IPEの果樹園2004

今週のReview

2/23-2/28

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バレンタイン・デーとはまるで関係なく,ユーハイムのフランクフルター・クランツを食べました.私はこのお菓子が大好きです.洋菓子の世界には,他にも日本へ技術を伝えにやって来た職人たちや街の名が残されているようです.

この真っ白で,甘く,とろけるミルクのクリームと,柔らかいケーキの食感を,いつもながら満喫していると,「いつもご愛顧いただくお客様へ」という小さなメッセージに目がとまりました.「このお菓子が誕生したドイツのフランクフルト市は現在,ヨーロッパの金融都市です.」 ・・・そう,確かにECBの(少し味気ない)高層ビルが屹立しています.・・・「中世には戴冠式が盛大に行われた街として知られています.」 私は,お菓子と戴冠式と金融,という不思議な対比に,すっかり感動しました.

さらに,「純正自然な美味しさを追求し」,「食品添加物を一切使わず,ドイツの伝統的な製法と配合で,本当の美味しさに挑戦しております」と書いてあります.なるほど,本当に美味しいな,と思いました.「職人の品質へのこだわりをご支援ください.」 もちろん! このお菓子を作る「製菓マイスター一同」に,私は心から感謝します.

お菓子は,多分,中世の都市に集中した富裕な市民階層が生み出した,究極の職人芸の一つなのです.日本が西洋の技術や文化を導入して刺激を受けたとき,この職人たちに体現されたお菓子もはるばるやって来たのでしょう.同時に,他の分野と違って,お菓子では移民や直接投資が最初から重要であったことに,納得します.しかし今にいたっても,なぜ日本人は移民や直接投資を嫌うのでしょうか?

アメリカでは「ジョブレス・リカバリー」と呼ばれています.他方,日本もついに年率7%を越える急成長!? と報じられても,誰が納得行くでしょうか? 日本の景気回復は,「ジョイレス・リカバリー」かな,と思いました.朝日新聞が載せた専門家たちの解説を読んでも,何か新しいセンスが欠けているように思います.

ようやく試験の採点も終わって,すでに1年も前の中国調査旅行をまとめようとしたとき,中国の改革に関する素晴らしい解釈を読みました.樊綱(ファン・ガン)氏の『中国 未完の経済改革』です.私も,漠然と,中国の急速な成長を説明する鍵をルイス・モデルで考えていました.ファン氏は経済の二重構造が発生し,それを拡大することが改革を前進させる,と明快に理解します.たとえ地域格差や所得格差が拡大し,犯罪や汚職が深刻になっても,だからと言って改革を後退させるべきではないのです.

金融改革についても,ファン氏は,不良債権が国有企業を改革する過程で発生する社会的な負担であり,政府債務である,と明確に指摘します.それは決して管理できないような水準ではありません.中国が今後も成長を続けるなら,市場競争や外資の知識・技術を導入して国有資産を効率的に管理し,金融改革の一部として解決可能なのです.私は,かつて納得いかなかった中国の都市や農村の情景を思い浮かべて,彼の聡明な解釈に満足しました.

もちろん,ケーキが美味しくなっても,それでGDPが増大するわけではありません.しかし,もし世界中から技術や知識,移民,資本が行き交い,日本を刺激して,デフレや低成長でも生活の質を改善できるなら,その方が成熟社会にふさわしいように思います.

社会が抱える,多くの難しい問題に,正しい答えがあるとは限りません.そんなとき,少し苦し紛れですが,「立派な仕事をしよう」と子供や学生を励まします.お菓子を食べて思いました.私もいつか,感動するほど美味しいフランクフルター・クランツのような研究がしたいな,と.

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune


FT February 11 2004

What Haiti can teach today's nation-builders

By Max Boot

先月,ハイチは独立200年祭を祝った.誰も知らなかっただろうが.この島は輝かしい歴史を持っている.ナポレオンの軍隊を打ち負かし,1804年に最初の黒人共和国を創設したのだ.しかしそれも,現在の不幸を前に,色あせている.

ハイチは世界で最も貧しい国の一つだ.失業率は70%以上に達し,識字率は55%以下,平均所得は年440ドルしかない.エイズなどの病気が蔓延し,平均寿命は52歳である.

この混乱を治めるのが,元牧師の,アリスティードJean-Bertrand Aristide大統領である.彼ら1990年に選出され,1991年に軍隊が失脚させたが,1994年,アメリカによって復帰した.彼は,次第に野蛮で腐敗した政府に君臨するようになって,支持者たちの希望を台無しにした.彼の支配体制に向けられた広範な不満により,この数週間,警察と,武装した叛乱者との間で,流血の惨事が続いている.

ハイチを,希望を失った地獄として,放棄してしまうのは簡単だ.しかし,もっと関心を払っておくべきだろう.少なくとも,アメリカがイラクで苦しんでいることの教訓が得られる.すなわちハイチは,アメリカ型のリベラルな帝国主義について,その可能性と欠陥を示しているから.

アメリカはハイチを二度占領している.最初は1915年,ハイチが今以上に混乱していたときだ.ハイチの大統領が切り刻まれてから,ウッドロー・ウィルソン大統領は海兵隊をハイチに派遣した.それは理想主義(カリブ海に民主主義を輸出したい)と権力政治(フランスやドイツの介入を嫌った)から行われた.

秩序を取り戻してから,ウィルソンはハイチを勝手に放置することができなかった.海軍副長官のフランクリン・ルーズベルトが新憲法の起草を手伝い,アメリカ軍の駐留延長を要請する,という条約をそこに含めた.アメリカ海軍は警官隊を管理し,海軍大将が1920年代のこの国を支配し,大統領を指名した.

