IPEの果樹園2003

今週のReview

5/5−5/10

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NHK教育TVのアルゼンチン・タンゴを観て,私は抱腹絶倒しました.パンチ佐藤さんの熱演が実に楽しかったからです.アルゼンチン・タンゴの激しさや巧みさ,華麗さが,佐藤氏の軽妙さと真摯な人柄によって,何とも言えない楽しさとなり,私の閉塞感を打ち破りました.

私は毎日,何かで鬱屈します.最近,私が不満に思ったのは地方選挙でした.最初の選挙には行くべき日も知りませんでした.ニュースを観て,そう言えば冷蔵庫に張ってある葉書きは何だろう? と思ったのです.次の選挙はこの失敗に懲りて,必ず行くぞ,ということだけ決めていました.ところが,気が付けば,もう投票日です.誰に投票するか? きっと候補者の公約が最近の新聞に載っているはずだ,と捜しました. ・・・が,見つかりません.

公約無しに,また,彼らが今まで何をした人間か知ることもなく,どうして投票できるのでしょうか? 私は,今の選挙制度は,多くの有権者から政治的な権利を奪っているように思います.「選挙運動の自由化必要」(日経新聞,5月2日)も,有権者の投票意欲を削ぐ,と公職選挙法の欠陥を指摘しています.

前夜に私が思い出せたのは,駅前でバスを待っていた際に,聞くともなく聞いて記憶に残っていた「酒井孝江 40歳」です.彼女は「税金の使い道を厳しくチェックします」と明確に公約しました.そして市民派の選挙運動を行い,前回は惜しくも落選し,二度目の挑戦と聞きました.私は,自分の票で彼女が当選すれば,私自身の政治的な選択にも「意味」があるかな,と思いました.

晴天にもかかわらず,彼女が落選したのはとても残念でした.一体,なぜ,私の知らない何十人もの候補が当選したのでしょうか? (もっと政治的中間集団・組織が育ってほしい!)

日本の社会にはびこるのは,既得権を得た者が時代遅れの制度を温存させることで,自分たちの特権を守るパターンです.不誠実な医者は,老人たちにバケツ一杯の大量の薬品を供与し,やたらと点滴し,あるいは健康器具の並ぶ遊戯所に入れて,保険の点数を稼ぎます.あるいは薬局も,医者や薬剤師とグルになって,処方箋や薬の説明,薬の袋・手帳によって保険請求額を増やすのです.地方選挙と言えば,今も建設関係者が一杯です.地方経済の大きな割合を占める公共工事の発注に,彼らは間違いなく取り入ろうとします.そして宗教団体です.

デイビッド・ブルックス著『ボボズ』(光文社)は実に痛快な本です.ボボ(ブルジョア・ボヘミア)たちが依拠するのは,高度な知識による社会的な富の純増加と,実力主義(メリトクラシー)の信奉,もしくはニュー・エコノミーとその文化への帰依です.ハーヴァード大学の入学テストとIT革命とが,ボボたちを支配的エリートにしました.ビル・ゲイツのように,彼らは変人で,しかも大金持ちです.多分,ボボズとネオ・コンとの対立が,現代アメリカの政治地図を塗り変えています.

日本の高等教育経験者は,もはや学生運動や社会主義のカウンター・カルチャーに入れません.たとえば,「パナウェーブ研究所」と称する信仰集団が,どのようして物理学の高等知識から信仰心や神の声を代弁する人物への帰依を導いたか,私は知りません.ただ,新興宗教団体が分裂するパターンを想像してみました.

宗教的な理想と敬虔な心情から,志の似通った人々が素朴な宗教運動を起こしたとしましょう.それが現実社会との友好的な関係を維持できないとき,運動の中に「世俗派」と「純粋派」との分裂が生じるのではないでしょうか.「世俗派」は組織の権力や富を管理することで社会関係を修正し,熱烈な信仰心を組織の拡大に転換します.他方,「純粋派」は社会との関係を断ち,ますます偏倚な教義や閉鎖的な称号・格付けを尊び,破滅的もしくは破壊的な運命論と被害妄想に落ち込みます.

神の国と地獄とが親しい交わりを結ぶことを知った人々は,政治でも宗教でも,むしろ腹黒く強欲な守銭奴たちが支配する制度を許してきました.しかし本当は,賢明な,実際的人々が理想を尊重し,それを実現できる中間的な仕組みが必要なのだと思います.

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune, BL:Bloomberg, FEER:Far Eastern Economic Review, CD:China Daily, BG:Boston Globe


FT April 24 2003

A final term for Greenspan

NYT April 24, 2003

Alan Greenspan Re-Ups

The Observer, Sunday April 27, 2003

Irrational hopes for exuberance

William Keegan

(コメント) アラン・グリーンスパンが,予想外に,ブッシュ氏から最後の任期延長を求められ,これを受け入れたことに関して,FTは歓迎しつつ,追加的な考察を加えています.すなわち,グリーンスパン後のFRBが金融政策の混乱を招かないためには,何が必要か?

