IPEの果樹園2002

今週のReview

12/30-1/4

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星占いや歴史の宿命に頼らず,世界の経済停滞や,金融政策を縛るデフレから抜け出す道は無いのでしょうか? 聞こえてくる答えは,それぞれ違っています.

1.クリスマスのアメリカ人.・・・不況のさなかに貯蓄するのは不道徳だ.あるいは非合法だ.せめて,そのような人間は狂人だ.と言うべきかもしれません.社会全体でみれば,不況だからこそ消費しなければなりません.しかし政府は良からぬ事に金をばら撒くので,毎月25日をクリスマスにし,1日はお正月にして,さらに世界人口の半分をアメリカ人にしてはどうでしょうか?

2.世界同時リフレ政策.・・・世界の他の半分(アメリカ嫌いのアジア人)は,それが不確実で,不謹慎で,不公平だ,と非難するべきでしょう.責任ある地位において,分別ある行動と,権力や富を支配する人々が集まり,もっと確実な市場浮揚策が採れるはずです.経常収支が黒字の国は拡大政策を採って,赤字国の緊縮策を不要にし,通貨市場が混乱しないように,大規模な市場介入を通じて,世界的な金融緩和を進めれば良いわけです.

3.イラクと北朝鮮に対する同時戦争.・・・しかし,たとえそれが上手く行っても,戦争の不安と安全保障上の対立が深まる中では,投資よりも軍備拡張と戦時支出を,完全雇用の実現と余剰設備の解消に(誰も進んで認めたくはないですが)有効だし,必要だ,ということになるでしょう.安全が無ければ,市場による長期の投資や融資も行われず,通貨は交換できません.

4.エイズでも,ダムでも,温暖化防止でも,国際開発プロジェクト.・・・他方,もし戦争が限定されるなら(戦争に関わる業界には残念なことでしょうが),次には様々な社会計画・開発計画が注目されるでしょう.ホームレスに住宅や職場を与えるとか,エイズ感染者や孤児を助けてはどうでしょう.炭素を排出しない,再生可能な資源やエネルギーを開発するのも良いでしょう.ダムや運河,高速道路よって自然を切り刻んでいる私たちが,他方で,その修復に投資し始めるとしても,恥じる理由はないでしょう.

5.ニュー・ワシントン・コンセンサス,もしくは危機と不平等を解消する,新市場の開放と技術革新の波及.・・・あるいは,旧ワシントン・コンセンサスでも良いと思います.インフレに繋がるような財政赤字はやめて,国益を理由に,偏狭な政治家や官僚たちが市場をもてあそぶのは禁じるべきです.自由.平等.友愛.そして,所有! 自由な取引と,職業選択,居住の自由を実現する平等な社会は,いまだに未来の理想です.

6.サッチャーとブレアを20人ずつ.・・・そして人類が自分たちの問題を解決する術を学ぶには,たとえば,サッチャーのガッツ,と,ブレアの弁舌,を世界(特に日本)の政治指導者たちに配ってはどうでしょうか?

神の山も,魔法使いの学校も,惚れ薬も,この世界にはありません.年末年始には,できれば,面白い特集番組を観たいと思います.

クリスマスにもかかわらず,ゼミの有志で琵琶湖畔に合宿へ行いました.夜半に降り始めた雪は,翌朝,一面の銀世界となりました.雪景色に私たちが感動するのは,混乱し,束縛された現実世界を,白紙に戻してくれるから,そして私たちも含めた原始の自然と,そこで挑戦する心に戻してくれるからではないか? と思いました.

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune, BL:Bloomberg, FEER:Far Eastern Economic Review


LAT December 18, 2002

Free Trade on a Roll

(コメント) アメリカはいよいよ南北アメリカを自由貿易圏で結合する計画を進める準備に入りました.NAFTAの10周年をその成果によって誇示し,チリとの自由貿易協定を実現しました.そして,ブラジルの新しいダ・シルバ大統領を,2005年のFTAA設立を目指す共同議長に迎える予定です.

FTA内の産業が,どのように再配置されるのか? それに関する各国の不安は深刻です.しかし,NAFTAはメキシコへの工場移転で「35万人の職を失わせたが,もっと良い職場を200万人分も増やした」と(父親の)ブッシュ元大統領は1994年の1周年記念式典で賞賛した,と言います.EUとNAFTAは,対照的な方針から,収斂しつつあるのかもしれません.

