IPEの果樹園2003

今週のReview

11/24-11/29

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レスリー・チャンが主演なので,深夜に放映された香港映画『欲望の翼』(あるいは,「夢で会える」?)を録画して観ました.若者たちの迷いと痛み,何かを求める真剣なまなざしが,印象的でした.特に,俳優たちの目の輝きがすばらしい.自分は,こんな目をしていただろうか? このように輝く目を持った若者がいるだろうか・・・? ふと,思ってしまいます.

学園祭のおかげで,講義の準備を休み,時間が少しできました.自分の楽しみに何かしたい,と思っても,やはり本を読むことくらいしかありません.中断したままのラリー・ボンド著『侵攻作戦レッド・フェニックス』上下(文春文庫)を,再び,読み始めました.1989年原作の小説で,戦争のきっかけとなったのは,韓国政府と学生との武力衝突,アメリカ議会の制裁法案,政治・経済危機の深化と,これを軍事侵攻の機会と見た北朝鮮の金正日です.

「議会はいったいどうしてしまったんだ? 選挙区の外には大きな,危険な世界があるというのが分からないのだろうか?」・・・「経済制裁は,もし実施されれば,韓国経済を破綻させかねない.そして現時点では,経済成長こそ,韓国の政治的安定を支えるほとんど唯一の柱なのだ.」

「議員たちは地図を見ようともしないのか? 朝鮮半島は日本の心臓部に切っ先を突きつけている短剣なのだ.少なくとも日本人はそう思っているし,日本人というのは実利的な国民だ.ソヴィエトか中国が朝鮮半島にもっと大きな足がかりをつかめば,日本の巨大産業はたちまちハイテク製品をもっと彼らに売るようになるだろう.」

「下院も上院も選挙をひかえて浮き足立っているから,議員連中が外交政策の“成果”を有権者に示そうとしたら,事態は収拾がつかなくなるおそれがある.」

ボンドの小説は,アメリカ政府が軍事作戦をどのように実行するか,という視点で,事態の推移を詳細に描いているだけでなく,アメリカと外国政府(この話では韓国政府と北朝鮮)がどのような条件に対して,なぜそのように反応したか,という,相互に矛盾した情勢判断を,非常に説得的に描いています.戦争は,軍事的な作戦ではなく,それを選択した政治的な優先順位を反映しており,戦争それ自体が,この政治的な判断を大きく変えて行きます.

「大統領はもう一度,不確定要素を考慮した.この法案が米国に与える経済的影響=ごくわずか.軍事的影響=微細で管理可能.少なくとも,調査委員会と国務長官はそう言っている.政治的影響=良好.世論調査がそれを示している.それに,この法案は韓国人を(政府と学生との対話や民主化に関して)説得するかもしれない.そうあってほしいものだ.」

レーガン大統領の首席補佐官であり,現大統領の父のブッシュ政権では財務長官としてプラザ合意を導き,湾岸戦争の際は国務長官としてフセイン包囲網を実現した,ジェームズ・A・ベーカーVも,この点に同意するでしょう.政府を構成するのは政治家であり,彼らは問題や好機を「政治的な視点」から考える.したがって,彼らを説得するには,「彼らが状況を自国の政治家や国民に説明し,理解を求め,正当化することに,どうすれば(アメリカが)手を貸せるか」を示せばよい,と.

NHKスペシャル「消えたイラク占領計画」を観ました.国務省が関係者を集めて,さまざまなレポートを作成し,占領政策の準備を積み重ねる過程に,率直な意味で感銘を受けました.アメリカ政府内部の権力闘争があるとはいえ,どのように好ましい権力を打ち立てるか,アメリカ政府は周到に準備していました.石油の管理や戦後復興事業の受注などで,ブッシュ政権のクローニズムが批判されました.それでも,アメリカ以外のどの国が,自由と民主主義のために,これほど徹底的な介入と支援を行えるのか? アメリカの関与を失うことの重大さを感じます.

朝鮮半島が戦争状態に入り(もちろん,小説で),軍人として指揮に没頭するジャック・マクラレン米韓連合軍司令官も,ときに,癌で失った妻や,仕事で会えなくなった子供たちのことを思い出します.私は,子供たちといっしょに奈良公園を散歩し,鯉にえさをやったり,銭湯に行ったりすることができます.安全保障であれ,開放的な貿易体制であれ,それを担う人々が費やしてきた熱意と労力に,感謝します.

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune


ST NOV 14, 2003 FRI

Business behemoths that rule (and help) the world

By NAYAN CHANDA

(コメント) グローバリゼーションは,多国籍企業MNCsという主体を持たなければ,これほど支配的にならなかったでしょう.そのMNCsについて,CHANDAの論説はGlobal Inc: An Atlas Of The Multinational Corporationから,多くの興味深い数値を示しています.それは国連による「現代のリヴァイアサン」に関する報告です.

