IPEの果樹園2003

今週のReview

9/15-9/20

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オーストラリアを1900キロ余り,中川君とドライブしました.一日目はキャンベラから南下し,Cooma,Bombala,Cann Riverを経て,Lake Entranceで黒白鳥black swanを見ました.どうして土が赤いのか? どうして角のない丸い大岩が,空から巨人がまぶしたように大地に散らばっているのか? どうして赤いはずの土や岩が,錆びた銅のような緑色なのか? (緑色の雨でも降るのでしょうか?) オーストラリアでは,白鳥だって真っ黒black swanなのです.

平らな湖面の周囲で歩道を散策すれば,栗のような針のある実をなした木がありました.しかし,よく見れば栗の実ではなく,もっと長いのです.チューブの中を掃除するタワシのようでした.他の天体を旅する宇宙人のような気分です.日が暮れて,カンガルーがヘッド・ライトに飛び込んでくる…? という話を信じ,私達はSaleという町で泊まりました.

朝のうちは,大陸の広さと入植者の勇気を実感するぞ,などと元気ですが,既に昼頃には疲れ始め,夕方には私の無駄話も途切れて,二人で交代しながら助手席でうたた寝していました.距離の暴虐だ,とか何とか言いながら.オーストラリアについて,私の空想がもたらした疑問は,例えば,次のようなものです.

l  牧場となっている,この果てしない大地は,森から木を取り除いたのか,それとも草原に木を植えたのか? (これは,シマウマが元は白い馬なのか,黒い馬なのか,という疑問とそっくりだ…と思いませんか?)

l  距離の孤独を克服するために,人々が都市に移住するのと,輸送手段に投資するのとでは,どちらが良いか?

l  輸送手段として,鉄道を建設するのと,高速道路を建設するのとでは,社会に与える影響がどう違うか?

l  移住してきた白人達が,この大地に行った労働と資本の投入は,どのようにして可能になったのか? しかも,フリー・ウェイとして! (そして,なぜ同じような投資をアジアやアフリカには行わなかったのか?)

l  これほどの耕地がありながら,なぜ羊や牛を放牧するより,農耕を支援しなかったのか? (アジアから大規模に移民を受け入れて!)

l  経済や社会,文化は,どの程度,降水量や気候,風土によって決まるのか? (唯物史観ではなく,降雨量や河川による「唯水史観」だね,などと話し合いました.)

l  「柔らかい」国家と「硬い」国家,をミュルダールは区別しました.私がここで感じるのは,「薄いvs.厚い」,「開いたvs.閉じた」,「軽いvs.重い」社会の対比です.(イギリス,アメリカ西部,アメリカ東部,北西ヨーロッパ,オーストラリア,中国,などを分類したくなりませんか?)

l  「多文化主義」は,本当に,「移民問題」の正しい解決策なのか? あるいは,オーストラリアは植民地経営や白豪主義をやめたと言えるのか?

オーストラリアは,イギリスのフロンティアであり,延長であったと思います.入植者達はイギリスの新しい大きな島に移り住んだのです.イギリスの法律や制度を持ち込み,その経済活動はイギリスの資本市場や貿易の一部でした.

ある朝,目がさめると,日本の東に大きな土地が出現し,人々が移住を奨励されるとしたら,何が起きるでしょうか? 観光開発や宅地開発が行われ,ゴルフ場や農地の開墾も行われるでしょう.本土よりも土地は安く,また賃金は高く設定されるはずです.そして日本が好景気になれば,活発な投資は新しい土地の開発を促し,新しい生産力がフロンティアを港から内陸へと,次第に満たして行ったと思います.

もしフロンティアが,元の生活水準を実現するために巨額のインフラ建設を必要とするのであれば,その投資をまかなう必要があります.なぜ,新しい土地で,それほど巨額の投資ができたのでしょうか? 多分,本土の投資家が,国内と同様に,フロンティアへの投資を有利な収益機会と見て比較したのでしょう.たとえ,フロンティアのインフラ投資が巨額で,賃金が高くても,その土地が投資に十分な収益をもたらす輸出を行えれば,旧大陸の投資家たちは喜んだのです.