アメリカはもちろん,シンガポールともFTAを結びましたし,イギリスは以前からアメリカとEUとの間でFTAをめぐる橋渡しを試みています.同じように,中国の目指すアジアFTAとアメリカFTAとの間で,日本の置かれた難しい,そして重要な,役割なのです.あるいは,日本ではなく,シンガポールや韓国がもっと重視されるかもしれません.


NYT December 18, 2002 

Blair for President

By THOMAS L. FRIEDMAN

アル・ゴアが大統領候補を諦めた今,民主党候補を誰にすべきか,誰もが助言しようとする.しかし,誰が候補になろうと,近年の経験を踏まえた基本的なルールを忘れてはならない.

ルール@ 民衆とは胃袋で聞くものだ.大統領候補が成功するには,その言葉が,ガッツを持って,有権者に届かねばならない.リーダーとして,彼が自分たちの生きる世界を理解している,というメッセージだ.父のブッシュ元大統領は,経済の不確実さが高まっている世界について,ガッツを持って有権者に語れなかった.その点で,クリントンが上回っていたのだ.もし彼のガッツが認められれば,民衆は細部を気にしない.

ルールA 国が躓いてから自分は成功するという立場を,断じて採ってはならない.ブッシュ氏がイラクとの戦争でしくじったり,経済が破局に向かったりすれば,自分たちが有利になると考えて,手をこまねくようなら,民主党は勝てない.民衆は,もっと前向きの対案を求めている.もっと断固とした民主党案があるはずだ.たとえば,「確かにテロとの戦争には勝とうじゃないか.でも,アメリカ国民のすべての脆弱さ,すべてのレベルについて,戦うべきだ.」と主張してはどうか.

今や,ブッシュ支持派の自動車にはスローガンがきらめく.「なんでも得られるブッシュのアメリカ! 大砲(戦争)も,パン(景気)も! イラクとは戦争し,巨額の減税だってできる!」 これはまやかしだ.国民が何も犠牲にせずに,戦争に勝ったためしはない.民主党は,石油備蓄計画を破棄し,再生可能な代替エネルギーについて準備しているのか? 京都議定書を無視して,ヨーロッパから浴びた非難にも答えることができる.民主党には,パキスタンなどの貧しい民衆を苦しめ,貿易ではなく援助に頼らせるだけの,愚かな農業補助金や関税を破棄する用意があるのか? 我々が,より多くの破綻国家と困窮する民衆を望んでいるのではないことを,示せるのか?

我々には長期の減税計画など必要ない,そんなものは慢性的な財政赤字をもたらし,本土防衛の資源を枯渇させるだけだ,と言う勇気はあるか? 我々の経済は短期的な減税策も必要としない.テロとの戦争に勝つことが必要なのだ,と直截に訴えることができるか? 経済が停滞するのは,テロへの不安やイラク戦の心配があって,石油価格が上昇し,投資が抑えられているからだ.それらが除去されれば,消費者も企業も,買い物に走るだろう.

ルールB 民衆に好かれる候補者を出せ! ジョージ・ブッシュなんてよく知らないし,その国内政策は好きじゃない.しかし,彼が嫌われないことは分かる.「好かれやすさ」という要因は,政治において余りに過小評価されている.

ルールC 炉辺談話ができる候補者を見出すべきだ.この混迷する時代に,民衆はなぜ自分たちがこうなっているのか,それが世界を改善できるのか,説明できる指導者を切望している.ブッシュ氏は懸命に試みてきたが,民衆を確信させるに足る情感と知性を欠いている.この点で私は確信するのだが,彼の高い支持率は民衆の願望を示すのだ.我々はブッシュ氏が自分のやっていることを理解し,常にアメリカの国益によって行動していると,必死に思い込んでいるのだ.それは政治的な選択ではない.なぜなら,もし彼がそれを知らないとしたら,われわれは皆沈没だから.

たった今,これらすべてを満たす民主党候補が一人だけいる.イギリスのブレア首相だ.民主党員たちは,多分,彼にグリーン・カード(アメリカ永住許可証)を発行すべきだろう.彼は安全保障に関して強硬姿勢を鮮明にし,ブッシュ氏に代わる世界戦略を持っており,民衆に好かれ,彼らを元気付ける,素晴らしい雄弁家なのだ.彼こそ,女性スキャンダルの無いクリントンだ.彼を候補者にするのが,当然だ.(現実の民主党にはいない?)