世界の経済主体ランキングによれば,100位中の53がMNCsであり,これらの民間企業は世界の120カ国よりも豊かです.

MNCsの起源は,コロンブスの「アメリカ発見」にさかのぼる,としますが,そのもっとも有名な例は1600年のイギリスによる東インド会社設立と,1602年のオランダによる同名のものです.世界の市場統合化は,この頃から本格化しました.グローバリゼーションとMNCsは,鶏と卵のような関係です.

1990年に3000であったMNCsは,今や6万3000に増えました.世界中に82万1000ある子会社で9000万人を雇用します.MNCsの上位1000社で世界の工業生産の80%を占め,たとえば,年収2100億ドルのエクソン・モービルは,スウェーデンの下,トルコの上の,世界順位21番です.

常識を覆す数字もあります.世界で最も多くのMNCsの本社を抱える国は,アメリカでも日本でもなく,9300社以上が立地するデンマーク,そしてドイツです.もしEUが1国であれば,もちろん,これは異なるでしょう.上位500社のうちで,アメリカの企業は1962年に60%でしたが,1999年には36%に減りました.またMNCsは,必ずしも巨大企業ではなく,250人以下しか雇用していません.ソビエト連邦崩壊やEU統合が,こうした結果に関係あるでしょう.

たとえ利潤のために資源を輸出するだけのMNCsは多くの有益な効果をもっています.MNCsは政府に税金を納め,国民を雇用します.財やサービスの利用可能性を高め,資本や技術,経営方法を広めます.

しかし,そのマイナスの影響も多く指摘されます.メディアや流通を介して,MNCsが文化を支配し,社会秩序が不安定化することを,政府や宗教組織は恐れています.マクドナルドは120カ国で2万9000店を展開し,地域の文化に配慮しつつ,不健康な食事を提供します.

MNCsの力が強まるほど,政府は彼らを誘致するために競争し,税制や社会政策,労働関係,会計規則,その他をMNCsが気に入るように改変します.それは民主主義を脅かすものだ,と問題にされます.グローバリゼーションの拡大と,その批判を結ぶ焦点として,MNCsは重要性を増すわけです.


FT November 14 2003

The keeper of Iraq's keys

By David Gardner, Roula Khalaf and Charles Clover

NYT November 14, 2003

The Sabotage of Democracy

By REUEL MARC GERECHT

WP Friday, November 14, 2003

Rethinking Iraq

(コメント) イスラム教シーア派の指導者Grand Ayatollah Sistaniが,イラク情勢を沈静化する重要な鍵の一つとなったようです.彼がアメリカによる統治に反対せず,国民に選出されたわけではない統治評議会が憲法を制定する手続きにも正当性を認めるなら,民主的な選挙が混乱を招くよりも,イラク人によるイラクの秩序回復を加速できるかもしれません.すなわち,アメリカ軍とシーア派との間に,統治評議会もしくは他の代表制度が入った政治的均衡です.

イラク国民に,できるだけ早く主権を移譲することが望ましいとしても,新しい政府が政治的に政党であると認められねばなりません.亡命イラク人の組織する政府に主権を移譲するだけでは,内部からの支持を得られないでしょう.民族や宗派による統治の分割や協力が合意されていなければ,ますます内戦の危機に落ち込むのです.

アメリカ政府は,イラク国民との間で,憲法制定,民主的選挙,地方会議などを時間的に取引するだけでなく,むしろ国連や国際協力の支援を受ける形を整備することで,テロとも戦い,イラク民主化にも長期的な見通しを得られる可能性を,まったく,見ようとしません.

BG, 11/14/2003

Can the Mideast be democratic?

By H.D.S. Greenway

NYT November 15, 2003

Iraq Goes Sour

(コメント) アメリカによる「中東の民主化」計画は,イスラエルとの共存を前提とし,たとえばアラファトのような指導者を国民が選択しないように,あらかじめ指名された候補者が並ぶ形で選挙を行うのでしょうか? アラブ世界の指導者たちは,今の事態を,リチャード・パールらが作成したイスラエルとアメリカによる中東改造計画を実行しているのではないか,と不安に駆られています.

アメリカが求める「民主主義」とは何でしょうか? 独裁からの移行期の民主主義は,必ずしも欧米と同じではない,と言うとき,それは,テロを封じ込める体制を「民主主義」であると,アメリカが認定するだけなのかもしれません.ともかくアメリカの占領計画は変更され,今も多角主義を無視していますが,イラクの主権はできるだけ早く手放したがっているわけです.

アメリカの軍事力と経済力をもってすれば,イラクの政治システムを転換し,中東全体を作り変えることも可能であったはずです.しかし,今,アメリカが撤退を準備すれば,イラクは次の独裁者に委ねられるはずです.では,一体,あの戦争はなんだったのか? 今まで死んだアメリカ兵と,これから死ぬアメリカ兵を,ブッシュ氏は天秤にかけています.

