IPEの果樹園2003

今週のReview

12/8-12/13

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NHKの地球浪漫「樹の上に住むアメリカ人」を観ました.地上4メートルに,8ヶ月かけて300万円でツリー・ハウスを作ったロンプレさんは,創立9年目の銀行で融資審査の仕事を一人でしています.金融緩和で銀行の融資業務が忙しくなり,残業でストレスがたまります.そこで,樹の上に泊まって,自分だけの時間と空間を回復したい,と願うのです.

アメリカには自然を楽しむ余裕があります.私も,ヨセミテのコッテージに,家族で泊まったことがあります.巨大な木々と岩石に呑み込まれて眠るのは不思議な気分でした.こうした自然を楽しむ施設や歩道を,見事に整備したアメリカ人の知恵に感心します.たとえ貧しい移民の家族でも,週末には湖畔でキャンプしたり,海岸でバーベキューを楽しんだりするでしょう.少なくとも自然は,彼らに平等なのです.

あのカリフォルニアの桟橋を作るのは,一体,誰でしょうか? 嵐で流され,火事で焼け落ちても,桟橋は再建されるようです.桟橋には,ヒスパニックの少年たちが小魚を釣るために集まります.エイを釣り上げた老人がいました.桟橋から鯨が見えたり,海上に停泊する軍艦が見えたりすると,さらに多くの人が集まります.アメリカには,良いと思ったことを実行する余裕と,多様な考え方があります.彼らは失敗を恐れず,挑戦者の勇気を称えます.

作家の開高健が,苦労して釣り上げた魚を,再び海や河に放してやるとき,彼(その魚)を見送ってから,目の前の大きな海や河が,少し,自分のものになったように感じる,と書いていました.都市に住む人間は,日ごろ,自然から切り離されて生きています.信仰を捨て,家族を捨て,個人的な満足やセックスを楽しむことだけを奨励するかに見える都市では,魚でも少女でも,単なる売り物であり,食べ物です.誰も,それを不思議と思いません.

ETVスペシャル「わが挫折を語る」の中で,長銀の経営にかかわって改革を進言し,辞職した箭内氏の表情に,個性と魅力を感じました.巨大な組織が破綻するにいたった原因は,@嘘をつく,A仲間をかばう,Bトップが責任を取らない,という当たり前のことでした.

長銀が1998年に解体されてから,すでに5年が経っても,巨大銀行の不良債権処理,銀行システムの健全化,再編に関して,目のさめるような真実の瞬間を迎えた,という感覚はありません.バブルを支えた組織の多くは今も続いています.番組は,長銀破綻の顛末を知る箭内氏が,りそな銀行を再建するために社外取締役に就任したことを伝えて,一縷の望みとしました.

嘘をつかない組織,仲間をかばわない組織,トップが進んで責任を取る組織,を考えてみると,それは,よほど若い,活力に富んだ,小さな,貧しい組織だけではないか? と思いました.多くの書類,多くの会議,多くのメール,多くの約束,そして既得権をめぐる多くの争いと多くの嘘.「見えざる手」は,高額の報酬によって,それを正当化する人々を増殖させます.

組織は,人間にとって第二の自然です.さまざまな錯綜した組織の圧力によって,人間は束縛され,さまざまな嘘をついて生きます.だから私たちには,ツリー・ハウスに泊まって,組織の壁を消し去る時間が必要です.風にゆれる木々と一緒に眠り,組織の改革を考え,自分の内にある自然と対話します.

学生や研究者は,かつて,恵まれた人々でした.貧しくとも,自然に囲まれた山間の宿で真摯に語り合うこと.歴史的転換の意味や,将来の国際関係,日本が抱える諸問題に関して,最善の解決策を模索する自由な発想.それこそ,私たちの味わえる最高の豊かさ(の一つ)だったはずです.・・・真実の瞬間・・・小さなツリー・ハウス.

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune


BG, 11/27/2003

Giving thanks for capitalism

By Jeff Jacoby

プリマスのピルグリムたちが最初の収穫に際して行って以来,全能の神に感謝することが感謝祭のテーマである.「飢饉ではなく豊穣を,神はわれわれに与えてくださった」と,その指導者であったWilliam Bradfordは書いた.

1867年に,Andrew Johnsonは述べた.「思い出しておこう.神はわれわれの大地を,不可欠の,豊富な穀物で覆われた.神は産業を興し,その畑だけでなく,職場にも,鉱山にも,工場にも,繁栄をもたらされた.神はわれわれに湖や川,はては大海を渡る多くの船を与えてくださったし,同時に,この大陸のはるかに隔離された土地にまで至る鉄の道を引いてくださった.神はわれわれの心を家内の不和や騒動から切り離し,忠誠と,慰めと,兄弟愛へと向かう,古来の道へ導いてくださる.」

今日,アメリカの無数の家庭では,神が多くの贈り物で感謝される.テーブルに贈り物を並べ,愛する者たちと談笑する.行く年の健康と幸運を祈り,戦時においても国内の平和に感謝し,アメリカ人として生まれたこと,あるいはアメリカ人になれたことを,計り知れない幸運と感謝する.