1987年にFRB議長になってから,グリーンスパンは素晴らしい実績を残しました.それは彼の理論を信奉させ,彼個人を信頼させました.すなわち,彼が居なくなることで,単なるインフレ抑制を目指した金融政策以上のものが曖昧なまま残されるのです.そこでFTは,イングランド銀行のモデルを採用することを推奨します.

イングランド銀行は三つの利点を持つ,とFTは言います.@明確なインフレ目標.A市場との透明な対話.B金融政策委員の独立性と非人格化.しかし,アメリカ議会がFRBへのいかなる権力委譲も認めないでしょうから,グリーンスパンは最後の任期に,その政策スタイルを明確にインフレ目標から説明するように改めるべきだ,と.

NYTは,成長とバブル破綻,またその後の景気悪化と11回の金利引下げに,グリーンスパンのFRB議長としての評価が分かれることを示しています.しかし,FRB議長が必ず歴代の大統領から強い圧力を受けても独立した判断を尊重しなければならなかったことを考えれば,来年の大統領選挙に向けて,グリーンスパンがその地位にあることは歓迎されるでしょう.

他方,Keeganの見方はもっと悲観的です.ブッシュ大統領がグリーンスパンに望むことは,「理由なき熱狂」を再現することに他ならないからです.アメリカの金融政策が成功するには,ドルの価値が減少するような調整を必要とします.しかし,ヨーロッパや日本がともに景気の悪化を心配する中では,こうした調整がスムーズに行えるとは思えません.

それなら主要諸国が金融緩和で政策協調すれば良いはずですが,日本やアメリカは既に金利が低すぎます.また,EUやECBが安定協定の制約を取り除くことも考えにくいのです.Keegenは,結局,イギリス(やアメリカ)の景気を減速させないためには,住宅バブルが継続することを願うしかない,と考えます.


IHT Thursday, April 24, 2003

Beyond North Korea: A chance for America to check China's rise

Elizabeth Economy and Eugene A. Matthews

(コメント) アメリカの北朝鮮に対する外交は,アジア地域におけるアメリカの支配的役割を再確立することに意味がある,筆者たちは考えます.北朝鮮の核問題は,@韓国における反米感情を高め,A日本の核装備や平和憲法破棄を唱える政治家を刺激し.Bアジアにおける中国の重要性を強めています.

外交評議会の専門家であるEconomy and Matthewsが表明する意見は,政府の考え方も反映されているでしょう.アメリカ政府は,在韓米軍を重視し,日本の核武装や軍拡を退け,アジアにおいて平和と繁栄を維持できるのは中国ではなくアメリカであることを確認させる必要がある,と考えているようです.そのためには,北朝鮮政府を承認して,アメリカの認める国際秩序内で繁栄できる途を示してやることを交渉しても良い,と示唆します.


FT April 25 2003

Euro entry is in Britain's interest

イギリスとヨーロッパ諸国との新たな混乱の一章がまもなく書き加えられる.この数週間以内に,政府はヨーロッパ単一通貨への加盟を申請するかどうか,五つの経済テストにいよいよ答えるからだ.詰めの議論が行われているが,そのおおよその方向は既に分かっている.テストはイギリス経済がまだ通貨統合の準備を終えていないことを示している.しかし,技術的な経済テストに合格することがすべてだと信じる愚か者はいない.それは常に,経済判断と同じくらい,首相と蔵相との政治闘争であった.

もし政府が加盟を現実の選択として残したいのであれば,ユーロ圏に参加する適当な経済的・政治的な条件を醸成する新しい基準を示すべきだ.他方,もし五つのテストを将来も使うなら,参加の意志はうわべだけであると分かる.テストは参加のための障害となる.

それらが走り書きされた時点から,FTはその曖昧な性格を批判してきた.経済学は,ほとんどどんな問題にも,透明で,曖昧さの残らない回答を出すには,ふさわしくない.単一通貨への加盟という込み入った問題ではなおさらだ.さらに悪いことに,五つのテストは混乱を長引かせた.これらのテストを合格するような定式化が,ユーロ加盟のための大臣間の協力を制約し,テストが本来求めているはずの経済的収斂を妨げた.それこそが,ユーロ懐疑論者たちに五つのテストがしつこく持ち出される理由である.

テストに盲従することだけが,もちろん,「拒否」キャンペーンの唯一の暴論ではない.この6年間に,ユーロをめぐって際限ない誤解が流布されてきた.1999年から2002年にユーロが減価すると,それは通貨の結果であると言われた.しかしこの1年,ユーロが強くなると,かわいそうな加盟国経済が破壊されている,と言われる.

ドイツの低成長は,ユーロに加盟すればイギリス経済が落ち込むものと言われ,アイルランドやスペインの高成長は,イギリスも危険なインフレ圧力を回避できなくなる,と警告された.何が起きても,ユーロは非難されるのだ.

