IPEの果樹園2004
今週のReview
3/1-3/6
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気温はそれほど低くないけれど,風の強い朝,私は今治のお城や港を眺めて歩きながら,かつての賑わいを想像しました.また,大洲の肱川沿いに臥龍山荘を訪れた際には,その充実した存在感に圧倒され,地方都市の誇りを実感しました.地方の自立的な活力を再生し,地場産業を振興することは,たとえば,日本の面積の9割,人口の6割を活性化するほどの最重要な課題ではないでしょうか?
文部科学省を介して与えられた貴重な税金により,私は「グローバリゼーションと地方政治システムとの関係」を調査する機会を得ました.私が今治市を選んだのは,輸入タオルをめぐる中国との貿易摩擦問題で,四国タオル工業組合が正式にセーフガードを申請していたからです.また,松山をはさんで隣の大洲市を訪れたのは,私のゼミにいた中野さんが市会議員になったからです.大洲では肱川のダム建設が政治問題になっていました.
いずれのケースについても,地方政治システムに私が期待したような前向きの役割を,政治家も地方行政機関も,積極的に担ってはいないようでした.地方の政治では,「保守的な風土」とも呼べるようなさまざまな「悪」循環が,変化を遮断しています.
「政治的なもの」を「友か敵か」という概念で整理する有名な研究もあれば,完全に「合理的な取引」や「利益」で説明する研究もあります.日本の政治の場合,それは日常的な「貸し借りの連鎖」でできている,と聞きました.中央から及ぶ補助金の分配,雇用や公共工事の口利き,農地の改良や区画整理の情報,さまざまな線引き,役所の対応,病人や老人への気配り,冠婚葬祭の挨拶,その他,必ずしも直接結びつかず,金銭的にも示されない「貸し」と「借り」が,多くの閉鎖的な循環を形成します.その連鎖が,域内の限られた人間関係を,身動きできないほどの「保守的風土」に固めてしまい,投票行動や候補者の選別を支配します.
「政治」や「公的部門」の最も重要な役割を,公的な利益の追求,長期的な視点に立った,公正なルールや基準の設定,それを実現する正当な強制力と財源の配分(補償メカニズム)として私はイメージしました.もし地方の政治システムを動かす原理が,地縁や血縁による「ボス支配」でしかなく,権力の地位にある者が自分勝手な要求や仲間内の利益を実現するために,その権力を私物化し,悪用しているのであれば,地方に「政治」は存在しないと思います.中央が財源を握り,法律や制度を決めている限りで,イラクやハイチのような混乱を生じない,というだけです.
今治市では,セーフガードの申請に関わる背景やさまざまな意見を聞きました.この問題について,政治の関与は限られており,結局,セーフガードは発動されていませんし,補償融資なども行われなかったようです.その理由は,直前に,シイタケなどのセーフガード的措置に中国が報復関税を導入したこと,さらに,「比較優位」を失ったタオル産業に政治も金も近寄らない雰囲気があったこと,また,タオル工業内部でも,企業規模や後継者の考え方などで,対応策について立場が異なっていたこと,産業政策や補助金への反省もしくは強い批判,財源不足,などです.
大洲市では,国土交通省が開いた「肱川水系河川整備計画」公聴会を傍聴しました.確かに,環境派にもさまざまな立場があります.しかし,「保守的風土」の彼らがもっとも強く主張し,ダム建設と妥協できない点とは,彼らの内にある「美しい肱川」の思い出なのです.他方,推進派は「生活の安全」を訴えます.ブッシュ大統領が9・11の悪夢に繰り返し言及するように,推進派は過去の水害を,そして将来の生活改善を強調します.
こうした地方の政治において,既存の政治システムは積極的な仲介機能や合意形成を行わず,将来に向けたビジョンも示せない,というのは意外であり,納得できないことでした.セーフガードを申請し,輸入の急増を回避した後,タオル工業はどうなるのが望ましいと考えているのか? 何を目指して政策や財源を運用するのか? 地方の政治は何も考えていません.ダム建設によって補助金や公共工事は得られるでしょう.しかし,彼らが本当にどのような暮らしを望んでいるのか,その全体を展望する政治的な意志が無いのです.
ダム建設と堤防とをめぐる対立には,実は,四国縦貫自動車道の完成と開発区画,大型商業施設に代表される新しい投資や雇用が関係しています.旧来の住宅地は,洪水の経験から山際の高い場所に立っており,低地は水田に利用されるだけでした.ところが,この遊水地こそ新しい開発地区となっています.治水,環境,雇用,それらを結びつける住民の未来を構想する政治的想像力が,そこには欠けていると思いました.
帰宅して,NHK・BS「ベトナム国道1号線:バスで走る1800キロ」を興味深く観ました.末尾に紹介するように,The Economistの特集記事“A survey of Switzerland”を読むと,直接民主主義の価値が指摘されています.また今日は,NHK・BSで「生きもの地球紀行:宝石の輝き・トンボたちの舞う水辺」を観て,佐賀平野に残されたタナゴやトンボの楽園に感動しました.
今治と大洲が示してくれた問題について,私たちはもっと考えてみる必要がある,と思います.
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune
LAT February 18, 2004
Tokyo Lets Loose Lapdogs of War
By Chalmers Johnson
LAT February 18, 2004
Allow Japan the Right to Deploy Troops
By Ernest W. Lefever
ST FEB 19, 2004 THU
Will Japan build nukes?
