空港で入国を拒まれ,別室へ連れて行かれ,写真や指紋を取られます.挙句に,特殊なビザに変更.彼はアメリカに失望し,彼自身が母国と信じるカナダに深く絶望します.


NYT February 24, 2004

The Americano Dream

By DAVID BROOKS

LAT February 29, 2004

Mexican Americans Are Building No Walls

By Gregory Rodriguez

(コメント) Samuel Huntingtonは,「文明の衝突」という,怪しい主張を普及させました.特定の文明(たとえば「アメリカ文明」!?)を,固定的で分割できる,固有の質に定義するのは難しいでしょう.まして,彼はこの主張をアメリカ内部の分裂,アメリカ自身の変質にも適用し,同化を拒むヒスパニックへの批判を強めているようです.

メキシコ系のアメリカ人は,アメリカ人ではない.なぜなら,英語やアメリカの信条,WASPの理想を理解していないし,それを尊敬もしない.だから,同化したがらない,と.「新移民」という過去の議論を想起させます.

BROOKSは,アメリカ人にとって歴史は循環しており,アメリカン・ドリームとは革新や挑戦,対立,同化の末に実現される未来を信じることにある,と考えます.メキシコ系アメリカ人が作るアメリカも,こうした未来のアメリカの一部なのです.


FT February 26 2004

Samuel Brittan: A frank look at Labour's values

By Samuel Brittan

(コメント) 労働党政権が一部の活動家に支持される政策を行うのは,有権者全体の利益を実現していない,とBrittanは批判します.では,活動家が好む政策とは何か?

@個人よりもグループを優先する.A国家の資源を,個人ではなく,共有のプールと見なす.B「自由・平等・友愛」の間で対立した場合,平等を優先する.Cその最高の価値は「民主主義(人民の意志)」に置かれる.しかし,その多元性を認めない.D貧しい者や身体不自由な者に深く同情する.しかし,多数の利益を実現する,というスローガンと矛盾する.Eサッチャー以前の労働組合を理想とし,労働市場に経済学の原則を当てはめない.F価格によって割り当てることを悪とみなし,公共サービスは無料で配る.G公共部門は民間部門より好ましい.H第二次世界大戦の頃を懐かしむ.I外国の独裁者を憎むが,右翼に限る.

もちろん,労働党の価値観を批判すれば,私は直ちにウルトラ右翼と見なされ,「市場原理主義者」と決め付けられるが,と付言します.


Feb. 25 (Bloomberg)

Greenspan Offers Goose/Gander Advice on Debt

Caroline Baum

LAT February 26, 2004

Debate Social Security Now

LAT February 26, 2004

Greenspan Is Right: Act Before Social Security Goes Boom

By Paul Hodge

NYT February 27, 2004

Mr. Greenspan's Warning

WP Friday, February 27, 2004

Regrettable Reactions

WP Friday, February 27, 2004

Grateful to Greenspan

By E. J. Dionne Jr.

NYT February 29, 2004

The Social Security Promise Not Yet Kept

By DAVID CAY JOHNSTON

March 1 (Bloomberg)

Greenspan Retirement Fix Jars Lethargic Congress

Caroline Baum

BG, 3/1/2004

Fooled by the shell game

By Gilbert E. Metcalf

NYT March 2, 2004

Maestro of Chutzpah

By PAUL KRUGMAN

(コメント) ドルの価値を物価や為替レートで心配すると同時に,財政赤字は,家計の赤字や債務比率とともに,金融政策を決定する際にグリーンスパンが注意しなければならない問題でしょう.日本とはまた違う意味で,アメリカでも,財政と金融が対立し,協力もするわけです.議会で証言したグリーンスパンは,家計の債務増大を危険視せず,Fannie Mae と Freddie Macの肥大化や,高齢化と社会保障がもたらす将来の財政負担を問題にしました.まさに,低金利政策は正しいが,連邦政府の見通しはいいかげんだ,というわけです?

Baumは,連邦政府とGSEs(Fannie Maeなど)と家計とは,まったく異なる,と言います.政府は必要となれば紙幣を印刷できますし,GSEsも実質的な政府保証により低利で資金を調達できます.しかし,家計は誰も救済してくれません.なぜグリーンスパンは,家計の債務増大を憂慮せず,政府やGSEsの赤字に関心を向けるのか?