WP Wednesday, December 18, 2002

Stagnation Zone

By Robert J. Samuelson

(コメント) Samuelsonは,アメリカが新しいスタグフレーションに入った,と言います.成長はして居るが,それは十分な雇用や利潤をもたらさない.それはスタグフレーションだ,と言うのです.もちろん,豊かな社会で,スタグフレーションは飢餓や貧困を意味しません.それはただ,心理的,政治的に私たちを変えるものだ,と.

その原因は,企業への不信でしょうか? Samuelsonは,それが表面的な理由であるとしても,実際には行き過ぎたブームの逆転がおきつつある点に,本当の原因を見ます.消費者も,投資家も,楽観から悲観へと変わり,それがもたらす影響は,政府の減税策やFRBの金利引下げによっても打ち消せないのです.他人が自分よりも豊かになったという妬みから,自分の所得や雇用が失われるっ恐怖へ,支配的な感覚が移っていくのです.

もちろん,世界経済の低迷も責任の一部を占めます.日本を除くアジア地域が高い成長を実現する一方で,ヨーロッパも日本もラテン・アメリカも,アメリカからの輸出を吸収できません.そして成長するアジアでは,むしろ経常黒字を積み上げて,世界の投資を集め,過剰生産に拍車をかけています.

Samuelsonは,住宅市場に期待する論者も批判します.金利低下と借り換えで支えられた住宅価格上昇や消費が,このまま続くはずはない,と.

日本はどうでしょうか? 新しいスタグフレーション,というのは,日本にも言えます.まさに,飢餓も暴動も無い,停滞とデフレーションです.アメリカよりもブームは大きく,金融システムを蝕みました.しかも住宅市場は機能せず,中国やアジアからの輸入と競争しなければなりません.なんだ,同じなのか.と思う半面,まだ抜け出せないのか? という不安だけが残ります.


FT December 19 2002

Samuel Brittan: Pity the patriotic consumer

By Samuel Brittan

(コメント) 消費せよ,消費せよ,それが終われば,もっと消費せよ.ブッシュ氏の世界戦略は,外に対して一方的に安全保障を組み変えることと,内に対して消費を刺激し,奨励することに向かっているように見えます.

Brittanは,自分が「競争的な市場(資本主義)」を支持したのは,それが効率性を高めるとともに,「自由な選択」を可能にするからだ,と述べています.では,安全保障と財政赤字,国際収支不均衡を拡大する世界が,「自由な選択」を拡大したか? という心の声に,応えておきたいと思ったわけでしょう.

資本主義は消費を,しかも不平等な消費を拡大することでしか生き残れない,という批判は,アメリカにおいてヴェブレンやガルブレイスが示しました.他方,古典派の経済学者が恐れた「定常状態」をJ.S.ミルは賞賛し,ケインズもそれを継承しました.こうしてBrittanは,資本主義が効率性を高めた末に目指すべき目標は,決して消費中毒の不安定で不平等な社会ではない,と示唆します.

ではなぜ,私たちは今も「消費がすべて」という教えに振り回されるのか? Brittanは,長期的目標に至るのは,循環的な変動を通じてである,と説明します.たとえ,革新は行われても成長しないような,安定した社会に至る道でも,その途中はでこぼこであり,短期的には消費を奨励しなければならない,と.しかし,なぜ長期的目標に至るのが遅いのか? という問いには,答えません.


FT December 19 2002

South Korea charts a perilous course

By Aidan Foster-Carter

BL 12/19 13:06

In Korea, an Election Everyone Should Celebrate: Patrick Smith

By Patrick Smith

The Guardian Friday December 20, 2002

At least Korea is united over one thing - anger at the US

Martin Woollacott

NYT December 20, 2002 

Hold Your Nose and Negotiate

By NICHOLAS D. KRISTOF

WP Friday, December 20, 2002

Keep Calm on Korea

By Victor D. Cha

(コメント) 北朝鮮のエスカレートする強硬姿勢に対して,韓国政府の太陽政策や,日本政府の国交正常化交渉は沈黙し,アメリカは国連を通じた制裁措置に向けて動き始めました.Roh Moo-hyun大統領の当選は,こうした国際情勢にもかかわらず,改革を進める国内政治が継承されたことを示したと思います.