それは厳密な意味の民主主義ではなかった.しかし,アメリカの監督下で,ハイチはおそらくもっとも自由で,もっとも腐敗していない時代を享受した.支配者は道路や病院,学校を建てて,この国を豊かにした.しかし,当然,ハイチ人は外国による占領にいらいらし,大恐慌が起きると,大統領となっていたルーズベルトが1934年の海軍撤収を決めた.

権力は選出された政府に移譲されたが,民主主義は長く続かなかった.次第に独裁的となった大統領たちは,1986年まで続いたデュバリエの時代に頂点を迎えた.その後,再びアメリカが1994年に介入するまで,不安定の時代が続く.

ビル・クリントンがハイチを占領した理由も,おおむね,ウィルソンと同じだった.理想主義(民主主義の拡大)と私的利害(ハイチから流出する難民の抑制)の混合物である.ただし,今回は,アメリカ軍が前回ほど長く駐留することはなかった.ほとんどの兵士は半年以内に撤収し,力の弱い国連の平和維持軍が引き継いだ.だが,アメリカの樹立したアリスティードも,前任者たちと同様に,ひどい支配者だと分かった.

ここから,二つの重要な教訓を得る.

1.選挙は民主主義を創り出さない.アリスティードは2000年の選挙で92%の支持を得たが,その支配は,人道主義的でも,開明的でもなかった.ハイチは今より,たとえ選挙は行われなかったとしても,1920年代の方が恵まれていた.投票は素晴らしいが,法の支配はより重要だ.

2.アメリカの「国家再建」は上手くいく.ただし,アメリカの軍隊がそれを十分な期間にわたって維持する場合に限る.1934年以後,アメリカの占領軍が建設した道路はひび割れ,電話も機能を停止し,暗殺者たちが政府を再び乗っ取った.アメリカの占領が短かったから,1990年代のハイチは少ししか改善されなかった.

こうした教訓をイラクに当てはめれば,明らかに,選挙を実施することは二次的な問題でしかない.アヤトラであるシスタニ氏が望む直接選挙か,アメリカの統治責任者であるブレマー氏が望むコーカス方式か,そんなことはどうでもよい.最も重要なのは,基本的な自由を擁護する憲法を確立し,それを維持する非政治的な治安維持の軍事力を創ることなのである.

そして,アメリカが出口に殺到しない,ということが決定的である.1920年代のハイチのような長期の帝国支配は,もはや受け入れられない.しかし,民主主義の発展を促すために,アメリカ軍はイラクに長くとどまるべきである.それは多分,数十年だ.もしアメリカ軍の撤退が早すぎた場合,イラクは油田を持ったハイチになるだろう.


WP Wednesday, February 11, 2004

Crisis in Haiti

(コメント) WPは,ブッシュ政権の放任姿勢を批判します.すでに革命と無秩序の分岐点に立って,ハイチは死傷者を増やし,政府が崩壊しつつあります.それにもかかわらず,かつてクリントン政権のハイチ介入に反対したブッシュ氏はこの混乱を放置し,結局は,アリスティード大統領が退陣してから秩序を再建すれば良い,と考えているのではないか,というわけです.

しかし,放置すれば次の政府は安定や民主主義を尊重する,とは限りません.多くの暴徒は,以前の独裁者が育てた暗殺集団を含んでいます.確かにアリスティードは,選挙によって政権を得ながら,貧困を緩和できず,議会選挙を操縦し,ジャーナリストや人権活動家,反政府派に対する暴行を放置しました.改革や妥協はどれも実現していません.かと言って,街頭を埋める暴徒に都市を略奪させることで,ハイチの国民が救われるわけがありません.

では,どうすれば良いのか? WPは,カリブ諸国の外交的な介入と政治的な解決の模索を,アメリカ政府と軍隊が責任を持って実行させることだ,と考えます.もしブッシュ政権がその役割を無視し続ければ,フロリダに向かうカリブ海には悲惨な状態の難民が溢れるだろう,と.


Feb. 11 (Bloomberg)

Is Alan Greenspan Behind China's Bubble Too?

William Pesek Jr.

グローバリゼーションは連邦準備制度を世界化する.

連銀はアメリカを12の地区に分けているが,その影響は国内にとどまらない.それゆえ,ラテン・アメリカを13番目の地区,東南アジアを14番目の地区,ロシアは15番目,中国は16番目,などと考えることも不自然ではない.そうであれば,また,アジアで二番目の経済である中国が危険な資産バブルを形成し,投資家が不安を感じていることについて,連銀を責める意見が出てくるのも驚くことではない.

その非難は,ワシントンのアラン・グリーンスパン議長とその仲間におよぶ.結局,アジアは連銀の監視レーダーには入っていないのだ.連銀は1990年代後半のアメリカのバブルについて攻撃を受けてきたが,その世界的な影響はアジアで感じ取られている.「連銀の委員会は低金利をかなりの期間続けると約束したことで,危険な資産への投機を煽った」と,香港を拠点とするMorgan Stanley Asia Ltd.のAndy Xieは言う.

「この投機の副産物として,アメリカには資産効果が現れ,中国では安価な資本が投資ブームを過熱させている.これらはバブルの双発エンジンであり,見方によれば,これが今日の世界経済を動かしているわけだ」と,Xieは説明する.

その回転は,連銀が政策転換するか,融資で積みあがった世界中の危険な資産が金融危機を生じて,止まるだろう.「歴史は連銀を許さない」と,Xieは言う.「投機的な行き過ぎに順応し,あるいはそれを煽動しさえする連銀は,現代世界経済の巨大なバブルを引き起こす主要原因であり,その結末を知るのはこれからだ.」

連銀犯人説には異論もあるだろう.しかし,アジアに流れ込む投機的な資本が昨年記録的な水準に達し,1996年のピークを越えたことは疑う余地が無い.1996年の資本流入先は,香港,韓国,東南アジアであった.今回は中国だ.1990年代の資本流入先がそうであったように,中国でも投資バブルが起きている.