アメリカがここまで誤算を積み重ねたのは,フセインやイラクの戦後統治について,チャラビを中心とした亡命者の政治組織と,そこからの情報に頼った国防総省の計画が間違っていたからです.チャラビや統治評議会に,このままイラクを任せてしまえば,テロと内戦とを生き延びることなどできないでしょう.イラクの状態はもっと悪化します.新しいイラク国民の政治的代表を,しかも民主的な指導者とその選出方法そのものを,アメリカが見出すのではなく,イラク国民自身が見出すには,ブッシュ政権が嫌っている憲法制定会議を開くことです.その困難な過程で,支援すべき指導者が現れ,イラク国民は民主主義を学ぶだろう,とNYTは主張します.

NYT November 15, 2003

The Lessons of a Quagmire

By MAX BOOT

NYT November 16, 2003

A Better Army for Iraq

By DILIP HIRO

LAT November 18, 2003

There's Something Happening Here

Robert Scheer

(コメント) アメリカは,ヴェトナムで負けたように,イラクでも負けるのでしょうか? その名目は偽善に満ち,イラク国民やアラブ民衆は「テロリストたち」によってアメリカの支配から解放されたがっているのでしょうか? もしアメリカが次々と軍隊を送って,民間人の犠牲を省みずに,言葉も分からない人々に,自分たちの恐怖を増幅して蔓延させるだけであれば,きっとそうでしょう.

もっと目標を絞った軍事行動,テロリストに関する正しい情報が必要でしょう.アメリカ政府や統治評議会と,完全に独立した,イラク国民が広く支持する組織に,治安維持を委ねたほうが良いでしょう.アメリカの傀儡政権を打倒せよ,というスローガンが支持されるなら,アメリカは敗北します.

ここはヴェトナムではなく,今は1964年ではない.しかし,当時の状況と比較して,教訓を得たい気持ちを抑えられない,とScheerは書きます.@アメリカがいくら支えても,傀儡政権はどうしようもなく腐敗した.Aサイゴンが陥落しても,地域の安全保障は崩壊しなかった.むしろ共産主義陣営が内紛に陥った.Bアメリカが行った重火器や空爆による市民・農民の虐殺で,ゲリラは掃討できなかった.

ヴェトナムでは,勝利すること以外,明確な政治目的の無い戦争を続けるために,政府は国民に嘘を重ねました.労働者の家族に育ったジェシカ・リンチは,ペンタゴンに利用されるより,自分の立場を難しくするとしても,真実を語るほうを選びました.「戦争が起きて,命じられたから,自分は戦場に赴いた.それが起きなければ良かったと思う.・・・政治的なことは分からないが,もし戦争が無ければ,私の親友や,他の多くの戦死者が,今もここに居てくれたはずだ.」

WP Tuesday, November 18, 2003

Toward a Smoother Transition

By David Ignatius

WP Wednesday, November 19, 2003

Learning From Mistakes in Iraq

By Jim Hoagland

WP Wednesday, November 19, 2003

Not Too Late for the U.N.

By Salim Lone

(コメント) イラクをイラク国民の手にゆだねたい,とブッシュ大統領が言うとき,それは素晴らしいアイデアでしょうか? 政治的に望ましいことであっても,軍事的には混乱と破滅を意味するかもしれません.しかし,アメリカ政府の方針転換は,ブレマーが,マッカーサーの日本占領から,マクロイのドイツ占領に近い形へ,重心を移すことを意味する,とHoaglandは考えます.イラク政府の樹立をより尊重し,表に立たない形で,その民主化や市場経済の復興を支援するわけです.

そして,真実がどうであれ,アメリカ政府はイスラエルと特殊な関係にある,とアラブ民衆が信じている以上,占領と復興における広範な市民生活への関与,内外の協力関係構築,それらの調整に,国連が果たす役割は大きいはずです.


LAT November 15, 2003

Truth in Pricing Is a Worthwhile Goal

By Sherman E. DeForest, Sherman E. DeForest is a physicist in Carlsbad.

ラジオから聞こえた「価格の透明性」という言葉に,私は感動した.

消費者にとって価格とは,要するに他の何かから成り立っている.たとえば自動車を買えば,そのどれだけが販売部門の重役に支払われるのか? 優良企業の株式を買えば,その内のいくらがNYSEの会長の退職金に支払われるのか? レコード会社は若者たちが音楽をコピーすると嫌がるが,CDを買えば,そのいくらがミュージシャンに支払われ,いくらがレコード会社の重役に支払われるのか?

透明性は素晴らしい.連邦法で明記してほしいと思う.工業製品や自動車に,一部,要求されているように.将来は,製薬会社も,薬の値段の内,何が特許料で,何がマーケッティング手数料なのか,明記しなければならないだろう.それはすでに,消費税を納める小売店に要求されている.

こうした表示があれば,商品それ自体のコストはより小さく見える.たとえば1ドルの商品に,税金を含めて,1ドル7セント支払うように.住宅を買えば,その税金だけでなく,手数料も知りたい.