LATの論説は,グリーンスパンの証言に驚きます.7700万人のベビー・ブーム世代が2008年に62歳に達し,引退し始める.だからグリーンスパンは,富者のための巨額の減税を行うブッシュ政権を支持しながら,今度は,財政赤字を理由に,貧者のための社会保障を削れと言うのか? と.大恐慌の際に設けられたとき,40人で1人の退職者を支援する制度であったものが,今では,3人で1人を支援しなければならない.しかしこの問題を,富者への減税恒久化による赤字と混同することは許されない.

NYTは,グリーンスパンの曖昧な証言に,減税の恒久化よりも,長期的な財政再建を重視する姿勢を読みなす.ところが,ブッシュ氏は逆だと解釈する.減税を恒久化してから,財政再建は長期的に達成できる,と.他方,WPは,たとえグリーンスパンが減税に手を貸したとしても,社会保障の問題を指摘するのは正しい.それに対して,政治的な駆け引きで不正直な約束を繰り返している,と両党の大統領候補たちを批判します.

Dionne Jr.も,2004年の大統領選挙で,決して候補者たち自身から提起されないテーマを,グリーンスパンは明確に掲げた,と賞賛します.減税は,結果的に,社会的な給付の切り捨てを意味する,と述べたわけです.その意味では,他の減税支持者と異なります.もちろん,民主党(ブッシュの弱者切り捨て!)も共和党(社会保障制度の民営化!)も,グリーンスパンの証言を勝手に利用します.

一体,社会保障に国民が支払ったお金はどうなったのか? 日本の国民だけでなく,アメリカ人も疑問に感じるでしょう.政府は黒字を持ったまま将来の支払いを待つようなことはしない,と言います.基本的に,社会保障で黒字があれば,他の支出に使ってしまうのです.政府はそれを借金と思わず,黒字が出ても返済するより,減税してしまいます.Baumも,社会保障がa pay-as-you-go system あるいは,政府経営のマルチ商法型金融(a government-run Ponzi scheme) として破綻することを指摘します.そして,議会はこのことについて,何もしたがらない,と.

Metcalfは,これが3度目の社会保障のシェル・ゲーム(いかさま賭博)だ,と言います.一度目は20年前,グリーンスパンを委員長とした調査委員会が,給与への増税を含む勧告を行った.それは実施されて,もっぱら労働者の所得から社会保障費の不足が埋められた.二度目では,ブッシュ氏の大型減税が提案され,グリーンスパンがそれを支持した.そして三度目のゲームだ.グリーンスパンは減税を非難せず,給付の減額と支払い時期の繰り延べを提案している.

こんなゲームには付き合いたくない? そうでしょう.だったらゲームから抜けることだ,と.木村剛氏がニュース・ステーションで,日本についても同じような話をしました.最後に,土地でも株でも,銀行でも,生命保険でも,外債でも,国民が損をして抜け始めると,政府や中央銀行は危機を叫んで,責任者の多くは逃げてしまうのでしょうか?

KRUGMAN は,グリーンスパンが「図太さ」chutzpahを示している,と言います.「自分の両親を殺しておいて,自分は孤児だから,と温情を請う」ようなものだ,と.そして,三つの教訓を指摘します.@共和党は減税で政府(社会的給付)を小さくする.A政府の縮小は,無駄な支出を削らない.B右派の支配する政府の腐敗には終わりが無い.しかも,連邦準備制度も巻き込んだ.


BG, 2/26/2004

Playing politics with God

By Joan Vennochi

WP Thursday, February 26, 2004

Another Bush Culture War

By Harold Meyerson

FT February 27 2004

Christopher Caldwell: Gay marriage no vote-winner

By Christopher Caldwell

WP Friday, February 27, 2004

What Crisis?

By Richard Cohen

WP Friday, February 27, 2004

Revolution by Fiat

By Charles Krauthammer

BG 2/28/2004

Kerry's marriage trouble

LAT February 29, 2004

Raising the Volume

By Jonah Goldberg

NYT February 29, 2004

Joining the Debate but Missing the Point

By NATHANIEL FRANK

(コメント) 宗教的な感情や組織,価値観,対テロ防衛,などを,ブッシュ氏が自分の選挙に利用することは,アメリカ国民にとって好ましい結果をもたらすのでしょうか? 結局,イラク再建や社会保障,ましてや北朝鮮などではなく,神や同性愛者の結婚について,大統領候補たちの政策能力や価値観が試されるのです.しかし,禁止法案が成立する見込みが無いのであれば,見事に再選された(?)ブッシュ氏は何によって有権者の高まる関心に応えるでしょうか?