2003年,東アジアの外貨準備は,その貿易黒字を2340億ドルも超えて増加した.それは1990年代には年平均260億ドルであったし,1980年代には83億ドルであった.昨年のアジアにおける主要な資本の受け手は中国と日本だ.その増加は,連銀がアメリカの成長を高めるために果敢に金利を引き下げた2001年に始まった.そして時計仕掛けのように,1996年以来初めて,中国の外貨準備が貿易黒字以上に増加した.資本流入はスピードを速め,昨年記録的水準に達した.

これについて何をなすべきだろうか?  中国は資本流入を減速させるために規制を強める必要がある,とXieは主張する.

そのような措置は自由市場の信奉者や,先週末に為替レートの弾力化を要請したG7諸国に対する冒涜行為である.しかし,中国政府が投機的な資本の急激な流入を長く放置すればするほど,金融危機を回避することは難しくなる.

Xieの意見は通説に背くが,それを無視することはできない.世界の指導者や経済学者,投資家の大部分は,中国の通貨が過小評価されており,中国政府は通貨の増価を許すべきだ,と考えている.それがまさに最近のG7コミュニケであった.しかし,「多くの人が言うように,バブルを冷却するため,中国の通貨を増価させれば,東南アジアで起きたように,一層の投機を促すだけだろう」と,Xieは言う.「さらに大きくなったバブルは,ハード・ランディングを不可避にする.」

中国はエコノミストたちに教科書を投げ捨てるべきまれなケースを示すだろう.既存のマクロ経済モデルでは,為替レートの弾力化が中国のバブルから空気を抜き,経済の過熱を回避させる.しかし,人民元の取引を自由化すれば,まさにその逆のことが起きるかもしれない.

中国政府は既に経済を冷却する手を打ってきた.たとえば中央銀行は,通貨供給の増大を抑制するために,商業銀行の預金準備を増やした.アメリカが金利を高くすれば,中国の加熱を緩和できるだろう.世界の投資家たちは,今週行われたグリーンスパンの議会証言に,そのヒントを捜し求めている.

「アジアに向かう巨額の資本転換は,ある刺激に応じた投機の波動が干満していることでしか説明できない」と,Xieは言う.「その刺激とは,通常,連銀の政策変更なのだ.」

グリーンスパンがこのことに拘っているとは思えない.しかし,中国の台頭に関わる投機では,次の二つのことを忘れないことだ.1.ワシントンで決まる連銀の政策が中国に大きく影響する.2.市場が中国の通貨政策について知っていると思うことは,100%の間違いであるかもしれない.


BG, 2/11/2004

The honeymoon is over, Mr. Bush

By Robert Kuttner

WP Tuesday, February 10, 2004

. . . To 'War President'

By E. J. Dionne Jr.

LAT February 11, 2004

After a Crisis, Bush Is No Reagan

By Lawrence Korb

(コメント) Tim Russert によるブッシュ大統領との生インタビュー "Meet the Press"が,マスメディアにおけるブッシュ氏の信頼性を破綻させる分岐点となったようです.度重なる虚偽の説明や正当化を,メディアが同情的に扱い,厳しい糾弾を避けてきた姿勢は改められるでしょう.彼が自ら「戦争指導者」として印象付けたように,彼の言動は事実に照らして正常に批判されるなら,耐えられないことばかりです.

Dionne Jr.は,ブッシュ氏が父親と同じ失敗を犯しつつある,と考えます.彼の父親も,外交において素晴らしい成果を上げた,と国民は認めていました.しかし,それは投票所に向かうとき彼らが考えたことではありません.ブッシュ大統領は,航空日をハイジャックして突っ込んでくるテロリストの世界にわれわれが生きている,というイメージに固執します.この世界で,テロとの戦争を指揮する戦争指導者として,ブッシュは自分を主張します.

戦争に至る情報が間違っていたとしても,MDWが発見できていなくても,9・11以後の戦争に染まった世界では,自分がこの戦争を果敢に決断し,指揮していることだけが重要だ,と主張します.彼は社会保障にも減税にも,それほどの熱意を示しません.しかし,彼の父親が再選されなかったのは,国民がその現実感覚を嫌ったからです.雇用,医療,年金,住宅,教育費,こういった生活感覚を大統領は示さなかったからです.

レーガンを真似ているといわれるブッシュの外交政策は,レーガンが1983年のレバノンで海兵隊にテロ攻撃を受けた際,また1986年にイラン・コントラ事件で失敗した際に取った対応から,もっと学ぶべきだ,とKorbは言います.

1983年10月23日,TNT火薬を満載したトラックが海兵隊司令部に突っ込み,241名もの犠牲者を出しました.レーガン大統領は2週間以内にカーター政権の高官を含む調査委員会を立ち上げ,テロリストだけでなくアメリカ軍の対応や指揮系統についても調査させました.そして,報告書が政府や国防省,レバノンでの駐留を批判したことを受けて,その年の末には自ら記者会見を開き,報告書の疑問に答えました.そして翌年の2月,海兵隊を撤収し,指揮系統の見直しや対テロ訓練の充実などを決めました.