しかし,地元のスーパーマーケットに,今週,売られている多くの七面鳥に感謝する人は多くないだろう.どれほど信仰の篤い人でも,航空機の時刻表や,地元の映画館に週末上映される最新作,あるいは,新聞に載ったクランベリー・アップル・パイの作り方に,感謝する人はいないだろう.

われわれはこうしたことを当然のことと思っている.なぜ近所の八百屋に感謝祭の前になると七面鳥が並ぶのか,なぜハリウッドの大作が休日前に封切られるのか,そんなことは奇跡でも何でもない,と.そういうもんだ.神が必要か?

たとえば,食堂のテーブルに七面鳥が並ぶまでに,何千人もの人々が手を貸している.七面鳥を育てた農家,飼料を作った人々,それを農家に届けた人々,その七面鳥の小屋を建てた人々も居る.小屋を管理した技術者たち.七面鳥は羽をむしられ,病気でないか検査され,内臓を出され,包装され,値札を付けられて,お店の棚に並べられる.こうした仕事をやり終えた人々は,また,他の多くの人々に助けられている.たとえば配達のトラックには誰かがガソリンを入れなければならないし,包装のためのラップに必要なプラスチックを作る工場で働く人々が居る.

こうした無数の人々の,何ヶ月にもわたる協力が,天才的に組み合わされ,タイミングを計って,行われたからこそ,今,あなたは感謝祭のための新鮮な七面鳥を買うことができる.途方も無い協力が必要なのだ.しかし,それ以上に驚嘆するのは,だれもそれを監督していない,ということだ.

どこかに司令室があって,「七面鳥の帝王」がマスター・プランを睨んでいるわけではない.誰も人々の群れを集めたり,強制したりするわけではない.それでも彼らは協力する.あなたがスーパーマーケットに行けば,七面鳥がそこにある.あなたはそれを買うだけでよい.それが奇跡でなくて,何であろうか?

アダム・スミスはそれを「見えざる手」と呼んだ.無数の人々を,自分の利益のために,多くの人に有益なことをなさしめる,神秘的な力であるから.非協力的な私的取引が,一見,無数に寄せ集まって生じた混沌のようでありながら,そこから市場の自生的な秩序が誕生する.自由な人々が自由に作用しあって,人間の理解を超えた膨大な商品とサービスの流れがもたらされる.それを事前に計画する独裁者も,官僚制度も,スーパーコンピューターも要らない.実際,経済が計画されればされるほど,欠乏や断絶,破綻が生じた.

くもの巣や蜂の巣の精妙さに神の御業を見て賛嘆するとしても,自由市場の示す万華鏡とエネルギーに比べれば,そんなものはたわいないことに思える.もし種子が収穫をもたらしたことで,天国の恩寵をたたえるのなら,われわれの私的で,自発的な交換が,誰も意図しないのに,繁栄と発明,成長をもたらすことに,もっと賞賛を送るべきだろう.

自由な社会秩序は,それがもたらす富や進歩とともに,この上ない神の恵みである.感謝祭において,そして日々,われわれは感謝する.


FT November 27 2003

Set universities free to compete

By Martin Wolf

(コメント) 優れた大学はどうやって作ればよいのでしょうか? Wolfは,それが5つの条件を満たすべきだ,と考えます.@優れた質,A多様性,B自由,C財源,Dアクセス

大学進学者は,日本よりも遅れて,イギリスでも大衆化しつつあります.しかし,最先端の研究や教育を行える大学や研究機関は限られます.より限定した目標についても,大学の成果はいろいろです.どうすれば,高い水準と多様な教育を実現できるでしょうか? Wolfは,自由な競争によって実現できる,と考えます.その証拠に,もっとも多様で,最も優れた大学は,アメリカに集まっている,と.

他方,優れた大学を実現する財源を確保しながら,幅広い学生に入学の機会を集めるためには,学費をどうすればよいでしょうか? Wolfは,ここでも大学が自由に学費を決めて,競争することを求めます.学費や大学の維持費用は公的に融資されますが,それ以上に補助されません.追加的な補助は,貧しい学生と研究に限って,与えられます.もし貧しい学生の入学を促したいなら,この公的な学費の融資を増やすべきです.

Wolfは,貧しい学生に授業料を免除したり,限られた学生の入学を前提に学費を無料化したりする提案を批判します.5つの基準からみて,それらは優れた大学教育を実現できないからです.

競争が健全に行われるよう監視し,競争に伴う破壊的な影響についても,社会的な目的に照らして合意を得られるなら,私は大学自身がこうしたシステムを必要とするだろう,と思いました.