想像してほしい.将来は,あなたが1万ドルの自動車を買うと,セールスマンがこんな風に説明する.「ええ,もちろん,この価格に,重役手当ての5000ドルと,販売手数料の3000ドル,政府にロービー活動する費用として3000ドルが追加されますよ.それに ・・・」 そして消費者は,販売手数料が高い商品よりも,品質により多くのコストをかけた商品を選ぶかもしれない.

組合は保険料の支給がカットされるという理由でストライキを行う.店は競争力を維持するには労働コストの削減が必要だ,と言う.本当に,保険料や重役への手当てが,その商品の価格のどれだけを占めているのか? それを知れば,あなたは組合のストライキに同情するだろうか? そして,むしろ重役の給与を10%カットしろ,と思うかもしれない.

透明性が無ければ,われわれは知らないことについて,議論できない.経営陣はそれを好む.もし真実を知りたいと彼らが言えば,それは自分の得になるからだ.


ST NOV 15, 2003 SAT

Steel test for trade

NYT November 15, 2003

For Steel Makers, Musical Chairs

By KENNETH N. GILPIN

NYT November 15, 2003

They Support Free Trade, Except in the Case of . . .

By DAVID E. ROSENBAUM

BG, 11/14/2003

Trade experts warm Gephardt's wage plan

By Scot Lehigh

(コメント) まともに考えれば,アメリカはWTOを離脱しない限り,鉄鋼関税を下げるでしょう.EUや日本など,関係国と交渉して和解することも可能ですが,EUは交渉を受け入れません.アメリカの鉄鋼生産は衰退の道を歩むしかない?

しかし,メリル・リンチの鉄鋼部門アナリストDaniel A. Rolingは,違った見方を示します.鉄鋼部門の収益を圧迫しているのは,@輸入の急増,A年金支払い,Bドル高による価格低下,C自動車の国内生産,D国内の過剰な鉄鋼生産力.Daniel A. Rolingの楽観的な予想では,今後,ドル高の要因を抑えることができれば,5年ほどで,より大規模で,生産調整を弾力的に行える形で,アメリカ鉄鋼産業が整理されるはずです.関税引き上げは,ドル高が過度に進んだ場合の回避策なのです.鉄鉱石も石炭も豊富に存在しており,新しい労働協約が有利に展開すれば,アメリカ鉄鋼業の復活は時間の問題だ,とDaniel A. Rolingは考えます.

ほとんどすべての政治党派が,貿易は損失以上に多くの利益をもたらす,と考えています.しかし,ROSENBAUMが要約しているように,選挙の年には変わります.民主党の候補たちは労働組合からの支持を得なければなりません.ブッシュ氏も,大統領選挙では,鉄鋼労働者からの支持に頼りました.今は,むしろ鉄鋼価格を下げることで,鉄鋼の利用者に支持を求めつつあります.しかし,民主党の大統領候補ディーン氏が労働組合の立場に近づいたように,ブッシュ氏も南部や中部のホワイトカラーたちが職場の流出を恐れていることを知っています.

もしそうであれば,私たちは政治システムや政策を,選挙の年だけ変えなければならないでしょう.短期的・表面的な利益を誇張して,政治的な約束をばら撒く候補を牽制し,貿易政策を一時的に凍結するか,超党派の機関に委ねることが考えられます.経済学者も,自由貿易を守りたければ,自由化を遅らせ,時限的な数量規制を設けてでも,その長期的な利益に関心を集中させるような政策を支持するほうが良いでしょう.

たとえば,ゲッパードRichard Gephardtの「国際最低賃金the international minimum wage:IMW」提案です.それが各国毎に設定されるなら,市場における比較優位を損なうものではないでしょう.ゲッパードは,WTOとILOとが,自由貿易と最低賃金とを組み合わせて,各国の動向を監視すればよい,と考えます.ただし,各国が合意できないためWTOは関与せず,実現は難しいだろう,と言います.


IHT Tuesday, November 18, 2003

Latin America deserves better

Mary Robinson

NYT November 19, 2003

Frustrated, U.S. Will Seek Bilateral Trade Pacts

By SIMON ROMERO

WP Wednesday, November 19, 2003

Trans-American Trade


IHT Saturday, November 15, 2003

To lead, U.S. must give up paranoid policies

Zbigniew Brzezinski

ST NOV 19, 2003 WED

US can't rely solely on might

JOSEPH S. NYE JR

(コメント) なぜアメリカは,史上最高の軍事的優位を持つときに,世界から最低の政治的評価を受けるようになったのか? Brzezinskiは,ブッシュ政権の世界認識を批判します.すなわち,味方(アメリカの方針を支持する国)以外のすべての者(国)を敵である,と断定する世界観です.