1986年11月22日,イランへの武器売却による資金をニカラグアの反政府組織コントラに送ったことを知ったレーガン大統領は,今度も迅速に行動しました.すなわち10日以内に,共和・民主両党の上院議員とフォード政権の国家安全保障顧問を含むタワー委員会を立ち上げました.委員会はレーガン氏を含むホワイト・ハウスの50名のスタッフにインタビューし,大統領の日記を含む,すべての文書を調査し,3ヶ月で報告書を作成しました.報告書の批判を受けて,レーガン大統領は新しいスタッフとCIA長官を指名し,その責任を認めました.

他方,ブッシュ大統領は委員会の氏名や調査の範囲を限定し,しかも対象を北朝鮮,イラン,リビアに広げて,報告書の作成期限を遅らせました.レーガン大統領なら違ったでしょう.


The Guardian, Wednesday February 11, 2004

The real reason why we should fear immigration

Polly Toynbee

(コメント) フランスやベルギーがイスラム教徒の女性にスカーフを禁止する動きは,ヨーロッパに広がる移民は遺跡の政治的圧力を示しています.移民に寛容であったオランダ政府でさえ,移民の扱いでパニックに陥っているのであれば,他の諸国はどこも不安を感じています.イスラム教徒は,政治と宗教との分離,政治的寛容,女性の権利,社会民主主義といった既存社会の価値観に,移民が与える脅威を最も感じさせるのです.

他方,イギリス社会では多文化主義が成功していると思われてきました.イギリス人は,一世代か二世代を経て,ほとんどの新移民たちは同化し,宗教的にも穏健になるだろう,と期待しました.フランス人が,アメリカ文化やイスラム文化に染まることを永久に(しかし無意味に)嫌うのと違って,イギリス人は異文化にも愛想がよいのです.

しかし,Toynbeeは,違った意味で,イギリスでも移民流入は悪意ある論争になっています.それは労働党政府が広める多文化主義の中身に問題があるからです.人々は国境が管理できないことを恐れています.世界中の移民が法をくぐって流出入できるとしたら,私たちの課税や公的便益はどのように共有できるでしょうか? ブレアは難民の数を半減させると約束しました.それは開放的であった政府の移民政策を変質させ,次第に,選別的な移民労働力の利用に向かわせています.

アメリカやイギリスでは,多くの研究が繰り返し移民の利益を主張しています.移民は成長を刺激し,税収を増やし,経済を動かす力となります.特に,ホテルや配膳,建設などの分野で,雇用者はより多くの移民労働者を求めています.さらに,農業でも6万人の一時雇用移民労働者がいます.イギリス政府は,自由な移民流入を促すことが,イギリスへの投資を呼びかける際の,優れた条件であると考えています.

大蔵省は未熟練労働者の流入を増やし,雇用契約や最低賃金の規制に反対します.むしろ,EUの移民規制に対して,自国の「弾力的な労働市場」を誇ってさえいます.しかし,このことがイギリスにおいて賃金をますます引き下げ,イギリス社会の貧困を悪化させ,子供たちの生活を圧迫していることを認めません.人々が移民流入を恐れるには,十分な理由がある,とToynbeeは考えます.


NYT February 11, 2004

A Lower Yuan May Cut Trade Deficit

By EDUARDO PORTER

Feb. 12 (Bloomberg)

Venezuela's Bolivar Devaluation Raises Questions

David DeRosa

IHT Thursday, February 12, 2004

Here's a good way solve the dollar problem

Robert Hunter Wade

FT Feb 13 2004

Lex: US dollar

FT February 16 2004

A flexible renminbi

(コメント) 為替レートをめぐる最近のさまざまな考察です.中国政府も,アメリカ国内の保護主義に配慮して,人民元を5%程度切り上げることを検討している,と伝えられました.為替レートがアメリカの失業を説明する主要な原因ではない,と広く合意されていますが,人民元気利上げの効果については意見が分かれます.中国を世界的な調整から免れて「ただ乗りしている」という非難は続いています.しかしStephen S. Roachは,為替レートによって調整は進まない,と考えます.逆に,C. Fred Bergstenは,中国が25%の切上げを行えば,アメリカの貿易赤字が約400億ドル減少し,他のアジア諸国も為替レートを調整しやすくなる,と支持します.

ヴェネズエラの問題は異なります.政府は通貨ボリバルを17%切り下げたと発表し,同時に,来年は15%,さらにその翌年は10%の切り下げを計画している,と言われます.しかしヴェネズエラの通貨は,最初から,空っぽです.為替レートは市場の実勢を反映せず,資本規制されています.チャベス大統領は,石油の採掘で政府歳入の半分を賄い,石油の輸出を輸入財の支払いに充てます.政府は借金を重ね,かってに市民の消費や貯蓄を為替レートと債券発行で切り取ってしまうのです.これこそ独裁者の楽園でしょうか? それによって経済は極度に疲弊し,新しい投資を得るには,ドル建の国債を発行しなければなりません.

同じような国が北米にもあるじゃないか? とまでWadeは言いません.しかし,アメリカの赤字が問題となれば,それに代わる国際通貨が必要だ,という1960年代の論争が蘇ります.国際通貨をドルに頼っている限り,世界はアメリカの赤字を放任し,しかもアメリカが黒字になるように協力させられるわけです.では,どうすれば良いのか? 当時,SDRsという一つの答えが実現しました.これはIMFが赤字国と黒字国に帳簿上で計算する人工の通貨単位です.今は,その価値や金利を主要通貨のバスケットで決めています.赤字の国はSDRsで支払い,黒字の国は交換性のある通貨で支払います.赤字国はSDRsを金利とともに返済します.こうすることで,赤字国は経済活動の水準を(大きく)下げなくて済みます.