FT November 27 2003

China encourages mass urban migration

By James Kynge and Mure Dickie in Beijing

(コメント) 5億人にも達する都市化の波を受け入れる中国社会に,拡大する貧富の格差や社会不安に対応できる用意はあるのか,誰にも分かりません.政治制度は民主化によって安定するのか? それとも共産党の権威を高めるような新しい制度や成長メカニズムを構築して,再分配を支配できるのか? 都市化にともなう莫大な投資と国内金融システムの改革は,国際金融の自由化と同時に進めることができるのでしょうか? それらは不可能ではありません.しかし,非常に困難であり,何度も危機を迎えるでしょう.


Nov. 28 (Bloomberg)

Asia's Latest Stimulus Plan Reaches Sky-High

William Pesek Jr.

(コメント) 世界の摩天楼は,アジア経済の成果を反映して,アメリカからアジアへと移ってきました.世界で最も高い建物の10位までに,8つの建物がアジアから入っています.しかし,それは同時に即席の景気刺激策であり,過剰投資や,金融・土地バブルの代名詞でもあります.88階建てのクアラルンプールのペトロナス・タワーに始まって,香港の国際金融センターや,上海のJin Mao Tower,そして広州GuangzhouのCITIC Plazaです.アジアを動かす開発業者は皆,政治家と同じように,極端な楽天家であり,ばくち打ちです.

クアラルンプールのタワーはアジア危機の年に完成し,ニュー・ヨークのクライスラー・ビルやエンパイヤ・ステート・ビルは1920年代後半と大恐慌の頃に建ち,ニュー・ヨークのワールド・トレード・センターやシカゴのシアーズ・タワーは,スタグフレーションと財政危機が深まり,ブレトン・ウッズ体制が崩壊する時期に建ちました.


NYT November 29, 2003

Politics Rescue Euro From Stability Agreement

By MARK LANDLER

The Observer, Sunday November 30, 2003

On firmer ground without Stability

William Keegan

Dec. 2 (Bloomberg)

France and Germany Trample on EU Budget Pact

David DeRosa

(コメント) なぜ「安定化協定」を破壊することがユーロ高を招くのでしょうか? 通貨価値を損なうような財政赤字も許されるようになったはずではないか?

しかし,当面のユーロ/ドル・レートは,財政赤字を削減するようなデフレ政策を回避できたことをヨーロッパの景気回復が期待できるとして歓迎しました.あるいは,短期的には,ドイツ政府がユーロ高を気にしない,と発言して,なんらかの介入を予想する者が安心したのかもしれません.

ルーヴァン・カソリック大学のド・グローブは,安定協定の考え方は正しかったが,今では,経済的に見て破棄が望ましい,と考えます.そして,3%の赤字抑制ルールを改正して,もっと弾力化するように提案します.他方,J.P.モルガン=チェースのDavid Mackieは,EU経済に占める規模から見て,これがEUの意思決定として当然であろう,と静観します.しかし,この問題をめぐって,すでに1年前からプロディ委員長が破棄に言及したにもかかわらず,ドイツもフランスもまともに検討してこなかったことが,他の加盟諸国との政治的な対立を深めた,と考えます.

Center for European Policy Studiesのダニエル・グロス所長は,この論争の結果として重要なことは,独仏がEU統合を指導する道義的な権威は失われたことだ,と指摘します.もはや両国が事前に取引することでEUを動かすことを,他の加盟国が尊重しなくなるだろう,と.しかし,財政赤字の上限を含むマーストリヒト条約の中身を修正することは難しく,誰も望んでいません.その意味で,今後とも同じ問題が繰り返されるわけです.

Keeganは,あからあまに,独仏の駆け引きでできたケインズ以前の財政均衡主義が破綻したことを歓迎し,これからは「安定(と成長)」ではなく,「成長(と安定)」のための協定が求められる,と主張しています.そもそもこの協定は,インフレに関する抑制手段を失いたくなかったドイツ連銀を説得するために採用されました.フランス政府は,インフレ抑制に偏ったECBを政治的に説得する手段として,「安定協定」ではなく,「安定と成長のための協定」と追加したのです.

しかし,失業率が高い中で,ドイツの財政に貯蓄を求めるような愚かなことはできません.もちろん,新規加盟を目指した東欧諸国や,成立時の加盟を実現するために苦しんだスペイン,ポルトガル,イタリアなどは,大国のルール無視に憤慨しています.しかし,EU景気を支えるべきドイツ経済の回復を損なうような制裁を望むことも無いのです.

Keeganは,イギリスもERMを離脱した後の1年間は,ERMが崩壊し,EUの前進を悲観した,と言います.しかし,統合には強い政治的な意志が働いていました.安定協定を失って,EUが全体として財政破綻をきたす可能性は非常に低いようです.むしろ,不況で赤字になった国に,引き締め政策を求める方が狂気の沙汰です.そして,このような協定はすぐにも破棄されるべきでした.オランダの失業率は低く,ドイツは高い.けれど,福祉国家がドイツ経済の重荷ではありません.なぜなら,オランダの方が福祉手当は潤沢なのです.アメリカがなりふり構わず景気を刺激したように,ドイツの成長が絶たれたのは,マクロ経済政策の自由を失ったからだ,とKeeganは考えます.