大蔵省の分厚い報告書にはもっと冷静な評価を求めたい.

1.   どのような選択にも,潜在的なリスク,コストと利益がある.ユーロの外にいることも,ユーロに入ることも,その意味では同じである.

2.   ユーロ参加の長期的な潜在的経済・政治利益を評価すべきである.加盟が永久的な意思決定であれば,この点こそが重要だ.

この点に関して,貿易の増加,通貨価値の浮動性抑制,資本市場の統合と深化,競争促進と価格の透明性,といった利益に対して,短期金利の決定権喪失,経済活動の浮動性,ただし平均水準ではない,といった不利益が対比される.明らかに,その国がユーロ圏の経済循環と一致しない程度に応じて,その潜在的なコストは大きい.

その意味では,イギリス経済が既にヨーロッパ諸国と結びつきを深めているので,加盟支持の根拠は強固である.イギリスの輸出の半分以上がヨーロッパ大陸に向かう.一層の統合化は生産性を高め,富を増やす.イギリスとユーロ圏との経済循環の違いは小さい.

政治的にも,イギリスがユーロに加盟することは長期的な利益をもたらす.トニー・ブレアが適切の述べたように,「我々が求める変化をもたらすように,リーダーシップを」発揮することだ.そのためには,イギリスがEUの完全なメンバーである方が良い.

3.   政府は,加盟を遅らせるような,短期的障壁があるかどうか,考えるべきだ.何よりも重要な問題は,為替レートの水準である.

イギリス経済は概ねユーロ圏と収斂しているが,ユーロ圏の短期金利や政策枠組みに協調する中で,過大評価された為替レートの水準で加盟すれば,低成長と,おそらくはデフレの歳月に苦しむだろう.この1年でポンドは10%減価したが,イギリスの輸出部門がこの水準で生きていけるかどうか,もうしばらく見る必要がある.

ユーロ参加の国民投票が延期されるとしたら,この第3点が議論されるからだ.ここに政府の新しい戦略分野がある.新しいテストを継ぎはぎするのではなく,政府は参加の障害を明確にして,それを取り除くような提案を示すべきだ.特別なスケジュールではなく,できるだけ急いで障害を取り除く姿勢が必要だ.そしてその間に,各大臣がユーロ加盟の長期的な利益を説く政治キャンペーンを始めることだ.

巨大なヨーロッパ単一通貨圏への統合で,安定的でダイナミックな経済を獲得する目標は,まだ確実ではない.これを掴むことが政府の任務である.


CD 04/25/2003

Ease RMB revaluation pressure

(HE FAN)

(コメント) 人民元の対ドル固定レート維持政策が見直される時期に来ている,とFANは明確に主張します.その主な理由は,@国内の金融政策,特に景気循環を安定化する効果が失われること,A為替レートをドルにリンクする制度は,これまでの他国の経験から,非常に危険であると分かっていること,B貿易黒字が増えると必ず外貨準備の増加で吸収し,しかもドル債券で保有するから,今後,ドルの減価が起きれば大きな評価損を被ること,です.

FANは,今が固定レートを弾力化する時期として適当である,と考えます.経常黒字が十分にある今であれば,変動幅を適度に(たとえば固定レートの上下10〜15%に)拡大しつつ,為替市場の整備も行えるだろう,というわけです.為替取引の通貨を増やし,銀行の外貨建資産管理を自由化し,先物市場も整備しなければなりません.そして企業や個人も,自由に外国為替を売買できるようにするのです.

三つの理由はいずれも正当であり,自由化の方向は人民元の増価をもたらすでしょう.固定レート制からの離脱を円滑に行うには,中国の国際収支が適当であるだけでなく,国際環境も重要です.ドルが安くなるから外貨準備を分散したい,という理由には,国際的な通貨不安と香港ドルや人民元市場の混乱を危惧させるものがあります.国際的な合意や国際(そして地域)通貨制度としての協調介入と政策監視が,個々で言及されていないことは問題でしょう.


IHT Friday, April 25, 2003

Europe needs a new way with migrants

Theo Veenkamp

(コメント) Veenkamp (the Dutch Ministry of Justice and a former director-general of the Dutch agency for the reception of asylum seekers)は,意欲的な移民管理システムを提案しています.ヨーロッパ諸国の政府が直面しているジレンマとは,移民の流入を阻止しようとして,結局,非合法移民を増やし,彼らを犯罪組織や非合法活動に向かわせてしまう,ということです.

Veenkampは,移民を阻止するのはグローバリゼーションの現実にふさわしくない,と認めます.旅行者や労働者,企業がますます国境を越える時代に,国境を管理し,移民を規制することは不可能なのです.しかし,低賃金(とは書いていませんが)労働者が大量に流入するのを,西欧の豊かな社会は放置できません.