新しい韓国の大統領について,Foster-Carterは警戒を求めます.Roh氏は財閥や外資に敵対するポピュリストであり,市場やグローバリゼーションへの反抗を試みるでしょう.アメリカによる朝鮮半島支配にも満足しておらず,その意味では北朝鮮や中国とも組んで,東アジアの安定を目指す方が良い,と考える,大学紛争や民主化運動世代を代表しています.Foster-Carterは,北朝鮮がこれを利用し,米韓関係に深刻な亀裂が生じることを憂慮しているようです.

他方,Patrick Smithは,Roh氏の当選を歓迎します.Roh氏は基本的に金大中氏の路線を継承しますが,それは冷戦終結によって,財閥や在韓米軍中心の経済・社会関係が見直される時代が既に始まっていることを示します.もちろん,金大中氏と同じように,アメリカとの関係は重視されるでしょう.しかし,もう一つの発展途上国を左右する選挙であったブラジル大統領選挙と並んで,韓国民衆も社会民主政党を選んだのです.

John Larkin, “The First Casualty: South Korea's Economy” FEER, December 26 も “Roh's victory” FT, December 20 も,Roh氏が当選することへの懸念を示しています.韓国は今も冷戦に支配され,在韓米軍とアメリカ市場への輸出が生命線なのです.アメリカが北朝鮮を孤立させるために経済制裁を強めるなら,韓国もこれに従うしかない,と思います.

Woollacottによれば,Roh氏の当選を決めたのは,女子学生をひき殺した米軍に対する怒りでした.その中身は大きく違うけれど,38度腺の両側で共通する感覚は,外部勢力を排除したい,というナショナリズムです.北朝鮮との核開発凍結と援助の合意はアメリカ政府によって遅延し,韓国政府の「太陽政策」はブッシュ政権によって窒息させられました.朝鮮半島など重要ではない,北朝鮮は消滅させ,朝鮮半島は日本による経済運営の一部で十分だ,というアメリカ政府の感覚を,韓国民衆は受け入れられない,というわけです.

KRISTOFは,どれも望ましくない三つの選択肢しかない,と言います.@市場開放の意欲を示した点について,交渉する.Aイラク戦に集中して,北朝鮮を無視する.BYongbyonの再処理施設を爆撃して破壊する.しかし,その場合,北朝鮮は韓国と日本を攻撃する,と脅しています.北朝鮮の扱いにくさは,それが核武装し,ミサイルを持っていることではなく,外交的な交渉を行えないことです.唯一,ロシアにその役割を期待します.他方,WPにおいてChaは,米韓の違いを克服する特命チームをブッシュ政権が指名するように求めています.


BL 12/19 09:49

Debate Over Deficits, Rates Is Canard

By Caroline Baum

BL 12/20 09:26

Treasury Trapped in Faustian Bargain With Dollar

By Caroline Baum

(コメント) アメリカの経済政策は,追加の減税策を行うべきか,ドル安政策を進めるべきか,について選択を迫られます.もし景気が悪化するのを阻止して,力強い回復を支持したいと思うだけなら,減税とドル安を選ぶはずですが,アメリカは何を迷うのか?

まず,これ以上の減税は財政赤字を拡大して,むしろ長期金利の上昇を招く,という反対論があります.ルービン元財務長官やアラン・グリーンスパン連銀議長,そしてブルッキングス研究所も,減税反対派です.他方,グレン・ハバードやAmerican Enterprise Instituteは賛成派です.

元FRB理事で,ワシントン大学教授のLarry Meyerによれば,「減税と金利にはどんな関係があるか?」と学生に聞くのは愚かなことです.それは事情によります.もし不況によって財政赤字が増えるのであれば,金利は下落するだろう.しかし,構造的な理由で財政赤字が増えるなら,金利は上昇する,と.たとえば,戦争のように,景気変動と関係ない巨額の財政支出が行われれば,金利は上昇します.

結論は? 政治家が決めることです.そして政府は,金利がどうなろうと,減税しないなら失業者がそれだけ多くなることを強調します.

同じことはドルについても言えるでしょう.オニール氏の財務省はルービン氏以来の「強いドル」を支持せず,市場に任せると言っただけで,市場の不興を買い,解任されました.減税策と違って,政府にドルの水準を決める有効な手段は無いのです.ただ,ドル市場の主要な利用者として,スローガンを決めるだけです.市場に気に入られるようなスローガンを唱えられる人物が,財務省の顔になる必要があります.