ブッシュ政権はヨーロッパとの関係を損ない,むしろロシアや「新しい」ヨーロッパとの関係を重視します.ブッシュ政権は,多くのイスラエル国民やアメリカのユダヤ人コミュニティーが支持する平和的な解決を無視し,パレスチナの軍事占拠を是認し,ますます南アフリカのアパルトヘイトに似てきたイスラエル政府の政策を支持します.このような政権が,味方以外のすべてを敵である,と断定すれば,アメリカの政治的影響力が失われるのは当然です.

私的なテロ組織が行った9・11は,日本が国家として1941年にアメリカに対して与えた戦死者を越える被害を,一撃で与えました.戦争は国家の手を離れたのです.21世紀の国際秩序を変えるかもしれない9・11へのアメリカの対応は,国際テロリズムと大量破壊兵器との結びつきに焦点を当てています.問題の性格からして,外国政府との協力が前提であり,そのためには「ソフト・パワー」を利用することが重要だ,とNYE JRは常に指摘します.ソフト・パワーとは超国家的な問題の解決に向けて,他国の利益にも,アメリカの利益にも合致する形で,協力を得られる力です.それは強制によらず,自国の魅力と説得によって得られます.

イラク戦争は,その特徴の多くが20世紀の戦争でした.しかし,北朝鮮やイランは,新しい問題です.国際的な協調無しには解決できません.


FT November 17 2003

Time to shake up fund directors

By John Gapper

Nov. 17 (Bloomberg)

Stiglitz Says Disclosure Paramount in Scandals

John Wasik

(コメント) ミューチュアル・ファンド(オープン・エンド型の投資信託)は,アメリカ人の普通の家庭にも資産運用の手段として広く利用されています.特に,インターネットが普及し,煙突型の産業が衰退する中で,地方の工場労働者や高齢者も,こうした形で資産市場に関与することが多くなったようです.

かつてサミュエルソンが,アメリカの株式市場に投資していれば,誰でも十分な資産を形成できたはずだ,と資本主義を賞賛したように,最近では,投資信託さえあれば誰でもプロの投資家に負けない収益が上げられる,と大衆型の資本市場を専門家も賞賛するわけです.しかし,現に行われていることは,プロの投資戦略や情報操作に乗せられて,短期の売買や不正な取引に巻き込まれ,自分たちの長期的な利益を損なっているだけではないか? これは,平等な分配とともに,効率的な資源配分も達成できないだろう,という資本制社会への根本的な不満を,現代においても繰り返すものです.

ミューチュアル・ファンド・スキャンダルは,いま風には,「情報の非対称性」として議論されます.昔から,価格メカニズムには「完全情報」という仮定がありました.スティグリッツらがスキャンダル防止に必要な条件をどのように論じているか,Wasikはインタビューや新著から要約しています.

部分ではなく全体を,「包括的情報公開comprehensive disclosure」を求めること,がスティグリッツの要求です.しかし,実際には何を,どうするのか? 論説が薦めるのは,次のことです.@経営陣の中に,株主の真に独立した代表を入れること.A包括的な情報公開を求めること.Bもし納得できなければ,その企業の株式や投資信託を,売却すること.

しかし,株主は必ずしも情報の公開を求めていないでしょう.彼らは「利益」を求めるのです.しかも,しばしば自分だけの.


Nov. 17 (Bloomberg)

Asians Aren't Dumping U.S. Treasuries -- Yet

William Pesek Jr.

(コメント) アジア通貨をめぐる閉塞状況が指摘されています.スノー財務長官は人民元の切上げ求めましたが,今は黙っています.アジア諸国の中央銀行は,今も自国通貨の増価を嫌い,ドルを買い続けています.スノーが考えたように,長期的にはアジアにとって輸出に依存した成長から国内需要に重心を移すことが望ましいのです.しかし,短期的には,不安が先立ちます.

アメリカ政府は国内の失業問題について,アジア通貨の人為的な介入政策を犯人として名指ししました.しかし,アジア諸国がその黒字で財務省証券を購入し,金融緩和に協力していることには満足しているでしょう.今のところ,アジア諸国にもドル買いに変わる手段がありません.同時に,アメリカの債券市場がバブル状態にあっても,アジア諸国はリスク・ヘッジを取っていません.

双方が,この関係に不満を感じつつ,国内経済に均衡をもたらす新しいメカニズムを模索しなければなりません.どちらが先にそれを見つけるのか? そのときまで,不安に依拠した現状維持が続くことを願って,沈黙した,というわけです.


LAT November 16, 2003

We Don't Know How to Build Democracy

By Stephen D. Krasner

(コメント) 世界の民主化を約束したけれど,アメリカ自身にも,どうすればそれを実現できるのか,分かりません.それは既存の公式で解けず,イラク国民に主権を返すことでは実現できず,国際社会の支持を得られず,一貫した政策として示すこともできない,とKrasnerは言います.それでも,アメリカにはそれを可能にする資源があり,国民はそれができると信じている,と.