そこで国内の移民を減らすことではなく,二つの工夫によるフロー管理型の移民システムを提案します.すなわち,@移民登録・一時滞在センター,と,A移民情報センター,の設置です.前者は,移民が大量に流出する紛争地域などに近い,EUの外縁部に設置されます.それゆえ,紛争地域からの流出民を保護し,こうした人々に新しい機会を与えます.彼らはEU諸国で一時的に働き,将来は自国に帰国することができます.その目的は,人口の移動をそれぞれの社会にとってプラスにすることです.

この制度によって,移民の流れはより透明になります.人口や経済情勢の変化が,移民の増加とともに,情報として明らかになり,移民たちの意思決定にも正しい情報が反映されるはずです.すなわち,むやみに移民するより,自国の周辺で雇用を見出せる方が良い,という判断を促すわけです.

もちろん,移民問題の本質は各国の労働市場における差別的な制度や意識です.しかし,移民登録・滞在センターや移民情報センターが,紛争地域の周辺と世界の主要都市に設立され,情報のネットワークで結ばれていることは,グローバリゼーションの基本的な条件ではないか,と私も思います.


LAT April 25, 2003

London on Eight Bucks a Day

By Michael Kinsley, Michael Kinsley writes a syndicated column.

二冊の有名な本,『豊かな社会』と『新産業国家』で,J.K.ガルブレイスは現代の経済において,たいてい,生産者は自ら作り出した需要を満たしている,と主張した.同じことは現代の政府にも言える.

たとえば,イラク政府を転覆するために戦争がしたいと望んだのは誰か? 一年前には,アメリカのほんの数人がそう望んだだけだった.しかし戦争が始まる前には,市民の多数が戦争に飢えていた.

これは戦争が間違っていたとか,それを売り込む過程が合法的でなかった,という意味ではない.作られた飢餓は,自然の飢餓と同じように,まさに本物(リアル)である.多分,イラクとの戦争も良い思い付きだった.問題は,その需要が市民から自然に湧き上がるものではない,という点だ.

アメリカ市民は政府に何を求めるのか? 良い学校? 全般的な医療? もちろんそうだ,が,もっと利己的なこともあるだろう.中産階級のあなたたち夫婦に,何か具体的な生活への改善策はあるか?

「具体的」というのが本気なら,交通渋滞を解消して欲しい.ハイウェーで通勤地獄を味わうのは,日常生活で政府に改善して欲しいと感じる経験だ.しかし,合理的な政治家はこの問題を取り上げない.

ロンドンで,豪腕政治家がこの厄介な問題を取り上げた.2月に,市の中心部において,「渋滞料金」を一日当り8ポンド徴収し,交通渋滞を減らした.しかし,この実験については論争が続いている.

イギリスではこの問題の政治は奇妙に混乱している.14年前に私がthe Economistの記事を書いていた頃,そのような料金制度は自由市場論のおもちゃ箱にあった.強硬なビジネスマンが公共政策の問題を片付ける典型であった.しかし,現実の計画はロンドン市長のケン・リヴィングストンが実行した.彼は「赤のケン」としてイギリスの保守派に憎まれた人物だ.その結果,「渋滞料金」はしばしば保守的政治家・雑誌によって批判されている.

ロンドンの特殊性を無視すれば,重要な問題はその哲学である.反対の主要な理由は,無料であった何かに料金を課すことは,それが支払えない者にとって不公正である,という点だ.伝統的な有料道路は,路面に敷かれたコンクリートに料金を支払う.今度の料金は,何に対するコストでもない.これは政府がある活動に課した料金であり,ほとんどの人口が進んで支出する額よりも多くを求めている.

それはかつてタダであった,市の中心をドライブする権利に対して,人々が支払うよう求めている.あるいは,こう考えても良い.それまではいくら支払っても得られなかった「あるもの」すなわち容易な通勤を,市民たちが購入できるようにしたのだ,と.

交通渋滞は見事に平等主義的だ.あなたがスポーツ・カーのジャガーにいくら大金を支払っても,渋滞の中では他の車より決して速く走れない.哲学者のMichael WalzerやジャーナリストのMickey Kausは,その本で,より公正な社会を実現するには金をばら撒くのではなく,金が重要でなくなるようにするべきだ,と主張した.「渋滞料金」は,逆に,金を重要な手段とした.

だが,反対意見も強い.1対1の取引でなら,問題の解決は容易だ.たとえば,金持ちが肝臓を移植してもらうために,健康な貧しい者から肝臓を買い取っても良いだろうか? 豊かな民主主義国では,答えはノーだ.人間の肝臓は市場で取引できない.

こうした取引を妨げることで,金持ちだけでなく貧しい者にも,肝臓を売って豊かになる機会を失わせる.彼がそんな選択をすること自体が恐ろしい,とわれわれは思うが,われわれには他の選択肢を示すことができない.彼は望まない選択を強いられる.