アメリカ政府が為替レートを自由に決められるのであれば,それを利用しない方がおかしいのです.スローガンだけでも,アメリカ政府は自分たちのために使いたがっているでしょう.しかし,ドル安が望ましい,と言うのと,大幅な経常赤字を抱え,しかも株価が下落する中で,ドルが安定することが望ましい,と言うのは,なかなか一つのスローガンにまとまりません.戦争が迫る中,「ドルの水準は市場が決める」と言うなら,逆にドル高が進んで,その後に暴落するのを放任すると取られかねません.

アメリカ政府も,G7も,ドルについて言うべきことは何も無いのです.


NYT December 19, 2002 

Big Banks Step Up Efforts Against I.M.F. Debt-Relief Plan

By EDMUND L. ANDREWS

(コメント) オニール解任は,ドル安を嫌う投資銀行や証券業界だけでなく,国際融資の破産処理に反対する銀行業界の意向も関係あったのかな,と思いました.

国内の破産処理と同様に,債務者が一定の法的な保護を受けられるなら,債務処理が迅速に行えるのではないか,と以前から議論されてきました.IMFがその音頭を取った訳です.他方,アメリカのシティ・グループやJ.P.モルガン・チェイス,ヨーロッパのUBSやドイチェ・バンクは,それが債務国の不払いを助長するとして,強く反対しました.その音頭を取ったのはIIFです.

オニール氏が金融界を激怒させたのは,国家債務に対する「複線型アプローチ」を支持したからです.まず,新規融資に際して,デフォルトになった場合の条項を盛り込むことについては,銀行も概ね支持していました.しかし第二に,どの国が実質的に破産しており,処理のために何を行うべきか,それらはIMFが決めた国際ルールに従う,ということに強く反発したのです.

オニール氏がいなくなれば,こうした提案を誰も推進しないだろう,と推測しています.


LAT December 21, 2002

Santa Claus Is a Lie We Can Safely Tell Our Kids

By Vickie Oddino, Vickie Oddino teaches English at Mission College in Sylmar.

サンタクロースが攻撃されると,私は悲しくなる.

寛容さを失った現代では,両親でさえ子供たちにサンタの「嘘」を話しにくい.すべての嘘は悪意に基づく? しかし,サンタクロースは心の中に住む.

幼い子供というのは,言葉のままに信じてしまう.3歳の息子は,神様が長くて白い髭を生やした,白いローブを着た老人だと思っている.彼らが神の精神的側面や魂を理解することは難しい.だからと言って,私たちは彼から神様の姿を奪うべきか?

サンタクロースも同じだ.そんな者はいない,と言うより,聖ニコラスの精神とその象徴的な重要さを理解するまで,彼が煙突から降りてきてプレゼントを配ってくれると言うほうが良いだろう.子供が大きくなって,サンタクロースが実はパパやママだったと知っても,その子が取り返しのつかない怒りや,両親への不信感に染まる,と心配するのは大げさだ.もしそのように反応するなら,子供にはそれ以上のわけがあるはずだ.

サンタクロースは他の理由で嫌われている.ある友人は,自分の子供たちがサンタクロースなんて信じていないことを自慢した.彼は,一生懸命努力しなければ何ももらえない,と子供に教えている.もう一人の友人の息子はサンタに高価なスクーターをねだった.しかし,それは無理だ.サンタは断じて彼女に金を貸してくれないから.

でも,もし隣のトミーがより多くのプレゼントをもらったらどう思うか? それは,彼が優れていることを意味するのか? 近所の裕福な家の子供が,貧しい家の子供よりも多くを得ていることは,公平なことか? 多分,それは不公平だ.しかし,サンタは最も貧しい家庭にも現れる.

サンタクロースは,おもちゃの寄付活動や,教会を通じて現れる.空腹な者には教会が食事を配る.幼稚園では募金集めが,娘の私立学校では食糧の寄付が行われる.こうして彼ら自身が喜びと希望をもたらし,サンタクロースになれることを学ぶ.

サンタクロースについて嘘をつくことが心配だと言う親は,もう少しリラックスして欲しい.感謝の気持ちを持った子供たちを育てて欲しいし,あなた自身もサンタクロースとして成長する.サンタクロースの季節になれば,彼を祝福し,そうすることで愛や寛容さ,謙虚さ,喜びを祝福し,神に感謝しよう.