今もSDRsの使用は非常に少ないままですが,ジョージ・ソロスが世界の決済システムを改善する方策として,SDRsを使った「世界公共財」の供給を提案しました.裕福な諸国が保有するSDRsを基金に寄贈して,それに金利を支払います.基金の運営委員会は,世界の公共財として,たとえば結核の撲滅など,望ましい計画のリストを作成し,裕福な国はその中からいくつか選択して資金を提供します.こうして,ドルの国際通貨としての地位を段階的に引き継ぐわけです.

実際,G7コミュニケは「ピュロスの勝利」に過ぎない,とFTは言い切ります.それは人民元への投機圧力を強めるでしょう.しかし,アメリカ・ドルは調整に対して有効に機能するでしょうか? 中国政府は,投機的な資本流入や金融システムの不安をわずかでも容認しないでしょう.また,日本政府もコミュニケを無視して介入し続けるでしょう.それらが続く限り,為替レートは貿易不均衡の調整に利用できないのです.

もちろん,中国も日本も,その外貨準備を無限に蓄積することはできません.FTは,すでに人民元への資本流入は切上げの時期だけが賭けの対象になったことを示している,と警告します.中国国内のインフレが加速するか,アメリカやヨーロッパで保護主義の圧力が高まらない限り,中国政府はなかなか調整したがりません.しかし,危機のリスクは積み上がります.FTが推奨するのは,レート調整に応じる姿勢と不確実さを残す戦略,すなわち10%の切上げと,10%の変動幅を許すことです.国内金融システムの改革を経て,変動レート制へ移行するまで,資本規制と巨額の準備によって,徐々に調整を行えるはずだ,と.


NYT February 14, 2004

A Triumph for Big Sugar

(コメント) アメリカの農産物補助金は自由貿易を破壊します.補助金が無ければ,アメリカの砂糖農家は破産します.しかし,世界価格の3倍を支払わされる補助金制度があっても,砂糖の消費者は気づきません.今回も,砂糖農家はオーストラリアとのFTAから砂糖を免除しました.それは消費者だけでなく,アメリカの自由貿易推進と,海外の貧しい砂糖農家とを損ないます.


FT February 12 2004

The bad old days of fine-tuning

By Samuel Brittan

FT February 12 2004

Alan Greenspan sounds a warning

NYT February 12, 2004

Mr. Greenspan Weighs In

(コメント) 金融政策をめぐる最近の考察です.イギリスでは,金融政策(そして財政政策)を決める客観的な指標,NAIRUやインフレ目標,テーラー・ルール,安定協定のようなギャップの試算が行われている,とBrittanは批判します.こうした微調整と機械的な合理化は,金融政策を誤らせる,というわけです.

アメリカでは,グリーンスパンの金融緩和が引き締めに転じる時期をめぐって,論争されています.彼の議会証言を側聞するに,金融政策とはバランス感覚なのだ,と思います.政府と民間市場,短期と長期,国内のインフレと対外不均衡,そして,もちろん金利に関わるさまざまな業界の不満と,為替レートに関わるさまざまな利益団体からの苦情,・・・ 選挙の年に,それはますます難しくなり,少しでも不自然な行為は,政治的な配慮を詮索されるでしょう.

グリーンスパンは,こうした複雑な意図を組み合わせて正しく示す名手なのです.たとえば,生産性上昇は雇用の伸びを遅らせていますが,同時にインフレを抑え,低金利の持続を可能にしています.しかし,それでも政府が財政赤字削減や保護主義の排除に一貫した姿勢を示さなければ,投資家は信頼を失い,金利の上昇とドルの暴落を招く危険があるのです.グリーンスパン議長は楽観論を堅持しながらも,政府や投資家に厳しい警告を発し,潜在的なリスクに対する緊張感を持つように求めます.あるいは,聞く者によって都合よく何とでも取れる,複雑で曖昧な言い回しを工夫します.

他方,WPはグリーンスパンの証言に,空前の財政赤字を冒すブッシュ政権への弁解を読み取ります.なぜなら証言全体を通じて,彼は長期的な警告ではなく,短期的な景気の持ち直しを賞賛することに熱心であったからです.しかもポール・オニール前財務長官が公表したように,グリーンスパンとオニールがブッシュ氏の減税案を支持したのは,それを一時的なものにできる,と思ったからです.しかし,既に明白なように,ブッシュ政権は富裕層のために減税を恒久化するつもりです.グリーンスパンの証言は,正しいバランスを欠いたものではないか?


WP Friday, February 13, 2004

Mr. Mankiw Is Right

NYT February 15, 2004

Political Timing, Outsourced

FT February 18 2004

An economist's moment of truth

By Gerard Baker

(コメント) 大統領の経済諮問委員会委員長であることも,経済学者には難しい役割です.財政破綻を擁護し,自由貿易を唱えながら,農民団体,鉄鋼ロビー,砂糖富豪にも妥協して,委員会は偏った真実を吹聴してきました.N. Gregory Mankiw委員長は,ついに,この委員会の悪評を払拭するかのうような,たとえ受け入れにくいものであっても真実を述べたい,と思ったようです.すなわち,サービス職がインドのような海外へ移転されることにもプラスの面がある,と.ところが,この発言は議会の両党から激しい非難を浴びました.「300万人もの職場が失われているというのに,まだこれ以上,海外に移そうと言うのか?」「なんと馬鹿なことを考えるのか?」と,民主党の大統領候補,ジョン・ケリーは抗議しました.ブッシュ氏も「国内でより多くの職場を確保するために行動することが必要だ」と述べました.