肝臓と交通渋滞との違いは,渋滞の取引は一方だけの自由しかないことだ.8ポンド支払ってゆったり通勤することはできるが,こうした料金徴収に反対して,昔の渋滞した通勤生活に戻りたい,と思ってもできない.民主主義は集合的な意思決定に好ましい.しかし,それが可能なら,自分たちで各自が自由な決定に委ねられているほど,満足できるわけではない.

渋滞料金では,こうした自由はない.私が自動車に乗らなくても,誰も私に料金を支払わない.私の自動車がなくなったことで,誰にどんな利益が生じたか測定するのは困難だから.こうした取引は集団的に行われるか,全く行われない.

未だに多くの市民はこの制度を嫌っている.しかし,もう少し宣伝すれば,それも変わるだろう.


The Observer, Sunday April 27, 2003

Buy us - we're Labour

Nick Cohen

(コメント) 素晴らしい成果を上げながら,なぜブレアの「新しい労働党」は国民からの圧倒的支持を得られないのか? 2001年の総選挙では,投票率が59%と,史上最低でした.Cohenは,ブレアが政党をスーパーマーケットにしてしまい,有権者を消費者に,学校や病院のような公共サービスを生産物にしてしまったことを批判します.国家がスーパーマーケットと同じように,誰にでも親しみやすく,欲求に応じてくれるものと思い込ませるのは間違いである,と.

労働党を「ニュー・レイバー」というブランドで売り込んだブレアは,政府を,生産物を販売する会社と見なしました.「お客様優先」のスローガンで,政府はスーパーマーケットと同じように人気者になれる,と思ったのです.公共サービスも,消費者に焦点を絞った,現代のやり方で提供するべきだ,と唱えました.消費者を満足させることが,文化となり,生き方となったのです.そして,消費における選択を増やすことが,その結果でした.

しかし,医療機関をスーパーマーケットにすれば良いのか? なぜ市場調査や販売戦略が失敗して,投票率が低下するのか?

買い物客には共通の市民意識などありません.たとえ毎週同じスーパーマーケットに行っても,だからと言ってテスコの経営陣に情熱的な支持を表明したいとは思いません.買い物は政治と正反対なのです.企業統治が民主主義を形骸化したものであるのは,全く当然です.議会の代表を選ぶのは,顧客では無いのです.買い物は生死の問題ではないし,消費者は独立した主権者でもないのです.

政府は,公共サービスの消費に選択を増やせば,中産階級が政府や福祉国家を支持するだろう,と思いました.しかし,ロンドンの中心部で,学校の消費に選択を持ち込んだ結果は,まさにカオスでした.以前にも増して,親たちは第一希望の学校に子供を入れにくくなりました.人々が望むのは,地元の学校や病院が良くなることです.健全な民主主義なら,その運営に責任を持つでしょう.

彼らが得たのは選択の幻想だけです.そして,彼らの意のままにならない商品が並ぶ店を,国民は愛さないでしょう.


ST APRIL 28, 2003 MON

The fading of a moral vision for the world

By MARTHA NUSSBAUM

かつて国際関係をめぐる高貴な理想があった.実現されかかったものの,最近,この理想は後退し,むしろ人類がこうした理想を掲げたことさえ忘れようとしている.その理想とは,ヒューゴー・グロチウスの「国際社会」である.その考えによれば,全ての人間は単一の道徳的共同体に属しており,自国の優位を追及する際にも,その行動は道徳的な規範に制約されている.

グロチウスは国際法の父として1583年から1645年まで生きた.当時のオランダの支配的信念では,人間は自分の選択で神の国に行けるわけではなく,それと密接に関連して,人間が自分たちで法を定めたり,国事を決定したりする権利は無かった.

グロチウスは人間の選択と自由に対する偉大な信仰を抱き,各国はそれ自身の法律を作れると信じた.この信念のせいで,彼は異端者とされ,城に幽閉された.しかし,彼の妻が大きなトランクで本を持ち運ぶことは認められた.ある日,彼自身がそのトランクに潜んで逃れ,なんとかフランスにたどり着いた.彼はその後5年間を亡命者として暮らし,『戦争と平和の法』を書いた.

その本が大きな影響を及ぼした理由は,1.戦争を顕著で重大な攻撃に対するものに限り,2.間違った行動をとった国に対しても道徳的な扱いを求め,3.当時の国際法は認めていたが,無辜の民を殺害することは罪であると主張し,4.国際関係の長期的な目標は安定した道徳的な平和である,と明確にしたことだった.

その最も偉大な貢献は,国家間の関係についてであった.各国家は主権を持ち,法を作り,その運命を支配する.それは事実ではなく,人間の自由から派生する道徳的な規範であった.しかし,第二に,国家間の相互作用を便宜と安全保障だけでなく,道義性からも考察したことである.国家間の取引が国際法となるかどうかは,道徳的な法によって制約される.なぜか? 第三に,世界は基本的に個人からなり,貧しい人々は繁栄を求めている.それゆえ,人間の福祉を高める道義的な義務が,私たち全てをグロチウスの言う「国際社会」に結び付けるからだ.