FT December 22 2002

In the long term, governments must be solvent

By Stephen Cecchetti

(コメント) アメリカでもヨーロッパでも財政赤字が焦点となってきました.Cecchettiは,インフレ目標が金融政策を改善したのと同じように,その場限りのキャッシュ・フローしか見ない,短期的な思考の政治家たちに,もっと長期の財政的健全さを重視するような枠組みが必要だ,と主張します.それはアメリカの「財政均衡化法」やEUの「安定協定」としてすでに試みられましたが,正しく設計されませんでした.財政状態を過去の赤字で計るより,将来の収支に注意しなければなりません.現代の国家は,基本的に三つの目的で支出します.@内外の安全保障,A医療保険,B老人たちへの年金.そこで政府は,今日生まれた赤ん坊が75歳になるまで,財政収支がどうなるかを指標にするべきだ,と言います.アメリカの場合,それは約1兆ドルのGDPの二倍に達し,それを支払うために債務がGDPの30%から250%に上昇しなければなりません.ヨーロッパや日本ではもっと高いのです.そしてCecchettiは,公的債務がGDPの50%を越えないように,というアメリカの目標値を示します.日本がどうすべきか,も考えてみるべきです.


LAT December 22, 2002

A Big Step Back for Latin America

By Walter Russell Mead

ヴェネズエラの街頭では群集が乱闘し,ゼネストで経済が麻痺状態に陥っている.この国からアメリカはサウジアラビアに匹敵する石油を輸入している.OAS(米州機構)は役に立たず,この国の政治が崩壊し,軍人たちに委ねられるかもしれない.40歳以下のアメリカ人には,こうした事態も勉強になるだろう.ラテン・アメリカはいつもこうだったのだ.

しばしばスペインからの入植者の子孫である,貪欲なエリートたちは,国家を略奪し,産業を独占して,大部分がコロンビアの先住民の子孫である国民を搾取してきた.富や高度な説得により,アメリカの純朴な経済学者や外交官を丸め込み,民主主義や自由市場に好意的であると思わせたのだ.

他方,スラムや飢餓の農村では,カリスマが現れて彼らの怒りを政治運動に導いた.上流階層への大衆的抗議が,選挙があるときも,無いときも,ポピュリスト的支配者の旧支配集団排撃と,強権政治をもたらした.しかし,新しい支配者も,同様に,腐敗と無能さに染まり,軍部の力で旧支配層に権力が戻された.無能なエリートたちは,こうしたことを150年間も繰り返してきた.

1960年代に,束の間,この循環が終わったように見えた.自由市場を目指す経済学者たちが旧産業支配層を排除し,ラテン・アメリカ資本主義を動かすようになった.外国企業との競争や国際投資が,古くからの寡占支配を揺るがせた.政党間で政治的な競争も始まって,より有能な政治指導者が現れた.ブームと破綻,軍事クーデタの悪循環を,より改善された政策は免れたはずだった.

しかし,「新しい」ラテン・アメリカは,インターネット・ブームに沸いた「新しい」株式市場と同じく,その場の熱狂に満たされていただけであった.特に,アルゼンチンとヴェネズエラは歴史的にも最悪の混乱状態に陥り,軍部が甦りつつある.ただし,国によっては事態が改善されたことも確かだ.チリ,メキシコ,ブラジルは,より安定した社会・経済を摸索している.

ヴェネズエラの内戦は,民主的な選挙によるポピュリストのチャベス大統領も,それに反対する石油産業の支配者たちも,改革に成功する見込みはない.アメリカ政府はラテン・アメリカに有効な選択肢を持ちえていない.

認めたくないが,今後も,我々はまだ多くの破綻国家をラテン・アメリカで再建しなければならない.関税撤廃やIMF融資だけでは不十分である.OASは,ヴェネズエラのような国家が立ち直れるように,支援し続けねばならない.


WP Tuesday, December 24, 2002

Listen to the South, And Talk to the North

By Wendy R. Sherman

LAT December 25, 2002

A Hard Line in the Sand With N. Korea

By Michael O'Hanlon (a senior fellow at the Brookings Institution.)

NYT December 26, 2002

N. Korea: China's Child

By WILLIAM SAFIRE

(コメント) アメリカ政府は,北朝鮮の政治支配体制を転換するしか解決策はない,と考えます.しかし,韓国政府や民衆はそのようなアメリカの態度を懸念します.失敗すれば自分たちの国土が荒廃し,人々が大量に死ぬのです.ヨーロッパで中距離核ミサイルが配備された頃の論争を思わせます.