しかし,実際には,ゲイ・マリッジが選挙の主要な争点にはならない,と考える者もいます.信頼感を失いつつあるブッシュ氏は,いかにも自分に有利な問題だけを誇張して,他の失敗を隠している,と攻撃されるでしょう.他方,ケリー氏も,問題を政治的に処理するだけであれば,保守派の強硬な反発によって,ゲイ・マリッジに批判的な有権者の多くを遠ざけるでしょう.

ゲイ・マリッジの衝撃は,もしかしたら,アメリカが世界に示す非常に甚大な社会変化かもしれません.すべての個性について性的過敏症の社会と,穏健な性的抑圧を制度化した社会とが,まずはクローン人間についてのSF小説の中で戦争を繰り返す・・・?

Class-WarからCulture-Warへ! これも「文明の衝突」? しかし,社会保障であれ,ゲイ・マリッジであれ,ワーキング・ビザであれ,なんと多くの衝突と選択が示されることか? 結婚・婚姻制度や家族とは何か? それを法律が制限するのか?


NYT February 27, 2004

I Can't Buy Me Love

(コメント) 日本では「トリビアの泉」が大流行ですが,フォブズ誌のビリオネアー特集も,世界的に有名なトリビアです.今年,その数は昨年より111人も増えて,587名になったようです.彼らの総資産は,1.9兆ドル(約200兆円)です.世界で最も貧しい人間の総資産は,もちろん,0ドルでしょう.Forbesのホーム・ページで彼らの情報のいくつかが公開されている,と言いますから,トリビア好きの人はぜひ試してください.中でも,もっとも注目された新人は,ハリー・ポッターによって登場したJ. K. Rowling女史です.

このリストは,貧しい人々の羨望や希望の象徴なのか,それともグローバリゼーションの墓標なのか?


WP Wednesday, February 25, 2004

A Phony Jobs Debate

By Robert J. Samuelson

(コメント) ケリーやエドワードが,雇用が失われている,と騒ぐのを,Samuelsonは真実ではない,と指摘します.雇用はバブルによって過度に膨張していただけで,今は,健全な効率的経営の企業だけが生き残る局面なのです.すなわち,失業は生じても,容易に雇用は生じない.

政府にできることは,教科書どおり,すべてやりました.@金利を下げ,A減税し,Bドル安を促し,少しずつ雇用は増えています.アウトソーシングのせいで失業が大きく増加した,とは言えません.ヨーロッパや日本が内需を高めないことは,アメリカ政府の責任ではないのです.

NAFTAや移民を非難することが,失業者を減らすわけではないのです.しかし,戦争でも,選挙戦でも,「真実」は最初の犠牲者の一人です.

BG 2/29/2004

NAFTA nuances

BG, 3/1/2004

Free trade -- but at what price?

By Larry Overlan

(コメント) Overlanが自由貿易に反対する理由は,@国防,A雇用維持,B教育・再訓練,です.しかし,AとBは,自由貿易がともなう各社会のコストであり,比較優位に反映されるでしょう.つまり,国防という,21世紀ではなく,昔からの反論です.

むしろ,自由貿易に依拠して利益を得た者たちに,こうした社会的な追加のコストや国際秩序の維持コストを分担せよ,と言うべきでしょう.

BG, 3/4/2004

Kerry should make an issue of trade

By Robert Kuttner

(コメント) 社会全体から見て,長期的な利益になるとしても,一部の労働者にとって自由貿易は失業を意味します.長い目で見れば中国の生産性は上昇し,購買力も増して,アメリカの雇用を増やすでしょう.しかし,当面,政府は自由貿易をさまざまな政策と併用するべきです.

@第三世界の労働基準を高め,組合を組織させる.A国内サービス部門の賃金上昇を促す.B技術や知的所有権を保護し,相互に市場を開放するような,公正な貿易を求める.C保険や年金などのコストが競争を妨げないようにする.D雇用やエネルギーの自立性を高める技術開発に公的資金を与える.

IHT Thursday, March 4, 2004

Why America need not fear outsourcing

Michael Heise

(コメント) Heiseは,世界競争の原則を全面的に主張します.ドイツは1980年代にこれに直面し,優れた企業を除いて,競争による淘汰を受け入れた.また,アウトソーシングも含めて,直接投資は国際競争に生き抜く条件であり,妨げてはならない.労働市場さえ弾力的であれば,アメリカは,ドイツのような苦痛を伴わずに,世界競争に適応できる.・・・でも,日本は無理だ?