By ANTHONY PAUL
(コメント) 「ブレア首相がブッシュのプードルなら,小泉首相はブッシュのコッカー・スパニエルだ」とJohnsonは憤慨します.私は犬の種類について知識が無いので,この比較はできませんが,どちらもブッシュの飼い犬だ,というわけです.
日本はまだ,かなりの程度,アメリカの占領治下にあり,自衛隊をアメリカの戦争に利用することはワシントンで最初から前提されていたことだろう.というのもブッシュ政権は,日本の占領を自慢し,イラクで同じことができると信じていたから.もちろん,襲撃や自爆テロはその予想を覆し,いよいよ日本自体にアル・カイダのテロ攻撃が迫る.小泉首相は憲法九条に違反していることを知っていながら,自衛隊を派遣する.おまけに自衛隊は,広島や長崎と同じ,被爆の危険がある南部地域に展開する.沖縄で米軍が行ったことを,日本人は忘れてしまったのか? と.
Johnson にとっては,日本の平和主義を,アメリカが自国の都合で奪うことこそ問題でした.しかしLefeverに言わせれば,日本は通常の軍隊を持てるように憲法第九条を破棄することで,ようやく主権を取り戻せるのです.日本は,一方で,既にアメリカのイラク戦争を支持し,イラクへの再建を放棄し,自衛隊の派遣も決めました.あたかも,それと交換のように,アメリカは日本の再軍備を支持し,北朝鮮の核や「中国の脅威」を含む,東アジアの安全保障を引き受けます.
日本国憲法に軍備の保有を認めなかったのは,戦勝国の愚かな強制であり,国連憲章にも違反することだ,とLefeverは考えます.日本はアメリカの核によって守られているから,核兵器を保有する理由も無いはずだ.アメリカは憲法問題について,いわば保守派によるアメリカ占領政策批判をも黙認することで,日本の正常化を支持することが望ましいだろう,と.
PAULは,1998年に北朝鮮が日本を跨ぐミサイル発射事件を行って以来,2002年に小沢一郎が「3000発から4000発の核兵器を作れる」と語ったように,日本でも核武装が公に論争されている,と紹介します.支持派は,日本に核武装を可能にする科学者や企業がすでに存在している以上,核武装するという政治的な意志があれば,いつでも実現する,と主張します.他方,桃井氏で代表された反対派の意見とは,核兵器によって攻撃することに意味は無い,ということです.核兵器で,日本が誰と戦うのか? ソ連や中国は人口が分散しており,都市への核攻撃によって致命的な効果を得られませんし,その効果が得られる大国として,アメリカと日本が戦争することは考えられないだろう,と.
しかも,通常の兵器で命中精度を飛躍的に向上させた結果,核兵器を保有する意味は失われてきた,と指摘します.また日本は,既存の核保有諸国のように,他国を無視して核実験を続けるために必要な,砂漠や海洋の無人島を保有していません.それでも,小沢氏の発言は,将来もアジアの関心ある人々の意識から去らないでしょう.
FT February 19 2004
The candidate with a winning vision
By Philip Stephens
BG 2/19/2004
Time to reach out
NYT February 19, 2004
And Now There Are Two
WP Thursday, February 19, 2004
Waiting for Edwards
By Richard Cohen
(コメント) ブッシュ,ディーン,ケリー,エドワード.この4人の政治家を通して,私たちは,アメリカと国際政治の将来における可能性を想像し,試しています.アメリカ政治という独特の庭師が,世界庭園を造成中なわけです.
ブッシュは得点を稼ぐつもりで単独インタビューに応じ,失点を重ねて,「戦争指導者」の自分をやたらに強調しました.ディーンは,民主党支持者にとって,2000年の怨恨だけで闘う愚かさを諭す暗黙のセラピストとして興行を終え,他方,ケリーが愚かな戦争指導者に対する「選挙に勝てる」安定した政治家のイメージで支持を広げました.しかし,大統領になるのに,本当に,それだけで良いのか? という物足りなさ,そして今のワシントンへの不満を,エドワードへの高まる支持が反映しています.
エドワードの長所は,彼が未来を語っていることです.ブッシュは9・11を,ハワードは2000年やブッシュの戦争を,ケリーはベトナムを思い出させるのに比べて,たった一期目の上院議員でありながら,その若さとエネルギー,街頭演説での弁舌に示されたエドワードの情熱は本物だ,とStephensも認めます.しかし,現職のブッシュが有利であるのは,彼が11月の争点を選べることです.他方,エドワードは,人々が自分の力で政治を変えたいと願った,ディーンの広めたポピュリズムの熱気を引き継ぎます.
ケリーとエドワードはファースト・ネームが同じです.この二人のジョンの違いは,一方が数年しか上院におらず,他方は20年近くもいることです.それゆえ,若いエドワードはNAFTAに投票していません.二人を比べると,若いエドワードの方が,ケリーよりも保守的であり,保守派が攻撃する「リベラル」の印象と異なります.彼は貧しい者や差別された者に強い共感を示しますが,死刑を支持し,国民健康保険を強調せず,同性愛の結婚でも少し異なった立場です.アメリカ人は,過去の選択に関するケリーの長い弁解よりも,未来に向けたエドワードの強烈な弁舌を好むようです.