肥沃な土地が十分にあり,高賃金を維持する高価格の国際商品を,競争力のある価格で世界市場(イギリスとヨーロッパ)に売って,投資を呼び込む.羊毛,綿花(ただしアメリカの奴隷),果物,さまざまな地下資源(ただし石油は非西欧),食肉,あるいは…? でも何故,世界中が高い生活水準を実現できなかったのでしょうか? 

もちろん,基本的に,大規模な人口を抱える社会は,食糧を自給しており,食糧生産に従事する人口の比率(食糧部門の生産性)で,その社会の生活水準が決まるわけです.国際貿易における住み分けだけでは,必ずしも世界市民社会を実現できなかったのです.植民地開発には,やはり,二つの異なったタイプがあったようです.

二日目.まだ暗い内から,満月に近い月明かりの下を,私達はメルボルンへ向けて出発しました.

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, CD:China Daily, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune


ST SEPT 5, 2003 FRI

What if Cancun talks fail?

By RAZEEN SALLY

FT September 5 2003

Time for generosity

By Michael Prowse

(コメント) WTOのドーハ・ラウンドがメキシコのカンクンで交渉決裂に至れば,世界は主要国が貿易相手とさまざまなFTAを張り巡らせた多層的貿易体制に変質していくでしょう.貿易自由化が二国間よりも多国間で行われることは,望ましい反面,指導的な貿易国が合意しなければ進まない矛盾を抱えます.1930年代のような閉鎖的貿易ブロックではなく,主要国を軸にして,異なった労働条件や環境基準,農産物保護などを,その貿易相手国は選択するでしょう.

今回の貿易交渉は,反グローバリゼーションの運動にとっても政治目標になっています.「世界的な公正貿易」について,「児童労働」や「貧困」,「公正価格」,「正義」の問題がWTOの外で議論されているのです.WTOが発展途上諸国から合意を取り付けるには,自由貿易が単に経済理論上の真理として受け入れられるのではなく,社会的な目標を実現する手段として正当化されねばなりません.すなわち,WTOやIMF,世界銀行だけでなく,もっと社会的な目標を実現する国際機関を充実させなければならないわけです.

「公正貿易」運動は,貿易理論から荒唐無稽な中世の神学や産業革命期のラッダイト運動のように見なされます.しかし,それは自由貿易の利益を社会的に実現するための教育や健康,労働条件をめぐる社会政策を求めた,国境を越える社会運動です.


BG 9/5/2003

Suburban segregation

(コメント) ボストンやその周辺都市でも,人種やエスニシティーによる学校や居住地区の隔離が進んでいます.市場メカニズムは,差別された人々が優れた学校や住宅,優れた社会インフラを享受できないように,それゆえ差別が強化されるように働くでしょう.白人の子ども達はアフリカ系やヒスパニック系の子供といっしょに学校へ通わなくなります.人々は多文化的な価値観や社会規範を子供の頃から身近に感じることなく育つことで,社会の柔軟性や移動性を大きく損なう結果となるのです.


NYT September 4, 2003

The China Syndrome

By PAUL KRUGMAN

Sept. 8 (Bloomberg)

How China's Currency Affects Asia's Poor

William Pesek Jr.

FT September 10 2003

We must wait to free-float the renminbi

By Rob Westerhof

(コメント) Krugmanは,ブッシュ大統領がイラク戦争を国民の愛国心で正当化し,批判を封じ込めたように,失業増大を弁解できない、と考えます.巨額の減税によって不況は軽いものに止まった,と説明するより,効果の無い富裕層への減税で財政赤字を増やし,結局,財務長官は中国の人民元切上げに助けを求めている,と批判しています.そして,冷戦思考のブッシュ政権には,北朝鮮で重要な役割を占める中国を,嫌がる選択に向かわせる手段など持っていない,と言うのです.