WP Monday, March 1, 2004

A New Consensus on Free Trade

By Gene Sperling

自由貿易への高まる不信に対して,クリントン政権が市場開放を支持したことを懐かしむ空気もある.しかし,市場を開放する政策によって,世界の貧困を減らし,革新を早め,高い給与の職場を増やし,物価を抑えて,労働者の家庭を豊かにしたいと願うなら,われわれはクリントンが「人間の顔をしたグローバリゼーション」と呼んだ進路を発見する必要がある.すなわち,市場開放によって得られるパワーと,労働者や地域社会が感じている不安とを,和解させるような,新しい進歩的合意が必要なのだ.

「アウトソーシング」の論争は,旧来の「保護主義vs自由貿易強硬派」という論争が役に立たないことを示した.一方では,NAFTAを破棄し,WTOから離脱し,国際最低賃金を強制することは,デルがインドにコール・センターを設立することに無力であろう.世界経済のダイナミズムを受け入れるしか選択肢はないし,それを遮断するとか,減速させる力も無い.

他方,もし自由貿易を信奉し,快適な職場で高給を得る者たちが,そのような市場開放や技術革新の利益を可能にする政策がもたらす,コスト分担の危機を認識できないなら,決して共通の理解は得られないだろう.

こうした新しい合意形成に向けて,5つのステップを示す.

1.雇用創出に真剣に取り組め: 新規雇用する企業や支出する家族に対する減税.教育を削ったり授業料を値上げしたりする必要が無いように州政府を支援.雇用を妨げる医療費やエネルギー・コストを下げる税制改正.遠隔の,貧しい地域に近代的なインフラを整備.

2.「予防戦略(先制攻撃)」: 世界競争によって職場が失われれば,保護主義の連鎖は止められない.それを待たずに,労働者に他の選択肢を与えるべきだ.衰退する産業は容易に予測できる.その場合,「グローバリゼーション調整地域」を指定して,その地域に投資のインセンティブを与え,失業する前に労働者に再訓練の機会を与える.零細企業の経営者,労働者,零細農民を,アメリカ経済全体や世界的な貧困撲滅という広い視点から,救済する.

3.見掛け倒しの再訓練より,実質的な転職保険を: 電話である番号をまわすと,失業保険から可能な転職や再雇用サービスまで,すべてが提供されるように制度を統合する.

4.教育の重視: 金持ちに減税する100分の1のコストで,若者たちのもっと学位を取らせることができる.サプライ・サイドの減税策より教育の促進こそ,われわれの未来にとって重要だ.

5.貿易と貧困撲滅との矛盾を解く: 市場開放が苦汗工場の原因ではないし,自動的に貧困解消につながることも無い.より広い,創造的なグローバリゼーションの目標を掲げる.すなわち世界的に基礎教育を充実し,児童労働や苦汗工場をなくし,市民社会の監視機能を高め,市場開放によって傷ついた労働者や小農民の転換を支援し,労働者の権利を尊重するように企業に求める.


FT February 29 2004

The dollar's delicate balancing act

By Martin Wolf

NYT February 29, 2004

How a Stronger Yuan Could Hurt the U.S.

By EDUARDO PORTER

NYT March 3, 2004

Greenspan Plays Down 2 Threats to U.S. Economy

By EDMUND L. ANDREWS

(コメント) 自由貿易に必要な,マクロの需要管理はどうなっているのか? アメリカは,一方的に,内的な均衡すなわち完全雇用を目指す.そのためにドル安を放置する.しかし,減税と財政赤字でも低金利が維持されているのは,資本流入が続く間だけです.

世界の為替レートと資本移動は,決して一元化していません.Wolfは世界を,ドル,ユーロ,アジア,日本,に分けます.アメリカは勝手に内的均衡を追及し,為替レートや資本移動に介入しません.ヨーロッパと日本は内需が不足し,景気回復が弱いままです.他方,アジアの工業化地域は世界の成長センターであり,通貨の増価を嫌います.そのため,経常収支の黒字はアメリカに資本として還流しています.日本は,内需の弱いヨーロッパと,増価を嫌うアジアの,両方の性質を帯びます.結局,アメリカは国内の調整を優先して,対外不均衡を膨張させ続けるから,なんとか世界の成長(需要水準)が維持されます.