アメリカ大統領選挙の特徴は,候補者たちが,その街頭演説を繰り返し試されることです.Cohenは,エドワードの長所と短所を描きます.「エドワードは,街頭演説において,アメリカのどこかで暮らすある少女のことを想像した.「彼女は空腹のままベッドに入る.明日は今日ほど寒くないように,と願い,祈っている.彼女は,暖かさを保てるコートなど持っていないから.」 エドワードが活き活きと想像した,この病弱で,かわいそうな少女のことを,私は後から何度も想った.私は,エドワードが彼女を包み込む姿を想像できる.しかし私は,彼女が目覚めたとき,彼が彼女のために何をなすべきか,知っていると思えない.」
エドワードのメッセージとは,彼が自分と同じアメリカ人の一人でしかない,という感覚です.彼が二人のアメリカ人と話すとき,時間とエネルギー,教育,そして「草の根の政治」に参加する関心を持ったアメリカ人に話しています.しかし,彼の少女のように空腹のまま眠る者でなくても,失業や健康保険,ウォル・マートの進出に眠れない夜を過ごしています.雇用の流出? もちろん,けしからん! とエドワードは答えます.しかし,英語を話す貧しいインド人が働くことを,彼は阻止すべきでしょうか?
Cohenは,事の成り行きを悲観します.エドワードはケリーの良いパートナーとして,ブッシュを叩く弁舌に磨きをかければ良い.しかし,空腹と寒さに苦しむ少女は,待ち続けるしかないだろう,と.
FT February 18 2004
Two years in the trial of Milosevic
By Nikki Tait
(コメント) 私たちが,戦争の指導者を,しかも国家の政治指導者を,国際法廷で裁くということは,いわば戦争そのものを法律によって裁くことができる道を開く,と期待されました.もしそうであれば,国際法による裁判ではなく,戦争によって現実を有利に変更しようとする政治指導者たちが,そのような考えを根本的に改める日も近いはずでした.
しかし,予想通り,ミロシェビッチの裁判は紛糾し,長期化しています.それは,最高権力者の影響力を,法律が求めるような意味での明示的な証拠で,戦争における大量虐殺の罪と結びつけることが,本質的に,難しいからでしょう.ミロシェビッチが求めるように,ビル・クリントンやジャック・シラク,トニー・ブレアなどに証言させるべきでしょうか? そして,この巨大なTVショーは,裁判の正当性を容易に失わせる危険な要素を満載しています.関係者たちは,法廷の手続きが公正かつ厳格に行われることを通じて,法と裁判への理解を少しでも得られるよう,望んでいるでしょう.
Feb. 19 (Bloomberg)
Did the EU Create a Frankenstein Currency?
David DeRosa
The Observer, Sunday February 22, 2004
Trying to cut a dash in the eurozone
William Keegan
(コメント) DeRosaは,フランケンシュタイン通貨,あるいは怪物通貨として,ユーロを攻撃します.アメリカ・ドルに代わる国際準備通貨として,ヨーロッパの政治家たちが作ったユーロは,今やヨーロッパの産業や政治の息の根を止めつつある,というわけです.彼らはECBに助けを求めますが,ECBは口先の弁解だけで,行動しません.ユーロを構想した背景には,世界の中央銀行がポートフォリオ投資と同じように行動する,という前提がありました.ではなぜ,成長率の高いアメリカのドルではなく,成長率の低いヨーロッパの通貨を買い続けるのか? この上に,アジア諸国が準備通貨を分散して,ドルだけでなくユーロを保有しようとしたら,何が起きるのか? ヨーロッパの不満は,怪物ユーロから,EU自体へ向かうだろう,と.
他方,Keeganはイギリスのユーロ加盟を推進します.そしてブレアが,イギリスはユーロを採用する,と主張していながら,実際には,イラクへ向かわせたことを強く批判しています.Keeganがユーロ加盟をいよいよ強く希望する理由とは,イギリスが国際政治においてもEUにおいても主要な役割を担うべきであるから,また,ロンドンが将来も主要な金融センターであるべきだから,また,フランスが固執した成長重視の姿勢と,ドイツが固執したインフレ抑制の立場は,現実の中で修正されたから,そして,ドイツは不況を脱するためにイギリス的な労働市場の弾力化を目指しているから,さらに,ヨーロッパは協調して景気刺激策を取らなければ効果を得られないから,などです.もしそうであれば,ヨーロッパはユーロ高をこれほど悲観することなどなく,むしろドル安を勝利と見なせたわけです.
LAT February 19, 2004
Mr. Bush's Grand Illusions
By Andrew J. Bacevich
(コメント) ブッシュ氏が今すぐに学ぶべきことは,身ぎれいな,幸福な戦争の幻想を振り払って,アメリカの政策を実際に役立つ姿に転換することだ,とBacevichは主張します.政治においては,常に新しいものを作り出すことが現在を決めます.それは,幻想(理想)と政策との間を往復し,思考し続けなければなりません.恒久平和や普遍的自由,基本的人権の尊重,が一方にあり,他方には,歴史の複雑さ,人間の示す頑迷な不完全さ,権力とその限界がもたらす冷徹な事実,があります.
ブッシュ政権とアメリカは,この両方から離れて,孤立しています.アメリカの外交政策は,空想の攻撃に対する先制攻撃を続け,敵を増やして,財源や兵士,正当性を失い続けています.ブッシュ氏は幻想を捨て,リアリズムから出発しなければなりません.アメリカの外交政策が依拠している幻想とは,1.(冷戦とともに)歴史は終わり,アメリカ的な民主主義的資本主義を世界中に普及させる使命を果たすときだ.2.アメリカさえ指導力を示せば,世界は容易に従うはずだ.3.情報化の時代は,ワシントンの駆使するハイテク化された軍事力によって,どのような目的も達成できる.4.唯一の超大国として,アメリカは圧倒的な(世界)権力を得た.