しかしマンキュー氏の発言は,比較優位を正しく適用しただけでなく,製造業の職場にもサービス業の職場にも等しく適用したものです.NAFTAを支持したケリー氏は,労働者たちの職場が失われても気にしないが,サービス職には固執するのか? 光ファイバーが大陸間を繋ぎ,インドのように海外の豊富な英語を話す労働者がサービスを提供できるようになった以上,アメリカが保護主義によってこれを拒むことなどできません.彼らの再雇用を促進する計画は拡充しなければなりません.しかし,より安価なサービスを利用でき,貧しい諸国でより多くの雇用が生じることを,歓迎することのどこが悪いのか? とWPは主張します.

NYTは,それが選挙の年であるから糾弾されたのだ,と答えます.イラクではMDWが見つからず,国内では職場が見つからない.これこそ政府が最も心配し,民主党が叩きたがっていることです.ブッシュ政権がサービス貿易の自由化に熱心なことを非難して,エドワードは「今こそ,この政権をアウトソースしてしまおう」と呼びかけました.確かに民主党員たちからの攻撃に,自由貿易の原則から反論することも必要です.しかし問題は,農業であれ,鉄鋼であれ,ブッシュ政権の示した無原則な対応なのです.

ハーヴァード大学の高名な経済学者であるマンキューが,まるで文化大革命に巻き込まれた知識人のように,こうした失言を繰り返さないよう,政治家たちに反省を求められました.ヨーロッパで移民排斥の政治的風潮が吹き荒れているように,アメリカでは自由貿易のマイナスの側面に対して周期的に新しい汚名が浴びせられます.1980年代は「ハロイング・アウト」,1990目年代は「ダウン・サイジング」,そして1990年代は「アウトソーシング」です.

最も繁栄した市場経済として,アメリカが開放された市場から多くの利益を得たことは確かです.これまでのように高い弾力性を示して,アメリカ経済が偉大な雇用創出マシーンでもあることを証明できれば良いのですが,選挙までに,この政治的な論争を冷却できる見込みはありません.他方,それほど心配は要らないとしたら,他の新しい脅威論が人々の頭に充満することの方が確実だからです.


FT February 13 2004

Pensions questions that won't go away

(コメント) 年金問題が深刻化するのは,日本でも,アメリカでも,イギリス,フランス,中国でも同じです.寿命が延びて年金を支払う年数が増え,年金基金はバブルに翻弄され,今やインフレが起きないため負担が減ることはありません.最後は政府が企業年金の赤字を埋めるしかないでしょう.しかし,試算テストや,年金受給額の引き下げは,そもそもの貯蓄や年金加入を損なうでしょう.そして多くの人が老後に期待する十分な年金は失われるのです.

年金危機を打開するためには,政府が一層の決定的な行動を取るべきです.十分な政府による年金基金を低所得者に提供し,雇用者の参加と,人々の貯蓄を促す法制度が必要です.同時に,指導者は国民により多くの負担を求めるしかありません.そうすることで,退職後に十分な生活水準を保障されるのです.


FT February 13 2004

Haiti's crisis deepens

BG 2/14/2004

How to help Haitians

WP Monday, February 16, 2004

Helping Haiti

By William Raspberry

NYT February 19, 2004

A Way Out for Haiti

By JAMES DOBBINS

WP Thursday, February 19, 2004

No Help for Haiti

(コメント) ハイチの政権崩壊を,食い止めるべきか,放置すべきか,軍事介入すべきか,反政府運動を支援すべきか? これ以上の軍事負担を回避するべきか,近隣諸国の治安悪化を阻止すべきか? アメリカはハイチの民主化を唱えるべきか,彼らの国内問題として静観するべきか?


FT February 15 2004

The wrong way to sell reform

By Wolfgang Munchau

(コメント) ドイツにおいてシュレーダー首相が改革を進められない理由を,Munchauは,その手法に求めます.すなわち,改革の内容が不十分であり,しかも,改革に十分な政治的支持を集められなかったのです.それは,彼の改革が実現する経済的な成果について曖昧で,国民は不安を感じ,それゆえ貯蓄を増やすことで対応したのです.その結果,成長が実現しないと改革の成果が乏しいからだ,と訴え,ますます改革が加速すると不安を感じた国民は貯蓄に走ります.こうした予防的貯蓄の悪循環に,ユーロ経済圏全体が囚われました.

改革が経済低にも政治的にも成功するには,何を改革し,何は改革しないのか,その目標を明確にしなければなりません.改革を国民に売り込むためには,その過程が明確でなければならないからです.しかも,成長の潜在力を高めるか,社会保障・福祉の赤字を埋めるか,と言えば,Munchauは前者を否定します.改革の目標が明確に定義できないからです.何から改革を始めるべきか,も重要です.最初は,財市場や金融システムの改革が重視されますが,それは生産性や成長に大きな効果を及ぼすからです.他方,労働市場の改革は,決して,大きく進みませんでした.


FT February 15 2004

Europe's armies are already quietly integrating

IHT Monday, February 16, 2004

The bad old idea of the Big Three

Kirsty Hughes

FT February 17 2004

Triple alliance

The Guardian, Thursday February 19, 2004

Who rules Europe?

Timothy Garton Ash

(コメント) 独仏によるEU政治の運営にイギリスが加わることは,何か重要な進展をもたらすのでしょうか? あるいは,所詮,アメリカの仲介役として,独仏の裏交渉を補完するだけでしょうか? 独仏英の大国支配が,拡大されたEUに秩序をもたらすのか,恐怖をもたらすのか,混乱と分裂をもたらすのか? そもそも時代遅れの政治ショーでしかない? そして未来のヨーロッパは,問題別に,異なった主体が政治グループを構成し,交渉のテーブルに着くのでしょうか?