沖縄でも韓国でも,その国の安全保障にもっとも重要な役割を果たし,重要な決定を下すのは,その国の政府であり,軍隊でなければなりません.アメリカ軍はアジアの安全保障に不可欠であっても,駐留する国を守ってやるという姿勢は時代錯誤なのです.WPはこの点を認めて,アメリカ政府は韓国の新しい大統領と話し合うべきだ,と言います.米韓関係を損なうのは,お互いの利益にならないのです.

O'Hanlonは,ブッシュ政権がレーガン式の強硬路線を取るべきだ,と言います.それは,交渉を通じて明確に選択肢を示し,それをすべて呑むか,拒むかを選択させる,というものです.北朝鮮は,核開発を停止し,査察を受け入れ,ただちに再処理施設を封印しなければなりません.ミサイルの外国への売却や,さらに長距離のミサイル開発を止めなければなりません.また,拉致された日本人とその家族を帰国させ,兵力を縮小して,特に南北停戦ラインの周辺から排除しなければなりません.

もしそれがすべて実行されるなら,韓国,日本,アメリカは,食糧や石油を人道的な見地から今すぐ援助するでしょう.日本は植民地化に対する補償として100億ドルに及ぶ資金を提供する用意があります.平和条約を結び,国交が成立すれば,技術援助や経済援助も受けられます.そして韓国は通常兵力を削減するでしょう.

韓国政府も日本政府も,他の事情によって交渉しにくい今こそ,アメリカ政府が行動するべきだ,とO'Hanlonは主張します.

北朝鮮は核開発を交渉する周辺諸国との会議を拒否し,アメリカと取引したい,と指名してきました.しかし,アメリカの行動は韓国や日本に制約されます.SAFIREは,アメリカが3万7000名の在韓米軍を引き上げることも支持します.むしろ,その方が米兵を核攻撃の危険から遠ざけ,いつでも空軍や海軍によって応戦できるからです.アメリカは帝国主義国家ではない.韓国(そして日本)の民主的な政府がそれを望むなら,撤退すれば良い,と.

SAFIREが直言するもう一つの点は,中国政府の責任です.中国が関わり無いようなフリをしても,朝鮮戦争で中国が救ったから今の北朝鮮体制は生き延びたのです.ブッシュ政権は,中国国内の政治的弾圧やスパイ活動,軍備増強,WTO違反に眼をつぶってきた.この狂気の子供をどうするのか,が中国政府の新体制にとって最初の決定的試練になる,と言います.


The Guardian, Tuesday December 24, 2002

A White House Christmas

Matthew Engel

(コメント) ブッシュ氏が100万枚のクリスマス・カードを,宗教に関与するなという憲法に逆らって,誰もが友人であったクリントン氏でも40万枚しか送らなかったが,そのクリントン氏が利用した会社と対抗する会社から,もちろん選挙で共和党に11万ドル献金した会社だが,赤の他人にも送らせた.そんな,アメリカ大統領のクリスマス・カードをもらった話.


BL 12/24 13:50

Japan's Debt Nightmare Won't End in 2003

By William Pesek Jr.

今年,最も良く見た「Dで始まる単語」は債務である.銀行の不良再処理は進まなかった.多分,来年も.

日本は来年も景気回復しないだろう.金融危機を避けられるかどうかも分からない.1.改革のために企業を潰せば,デフレーションが加速する.2.日銀がインフレを実現すれば,国債市場が危険になる.3.銀行も企業も互いの株式を持ち合って,株価が下がれば一斉に資産を悪化させる.4.投資や輸出を望む日本にとって,中国はますます脅威になる.5.世界不況よりも,円高が怖い.

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The Economist, December 14th 2002

American economic policy: After the Friday massacre

George Bush’s economic team: Let it snow

(コメント) 金曜日の「虐殺」で明らかになったように,ブッシュ政権の新しい経済チームへの参加条件は,減税できること,です.Snow氏はサプライ・サイダーであり,均衡財政の支持者でしたが,ブッシュ氏が指名した以上は,減税を支持するわけです.もしルービン氏のような一時的減税でないなら,唯一の解決策は,社会保障と医療保険の見直しです.それなら民営化すれば良い,と言うのは間違いのようです.


Afghanistan: Money to burn

Sudan’s currencies: A dog’s dinar

(コメント) アフガニスタンでも,スーダンでも,内戦は貨幣の価値を破壊しました.反政府勢力は貨幣を偽造し,政府は新しい貨幣を印刷しますが,安定した価値は維持されません.結局,古い貨幣の価値は,国中からロバに乗せて集められた紙幣をストーブで燃やすときに,温まることができる,というだけなのです.