DeRosaも,安定協定の政治的な基盤が変化したことを見ています.誰の赤字を誰が阻止しようとしていたのか? しかし,もし財政刺激策の後に金融引締めが行われるとすれば,赤字は抑制しておくべきだ,というポルトガルの批判に注目します.ECBの行動に関心が移るでしょう.


ST NOV 28, 2003 FRI

An imperial America? But it lacks political clout

By JONATHAN SCHELL

(コメント) アメリカ帝国に関する論説が,一部の左翼の雑誌から,一気に世界中を満たすようになりました.しかし,アメリカ帝国の定義や見通しは分裂しています.

主な見方は5つです.@アメリカは公式には共和国であるが,実際は帝国になった(Michael Ignatieff,Robert Kaplan).Aアメリカはずっと前から帝国である(Noam Chomsky,Andrew J. Bacevich).Bアメリカは唯一の超大国であり,それゆえ帝国にもなリつつある(Charles Krauthammer, William Kristol).Cアメリカは帝国であるが,イギリス帝国に比べて,しくじっている(Niall Ferguson).Dアメリカは帝国であるが,衰退し,崩壊しつつある(Charles Kupchan,Immanuel Wallerstein).

SCHELLは,アメリカ政府の帝国論には支配の要素が欠けている,と言います.帝国は,弱者や占領地の住民を,ワシントンの意志に従わせなければなりません.ペンタゴンの戦争計画は,勝利によって終わるだけで,戦後の占領・復興計画を含んでいませんでした(国務省の計画を無視しました).すべての過去の帝国は,支配される側に受け入れられるような集団を育てることで,住民による反対運動を回避しました.アメリカもまた,軍事力によっては,イラク人による抵抗やデモを鎮圧できません.そして,自生的な権力を育てれば,彼らがワシントンの指示に従う余地もなくなるでしょう.

政治的な基礎の無い,軍事力に依存した帝国は,砂上の楼閣に過ぎない,とSCHELLは考えます.


LAT November 28, 2003

It's a Land of Plenty With Not That Many Choices

By James Socas

(コメント) 感謝祭の光景に散りばめられたアメリカ社会の変容です.

巨大な七面鳥はコストコで買った.値段は驚くほど安いが,それをもたらすのは商店街を潰すアメリカのディスカウンターたち.感謝祭でも,インディアンや移民たちには祝福したくない.彼らがわれわれの職場を奪ったから.中国など,世界中から輸入して,アメリカの職場は失われる.投資顧問の助言を信じてエンロンに投資し,祖父は年金も失った.今ではウォル・マートに再就職している.深夜になれば,その床を磨くのは移民労働者やその子供たち.

神よ,アメリカに祝福を.


NYT November 27, 2003

The Good News

By PAUL KRUGMAN

(コメント) 国内では,景気回復の兆しはあるものの,悲観的な要素ばかりが目に付く,とKRUGMANは言います.しかし,世界は大きな前進を遂げてきた,特に,アジアの貧しい諸国がこの25年間で予想もしなかった成長を実現したことに,KRUGMANは希望を持ちます.

その前提は,世界貿易が自由化されて,彼らにも輸出指向型の成長戦略が採用できたことでした.自由貿易を支持するか? と聞かれたら,支持する,と答えるだろう,と.ただし,その意味は,多国籍企業の増やす貿易ではなく,貧しい国に成長の機会を拡大した貿易を支持する,ということです.他方,そのような貿易は先進経済の苦痛を伴いますから,それを緩和する正しい政策が採用されなければ,支持することは難しいでしょう.

世界貿易はブッシュ政権の信じられないような法律を無視した保護措置に脅かされています.それは,KRUGMANの祝福するこの世界の美点を,また一つ奪いそうです.


NYT November 27, 2003

The U.S. and China Test Bounds of Trade

By KEITH BRADSHER

(コメント) 日米間で1980年代に展開された貿易摩擦や政治論争が,日中間でも目立ち始めました.しかし,予想外に中国の反発は抑制されており,また,アメリカの保護主義にも力は無いと言うことです.その理由は,中国の成長が多国籍企業による輸出に大きく依存している,ということにありそうです.デル,ナイキ,ウォル・マートが,中国から商品を輸入しています.日米摩擦を政治的に加速させた自動車業界も,日本や韓国の自動車を追い出そうとしたような動機がありません.彼らは多国籍企業の連合体として,中国市場への進出を望んでいます.

確かに,日本と韓国の1億8000万人を豊かにしたことが,10億以上の人口を持つ中国に対して可能であるか,世界は試されるでしょう.しかし,中国を世界市場に統合できないとしたら,その方が世界経済や貿易にとってのリスクは大きいわけです.