超大国間の均衡を維持するのでも,核兵器を増やすのでもなく,アメリカに脅威となるような破綻国家の政治システムを改善することが,これからのアメリカの外交課題です.


FT November 17 2003

Book review: The contradictions of Rubinomics

By Glenn Hubbard

(コメント) ロバート・ルービンはクリントン政権の財務長官であり,グレン・ハバードはブッシュ政権の経済諮問委員会委員長でした.現代の経済政策と金融市場について,この二人の意見がまったく反対であるのは,とても興味深いです.もしくは,大統領選挙の,そして学者と投資銀行,経済学と政治家の,代理戦争?

ルービンの真髄は,経済学の原理よりも,状況の変化を読むべきだ,ということのようです.つまり,ハーヴァード大学やコロンビア大学で教わる経済学の原理より,ゴールドマン・サックスで得る市場(投資家)心理の読み方が重要だ,というわけです.ハバードの疑問は二点です.1990年代の好景気をもたらした「ルービノミクス"Rubinomics"」とは何か? 1997年に始まったアジア通貨危機にルービンは正しく対応できたのか? 最初の答えは,まやかしだ.次の答えも,失敗だ.

ルービンは,クリントン政権が財政赤字を減らし,これが金利を下げ,投資家の行動を促して,好景気が実現し,さらに財政赤字が減る,という好循環が起きた,と主張します.しかしハバードは,財政赤字の消滅が景気を刺激した,という主張を受け入れません.投資は,金利だけでなく税金にも反応し,もし増税することで財政赤字を減らし,それが金利を下げても,これら二つの効果が投資を促すかどうか,分からないからです.ハバードは,ルービンの市場(経済学)軽視と不信感を見ます.

アジア通貨危機に対するルービンの意見は,危機の感染,を回避することを強調しました.しかし,ハバードに言わせれば,金融制度の近代化やガバナンスなどと,大げさに,制度の欠陥を指摘していますが,危機の際には主張していなかったことです.むしろハバードは,「モラル・ハザード」問題の深刻さをルービンが見逃した,と考えます.無邪気な積極的介入と制度改革論は,こうした問題を無視している点で愚かなものだ,という調子です.

「不確実性の世界で政策を練るべきだ」と言うが,ハバードから見れば,世界がぼやけているのは,ルービンのレンズの焦点が外れているだけのことです.


Nov. 16 (Bloomberg)

Japan's Kuroda Bangs the Drum for Yen Sales

David DeRosa

Nov. 19 (Bloomberg)

`Blah-Blah-Blah' Currency Policies Must End

William Pesek Jr.

(コメント) 黒田氏が言うように,もし日本の通貨が減価しなければならないとしたら,それはアメリカよりも日本の方が成長の見込みを大きくプラスに転じたからではない(それなら円高です).日本政府がASEAN各国や中国とのスワップ協定を合意したことにより,(必ず起きる)将来の危機に際して,彼らが大幅に円を引き出すことを認めたからだ,とDeRosaは皮肉を言います.

グローバリゼーションの末に,経済実態ではなく,政治家や官僚が示す言葉によって,通貨価値を上下させることを,Pesek Jr.は「たわごと政策 blah-blah-blah policy”」と呼びます.そして,その根本的な害悪を,@市場の浮動性を増し,A必要な改革を遅らせ,B長期的な戦略を実行しにくくする,と指摘します

日本が本気で改革と向き合ったのは,1995年の80円を切った超円高の時期でした.しかし,彼らは「たわごと政策」を繰り返し,45%も円安を進めて,改革などすっかり忘れたようだ,と.今も,円高に上限を設けて,飽きもせずに口先介入に励んでいます.それは,ベンツェン,ルービン,サマーズもそうでした.国内の改革よりも「たわごと」の方が,長期の社会的コストは大きくても,政治的コストがはるかに小さい限り.


WP Monday, November 17, 2003

Guests Who Pose No Threat

By John Cornyn(a Republican senator from Texas)

(コメント) テキサス選出の共和党上院議員であるCornynがウォル・マートの非合法移民雇用問題を論じれば,それは@ウォル・マートの違法行為,A移民労働者の違法行為,B移民に関するアメリカの国境管理,C安全保障に関する国境管理,に区別されます.Cornynは,メディアが@をスキャンダルとして描くことで,本当に重要なCを見失ってはならない,と主張します.

アメリカの労働市場は,すでにメキシコなどからの非合法移民を当然のように受け入れています.アメリカン・ドリームの一部として,彼らが合法的に就労することは,アメリカ経済にとっても,移民たちの家族にとっても,有益なのです.だから,AとBは,移民たちに短期の労働許可証を与えることで解決するべきだ,とCornynは考えます.