確かに,このままアメリカのドル安が続けば,経常赤字を減らし,対外債務も抑制するでしょう.ヨーロッパではユーロ高でインフレが抑制され,金融緩和と内需拡大が可能です.アジアでは介入による金融緩和が起こり,インフレが進みます.中国がいよいよインフレ抑制のために人民元を切り上げれば,アジア諸国の為替レート調整が続くでしょう.

他方,こうした対外不均衡の調整過程では,次のようなリスクが存在します.@ドル暴落.A日本とヨーロッパの内需不足.B日本以外のアジア地域における為替レートの調整失敗.Cアメリカの経常赤字増大が保護主義を強める.

そもそも,アメリカに資本を流入させて世界の需要水準を維持するために,本来,資本をもっとも必要としている開発地域から投資を削ってしまうような事態は,避けるべきなのです.世界がアメリカの赤字や資本市場の移り気に支配されずに,成長を持続できる仕組みが必要です.

PORTERは,もし国内の需給が一致しないことで対外不均衡を生じているなら,人民元やアジア諸国の通貨が増価しても,アメリカの赤字は容易に減少しない,と書きます.他方,それはアジア諸国が為替市場への介入を止め,アメリカへの資本流入が減ることを意味します.人民元が増価する場合,アメリカが苦しむケースに注意せよ,と.

こうした心配について,グリーンスパンの回答は実に平静です.


The Observer, Sunday February 29, 2004

The joy of diversity

David Aaronovitch

(コメント) Aaronovitchは,エスニシティを差別の根源として「自然なもの」と見なす人々を批判します.保守派の政治家は主張します.「移民たちが増えれば,結局,福祉国家の全体が崩壊する.」 本当に,そうだろうか? イギリス人の1割近く,ロンドンなら住民の3分の1が,異なるエスニシティを受け継いでいます.だから,問題になる,と言うのか?

タブロイド誌は,しきりに,移民流入の恐怖を煽り,対立を予想します.バーンリーではBNP(イギリス国民・国粋党)が,こうした不安を煽って,議員を当選させました.しかし,彼らが主張する事実は,しばしば何の根拠も無く,自分たちの恐怖を描いて,不幸をもたらすスケープ・ゴートを求めているだけです.

ユダヤ人はドイツ社会で十分に同化しなかったから,虐殺される理由となるのか? グローバリゼーションのもたらす奴隷として,移民たちは憎まれるのか? Aaronovitchは人間の本性に,同化や排除より,適用能力を求めます.


FT March 1 2004

Lessons for Bush's Mideast vision

By Anatol Lieven

(コメント) アメリカが,なぜアジアの復興に成功し,中東では失敗しているか,を考察しています.その最大の理由は,1.潤沢な援助(と政治的な背景).2.市場開放と移民受入れ.その意味で,現在の中東民主化計画でも,アメリカやヨーロッパは本気で援助を与え,市場を開放し,移民を受け入れるとは思えない,と.


FT March 1 2004

'The recovery is still fragile'

By David Pilling

ST MARCH 3, 2004 WED

Strong export demand from China - for now

March 3 (Bloomberg)

Japan Inflation Bonds Like Waiting for Godot

William Pesek Jr.


FT February 29 2004

Don't fall for Washington's spin on Haiti

By Jeffrey Sachs

(コメント) ハイチの政変は,アメリカが小国への介入と窮乏化を繰り返している最新の例に過ぎない,とSachsは批判します.メディアが伝える,アリスティードの失政,民主的選挙の簒奪,独裁批判,は誤っている,と.何度も映画や小説が描いてきたような,本当の話でしょう.

共和党はアリスティードを第二のカストロだと恐れ,嫌っていました.クリントン政権が1994年に介入した際も,彼らが反対して,秩序を回復する前に早期の撤退を強いました.ハイチの貧困や混乱,選挙妨害を繰り返しているのは,Duvalier体制下で優遇された富裕層や元CIA工作員たち,残虐な元軍隊であり,彼らがワシントンでさまざまなサークルやロビーと結びついています.

2000年の議会選挙でアリスティードの政党は勝利し,その後の大統領選挙にも勝利しました.アメリカのメディアは,その選挙が反対派によって「ボイコットされた」,不当な選挙である,と宣伝しますが,ハイチの国民は圧倒的に指示しており,Duvalierの暗殺集団が勝利する見込みは無かったのです.そこで彼らは選挙に参加せず,ワシントンで保守派の政権が誕生するのを待ちました.