IHT Saturday, November 29, 2003

Tough love for the baby trade

Ethan B. Kapstein

この10年間で養子制度の市場は世界的にブームとなり,アジアや東欧地域から約3万4000人の幼児が,西欧や北米へ輸出された.貧しい諸国から富裕な諸国への「ベイビー貿易」は,その所得差から,巨額の資金が動き,汚職や犯罪によって支配され,貧しい家庭から赤ちゃんを拉致することさえ起こる.

アメリカとEUは,特にこうした自体が明らかなカンボジアとルーマニアからの養子を禁止した.しかし,これは解決には程遠く,養子となれたはずの子供たちは孤児となり,ロシアや中国など,新しい供給国が現れている.1993年には,国際的な養子に関する児童の保護を目指すヘイグ協定が成立した.それは多国間で,需要と供給の双方から,国際的に明確な法的枠組みを整備するように求めている.

多国間制度が機能するためには,その実効性を確保しなければならない.それは,特に豊かな諸国が,その能力を欠いた貧しい諸国を支援し,実施を助けることを意味する.カンボジア,ウクライナ,ヴェトナムは批准しておらず,アメリカも必要な法整備を怠っている.

国際的な養子制度も確立は,世界経済に影響を及ぼすような問題ではない.しかし,それが非合法な取引に依拠していることで,多くの養子とその家族が苦しんでいることを思えば,問題を解消する道義的な重要性は明白である.


NYT November 29, 2003

America's Sugar Daddies

(コメント) アメリカの砂糖産業に対する保護措置をめぐる議論です.砂糖の輸入を市場の15%に制限することで,アメリカの砂糖価格は世界価格の4倍に達しています.その利益を受けているのは,キューバから亡命してフロリダに土地を買い,キューバからの移民を雇って始めた砂糖農園を営むFanjul brothersなどです.彼らは民主党にも共和党にもふんだんに献金し,大統領選挙運動や上院議員も巻き込んで,この保護を継続させています.

トウモロコシや小麦などでは,技術や機械化によるアメリカの優位を崩せませんが,貧しい国でも綿花や砂糖は栽培できます.この分野では彼らに優位があるのに,裕福な諸国は保護措置を採用して市場を閉ざします.その結果,裕福な諸国の精製業者,食品産業,消費者だけでなく,貧しい諸国の農民がもっとも大きな損失をこうむっています.保護によって上昇した価格から利益を得る外国には,特にドミニカ共和国が挙げられますが,その主要な農園もFanjul familyなのです.

保護を失えば,砂糖価格は暴落する,という警告を砂糖農園主たちは発していますが,彼らはそれが貧しい諸国やアメリカ経済にとって大きな利益であることを見ていません.


FT Nov 30 2003

Japan faces up to banking reality

Dec. 2 (Bloomberg)

Koizumi, `High Noon' or `Good, Bad and Ugly'

William Pesek Jr.

FT December 3 2003

Japan's FSA mulls fund for early bank rescue

By David Ibison in Tokyo

(コメント) りそな銀行の株式を政府が購入して救済したケースに続いて,今度は栃木県の地方銀行である足利銀行を国営化しました.都市銀行の経営が日本の株価上昇で改善したことを受けて,金融庁の関心は地方銀行に移った,と言われます.とはいえ,この足利銀行は,格付け会社のFitchがすでに3年以上も前から,支援無しには生き残れない,として公表していた銀行です.FTは,日本政府や金融庁の姿勢を,日光東照宮の「見ざる,聞かざる,言わざる」の三匹のサルにたとえて揶揄しています.

何事も無かったように,将来において税金で赤字を補填して,救済融資し続ける,という姿勢が続けられなくなりそうだ,というのは,日本経済と国民にとってプラスでしょうか,マイナスでしょうか? 安定協定を,事実上,破棄したEUの話題とイメージが重なります.

日本の金融システム改革に厳しい見方を示したのはPesek Jr.です.債務が資産を上回ったから明確に国有化する,と述べた竹中氏は,他方で,預金を全額保護して改革の後退を示しました.日本では銀行を潰すことも,預金を失うことも,政府が許さない,ということで,改革を進める圧力を欠きます.銀行は潰れないが,それが改善されることも無いのです.

では株価が下落すればどうなるのか? 足利銀行の処理で,日本の危機は過ぎた,と考えたアメリカの投資銀行もあります.しかし,日本政府と国民が救済のために負担するコストはますます増加する,と見ることもできます.なぜなら金融システムの改善が無ければ,日銀の金融緩和も十分に機能せず,輸出が減れば,再びデフレと金融危機が表面化する,と考えるからです.

Ibisonは,金融庁が危機の起きる前に資金を入れて改善を促す方法を工夫しようとしている,と言います.その方が,コストも低いからです.政府が変わって,金融庁が複数の特命チームを組織し,すべての銀行に送り込んで検査結果を公表しなければ,こうした機能不全は解消されないように思います.