その規範では,人間を合理的で社会的な生き物であると考え,ともに生きる道を見出すように求める.こうしてある行動(条約を結ぶ)は支持され,他(戦争時に市民を殺す)は支持されない.グロチウスの考えた国際法はアメリカの計画も制約している.それは,われわれが人類の道徳的世界に帰属するからである.

国家の主権は,同様に,道徳によって制約される.もし国家が,拷問や大量虐殺のような,国民に対する非道な行いをすれば,他国がこれに介入し,その国民を助けてよい.今では「人道的介入」と呼ばれるものだ.国家主権の重要性は,その国民や自由から導かれており,残酷な振る舞いを正当化できない.

グロチウスは物質的な困窮についても過激であった.彼は,国家間の持続的な平和のためには,世界の全市民が生きる上で必要なものを得る方法を考えねばならない,と主張した.どこでも,誰でも,極端な困窮にあえぐ者には,食糧と必要物(そして明確に医薬品に言及した)を得る権利がある,とした.さらに,富者が必要とせず,困窮する人々が必要とする物を,富者が浪費するなら,この余剰を不者に与えるべきだ,と考えた.

グロチウスの考えは現実の世界ではなかったが,その理想の力は,それを次第に現実とするような思潮を生み出した.彼の同時代人ホッブスは,グロチウス以前の世界観を強烈に打ち出したが,18世紀のカントはグロチウスに味方し,持続的な平和を築くのは国家間の連邦制だ,と考えた.こうした理想は,ついに国際連合や世界人権宣言となった.人権運動や国際条約による国家の制約は,グロチウスの描いた世界に近付いている.

こうした理想は今も有効か? ブッシュ政権はそのような道徳的理想を軽蔑し,アメリカを非道徳的な分野で命令を発するホッブス的主権にした.こうした見方はアメリカ建国の理想に反する.トマス・ペインらの建国思想は,グロチウスに発する大陸の人権思想に由来する.

たとえば,アメリカのGDPに対する国際援助額の比率が,ノルウェイの10分の1にも及ばないことは,グロチウスの理想を大きく損なっている.私は最近の出来事に希望を失い,深い悲しみを覚える.かつて人権運動が,白人社会の蔑視や嘲笑にあっても,その理想を捨てなかったように,グロチウスの掲げた国際社会の理想を捨ててはならない.

権力者は「悪漢国家」を懲らしめ,造りかえる,と言う.しかしグロチウスは,「獣のような」人間の振る舞いと世界に対して,礼儀正しい社会を誇りとし,世界を徐々に変えていく,と考えた.逆に,もし「獣」をまねるなら,人間的な振る舞いを忘れてしまう,と警告した.そして彼は亡命先で,協力と道義的行動の規則を明確にし,世界の全てではないが,その行方を決定したのである.

アメリカの現在の行動に悲しみを感じるのは,それが指導者として多角的世界を軽蔑し,グロチウスの先例に従うよりも,それを損なったからである.現在の指導者が信じなくとも,道義的規範は滅びない.われわれはそれを鍛え直し,その再現を目指す.


FT April 28 2003

A reality check for the Rumsfeld doctrine

By Michael O'Hanlon

(コメント) いよいよ,パウエル・ドクトリンに変わって,ラムズフェルド・ドクトリンがアメリカの軍事・外交政策を根本的に作り変えるのでしょうか? そう考える者たちは,ラムズフェルドをキッシンジャーやマクナマラ,マッカーサー,チャーチルにたとえて賞賛する.ハイテク兵器による21世紀の戦争が,これでいよいよ本格化する? シリア,イラン.北朝鮮とも予防的な先制攻撃を行い,中国とは長期の覇権競争を戦い,戦争は圧倒的に宇宙やミサイル,海軍,空軍が中心となる?

O'Hanlonは,むしろ慎重な見方です.現実には,イラクでさえ容易に勝利できたわけではなく,しかも開戦には多くの反対を受けました.ラムズフェルドがやれるのは,陸軍を少し(5〜10%)削って,ハイテクに支出するくらいです.安全保障の失敗は許されず,彼はそれをよく理解しているから.


CD 04/29/2003

Country is capable of growing

(XU DASHAN)

NYT May 1, 2003

The Cost of SARS

(コメント) SARSの影響は小さい.そのマイナスの効果を誇張してはいけない,とCDは指摘します.その主な理由は,SARSと関係なく,この地域がいままで急速に成長しており,国民は生活のために仕事を求めており,SARSを恐れて逃げることなど無い,というわけです.また,政府はSARSを抑制するとともに,住宅や自動車の融資を増やすような景気刺激策を既に採った,とも.