ブッシュ政権は,その理想(幻想)を公的に放棄しないまでも,その後の歴史から多くを学んだという姿勢を示すべきだ.もしそうでなければ,アメリカ国民はさらに膨大な教育費を支払わされる,と.
Feb. 20 (Bloomberg)
Japan's Kanebo Hurts Taxpayers and Economy
William Pesek Jr.
FT February 24 2004
Japanese recovery
(コメント) 日本の回復は今度こそ本物だ,なんて思う前に,カネボウ再建の推移を考えることだ,とPesek Jr.は言います.なぜカネボウは花王との合併を破棄して,産業再生機構に救済を求めたのか? カネボウは市場型の再編を恐れ,株主の不満や労組の不安を口実に,経営者が安易な再生機構からの借金を得た.債権銀行は再生機構に融資を肩代わりさせた.再生機構は企業の救済・再建に成果を上げたと自慢した.そして国民だけが,花王によって再生する場合には必要なかった税金の投入を強いられ,しかも,カネボウの経営が改善される保証は無い.まるで,円高を阻止することしか能が無い,日本の政策と同じである,と.
FTも,日本の「7%成長」という統計が示す楽観を疑います.最大の理由は,前年同月比で33.8%も増加した,中国への輸出です.中国の成長は,日本の脅威ではなく,救済者となりました.それが日本国内の設備投資にも火を点けたようです.この回復は持続するのか? FTは二つの解釈を示します.一つは,日本の過剰貯蓄がまだ当分は解消できない,というものです.もう一つの解釈に拠れば,ようやくバブル崩壊後のバランス・シート不況が終わった,というものです.
しかし,いずれにせよ,日本が成長を実現するには輸出の拡大が必要であり,それはアジアの成長に依存している.そしてアジアはアメリカ市場を必要とする.この戦後の成長パターンは継承され,結局,世界第二の日本経済が国内需要を刺激して世界経済を牽引する役割は望めないだろう,と厳しく批判します.
BG 2/20/2004
Political science
LAT February 20, 2004
A Political Load on Science
(コメント) 政治家が嘘つきであるという非難は,しばしば聞かれます.しかし,環境保護から雇用創出,核拡散,食品,医療,財政赤字,その他,ブッシュ政権が科学を悪用して数字を偽っている,と全米の科学者が非難するという事態は,かねてから多くのコラムが指摘してきたブッシュ政権の悪しき本性です.
しかし残念なことに,水俣で日本政府が科学を偽って,水銀汚染を放置し,奇形の子供たちをもたらしたほど酷くは無い,とも比較されています.
IHT Friday February 20, 2004
Trade offers a sure path to peace
Stanley A. Weiss
(コメント) もしかすると再び,戦争するのではなく,国境を開放して,貿易することで相互に利益を得,平和が達成できる,とインドとパキスタンも学ぶかもしれません.
しかし,今,自由貿易について論争されていることは,@中国,もしくは人民元の切上げ,Aグローバリゼーションによる不平等や貧困,BIT革命に取り残される者,Cアフリカなど,開放型の政策を行えないような腐敗し破綻した国家,D児童労働や国際的な人身売買,そして,アメリカで急速に浮上したEインド,もしくはオフショアリング,です.アメリカ人の仕事が流出する?
NYT February 20, 2004
Dark Side of Free Trade
By BOB HERBERT
(コメント) 抽象的な「自由貿易」や「グローバリゼーション」,「アウトソーシング」の名のもとに,古典的なアメリカのモデルを失っても良いのか? とHERBERTは訴えます.それは「責任ある者たち,下層の経済集団から重労働によって這い上がってきたその家族を,際限なく吸収して拡大し続ける中産階級」のイメージです.好況にもかかわらず,アメリカ人は将来に,テロとは異なる,雇用の不安を感じています.激しい労働や勉学の末に,彼らは好ましい報酬につながる職場を見出せないかもしれない,と.
NYT February 20, 2004
In the New Economics: Fast-Food Factories?
By DAVID CAY JOHNSTON
(コメント) ハンバーガーと作る仕事と,自動車を組み立てる仕事とは,何か違うだろうか? アメリカ大統領経済報告書が提示した問題です.ファースト・フード店がハンバーガーと売るとき,その店はお客にサービスを売るのか? それともその生産物を売るのか? あなたが大好きな,失っては困る,大切な製造業の価値とは,何ですか?
NYT February 20, 2004
Edwards Notes Differences on Issue of World Trade
By KATHARINE Q. SEELYE and ELIZABETH BECKER
WP Friday, February 20, 2004
The Economics of Progress
By George F. Will
(コメント) 経済学に無知であることは,人を政治家として高い地位に就くことは妨げないようだ,と筆者はケリーとエドワードを非難します.ハーヴァードの俊英が説いた基本的な貿易理論に背くことが,余りにも愚かに見えたからです.「職場が失われて,経済が栄えることはできない」という常識も痛罵します.古い,生産性の低い職場が大規模に失われるほど,その経済は繁栄するのだ,と.