NYT February 15, 2004

Why Your Job Isn't Moving to Bangalore

By JAGDISH BHAGWATI

民主党の大統領候補になるかもしれないジョン・ケリーは,サービスをアウトソーシングする企業を批判した.しかし,ケリー上院議員は二つの点で間違っている.まず,経済学的に間違いだ.アウトソーシングは経済のパイを大きくし,アメリカ企業の競争力を高めるに過ぎない.世界経済において,より安価なサービスの供給を無視する起業は市場を失い,生産を減らす.企業が消滅すれば,もちろん,雇用はもたらさない.

次に,ケリーの発言は政治的に見ても間違いだ.アウトソーシングがアメリカの雇用を「持ち去ってしまう」という,労働者たちの抱く,理解できるが間違った恐怖心を利用することで,彼は民主党を貿易問題の間違った立場に追いやってしまう.ビル・クリントンがしたように,民主党員でも自由貿易の利益を説明することができるはずだ.まず,サービスを二つに分けることだ.一つは,単純な,労働集約的サービスだ.

経済的に見て,サービス部門の雇用を海外に移すことは,労働集約的な繊維やその他の製品を輸入することと変わらない.80年代や90年代にも,極東からの安価な製品輸入について,賃金や労働基準を切り下げたと非難する声があった.しかし,実証研究した者は誰でも,製造業の賃金低迷の原因が国内にあることを知っている.

もう一つは,高度な熟練の必要な,研究開発の仕事である.確かに,インテルのCraig Barrettは,300万人のインド,中国,ロシアの高等教育を受けた労働者が,アメリカで行われている仕事を効率的に行える,と予想した.しかし,それは誇張である.その水準に達した外国の技術者はまれであり,また,コンピュータの代わりに秘書を雇うことは考えられない.実際にR&D部門を海外に移転する企業は多くないだろう.

アメリカで実際に職場が失われるとしたら,それは技術変化が原因であって,アウトソーシングではない.結局,アメリカ経済はますます高度な技術に依存するようになっており,それはますます多くの技術者を必要とするだろう.それは地球の反対側から届く声だけではないのだ.


NYT February 15, 2004

Many New Causes for Old Problem of Jobs Lost Abroad

By STEVE LOHR

(コメント) 読者の抱く不安とバグワッティの確信的な自由化論との間で,バランスを取るかのように,NYTはこの長い記事を載せています.未来の自由貿易は過去と違うものかもしれない,と.すなわち,アウトソーシングの影響を受ける雇用の種類,それに対応する政策を開発する能力の点で,過去の自由貿易とは違い,調整が進まないからです.それがたとえより多くの貿易紛争とコストの増加をともなっても,人々は必ずしも絶え間ない再訓練や職場の移転を望みません.


BG, 2/16/2004

Fix what's broken in Iraq

By Ivo Daalder and Anthony Lake

(コメント) イラク占領を正しく行うために,ブッシュ政権は多方面の軌道修正と譲歩を行うべきだ,とDaalder and Lakeは主張します.イラク国民の反発を抑え,民主主義の目標を達成し,国連や同盟諸国の協力を得なければなりません.アメリカ軍が撤退するだけでは,イラクの混乱は深まり,戦略的にも道徳的にも破滅を意味します.

アメリカの三つの占領モデルは失敗しました.イラクは,1944年8月に解放されたフランスではなかったし,1945年の日本でもなかったし,国連のかかわりが少ない,2002年のアフガニスタンでもなかったわけです.それぞれに失敗であった理由が整理されています.アメリカの占領は「三振,バッター・アウト」です.それでも撤収するわけに行かないアメリカ軍には,政治的に妥協するしかありません.

イラクの各勢力に対して,彼らが求める何かを与え,憲法や選挙の過程においても妥協し,シーア派やクルドの政治的自立を許容し,国連や独仏とも暫定政権の構成や再建の進め方について妥協しなければなりません.それはブッシュ政権の面子を失わせることです.しかし,それがアメリカの利益であり,現実なのです.他方,もしブッシュ氏が共和党の利益や自分の再選に拘れば,こうした方針転換を先延ばしにするでしょう.


ST FEB 17, 2004 TUE

Will a greying Japan say 'arigato' to immigrants?

By COLIN DONALD

ST FEB 17, 2004 TUE

Give Japan credit for baby steps in Iraq

BY TOM PLATE

NYT February 15, 2004

Japanese Capital and Jobs Flowing to China

By KEN BELSON

Feb. 18 (Bloomberg)

Is BOJ's Fukui World's Best Central Banker?

William Pesek Jr.

NYT February 18, 2004

Strong Economic Growth in Japan

By JAMES BROOKE

(コメント) 「日本の変化」は,誰にも気づかれず,十分に理解もされず,その行方が定まらない状態で,しかし確実に起きています.@人口減少と,移民導入に向けた多文化社会の実現? A戦争放棄,武力の行使そのものを否定する憲法から,「普通の国」への脱皮? B中国経済への全面的な経済統合と,国内雇用の長期低迷? C日銀のさらなる金融緩和と,アメリカではなく中国への輸出に頼った急速な景気回復パターン?

だから日本の将来が明確になった,という印象はどこにもありません.本物のヴィジョンを持った政治家が,新しい分野や新しい世代において,理想となる人物や集団が,次々と輩出される仕組みが欲しいです.


ST FEB 18, 2004 WED

Going global compels US, China to cooperate

BANNING GARRETT

WP Tuesday, February 17, 2004

'New' China, Old Repression

By James Mann

(コメント) アメリカから広まる世界理解に依拠すれば,グローバリゼーションの時代に,もはや大国間の戦争はなくなり,各国は国際的な制約と,国内体制の新しい維持管理手法を開拓しなければなりません.もちろん,リアリストの見方では,アメリカは中国からの挑戦に準備しなければなりません.大国さえもが脆弱さを増して,世界は協調によってのみ支えられる? グローバリゼーションにおける,リアリストとリベラリストの対立は,現実に起きる事態と,それへの対応について,深く影響するでしょう.そして,繰り返される紛争の結果が重要です.