彼らはブッシュ政権と非常に親しく,その外交政策を利用しました.すなわち,ブッシュ政権は反対派を参加させなければ5億ドルの人道援助を停止する,と脅したのです.悲劇でもあり,ジョークでもある,アリスティードの度重なる譲歩,反対派の妨害により,ブッシュ政権は条件を満たせないハイチ政府への援助を停止し,予定通り,経済混乱を増幅します.

カリブ諸国が集まって,反対派との権力分担を提案し,再びアリスティードがそれに同意したにもかかわらず,反対派とブッシュ政権は彼の退陣を要求しました.ブッシュ政権と反対派の間に,どのような資金が流れ,どのような計画があったのか,アメリカ国民は仕組まれた戦争を疑問に思うことさえありません.

Sachsは求めます.@国連はアリスティード政権を支持せよ.Aアメリカ軍は秩序を回復せよ.B経済援助を直ちに再開せよ.これらによってのみ,民主主義は維持され,一層の流血を回避できる,と.

BG 3/1/2004

Obligations in Haiti

NYT March 1, 2004

Shattered Democracy in Haiti

FT March 2 2004

Turmoil returns to Haiti

By Richard Lapper

LAT March 2, 2004

A Team Effort for Haiti

ST MARCH 4, 2004 THU

US shouldn't try to rescue yet another failed state

By DOUG BANDOW(a senior fellow at the Cato Institute)

(コメント) レーガン政権で大統領の特別顧問を務めたBANDOWは,アリスティードが極悪な独裁者で,民主的に選挙された結果,恐怖政治を敷いたロベスピエールだった,と非難します.政府は恣意的で,選挙は操作され,反対派を暗殺し,貧困が蔓延した,と.

ハイチはいつも混乱し,貧しかった.アメリカにはハイチに何の重要な利権も無い.フランスが介入したいなら,すればよい.これ以上,アメリカ軍は力を分散させるべきではない.クリントンのように,人道的軍事介入を世界中で試みるのは愚かである,と.

NYT March 4, 2004

Hard Realities in Haiti


NYT March 2, 2004

Like Japan in the 1980's, China Poses Big Economic Challenge

By KEITH BRADSHER

(コメント) 関西新国際空港は,人工島に建てられたバブルの象徴として,今や急速に沈みつつあるけれど,中国はそれを真似ていない,とBRADSHERは注目します.すなわち,日本は外国企業を排除したが,中国の成長は外国企業の参入によって加速している,と.

日本と中国の興亡を比較して,@外国企業との関係,A余剰労働力の規模と成長の持続性,B経済循環や危機の性格,C政治的な支配の構造と脆弱さ,Dアメリカ政府の対応,E外交姿勢と交渉力,F技術移転やインフラ整備による急速な生産性上昇,G世界市場にキャッチ・アップするスピード,H貿易摩擦の回避能力,Iアメリカとの地政学.

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The Economist, February 21st 2004

Trade and employment: The new jobs migration

The new protectionism: The great hollowing-out myth

(コメント) 「もし自動車がメキシコで安く作れるなら,そうするべきだ.もし電話サービスがインドで安く提供できるなら,そうするべきだ.そのような取引は両者の実質所得を増やす.資源が有利に再配分され,輸出国では投資と成長が,輸入国では価格の低下が実現する.貿易は,まさにポジティブ・サムのゲームである.」

もちろん,雇用のパターンは変わるので,そのために熟練や教育への投資が必要です.しかし,空洞化や失業の波を誇張するのは間違いです.比較優位は,現代においても極めて有効だ,とThe Economistは支持します.

事実について知るべきだ,とThe Economistは列挙します.アウトソーシングは今に始まったことではない.IT部門で「流出した」雇用はわずかである.「ジョブレス・リカバリー」の批判は間違っている.緩やかな景気循環によって,雇用の水準も回復しつつある.企業による違いはあっても,アメリカ経済が構造的な問題に直面している事実は無い.中国からの輸入に関わってレイオフされた者は失業者の0.6%でしかない.インドの脅威もまったくない.むしろグローバリゼーションにより今後もIT関連の雇用は増大する.ハードウェアからソフトウェアに価格下落の効果が拡大するから,アメリカの成長はさらに強まる,と.