経済学が常に説得するように,市場と言うのは「ゼロサム・ゲーム」ではないのです.職場を守るために規制する,などという暴言を許しません.メルセデス・ベンツやホンダやトヨタがアメリカに工場を建てたのは,規制によってではない.むしろ,彼らの国より規制が無く,生産コストも安かったからだ.人々は,新しい技術や知識を得るために,教育や熟練を身に付けるしかない.
本当に,ケリーは,インド人のサービスを拒んで医療費が高くなっても良いのか? そうやって,経済政策の全体が蝕まれることが,望みなのか?
NYT February 21, 2004
Staring Into the Mouth of the Trade Deficit
By ELIZABETH BECKER
FT February 22 2004
Back to the Dark Ages
By Amity Shlaes
(コメント) 暗黒時代の到来か? これまで予想しなかったほど,大統領選挙は保護主義に染まってきた.ケリーとエドワードが,雇用の保証を求める声に動揺しています.経済学の原理も,自分たちが行うことの意味も分からずに,人気を競うしかないのです.
アラン・ブラインダーがケリーの政策顧問として,「生産性を高めること,貿易は成長と雇用をもたらす」と繰り返し教えても,またグレッグ・マンキューがブッシュに「アウトソーシングはアメリカにとって良いことだ」と教えても,政治家たちは彼らを無視し,あるいは非難して弁解させます.
それはクリントンも経験したことですが,今回のように自由市場への激しい批判,保護主義的な主張の容認は,選挙後の政権を縛るでしょう.それは国際的な多角主義を損ない,またその意図とは逆に,雇用を損なうのです.さらに,ケリーやエドワードは,知識や経験を裏切り,歴史を塗りつぶします.暗黒の中世のように.
BG, 2/22/2004
Edwards and Kerry split hairs on trade
By Thomas Oliphant
(コメント) ケリーはNAFTAを支持したことでエドワードに攻撃されています.NAFTAとは何だったのか? NAFTAは,アメリカとメキシコ,カナダとの関税を撤廃し,輸出入を増加させました.それは直接投資や成長の源泉であって,今のように,失業のスケープ・ゴートにされるべきではないのです.あるいは,二人とも中国がWTOに加盟することを支持したのです.NAFTAを改善する議論は必要であっても,二人は保護主義を主張していません.
NYT February 22, 2004
Meet the Zippies
By THOMAS L. FRIEDMAN
(コメント) 1960年代はヒッピー,1980年代はヤッピー,さて,用意はいいかい? 21世紀になって,職場を失ったあなたたちに代わって,ジッピーが誕生する!
「ジッピー」とは,インドの経済自由化によって誕生した情報産業で働く若者たちです.彼らは高所得で,郊外に住み,威勢よく歩きます.インドであれ,中国であれ,こうした高学歴の若者が育ってくれば,アメリカの職場はどうなるのか?
元労働長官のロバート・ライシュは,まず,職場の再訓練制度,生涯教育,失業保険などが必要になる,と言います.それから,個人サービスの分野で労働組合が組織されるでしょう.ホテルやレストラン,病院のようなサービスは海外に移転できないからです.アウトソーシングに対応した社会的なコストを賄う税金も必要になるでしょう.
少なくとも,ブッシュ氏のように市場を賛美しても,ケリーやエドワードのようにデマゴギーを振り回しても,労働者たちは救われないのです.保護や規制でもなく,積極的な社会政策こそが必要だ,と.
NYT February 22, 2004
Two Tales of American Jobs
By EDMUND L. ANDREWS
Feb. 24 (Bloomberg)
What India Can Do to Fight Outsourcing Backlash
Andy Mukherjee
NYT February 23, 2004
My Anti-Stump Speech
By WILLIAM SAFIRE
(コメント) 筆者は街頭演説やニュースが取り上げる間違ったイメージを批判します.今のアメリカは雇用が失われ,景気が回復しても,労働者はますます貧しくなっているのか? それは嘘だ.クリントンの時代と比べても,今はインフレが抑えられ,景気回復とともに雇用が増加しつつあり,バブル絶頂期の水ぶくれした雇用水準と比べるのは間違いだ.「生産性」や「アウトソーシング」は大部分の労働者の生活水準を改善しているのであり,大統領候補たちは間違ったイメージを流布している.
二つのアメリカがある.一方は,悲観的アメリカ.関税障壁,コストのかかる社会給付を政治家たちにねだり,後悔,羨望,憤慨を撒き散らす.他方は,楽観的アメリカ.競争,機械,開放性,自由に反応し,明日の雇用を生み出すだけでなく,その繁栄を世界の隅々まで行き渡らせる.私は後者が好きだし,あなたもそうであって欲しい,と.
NYT February 23, 2004
Debate Over Exporting Jobs Raises Questions on Policies
By STEVE LOHR
(コメント) 雇用流出は現代の失業問題の一面でしかなく,アメリカが直面する二つの課題に答える必要がある.一つは,国際競争の新しい波に対応すること,もう一つは,職を失う労働者を新しい職場に向かわせること.その背景は,急速な技術変化と,莫大な教育ある労働者を抱えた中国,インド,東ヨーロッパが,最近になって,初めて世界貿易に参加したことです.
そこに潜む問題とは,優れた企業はますます世界的に展開して技術革新と世界競争の先端を目指すが,同時に,課税を回避し,減税や補助金を得ながら,職を失った労働者たちを助ける社会的なコストは担おうとしないことです.労働者が新しい職を得るのを支援する制度は,政治的な支持と財源を必要としています.