Corporate social responsibility

12月10日に,ブッシュ大統領の参加して,「アメリカを強くする実業界(BSA)」の開幕式があった.エンロン以後のスキャンダルで地に落ちた実業界のイメージを転換し,企業は社会に良いことをする,と訴えるためだ.

企業の社会的責任(CSR)は,これまでもアングロ・サクソン型の株主資本主義とステークホルダー資本主義との対立として,論争されてきた.そしてグローバリゼーションの反対運動は,多国籍企業が世界中で貧しい労働者を搾取し,環境を破壊し,民主的に選ばれた政府を転覆する,と主張している.

左派は,企業に対するより一層多くのルールを求める.右派は,既に政府は社会政策を企業に押し付け,その道具にしている,と反駁する.実際の歴史はどうだったのか?

企業は歴史的に見れば社会から得た特許によって成り立っていた.この特許は,消費者や民間団体から挑戦を受けた.早くも1790年代に,西インド諸島から輸入される「血まみれの」砂糖に対する不買運動が起きた.東インド会社は結局,奴隷を使わないベンガルの生産者から砂糖を買わされた.

企業の特許に最も口出ししたのは国家であった.そもそも企業は国家から派生しており,19世紀には君主が公益に従う限り特許状を与えた.ヴィクトリア時代に,特許で制限された企業の反社会的なイメージは転換した.なぜなら,特に鉄道で,資産家が出せる以上の資本を企業は必要とし始めたから.イギリスでは1862年に,どのような目的でも,議会の承認なく,企業を設立できるようになった.こうしてイギリスとアメリカでは企業があらゆる義務を免れ,法律と利潤津旧にのみ従ったが,ヨーロッパ大陸では関係者や国家の利益に従うよう求められた.

実際には,イギリスやアメリカでも,企業の自由は絶対的なものでなかった.労働組合は労働者の権利を擁護したし,ジャーナリストは企業の横暴を暴いた.テッディー・ルーズベルトも,「コミュニティー全体の利益に従うように,企業を監視し,規制するべきだ」と述べた.そしてウォール街の暴落と大恐慌が,大西洋の両側で企業の特権を見直すように世論を変えた.アメリカのトラック輸送,航空,ガス,電気などで政府の管理が強化され,イギリスでは炭鉱が国有化された.

この締め付けは戦後も続いた.1967年でも,J.K.ガルブレイスはアメリカを寡占的な産業国家として描いた.それが変化したのは1980年代であった.サッチャーやレーガンのような新しい政治家と,より攻撃的な,多くの株主が企業の自律性を求めた.

フランス人はそれを野蛮だと非難するが,今でもアングロ・サクソン企業は批判されるほど自由ではない.過去20年間にさまざまな社会規制が行われたし,強力な圧力団体も現れた.むしろ,アングロ・サクソン企業は政府の介在無しに社会的な責任を果たしてきた,という点こそ重要だ.悪名高い「泥棒起業家たち」も教育や医療のために投資を行ったし,良い住宅と良い教育を受けた労働者の方が生産的である,という意味で,カンパニー・タウンも建設された.年金や健康保険を導入したのも政府より企業が先であったし,ヘンリー・フォードは2倍の賃金を支払った.IBMのトム・ワトソンは奨学金からカントリー・クラブの会員まで,あらゆることを労働者に与えた.

批判家は,資本市場と企業とを混同しているのかもしれない.資本市場は冷酷なほど短期の利益を追求するかもしれない.しかし,企業はもっと長期を見る.A.チャンドラーも,1980年代まで,機関投資家は重要でなかったし,今でも経営者は解雇されるが,職場のマネージャーたちは株主を無視している,という.多くの企業が労働者や社会の利益を追求するのは,それが長期的には株主の利益にもなるからだ.なぜなら,それは信頼を築き,厳しい状況を切り抜ける力になる.また,より多くの優れた社員や,顧客を得ることができる.

アングロ・サクソン企業が社会的な責任を果たしてきた事実を知るなら,それが法律によって,すべての企業に一様な規制として強制されるよりも,事業に関わる社会的貢献を自由に見出す方が良い,と分かる.企業の社会的責任論は,その論理が逆転している.彼らはまず社会的に望ましい目標を決め,それを企業に押し付ける.しかし,民間部門にできないことは政府がやれば良い.そして企業には,社会から信頼されるような貢献を任せることだ.