中国が通貨価値を切上げることは,アメリカや日本の景気回復を助けるよりも,アジアの貧困を減らすという意味で重要だ,とPesek Jr.は考えます.アジア諸国の輸出構造が変わるだけでなく,世界経済で数少ない成長の極となっている,中国の消費者が輸入品に対する購買力を増すからです.

Westerhof(chief executive of Philips Electronics North America and former chief executive of Philips Electronics East Asia)は,スノー財務長官の人民元切上げ要請に反対です.大幅な人民元切上げはゼロ・サム・ゲームであり,中国とアメリカが雇用を奪い合っています.そして,もし中国が不況になれば,世界もさらに雇用を失うでしょう.

多国籍企業は,中国に巨額の投資を行って,中国を世界的な生産・販売体制に組み込んでいます.その意味で,予想外の大幅な人民元切上げや通貨危機は好ましくないのです.Westerhofは,中国が金融システムを改善した後,変動相場制に移行することを望ましいと考えています.そして,人民元を緩やかに切上げて,アジア諸国の輸出能力や中国の生産性上昇,雇用と成長を持続的に実現することを求めています.


FT September 7 2003

Bush needs a Mideast exit plan

By Stephen Walt

(コメント) アメリカのイラク占領は,イラク国民の治安回復や生活の改善をもたらすことに失敗し,彼らから尊敬を得ていません.何故このような事態に至ったのか? サダム・フセインの独裁体制を軍事的に解体すれば,中東の民主課やパレスチナとイスラエルの和平も実現し,他の核開発国家も計画を放棄するはずでした.

雇用回復に失敗した経済顧問達を首にしたように,ブッシュ氏は軍事顧問達を首にするべきだ,とWaltは考えます.アメリカは明確に退路を確保しなければなりません.完全に国際的な軍隊に占領を委ねることも考えられます.アメリカによる,イラク軍の再建も考えられます.


FT September 9 2003

Bush's billions will prolong Iraq's woes

By Jeffrey Sachs

(コメント) Sachsも言うように,アメリカ政府は軍の撤退とイラク政府の再建を明確に示して,多国間の戦後統治を始めるべきでしょう.ブッシュ氏は(今のところドル安ではなく)財政赤字によりイラクの占領政策を転換しつつあるのです.ブッシュ氏はこれまで,9・11に対するアメリカ国民の混乱と恐怖を無慈悲に悪用しつづけた,とSachsは考えます.

イラク統治は一歩一歩安定していくだろう,というブッシュ政権の予想を,Sachsは,ヨルダン川西岸地区のイスラエルや,チェチェンのロシア,アフガニスタン,一世代前のヴェトナムと同じだ,と指摘します.アメリカの占領は,民主主義や経済発展,大量破壊兵器の廃棄,テロとの戦いではなく,中東の油田を制圧するためでした.その目的が,何十年にもわたって,大英帝国やアメリカ軍と現地の腐敗した官僚や独裁者とを結びつけたのです.

たとえ戦争を始めたことは間違いでも,アメリカに占領されて中東は良くなる,という見解にSachsは反対します.占領が長引くほど,人命と財源が失われる,と.

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Rosedaleを越えてMoe,さらにメルボルンに近づくと,Dandenong辺りから片側3車線の高速道路が渋滞し始め,朝の通勤時間にメルボルンを越すのは時間の無駄だと思い始めました.私達は,目標の海岸線を夕陽の中で見物する方が良いと考え,先にメルボルンの移民博物館へ寄ることにしました.

10時の開館を待つ間,近くの公園のカフェで美味しいクロワッサンの朝食を楽しみ,その後,一方通行や市電を避けて,奇跡的に(!)博物館の隣の駐車場に車を入れることができました.地元の小学生で溢れた博物館は,いささか…予想と違う展開でしたが,私達にとっては,実に興味深い内容がいくつもありました.