たとえば,ロバート・ライシュは賃金保険を支持します.新しい職場に移ることで賃金が減った場合,その半分を上限として,1年ないし2年まで補填するのです.もう一つの提案は,雇用流出を法律によって抑えることです.しかし,大幅な賃金格差を考えれば,そのような手段はほとんど効果が無い,と批判されます.失望した労働者たちは保護主義を求め,アメリカは自分の足を撃ち抜くことになる,と.
FT February 24 2004
Trade is not bad for US jobs
By Martin Wolf
(コメント) Wolfも,なぜ生産性の上昇を非難しないのに,輸入や雇用の流出は激しく非難されるのか? と問います.その違いは,外国人が含まれるかどうかである,と.外国人は投票しませんから,政治家がいくら激しく非難しても,失うものは無いわけです.なぜ,より少ない労働者がより多くの生産物をもたらす場合に賞賛し,より安価な財やサービスを外国から購入すれば憤慨するのか? どちらも,もし新しい雇用が無ければ非難され,新しい雇用があれば賞賛されるべきです.そして,それは経済成長と労働市場の弾力的な調整能力にかかっています.
しかも,貿易を通じた競争は生産性を高める刺激となり,新しいITソフトウェアのアウトソーシングは,ハードウェア以上に,アメリカ経済に多くの雇用と利益をもたらすだろう,と予想されます.増大した富が,新しい雇用をもたらすからです.政治家はコストを押し上げるような規制を行ってはならないし,貧しい労働者たちがグローバリゼーションに参加する機会を奪うような保護措置で雇用を守るという,政治家が吹聴する幻想を信じてはならない.
WP Tuesday, February 24, 2004
Dishonest Trade Talk
By David Ignatius
FT February 28 2004
A transatlantic split over offshoring
NYT February 27, 2004
Overpromising on Trade
NYT February 27, 2004
What Goes Around . . .
By THOMAS L. FRIEDMAN
(コメント) インド,バンガロールにあるthe 24/7 Customer call center(利用者のための電話案内サービスを提供する会社)を訪れたFRIEDMANは,その創設者S. Nagarajan.に「ここのインド人労働者が,アメリカ人のホワイト・カラー職を奪ってしまうことが,アメリカにとっても良いことだ,と示してください」と頼みました.
Nagarajanは,根気よく説明しました.「このオフィスを見渡しますと,すべてのコンピューターをコンパックから買っています.その基本ソフトはマイクロソフト製です.電話はルーセント社の製品だし,エアコンはキャリアー社,清涼飲料はコークです.」「何よりも,この会社の株式の90%はアメリカ人投資家が所有しています.」
また,アニメの製作に関わる職場が流出しました.しかし,デジタル加工は確かにインドで行われますが,その脚本はアメリカの作家が担当し,音楽はイギリスに注文されています.こうした分業体制が,新しい富と雇用をもたらすことに反対する者は,インドのアニメがアメリカの雇用を奪い,同時に,雇用をもたらすことを理解していない,と.
NYT February 27, 2004
The Trade Tightrope
By PAUL KRUGMAN
(コメント) 民主党の大統領候補たちは,労働者たちの雇用を守らねばなりませんが,保護主義に流れてもいけません.そこで,KRUGMANはこう教えます.
自由貿易は誰にとっても利益になる,と教えるとしたら,それは悪い経済学だ.実際には,自由貿易によって勝者と敗者が生じる.グローバリゼーションは,ますます多くの勝者と敗者を急激に生じている.だから労働者たちは,雇用が中国やインドへ流出してしまう,と恐れている.それは決して幻でも,愚かなことでもない.そして,政治家は彼らの不安を十分に聞いてやらなければ,自由貿易そのものが政治的な支持を失ってしまう,と知っていなければならない.
もしケリーが,スピード規制や,アウトソーシングに関する事前の情報提供を企業に求めるとしても,それは保護主義ではない.アウトソーシングを促すような税制を改めたり,他国の市場開放,環境規制や労働基準の遵守を強く求めたりしても,それは世界の自由貿易体制を脅かすものではない.むしろ問題なのは,「それだけで十分な政治的安全弁になるのか?」ということだ.
KRUGMANは,もし国内政策がそれを補完するなら,そうだ,と考えます.すなわち,KRUGMANの考える政治的に維持可能な自由貿易論,もしくは保護主義への歯止めとは,失業者を減らし,もっと雇用を生み出すような経済政策や,国民的な健康保険制度を,含んでいなければならないのです.それは,共和党や,ブッシュの政策ではない,と.
BG, 2/21/2004
America is complicit in illegal wall...
By Jeff Halper
NYT February 23, 2004
A Wall as a Weapon
By NOAM CHOMSKY
LAT February 24, 2004
A Fence That Makes Sense
By David Makovsky
NYT February 21, 2004
You'll Never Walk Alone
By DAVID BROOKS
あなたが大統領に立候補するなら,それはあなた自身が社会的な禁固刑に処せられることを意味する.しかし,それは独房に閉じ込められるのとは逆に,今から選挙の日まで,あなたが決して一人になれないことを意味する.また,あなたは決して沈黙もできない.