LAT December 1, 2003

But You Get a Nifty Hat

世界中でマック・ナゲット,マック・グリドル,マック・ヴァリュー・フレンチ・フライ,マック・ヴェジー・バーガーを販売するマクドナルドが,新しい辞書Merriam-Webster Collegiate Dictionaryに採用された「マック・ジョブMcJob」を,低賃金で最下位の職場,と定義されたことに反対している.

カリフォルニアに始まって,マクドナルドはファースト・フード・ショップとして世界中に拡大し,サンタクロースよりも有名になった.

マクドナルドの言い分も正しい.多くの礼儀正しい勤勉な若者や年配の労働者が,その店で働き,お金を稼ぐことや,責任を果たすことを学び,紙の帽子をかぶって激しい労働にいそしむことを学ぶ.マクドナルドは軍隊以上に若者に労働を教えているわけだ.

もしかすると,いつか,マック・ジョブが「企業幹部になるにふさわしい」という意味を帯びるかもしれない.しかし今は,マック・ジョブに就く者は,かつてのソーダ売りのように,人々からつまらない労働者と見られている.軽蔑ではない.それはマック・ライフだ.少しケチャップもかけて.


ST DEC 2, 2003 TUE

A crude warning

By Eddie Lee

The Guardian, Tuesday December 2, 2003

Bottom of the barrel

Post a question for George Monbiot, live online Thursday 3pm

FT December 3 2003

China's sprint for growth runs into power shortage

By James Kynge and Alexandra Harney


ST DEC 2, 2003 TUE

What China's rise means for the rest of Asia

By V ANANTHA NAGESWARAN

ST DEC 3, 2003 WED

Archived Issues

YOICHI FUNABASHI

(コメント) もし中国が共産主義化しなかったとしたら,アジアは世界市場に輸出を介して参加し,成長する機会を持てなかっただろう,とリー・クァン・ユーは述べたようです.しかし,今,中国が目覚め,アジア諸国から輸出市場と直接投資とを奪いつつあります.中国が50年の猶予をくれたことで,アジア諸国には国内需要による景気刺激策を取る余地もできましたが,これには限界があります.彼らは中国の成長に輸出するでしょう.同時に,バランスを取るために,彼らはインドに目を向けます.

中国の外交を考えるエリートたちが提唱するのは「平和的な地位の上昇」です.中国ほどの巨大な人口や市場が世界に誕生するのは,かつてのドイツや日本の登場に比較されますが,それ以上でしょう.また,アメリカとの対決姿勢も注意を引きます.しかし,中国が「被害者意識」から「大国の自覚」を持つようになっても,アメリカとの冷戦を構えようとはしないだろう,と船橋氏は予想します.

その理由は何か? 船橋氏は単にエリート知識人たちと談笑しただけで,このような予想を信じたのでしょうか? アジアやアメリカとも,互いの利益になる形が望ましい,という「理念」が,中国社会にも浸透しつつある,と信じたのかもしれません.たとえば北京−上海間の新幹線敷設を交渉する姿勢に示された心理的な変化を通じて.


FT December 2 2003

China should move to a flexible currency

By Martin Wolf

(コメント) 中国がドルの外貨準備を累積させることは,経常収支赤字を拡大するアメリカや,中国がドルに固定したままで,その調整コストを負わされる他のアジア諸国やヨーロッパに不満を生じるでしょう.しかし,Wolfの論説は,中国政府が当面はこの政策を変えそうにない,また,それには確かにふさわしい理由がある,という結論です.

まず,Wolfは,IMFなどの統計から,中国の総合収支が人民元の過小評価を示していないことを認めます.中国は2001年まで,経常収支黒字とFDI流入を相殺するような,その他の資本流出を続けていました.それゆえ,今の資本流入を投機的なものと見る理由もあるわけです.

しかし,人民元をドルに固定することは,@輸出業者を安心させ,A香港の通貨制度を守り,Bこれまでの高い成長を支持する,というメリットがあります.しかし,デメリットも多く,@国際収支不均衡の世界的な調整を他者に押し付ける,Aドル安に伴って,中国からのデフレの輸出という批判を呼ぶ,Bアメリカ政府からの批判や国際的な投機を招く,C貿易財の価格を不当に低くし,国内のデフレを悪化させる,それは農民を苦しめ,また,銀行の不良債権を増やす,などと指摘されています.

現在の制度を変更することは,不確実さを高めます.切り上げて再固定すれば,次の切上げが予想されます.変動レートはオーヴァーシュートを起こすので,為替管理によってリスクを回避する手段が無いのは不都合です.資本規制を解除するのは,銀行システムの不安が危機をもたらせば世界に拡大するでしょう.外貨準備を累積させて現行制度を維持することが,まだしばらくは続く,と予想します.その間に,中国は銀行システムを整理・強化し,変動レート制に向けたバスケット・ペッグや変動幅拡大を模索する,と言うわけです.