植民地は,まるで,イギリス社会とアメリカ西部を混ぜたような,行商人や移民村,ロンドンで名声(とブランド)を売りたい新興商人,新しい資産家と犯罪者,入植者を求める植民地政府の宣伝,ノアの箱舟と奴隷船を混ぜたような移民船,等からできていたようです.当時のポスターを使った絵葉書を何枚か買って,研究資料も兼ねて,子ども達に出しました.

フロンティアにとっての最適な政策,というものがあるかもしれません.もし私が新しい星に最初に移住した入植者のリーダーであれば,こんな政策を行ってみたいです.

@土地を国有化し,その使用権を計画的に売却する.

A子供と老人・病人の最低所得を保証する.

B金融資産市場を長期化し,社会化する.

C政治家の所得と資産を監視・評価して,社会の改善と一致させる.

博物館を出るとき,親切な駐車場の男性に教えてもらった高速道路への道順をたどるのは難しく,どうしようか!? と迷走するうちに,なぜか正しいハイウェイへの入口を通過していました.Geelongから,本当はthe Great Ocean Roadへと逸れるのですが,私達には時間がありません.そこで,Colacまで自動車道を走り,そこから海岸線に近いLavers Hillへ向かいました.

12000キロを経て,ようやく見えてきた海の色に期待しつつ,なかなか海岸線にまで至らない山間の道を過ぎて,ついに私達が観たのはGibson Stepsの絶壁と大波でした.それは,饒舌を廃し,言葉を失わせる絶景です.この向うは南極大陸ですね,という中川君の言葉に,私は深く納得しました.

波によって浸食された崖の底がえぐられ,その上の岩がそれ自身の重みで縦にひび割れて崩壊していくのです.しかも,一部は崩壊しないまま崖の高さで海岸線の外に残り,海中に屹立する岩のテーブルやアーチ,塔となっています.まるで超難関のゴルフ・コースか,引退した人間嫌いの富豪が閉じこもった別荘のように.…海のグランド・キャニオンだ,と私は思いました.

そのときオーストラリアは冬の午後3時半でした.Gibson Stepsでは,見事に整備された階段を,波打ち際の砂浜まで降りることができます.崖の上から眺めても十分に雄大ですが,波打ち際の砂浜に立って,果てしなく続く絶壁や,海中で争う恐竜のように盛り上がった大波の列を見て,私は恐怖すら覚えました.空は青く,絶壁は赤茶色で,岩のテーブルには緑が残り,真っ白な波頭が次々と押し寄せる無際限のこの景観に感動するのは,民族や文化を超えた人間性のようです.

Port Campbellに向かって数分走ると,次に,最も有名なTwelve Apostles(十二使徒)の観察ポイントがあります.十二使徒,などという命名に私は感心しません.しかし,海岸線に沿って左右に広がった岩の彫像たちは,人間の勝手な解釈など相手にしないでしょう.朱色に輝く青い海に続く白い波が,時間を忘れさせます.London Archは,二つのアーチ状の岩が残っていたようですが,既に一つの橋は崩壊したということです.

日本にも美しい自然はあったはずですが,なぜか私達の満足できるような形で残されていないことをひどく残念に思います.ここがもし日本なら,やはり観光旅館やホテルが立ち並び,みやげ物屋や食堂が最も美しい景観にまで割り込み,自動車の渋滞や無断駐車,観光バスの大波が押し寄せ,貧しい旧村落と対照的な虫食い状の宅地開発などで,景観を損なったことでしょう.日本人の公共心や政治意識に貧しさを感じます.

Peterboroughまで行って泊まることにしました.パブでは若者達が集まって賑やかに酒を飲んでいました.夕食はシーフードや海老を食べましたが,海岸沿いにしては不満足な鮮度です.むしろPotato, Leek, & Baconのスープや,取り放題の野菜サラダに満足しました.外国を旅し,あるいは暮らす人は,言葉や食事に苦しみ,習慣の違いから誤解されたり,思うような結果を得られずに失望したりします.