NYT November 19, 2003

U.S. Moves to Limit Textile Imports From China

By EDMUND L. ANDREWS

FT November 20 2003

Risk of divorce

FT November 20 2003

Lex: Chinese steel industry

FT November 20 2003

China wary as US puts lid on textile imports

Nov. 20 (Bloomberg)

Bush Gets Double `D' in Handling China Bra Flap

Caroline Baum

NYT November 20, 2003

Greenspan Warns Against 'Creeping Protectionism' in Trade

By KENNETH N. GILPIN

NYT November 20, 2003

China Threatens Retaliation in Trade Dispute With U.S.

By KEITH BRADSHER


IHT Wednesday, November 19, 2003

Beyond Iraq, the world is enjoying rare peace

Jonathan Power

The echoes of Suez '56

Geoffrey Wheatcroft

When the Americans leave

Martin van Creveld

(コメント) Powerは,ブッシュ氏のロンドン訪問が示すように,ブッシュ政権の実現した世界は,アフガニスタンとイラクで戦後統治に失敗している,と考えます.しかし,デモの参加者と違って,長期的には大きな改善があった,と考えます.すなわち,六つの大国(アメリカ,ロシア,EU,日本,インド,中国)がこれほど互いに平和を確信できるのは,1870年から1917年の国際関係が安定した時期以来,無かったことです.

しかもそれは,勢力均衡ではなく,基本的に大国間で利害が一致している,という傾向が生み出したものです.ブッシュ氏の選択も,それに貢献しました.彼はロシアをアメリカの外交政策に引き込み,ヨーロッパとの紛糾は互いに節度を失わず,日本やインドとの友好関係を演出し,何より,中国と完全に利益を共有したのです.ただし,これは中国側の変化が重要でした.中国政府は多くの国境紛争を解決し,国際機関にも積極的に参加して,政治対立よりも経済的利益に大きく反応する国となったわけです.

もちろんこれには,ゴルバチョフが冷戦を平和的に解消することに合意し,インターネットが可能な限り各地の有権者にとって平和的な解決を求める政治家に強い支持を与えたことが,関係しているはずです.政治家たちは,この世界を完成させるべきだ,と.

Wheatcroftは,イラクがヴェトナムではなく,英仏政府が対応を誤った1956年のスエズ危機である,と考えます.その違いは,イラクでは自爆テロが復興問題を悪化させていますが,ヴェトナムでは国民に支持された武装ゲリラが,中国とロシアの支援を受けて,アメリカ軍を追い出した,ということです.エジプトのナセルは,フセインほどの大量虐殺者ではありませんが,デマゴーグでした.

英仏両政府には,それぞれ,ナセルを失脚させる理由がありましたが,今のイラクのように,西側の軍事同盟を動かすほどではなかったのです.そこで,ナセル追放に強い意志を示すイスラエルの軍事行動を支援し,事前の筋書き通りに英仏軍が停戦ラインを管理する予定でした.しかし,戦争はイスラエルが予想以上の侵攻速度で占領地域を広げ,英仏の停戦介入は間に合わず,何よりアメリカの関与を招きました.アイゼンハワー大統領は,経済制裁によって,英仏両軍が撤退するよう求めたのです.

問題の解決は,軍事的ではなく,政治的に可能です.スエズ危機と同様に,軍は予想以上の速度で勝利をもたらし,占領しました.ボーイ・スカウトの軍隊に破壊された国民は恨みを抱き,国土に氾濫する銃器を手にするでしょう.ナセルはアラブ世界の支持を得た指導者であり,彼を攻撃する英仏軍は支持を失いました.同じように,憎まれていたはずのフセインの人気を,アメリカ軍の占領政策は回復させるでしょう.占領は長続きしないのです.

唯一つ,皮肉なことに,かつて英仏軍に「退出」を強制したのはアメリカ政府でしたが,今やアメリカの退出を可能にするのはEUからの批判です.

では,アメリカが撤退すれば何が起きるのか? とCreveldは考えます.アメリカ軍は撤退するでしょう.アメリカが敗北するかどうか,では無く,どうやって(アメリカ,そしてブッシュが)面目を保つか,だけが問題です.すべては予測に過ぎませんが,占領に協力した統治評議会のメンバーは,即座に,処刑されるでしょう.

もしゲリラの背後にフセインが居て,彼が強力な支配を行えるなら,再び,湾岸戦争後の状態に戻るでしょう.あるいは,強力な組織が無いとすれば,イラクはシーア派とスンニー派,そして北部のクルド人が支配する地域に分割され,さまざまな部族が占拠するでしょう.ヨルダン,サウジ・アラビア,エジプトは,アメリカの撤退に恐慌をきたすでしょう.しかし,ヨルダンが隣国シリアに支配され,サウジ・アラビアが崩壊すれば,イスラエルと和平を実現し,アメリカの支持を得るエジプトが,この地域の最も重要な政治主体となり,世界に影響を及ぼすでしょう.周辺の脅威を取り除かれたイスラエルは,この機会に乗じて,パレスチナとの交渉を進めるでしょう.そして,最大の利益を得るのはイランです.イラクもアメリカも,もはやイランの野心を妨げません.