他方,Mannは,天安門事件の頃から,中国は何も変わっていない.変わったのは世界が中国の経済力に幻惑された結果,その人権抑圧的な体制に寛容になったことだ,と考えます.


FT February 17 2004

Asia will not rethink currencies soon

By Martin Wolf

(コメント) 日本を含むアジア諸国が為替レートを介入によって増価させないのには,合理的な理由がある,とWolfは認めます.

@     アジアは輸出依存型の成長を続けている.そのパターンを短期的に変えることは難しい.すなわち,投資バブル(日本,中国)や財政赤字の累積(日本)は好ましくない.

A     組み立てと輸出の最終拠点として,中国がアジア諸国をリンクしている.だから互いの為替レートを単独では調整できない.

B     外貨建て債務に依存することは危険である.だから,経常黒字の累積は望ましい.

C     アジア諸国では,いまだに国内貯蓄率が高い.

D     為替レートによる調整は,こうしたマクロ経済の均衡を変えることができなければ,デフレを引き起こす.

E     アジアの金融市場が未発達なために,ドルが企業や銀行のリスク管理を担っている.だからドル建の預金を保有し続ける.

すなわち,アメリカの労働組合やヨーロッパの諸政府など,部外者が不満を示しても,アジアの通貨は調整を拒み続けるだろう,というわけです.では,何がこうした大規模介入を終わらせるのでしょうか?

@     累積する外貨準備から生じるコストをアジア諸国が次第に意識する.たとえば,インフレや不動産バブルとして.

A     諸外国が貿易不均衡に対する不満を強めて,対抗的な強制措置(ニクソン・ショック)を採用する.

B     アジア諸国の国内市場が,消費を中心に拡大する.輸出への依存を減らし,通貨の増価を受け入れ可能に(さらに,好ましいものに)する.


FT February 18 2004

We need a common strategy

By Romano Prodi

IHT February 18, 2004

Europe can no longer rely on immigrant workers

Jonathan Power

(コメント) プロディ委員長は,政策,法律,教育,その他の社会的手段を使って,マイノリティーや移民たちへの差別と偏見,嫌がらせに対抗しなければならない,と主張します.

「われわれは平和を促進するためにできることは何でもしなければならない.なぜなら平和こそEUが設立された基本的理由であるから.平和とは,加盟諸国間の平和だけでなく,EU内に住む人々の平和も含まれる.そして当然ながら,安全を欠いた平和など意味が無い.このことは,ユダヤ人を含む,マイノリティーが一番良く知っている.彼らには特別な配慮と関心を受ける権利がある.」

他方,Powerは,移民問題と高齢化とを結びつけます.一方では一民を無制限に歓迎することはできず,他方で,高齢化する社会で今までと同じ退職後の生活保障は得られません.人々はより長く働くか,より多く貯蓄する(負担する)か,あるいは子供の数を増やさなければなりません.こうした問題を,社会がもっと意識的に取り組むように,75歳,あるいは79歳まで退職を遅らせ,あるいは出産と養育を支援する税制などを整備し,あるいは高齢者の再雇用を促し,仲介する民間企業が成長することを,日本もヨーロッパから学ぶべきでしょう.それと平行して,移民たちが社会の一部として活躍し始めるのです.


BG, 2/18/2004

Dean's chance to be a hero

By Robert Kuttner

FT February 19 2004

The Dean mutiny

The Guardian, Wednesday February 18, 2004

Spirit of the Dean machine

Gary Younge

NYT February 19, 2004

Goodbye, Candidate Dean

NYT February 19, 2004

Howard's End

By JON MARGOLIS

WP Thursday, February 19, 2004

Dean's True Legacy

By Maura Keefe

(コメント) ハワード・ディーンをどう見るか? アメリカ政治とは何か? 民主的選挙,指導者,マスメディア,インターネットとは何か?

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The Economist, February th 2004

Let the dollar drop

Currencies: Competitive sport in Boca Raton

Integrating minorities: The war of the headscarves

Lexington: The natural

Economics focus: Sickness or symptom?

(コメント) 一言で言えば,ドルはまだ下落するだろうし,The Economistはそれを支持します.不均衡が拡大する背景には,アメリカにも,日本と中国を代表とするアジアにも,ヨーロッパにも,それぞれの失敗があります.それはドルの減価が少しでも不均衡を抑制し,調整する方向に作用する,という支持論(調整コスト分担論)にもなります.

移民や少数派を排斥するより,社会的に統合する方がはるかに望ましいことは分かっています.しかし,どうやって統合するのか? フランスも,イギリスも,あるいはアメリカ,日本,オーストラリアなどにも,正しい方法は分からないのです.そして人々の不安と恐怖を煽る集団が現れます.政府が正しい方針を示し,行動しなければなりません.

ケリーだけでなく,エドワードが,アメリカの大統領候補として残る理由は何でしょうか? @経歴,A人物(価値観),B政治スタイルや生い立ち,Cタレント,言動のセンス(クリントンが持っていたような),Dアメリカ的な楽観主義(苦境にも負けず,前向きに進む),など.

そして,グローバリゼーションが増加させるかもしれない児童労働をなくすには,豊かな国(政府と市民)は何をなすべきか? 国際的な規制を強化し,児童労働による財・サービスの貿易取引を禁止するのか? もしくは,貧しい国や家族が豊かになることを支持し,自分たちの市場を開放する方が良いのか?