あなたは大きな公会堂に飛び込み,話し始める.こつを覚え,話し続けて,ヴァンの中では記者たちの中に入って,まだ話し続ける.あなたは握手する口になるのだ.しかし,あなたがしているのは本当の会話ではない.なぜなら,あなたは多くの人々と,同じことを,何度も繰り返すから.
普通の会話では,新しいことを学びながら,人々の考えが進化する.しかし,あなたが加わったゲームでは,空論家のご都合主義,矛盾だらけの偽善,そして弱点としての曖昧さが進化を乗っ取る.心を変えることや,間違いを認めることは,政治的な罪であり,マイナスのイメージを一週間も流す羽目になる.
だから誰かがあなたに質問したら,あなたの頭脳は高速でハード・ドライブを検索し,450字の適切な回答を見つけ出す.というのも,あなたは既に200回も同じ質問に答えてきたから.あなたは練習していない考えを示すような冒険をしてはいけない.率直に答えるのは危険である.あなたが利巧であれば,むしろ一切,考えないように訓練するだろう.あなたは十分に警告を含んだ独白に終始する.そうすればあなたは,後で何が起きても,その一貫した姿勢を示せるから.
忘れてはいけない.あなたはもはや人間ではない.あなたは怪物(freak)なのだ.あなたはその確信と全知を演出し,本物の指導者であることを証明する.
あなたが入るすべての部屋で,あなたはそこを支配する.それがあなただ.選挙戦はあなたのためにある.広告もあなたのために.戦略会議もあなたのことだけを話し合う.あなたであることが,何よりも重要になるが,それは決して本当のあなたではない.それはあなたの形而上の存在(the meta-you)だ.あなたの人生の複雑さは消え去り,際限なく繰り返される,ほんの幾つかの瞬間や決まり文句に集約される.たとえば,戦争ヒーロー.信念の人.練達者.危機の指導者.・・・
あなたのイメージが膨れ上がることを意識すると,あなたは現実の自分を失うだろう.しかし,それはどうしようもないのだ.なぜなら,あなたは党の希望であり,国民の半分がそう願い,あなたに頼っているから.だからあなたは,女王蜂のような生活を続けるしかない.あなたはマネージャーの指図に服従しなければならない.状況が異なれば嫌味と思うような仕方で,あなたはその個性を自慢しなければならない.毎日,あなたには「行事」の予定が詰まっている.しかし,それは決してイベントと言うほどのものではなく,単なる演説会だが.あなたはほら穴のようなホールに入り,いつも同じ曲が流れ,同じ歓声を浴び,同じジョークを最初に飛ばす.そして,それがまったく初めてのようなふりをする.
あなたはそこで,人々が歓声を上げようと待っている,彼ら自身の考えを述べる.しかし,奇妙な瞬間が訪れる.お世辞を聞いてもぞくっとしなくなる.それらが日常の些事になる.その瞬間に,突然,勝者となる人間が決まるのだ.人々があなたの多くの素晴らしい性質を賞賛してくれるかどうか,あるいは,「形而上のあなた」を理想化された自分自身の延長として賞賛してくれるかどうか,それは分からない.
演説が終われば,使い捨てカメラが現れる.あなたと一緒に写真をとりたいだけの人もいる.すると政治はおしまいで,純粋に名声が問題になる.他方,お世辞を言うだけでなく,ときには,驚くほど心のこもったことを言う人がいる.息子の命をあなたに託すほど信頼している,と.そしてあなたは部屋を出て,5秒間で吹き飛ぶ親密さを積み重ねる.もしあなたが立ち止まれば,その人は感動して,ああ自分は大統領候補に出会ったのだ,と思い込む.
それぞれの選挙地区が終われば,あなたは選挙協力者たちの渦に舞い戻って,次にどこへ行けと囁く参謀たちの声を聞く.最近では,どこにでも小さなビデオカメラがあって,テレビに映らない瞬間など無い.そして資金を寄付してくれる人は,あなたに金をやるのだから,当然,自分の所有する競走馬のように,あなたを見る.彼らの助言は絶望的なほど曖昧で(「強いメッセージが要るのだ!」),愚かなほど偏っている(「もしお前がセメント産業の改革を考えているなら,この選挙は失敗するぞ!」).
あなたが完全に自分を見失ってしまったのでなければ,腐食性の強情さがそこにあることに気づくだろう.大統領選挙は,個性を剥奪し,思考を妨げ,自律的な己を破壊するために用意されたように思う.唯一つ言えることは,それが,この怪物じみた,シャボン玉に興じる少年のような,現代の大統領に向けて,あなたを準備させるものだ,ということだ.
NYT February 21, 2004
Total Poverty Awareness
By DAVID K. SHIPLER
(コメント) エドワードの「二つのアメリカ」演説で,アメリカの貧困が注目されました.連邦政府の基準で貧困線以下の国民が3500万人居ます.「テロとの戦い」と同じように,アメリカ政府は「貧困との戦い」を始めて40年近く経ちますが,問題は解決されていません.
SHIPLERは,「貧困の文化」ではなく,もっと広範な循環を成している生態系のイメージから,「貧困のエコロジー」と呼びます.個人や家族,学校,近隣,職場,政府サービスなど,それらは複雑に絡み合った「有毒な循環」を形成します.SHIPLERは,これまでのバラバラな貧困対策を無意味だとは言いませんが,それらを一つに統括するべきだ,と考えます.あるいは,ボランティアや寄付金と,政府の公的な財源や政策手段を組み合わせることで,この「貧困のエコロジー」全体を動かすことができる,と.