国際通貨制度においても,中国の人民元を変動レートに移行させることは世界統合化の重要な課題なのです.


FT December 2 2003

Trade hopes

NYT December 2, 2003

Trading Favors

NYT December 2, 2003

President in a Political Vise Over Steel Tariff Decision

By ELIZABETH BECKER and DAVID E. SANGER

WP Tuesday, December 2, 2003

Political Steel

LAT December 3, 2003

A Bad Reversal on Trade

(コメント) 保護主義はなくなりません.鉄鋼産業は価格を維持し,市場を保護してほしいのです.ブッシュ氏は票を計算します.こんなふうに「通商政策の政治算術」を「ファイン・チューニング(微調整)」してはならない,と多くの論説は繰り返し主張します.なぜならそれは市場における価格形成を歪めて,保護された商品を購入するすべての者に追加の負担を押し付け,経済全体を衰退させるからです.自由貿易こそ,国民の利益である,と.

それでも勝者と敗者の選別は避けられず,政府も業界も必死です.ブッシュ氏は2年前の鉄鋼関税を撤廃すると決めましたが,それも自由貿易を支持したわけではなく,WTOが認めたEUによる報復関税をこうむるフロリダのオレンジ農家を,ペンシルヴァニアの鉄鋼労働者よりも,政治的に重要であると判断したからです.ブッシュ氏は,この関税を維持するためにWTOの抜け道である「セーフガード」を主張し,国内産業に代わりの補助金を約束しようとしました.


ST DEC 3, 2003 WED

Revisiting the man who made Clinton an economic success

J. BRADFORD DELONG

クリントン政権は,まるで有効なカードを持たず,最悪のカードを配られていた.すなわち,長期に及ぶ低成長,レーガンとブッシュ(父)の残した膨大な財政赤字,高まった「自然」失業率,増大するインフレ圧力である.これと対照的に,ジョージ・W・ブッシュが大統領になったとき,彼は目のさめるような素晴らしいカードを持っていた.すなわち,財政は実質黒字に転じ,情報技術革命で生産性上昇が加速し,「自然」失業率は下がっていた.

それにもかかわらず,クリントン政権の経済政策は,触れるものすべてを黄金に変えた.ロバート・ルービン氏に率いられて,レーガン=ブッシュの途方も無い赤字を黒字に転じ,アメリカに高投資・高生産性の景気回復をもたらした.そして貿易障壁の引き下げに指導力を発揮した.またクリントン政権は,1994年のメキシコ危機,1997−98年のアジア金融危機をも,処理することに概ね成功した.

対照的に,現在のブッシュ政権の経済政策は,触れるものすべてを,鉛とまでは言わないが,政権の内外で見る者すべてが首をかしげるような,せっかくの機会を台無しにしたとつぶやくような状態を呈している.貿易,財政政策,社会的給付の改革,およそ何であれ,ブッシュ政権の経済チームは事態を大きく悪化させてしまった.

ルービン氏の政策決定で最も重要な考え方は,「蓋然性の思考'probabilistic thinking'」を習慣としたことである.それは,「ほかに起こりそうなことは何か?」「もしわれわれが間違っていたらどうなるか?」「次にどうなる?」と疑問を示し続ける姿勢を意味する.すなわち,潜在的な結果の全範囲を,そのコストとベネフィットについて検討し,ある種の流行のイデオロギーや,政府の好きなモデルに合致する結果だけを仮定するようなことはない.

結局,少なくとも一つ以上の重要な点で,すべての予測は間違いを犯すのだ.テーブルを叩いて,わめき散らしても,都合の悪い事実は消えてくれない.

ルービン氏は世界が複雑で,十分に理解されておらず,予想外のことや驚きが満ち溢れていることを知っていたこと,また,われわれがジョン・メイナード・ケインズやミルトン・フリードマン,あるいは新保守主義の誰かが描いた地図に頼ってはいけないことを知っていたことが,彼の最大の強みであった.

しかし,彼の新著(In An Uncertain World)を読めば,彼がもう一つの武器を持っていたことを知るだろう.彼は,政策だけでなく,政治に関しても大統領を助けた.彼は大統領に,長期的に見れば,良い政策が良い政治をもたらす,ということを,少なくとも多くの場合,確信させたのだ.

ゴールドマン・サックスで培われた運営能力は,確かに,国家経済評議会でも卓越していた.しかし,それが正しい方向で使われなかったら,無駄になっただろう.ルービン氏の経済政策が成功した鍵は,彼が常に心の中で大きな構図を描いていたことだ,と私は思う.