これと全く逆の見解がNYTの論説です.その主な理由は疫病を監視・抑制するコストを,アジア諸国が過小評価してきたことです.SARSによって,この分野のコストが見直され,社会的な投資が必要になるでしょう.他にも多くの病気があります.特にAIDSは,働き手を失い,企業が逃げ出し,農家の生産性も悪化します.子供たちは多くが孤児となり,学校に通えません.基礎的なワクチンなどの費用は一人当たり年34ドルですが,多くを豊かな国からの援助に頼らねばなりません.そのような援助は世界の富を増やしますが,実現は困難です.


LAT April 29, 2003

Tell the Truth on Weapons

NYT April 29, 2003

Matters of Emphasis

By PAUL KRUGMAN

(コメント) ブッシュ政権は,大量破壊兵器を隠し持ち,それを使って近隣諸国に侵攻する危険や,テロリストに武器を供給する危険を,この戦争の第一の理由にしてきました.しかし,それが見つからないかもしれない,と言い始めたのです.LATは,金曜日のABCニュースが,開戦理由に訂正が必要としても,それは「強調点の違いだ」,と報道したことを批判します.ブッシュ政権は国民と世界を間違った決定に導いたのです.アメリカの信用を長期的に損なわないためには,政府は直ちに真相を明らかにするべきだ,と.

KRUGMANも,私たちが思い出すべきだ,と言います.ブッシュ氏が戦争を示唆したときにイラクを指して,原爆と同じような大量破壊兵器の保有を許さない,と説明したのです.でも,戦争に勝ったし,イラク国民は解放されたのだから,開戦理由など,もうどうでもよい?・・・ しかし,問題はアメリカ自身なのです.民主主義は,市民が正しい情報を知らされているときにだけ,有効に機能できます.今回の戦争は,ブッシュ政権が間違った情報を流して,それを批判したメディアも「愛国的でない」として黙らせました.それでもアメリカは民主主義か!?


NYT April 29, 2003

'Empire of a Devil'

By NICHOLAS D. KRISTOF

WP Tuesday, April 29, 2003

North Korea's Stance

NYT May 1, 2003

A Surprising Success on North Korea

By BRENT SCOWCROFT and ARNOLD KANTER

(コメント) 米朝中の三カ国協議について,NYTもWPもアメリカ政府の難しい選択を認めています.北朝鮮の脅迫を,再び,政治的譲歩や経済援助によってなだめることは断固拒否する.しかし,その一方で,脅迫ゲームを続ける北朝鮮を黙らせる軍事的な選択肢は,同盟国である韓国と日本にとって狂気の沙汰である.アメリカにとって,北朝鮮の核保有を放置し,韓国や日本も核武装するのを認める,という選択肢も受け入れがたい.中国を説得して,いっしょに北朝鮮政府を転覆する,というラムズフェルドのメモは,ペンタゴンの夢でしかない.結局,戦争を始めるより,交渉を続ける方が望ましい,ということしか分からないのです.

それさえ,中国からの原油や食糧供給の停止という圧力で,ようやく北朝鮮は交渉の席に就きました.すなわち,多国間交渉を受け入れる姿勢を見せ,隔壁廃絶を先行することも排除していないわけです.金正日が示した選択は,アメリカに軍事攻撃をしないという保証,北朝鮮の体制を維持するという保証を求めています.それ(特に後者)は,アメリカ政府にとって政治的敗北です.

一方,SCOWCROFT and KANTERは,まさにその内容を大きな勝利と考えています.なぜなら,北朝鮮の友好国であった中国を明確にアメリカの立場に近づけ,北朝鮮政府に将来の核放棄を提案させたからです.今回の危機は,北朝鮮が核保有を突然公認し,次第に核抑止体制から離脱して,核保有国としての地位を得ようとして始まったのです.これに対して,アメリカはこの要求を退け,こうなった以上は1994年の協定に戻ることも拒否しました.そして,多国間の合意を求めたのです.アメリカは,北朝鮮が他国を侵略しない限り,軍事攻撃しないという保証を,多国間で与えるでしょうし,その国際的な貿易・金融面での参加を支援するでしょう.


ST APRIL 29, 2003 TUE

US, Europe: Separated by more than just an ocean

By ALBERTO ALESINA and FRANCESCO GIAVAZZI

西欧とアメリカとの関係悪化は,イラク戦のような問題に限った短期的対立によるものか? それとももっと根本的な価値観の対立があるのか? アメリカとヨーロッパが,貧困,不平等,福祉国家についてどう思っているか,をthe World Value Surveyで調べた.

アメリカ人の60%は,貧しい者は「怠惰である」と考える.この意見を支持するのはヨーロッパの26%でしかない.同様に,アメリカ人は,ヨーロッパ人に比べて,はるかに少ししか不平等を気にしない.アメリカでは貧しい人でも,それを登るべき階段と考えて,不平等を気にしていない.ヨーロッパ人にとっては,不平等は乗り越えがたい社会障壁である.