イランの核武装は,トルコやギリシャ,サウジ・アラビア,エジプトにも核武装を広げ,ブッシュの祝福した「新しい世界」を出現させます.


LAT November 20, 2003

Free Trade May Not Be Fair Trade

By Roger Hollander

(コメント) 元トロント市会議員で,FTAAに反対するHollanderは,自由貿易が実際には豊かな国の政治家のためにある,と激しく批判します.

たとえば,イギリスのニューキャッスルで石炭がトン当たり10ドルで採掘できるとしよう.同様に10ドルで採掘できるが,アメリカのペンシルヴァニアからは,輸送費と関税があるために,イギリスに15ドルでしか輸出できないとしよう.しかし,ペンシルヴァニアは輸出市場の拡大に必死で,ロビー活動を行い,政治家を通じてトン当たり5ドルの輸出補助金を得る.さらに,英米間で政府は自由貿易に従い,イギリスは2ドルの関税を撤廃すると合意した.こうして7ドルの支援を得たペンシルヴァニアの鉱山は,トン当たり8ドルでイギリスに輸出できる.ニューキャッスル鉱山よ,さようなら! ようこそ,イギリスの大量失業者諸君!?

Hollanderは,関税と補助金が自由貿易を妨げている,と主張し,この点では経済学と一致します.経済学者は,こうしたアメリカの補助金を批判するでしょう.しかし,自由貿易を補助金撤廃と結びつけて議論するかどうか,アメリカやEU,日本がそれを拒むなら,現実離れした自由貿易論を繰り返すだけかもしれません.

多角的自由貿易であれ,FTAであれ,関税を下げる世界では,ふんだんに補助金を出せる国が,それゆえ,すでに工業化した豊かな国が,貧しい諸国の工業化を妨げます.それどころか,NAFTAに参加したメキシコが,補助金によって安価なトウモロコシを輸出できるアメリカが,メキシコの農民を苦しめます.Hollanderは,メキシコのトウモロコシが安くなったから,とは書かずに,消費者のコストが上昇した,と非難していますが,経済学はこの点に同意しないでしょう.

自由貿易とは,実際には,第三世界の国の資源を安価に輸出させて,それと交換に工業製品を高く売りつけるシステムだ,と批判します.貧しい国は,その貧しい労働者を酷使し,あるいは輸出するしかない.理論やイデオロギーではなく,現実には,市場に政府が介入します.政府間の合意は不公平で,強国に有利な貿易しか行われません.WTOやFTAAの交渉も,決して民主的ではなく,秘密裏に準備され,非現実的な期限で,脅迫が行われます.その条件を飲んだ国だけに,IMFや世銀は融資を行い,アメリカは軍事的な保障を拡大します.

西半球の貧しい諸国は,貿易協定を恐れなければならない多くの理由があるのです.

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The Economist, November 8th 2003

Greatest danger, or greatest hope?

America’s deficits: A flood of red ink

A nation apart: A survey of America

America’s economy: Another hangover in the making

(コメント) アメリカは特殊か? もちろん.では,どの程度まで特殊か? そして,アメリカが特殊であることは,世界にとって脅威か? The Economistは,この二つの問題を考察しています.

アメリカは,その地理的,歴史的な条件から,特殊な国家を形成しています.国民感情も,政治システムも,アメリカはヨーロッパや日本と違います.それゆえ,アメリカは世界を指導してきましたし,アメリカが変われば世界も変わるでしょう.アメリカは,なぜかヨーロッパに比べて,はるかに宗教意識が強く,はるかに自分たちの愛国心を鼓舞し,政治・経済システムの優越性を吹聴します.アメリカという国が,その建国以来,自由や民主主義という理念に宣誓することで,自ら国民であることを選択した人々から成っていることは,世界のどこにおいても,こうした原理を脅かす敵と戦う強い決意を,指導者と国民に受け入れさせるのです.

他方で,いずれの国にも劣らず,特殊な利益集団がアメリカの政治システムを取り巻いています.ブッシュ政権が示した政策転換は,すでにアメリカがヨーロッパに関心を失い,ヨーロッパに関する知識も無い政治家が増えていることを示しています.そして,ブッシュ氏はアメリカのこうした例外主義(American exceptionalism)を増幅して利用し,9・11から新しい世界秩序へと,自身の権力拡大と結びつけました.

トクヴィル,リプセット,グラムシ,H.G.ウェルズ,などの考察から,アメリカの特殊性・例外主義とは何か,じっくり考えてみる良い機会です.

The Economistは,アメリカの特殊性は際立っており,必ずしも収斂することは無い,と考えます.しかし,そのことは以前と同じであり,世界はアメリカから,問題よりも多くの解決を得てきました.今後,アメリカが世界の脅威になるとしたら,一つはアメリカの使命に対して,世界が反発を強めることであり,アメリカ経済が世界の不安と恐慌の源になることでしょう.