たとえば,ルービン氏が世界貿易について自説を譲らなかったときのことを,私は覚えている.「産業を保護すればいつでも喜ばれる.なぜなら自由貿易のマイナスの結果は明白であるから.」「クリントン大統領との議論で,貿易障壁を引き下げる必要があると話し合った部門は漁業であった.クリントンは貧しい漁民たちが網を引くのを見たことがあった.」「彼は弱い立場の人々を痛めつけるようなことはしたくなかった.」

「しかし大統領」と,ルービン氏は言った.「貧しい漁民を助けることで,あなたは,安い魚を買うという膨大な利益を,他の貧しい者から奪うのですよ」,と.


LAT December 3, 2003

American Dream, Super-Sized

By Benjamin R. Barber

(コメント) 世界に民主主義を広める,という宣言と,世界のテロリズムを根絶する,という宣言.どちらもブッシュ氏は掲げていますが,Barberは,民主主義の理想が「予防的戦争」や「テロとの戦争」という考え方と両立しない,と主張します.ブッシュ氏が民主主義を持ち出したのは,イラクとの戦争に勝利したことが否定され,テロとの戦争に勝利するという見込みが失われる形で,アメリカ軍を撤退させるわけには行かない,という事情を隠すための宣伝であろう,というわけです.

しかし,アメリカが決めた敵に,その具体的な脅威があるかどうかも分からないまま,戦争を始めることが,民主主義と両立するのか? 自国民を差し置いて,完璧な民主主義を押し付けることが,イラクや中東の民主かなのか? 戦争捕虜の権利を奪い,自国民でさえもプライヴァシーを侵すような法律を作ることが,民主主義の拡大を意味するのか? テロとの戦争に協力する独裁国家に軍事基地を依存しながら,世界の民主化を支持できるのか? ブッシュ氏はどちらかを選択しなければならない,と.


NYT December 3, 2003

Beware 'Animal Spirits'

By WILLIAM SAFIRE

(コメント) アメリカの「ジョブレス・リカバリー」でも,もちろん,「長期的には,人は皆死ぬ」ように,「長期的には,企業の収益が改善し,税収が増えて,財政赤字は解消する」と言えるでしょう.また,本格的な景気回復をもたらすのは,消費者の「アニマル・スピリッツ」です.しかし,資本主義は下降局面を忘れません.特に,人々がバブルの記憶を失えば,再び投機が起きるでしょう.

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The Economist, November 22nd 2003

The world economy: Boom or gloom?

Trade policy: Bras, bolts and Brazil

The world economy: Altogether now …

(コメント) アメリカの景気回復が政策的な刺激の限界と,家計の住宅バブルによる消費によって終わるとしても,今や,実質為替レートで見て,アメリカに並ぶ成長のエンジンとなった中国と東アジア地域が,世界経済の将来を左右します.貿易政策について,アメリカ政府がさまざまな駆け引きによって利益を再分配する姿勢は,各国の政策に不透明さと不確実さを増し,投資家を不安にします.


America and the world: Binding the colossus

The International Criminal Court: For us or against us?

The special relationship: What’s in it for us?

(コメント) アメリカの外交政策と国連,特に安保理の改革は,国際制度の実効性を高めるうえで欠かせません.しかし,アナン氏の考えるような,拒否権を持つ現在の常任理事国5つ(米・中・英・仏・露)に,拒否権を持たない常任理事国5つ(ブラジル,インド,ドイツ,日本,そしてアフリカの国)を追加し,さらに定期的に選出される非常任理事国で,代表性と合意形成の正当性を得る,という構想も前途多難です.また,国際犯罪法廷をアメリカは激しく批判し,各国の批准を妨害しています.


Prostitution in Cambodia: The children in Gucci shoes

(コメント) カンボジア南部の田舎Krong Koh Kong における人身売買,児童売春の報告です.エイズの兆候を顕著に示すヴェトナム人の17歳の少女が,その村の水が悪いから病気になった,と記者に苦情を言います.彼女たちは因習的な治療に頼っていますが,改善の見込みはありません.この村はセックス貿易の最終地点です.

プノンペンの売春宿が人身売買で批判されてから,売春宿のボスたちが一斉に宿を田舎に移転しました.それまでKrong Koh Kongは貧しい漁村でした.タイ国境で,警察も居ません.売春婦の安さで,周辺諸国からも客が増えました.14歳の者も含めて,もっと年老いて見える売春婦たちがグッチの模造サンダルを履いて立っています.アメリカ・ドルに換算して,2ドルか3ドルで売春し,半分をボスに渡します.彼女たちは週に25ドルほど稼ぎますが,それでも失業と貧困に沈む地域では大金です.彼女たちはエイズに冒され,仕事ができないほど衰弱すると,解放されます.

アメリカは,カンボジアを人身売買で強く批判していません.しかし,少女を奴隷のように使役する売春宿は,アメリカの人身売買を禁じる法律をはなはだしく犯す,と考えられます.にもかかわらず,北朝鮮やミャンマーのように,制裁を加えるような範疇には分類されません.その理由は政治です.インドネシア,フィリピン,タイなど,アメリカにとってテロとの戦争で重要な同盟諸国は,有益だから支援されるのです.