こうした基本的違いは,社会政策に差異をもたらす.ヨーロッパはアメリカの二倍も多くを社会福祉の支出する.そして財政規模はGDPの50%に近い.他方,アメリカでは,政府はGDPの30%しか消費しない.このような差は,社会政策だけでなく,防衛や外交政策にも示される.たとえば,ヨーロッパがより重要な国際的役割を担うには,アメリカと同じかそれ以上の,GDPの4%以上を軍事費に支出せねばならない.しかし,財政赤字と重税を考えれば,それも非常に難しい.

では,その差異はどこから生じたのか? 一つの説明は,アメリカが移動性に富む社会であることだ.貧しい者も罠に落ちたとは考えず,努力すれば貧困を抜け出せるように見える.もし貧しい者がずっと貧しければ,アメリカ人は彼らは「怠けている」と思う.ヨーロッパの貧者にそのような移動性はなく,アメリカの貧者が持つ機会は無い.彼らが懸命に働いても,自分たちは罠にはめられた,と思う.

より当たってそうな説明は,経済的な現実よりも,根本的なイデオロギーの差による,ということだ.ヨーロッパの文化は,今も深くマルクス主義の伝統に影響されている.マルクス主義では,階級は石に刻まれたように変わらない.貧しい者が豊かになるのはほとんど不可能である.マルクス主義では,社会的な移動性の欠如が「階級」概念の根拠となる.

多くのヨーロッパ諸国では,政治制度が革命の時代に形成され,当時は社会主義政党や思想が広く支持されていた.憲法も,平等や再分配を強調している.他方,アメリカでは,マルクス主義の文化は影響が限られ,大学の外では生活に及ばなかった.むしろ「自立した人間」の文化が,政府の介入を制限する保守派のイデオロギーを支えた.アメリカ憲法も,国家による接収から私有財産を保護する性格が強い.

大西洋を挟む分断の源泉として,第二に,民族の偏りが挙げられる.アメリカは民族的に分裂した社会であり,裕福な白人の多くは,貧しい者(そして黒人が多い)は,勤勉な白人と違って,怠け者だ,と信じた.実際,所得要因を排除しても,白人のほうが非白人のアメリカ人よりも,再分配政策を受け入れにくい.彼らは民族的に優れている,と思っているのだ.

貧しい白人でさえ再分配政策に反対するが,それは民族間の,敵意とは言わないまでも,不信による.歴史的に,アメリカにおける民族的もしくはエスニックの分断は,同質的な労働者階級文化や運動の発展を妨げた.それこそヨーロッパ20世紀に社会主義的・共産主義的政党が力を得た基盤であった.

より同質的なヨーロッパ諸国で,貧富の差は小さい.たとえばスウェーデンは,富裕層も貧困層もすべて白人で,しばしば長身のブロンドであった.当然,ヨーロッパ右翼は福祉国家の攻撃に移民排斥を利用した.ヨーロッパが多文化的になるに連れて,福祉国家への攻撃は強まるだろう.

貧困,不平等,福祉国家に関するアメリカと西欧との違いがこのまま続くかどうか,その分断が拡大するのか縮小するのか,まだ分からない.

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The Economist, April 19th 2003

Rebuilding Iraq: How to win the peace

The hard path to new nationhood

(コメント) イラク再建に関する見事な整理です.この戦争の結果として,アメリカは国連の不和を修復し,中東和平を促進し,そしてイラクを再建しなければなりません.

政治的復興は経済的復興と同時に実現しなければなりません.そのためには,マーシャツ援助のような支援と,正当な政治組織を確立しなければなりません.では,正当性はどこから来るのか? 歴史から,もしくは,国民の生活を効率的に支えることによって,です.そのためには,権力の空白と分裂を回避することが重要です.その意味で,石油の利権が独裁や地方分裂の元ともなります.

記事が指摘するのは,通貨や貿易など,マクロ経済の安定化,特に財政の安定化です.たとえ石油資源があっても,財政規模は支援に見合った抑制策が必要です.石油の開発をめぐっては,民営化や採掘方法,資金集めなどが,その利益の管理・分配とともに,非常に重要です.最後に,健全な法の整備と,民主的な制度の下で法による支配が行われることを強調します.独裁者が乱した所有権の確定は,最も重要で,しかも困難です.


Economics focus: Atmospheric pressure

(コメント) 環境保護に関して,同じように見えるのに,なぜフロン・ガス規制(モントリオール議定書)は成功し,温暖化ガス規制(京都議定書)は失敗したのか? Scott Barrettは,効果の測定と強制のメカニズムを比較します.前者はその効果が明白で,制裁措置もありました.大国が率先して実行したのです.他方,後者は効果が曖昧で,その短期的なコストばかりが大きく,大国が実行する見込みが無かったのです.フロン・ガスは実際に人を殺しはじめたのです.