自分はここに居るべきではなく,どこか他所に帰属するべき故郷がある,という感覚を,私達はしばしば持つようです.それぞれの努力が報われ,安心して暮らせる,自分にとっての親しい本当の世界を回復したい,とますます多くの人が思えば思うほど,世界は移民たちと彼らを選別する政府との摩擦で加熱します.帝国,植民地,移民問題.それらは安全保障や経済発展,社会的理想と個人を結びつける重要な問題です.

帰国する飛行機の中で観たニュースが映し出す,自民党総裁選の4人の候補たち(小泉・亀井・藤井・高村)に,なるほど,日本の政治システムはこうなっているのか,と感心しました.あるいは,ニューヨークのフラッシュ・モブ,徹夜で行列し,道頓堀に飛び込む阪神ファンの映像を観て,『アキラ』を思い出しました.アメリカはイラクの軍事統治に失敗し,スウェーデンはユーロ採用を否決し,発展途上諸国はWTOの交渉から離脱し,中国の人民元は切上げ圧力と国内バブルを蓄積し,イスラエルはアラファトの軍事的追放を公言しています.

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The Economist, August 30th 2003

Japan’s economy: On the rebound?

(コメント) 日本経済がにわかに回復した,という見解に,The Economistは疑問を付します.名目GDPが伸びていない,というのです.それは中期で見て,企業の利潤や債務の返済を制約します.日本の成長はデフレによって誇張されているのではないか,とも指摘します.例えば,資本財の名目価格が大幅に下落したために,実質的な民間投資額が急速に伸びたように示されています.たとえ企業は名目の投資額を減らしても!

他にも,成長が回復しない理由はあります.一つは,金融システムが今も脆弱で,需給ギャップが解消されない限り,不良債権がまだ何年も処理できないことです.そして,日本の政策に対する不信があります.日本経済は,財務省の早過ぎる均衡化や日銀の不胎化介入,歯切れの悪い金融緩和で,すでに何度か回復の機会を失ってきた,とThe Economistは考えます.マクロ政策が今しばらくは緩和を続けて,日本が成長への軌道に乗るかどうか,分からないわけです.


The dollar: Which way next?

(コメント) 通貨市場に完全な予想や持続する傾向を断定する者は居ません.ドル高が終わってユーロ高になっても,アメリカの景気が予想よりも堅調で,早く回復すると思えば,ユーロに流れ込んだ資本は動揺します.

では,大幅なドル安の予想は無意味だったのでしょうか?  The Economistは,アメリカの経常収支赤字とアジア中央銀行のドル買いに注目し,低金利に支えられたアメリカ住宅市場のバブルを警戒します.経常収支赤字は重要ではない,という説明を,1990年代の資本流入が失われたアメリカについて繰り返し信用するのは愚かだ,と考えます.

アメリカ人はマイナスの貯蓄に慣れてしまい,たとえ当面のドル安が軽微に終わっても,結局この傾向が逆転されるまで,ますますドル暴落の危険は蓄積される,と.


China’s economy: Ying and yuan

(コメント) それにもかかわらず,スノー財務長官は人民元切上げの要求を繰り返せるのか? それは間違った理由で主張されています.@アメリカの経常収支赤字や日本・ドイツのデフレは人民元のせいではないし,A中国の貿易赤字はWTO加盟で自由化されて減少する傾向にある.B中国の輸出はアメリカや日本の輸出と基本的に重ならない.

では,どうなればよいのでしょうか? C中国の成長を損なうことは世界経済にとっても不利だ.D中国にとって重要な問題はドル買いによる金融緩和とバブルである.E2008年の北京オリンピックまで金融引締めに踏み切れないとすれば,金融改革こそ重要だ.

スノー財務長官は,大統領選挙目当ての国内政治ショーではなく,望ましい米中関係や中国経済の成長維持に関心を向けるべきだ,というわけです.