LAT February 22, 2004
Rise of the Off-the-Books Workforce
By Andrew M. Sum and Paul E. Harrington
(コメント) 他方,ジョブレス・リカバリーと所得格差の拡大を強めている背景として,移民労働者が新規雇用のますます大きな部分を占めている,という事実がある,とSum and Harringtonは主張します.ブッシュ大統領の移民に短期的雇用を認める政策は,アメリカ人の労働者が働きたがらないような職場に限る,と条件を付けていますが,こうした現実に矛盾します.ますます多くの移民たちが,アメリカ人は働きたがらないような労働条件や賃金で,多くの新しい職場に進出するでしょう.だからアメリカの移民政策は,もっとアメリカ人の労働者に配慮して,見直されるべきだ,と.
NYT February 23, 2004
Ralph Nader Does It Again
BG, 2/24/2004
'Free ride' to the ballot costly for Nader and Bush
By Thomas Oliphant, Globe Columnist
LAT February 24, 2004
Nader Is Crashing the Party Yet Again
Robert Scheer
WP Tuesday, February 24, 2004
Run, Ralph, Run
By Richard Cohen
WP Thursday, February 26, 2004
How Nader Could Help Bush
By David S. Broder
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The Economist, February 14th 2004
Japan is flying again
Japanese company debt: An end in sight
(コメント) The Economistは,日本経済の回復に関する強気と,改革への強い疑念とを,矛盾しないと主張します.強気の理由は,@景気循環,A中国への工業製品・資本財輸出,B企業や銀行のバランス・シート整理,C日銀の金融緩和,です.どれも現実に起きていることであり,回復の根拠は堅いと言います.
しかし,日本が抱えていた問題は解消されたのか? と言えば,もちろん,楽観できません.中国経済の減速や円高,人民元の切上げ,行き過ぎた金融緩和や国債価格,その他の心配は当然です.何よりも,日本はその金融システムを健全化したわけでもなく,資源の効率的な配分を促す仕組みを見出したわけでもなく,さまざまな規制と矛盾を抱えたまま,1980年代にあれほど飛躍し,90年代にあれほど幻滅させた構造を,そのまま引きずっています.
日本は,国債を減らすに十分な成長を回復できるのか? 回復を歓迎する政府や官僚,財界は,改革を忘れてしまうでしょう.だからこそ,本当に成長を回復したいなら,日本は民営化や規制緩和を加速し,競争を刺激しなければならない,と言います.それこそが,世界の成長に正しく貢献し,また日本の国民自身が長すぎた停滞と政策不能から解放される道だ,と.
Immigration: The tragedy of Morecambe Bay
(コメント) 中国からイギリスに向けて航海し,ランカシャー沖の冷たい海で死んだ多くの中国人たちは,イギリスの紙面を賑わせました.まず,非合法な移民を斡旋・仲介する「蛇頭」のような組織が非難されました.あるいは,中国の貧しい農村とイギリスをつなぐグローバリゼーションの罪が問われました.しかし,結局,それは移民たちを労働市場から排除する法律が強いた結果ではなかったか? とThe Economistは問います.彼らに短期の就労許可を与え,非合法な仲介業者を摘発するべきだ,と.
これは,上記のSum and Harringtonと逆の主張です.私は,Krugmanが自由貿易の政治的基礎を議論したように,移民も議論しなければならないと思います.
Lexington: A useful piece of scream therapy
(コメント) ディーン旋風の意味は,民主党に,やればできる,というガッツを取り戻させたことだ,と指摘します.ゴアの勝利を盗まれた,ブッシュの戦争に加担させられた,という民主党支持者たちの無力感や敗北感に対して,ディーンの躍進は心理療法となったわけです.
A special case: A survey of Switzerland
(コメント) スイスの特集です.スイスも,新しい政治環境に適応して,これまでの政策を修正しつつあります.スイスの民主主義,スイスの経済,スイスの銀行,スイスの軍隊や外交政策は,変化を迫られています.
スイスと言えば,アルプスの清廉なイメージでしょうか? あるいは裕福なリゾート地? 銀行の秘密口座? 戦争の無い,理想的な永世中立国? しかし,現実にはナチスとの取引によって戦争を回避しましたし,虐殺されたユダヤ人の資産を,長い間,公開しませんでした.世界中の犯罪者や独裁尾者がマネー・ロンダリングに利用し,多国籍企業が脱税や政治家への収賄に利用している,と指摘されています.国土や環境を保全するために補助金を支払い,二重化した経済構造において,多くの移民労働者がその底辺を支えています.ますます高齢化する社会的給付は,従来の保守的な財政を逸脱して赤字を増やすでしょう.かつて国民皆兵がさまざまなスイスの人的コネクションを育み,特に金融界の内部サークルを支えましたが,そうした伝統は失われています.周辺をEUに取り囲まれ,安全保障のあり方も変化している中で,従来の外交政策も転換するしかなく,2002年に国連加盟をようやく承認し,ユーロやEUへの加盟も議論されています.
低成長と失業の増加で,スイスも伝統的な生き方を反省しました.ますますヨーロッパに吸収されつつも,スイスの不思議さは残るでしょう.それは何よりも,住民投票制度です.政治・経済的な関係が深まり,政策決定や制度変更の多くがEUレベルで行われるとしても,EU自身がスイスから直接民主主義による住民の政治参加を学ぶ必要があると気づくはずです.