IPEの果樹園2002
今週のReview
7/1-7/5
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国際システムの著しい欠陥とは、資本市場がもたらす利益と不安定性、リスクの分散、一気に発現する危機と調整コストについて、合意された分担メカニズムが無いことだと思います。
赤字国と黒字国、輸出国と輸入国、債権者と債務者、国際投資家と政府・市民、主要通貨のピラミッド、弱小通貨の危機回避、これらが示す対立は、刻々と変化する貨幣的な均衡の回復過程である、と言うだけでは済まないものです。インフレ率や資産価格の調整が、人々の雇用や居住、政府の能力や不況の激しさを支配しています。
管理するものの居ないグローバリゼーションを生き延びるために、各国は改革を唱えます。日本もヨーロッパも、その改革は果てしなく続くように見えます。ニュー・ジーランドやオランダが手本とされたり、チリや韓国が賞賛されたりします。しかし、ブラジルもロシアも改革が成功したと祝杯をあげるには程遠く、東南アジアの回復もこの先に何が起こるか分かりません。そして何より、中国とアフリカの改革が、グローバリゼーションの生死を分けるのです。
日本国内の制度改革を進めるには、日本の国民すべてに、基本的な軍事教育を行うのが良いのではないか、と思いました。アジア地域や世界の安全保障に関して日本の発言が少ないのは、平和憲法によって軍隊や核兵器の保有を考えられないからではなく、国民が十分な経験と知識を持って、民主的議論を経た政策的合意を形成していないからだと思います。
人々が、公開された形で、民主的な軍事教練に参加し、日本や周辺諸国の安全保障、世界情勢を活発に議論する時間を共有することは、日本の社会が避けてきた集団的な民主的意思決定の大切さを国民に理解させるでしょう。またそれは、戦争抑止や軍備支出の問題を通常の政治的な議論から排除して、狂信的な軍事大国化を主張する極右団体が宣伝活動に利用している現状を変えるでしょう。
日韓のワールド・カップ共催だけでなく、貿易自由化や金融安定化、地域安全保障について、両国がアジアも含めた将来計画を示すべきではないでしょうか? 朝鮮半島の統一や中台の政治・経済関係を安定化する枠組みについて議論すること、日本国民にとって特に重要な核兵器の廃絶を具体化すること、それらの実現に向けた道筋を論理的に示し、さらに制度化するべきです。そうすることで、改革が各国の具体的な国内政治を動かすはずです。
サミットの映像が何か空疎な儀礼に見えたのは、激しい抗議行動の対象となるのを避け、政治指導者?たちが山岳や孤島に閉じこもったからです。同じ頃、朝鮮半島の南北領海線付近で銃撃戦があり、韓国の兵士4人が死亡した、と報道されました。
その際、韓国の金大中大統領が歩くのも困難なほどに衰えた姿を、テレビの映像で観ました。彼が必死に取り組んだ経済危機の収束にもかかわらず、彼の息子二人は収賄の容疑で逮捕され、彼の気力を奪ったことでしょう。彼が政治生命を賭けた陽光政策(北朝鮮への柔軟・統合路線)は、ブッシュ政権の反対で潰されました。親日家として、ワールド・カップ共催を通じた日韓関係の前進を期待できましたが、日本の国内政治は彼の関心に応えられませんでした。
この激しい時代を東アジアが生き延びるには、改革を目指す、尊敬できる政治指導者の国際的連携が、もっと必要だと思います。移住者たちが土地を奪い合って、アジアでも戦争を拡大するかもしれません。
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune, BL:Bloomberg
The Guardian, Monday June 17, 2002
Debtor nations need funds not froth
Larry Elliott
アルゼンチンが通貨を切り下げ、債務不履行になってから、今で6ヶ月になる。しかし、カナダにおけるG7財務大臣会合が示したように、有効な救済案はまったく示されない。IMFは現状をしっかり把握しているのか? 危機はアルゼンチンに封じ込められたのか? そしてアルゼンチンが経済的に苦しむだけで良いのか? そんな見方は全部間違いだ。
不況が4年も続いた末に、アルゼンチンは爆発しつつあり、ブラジルにも影響が及びつつある。先週の金融市場における熱狂は単に空疎なものであっただけでなく、世界経済の健全さに対する深い懸念を反映したものであった。アルゼンチン経済が年率15%で縮小しているのに、財政赤字を削減させることで国際投資家が戻ってくるとは、とても信じられない。しかし、それこそIMFやG7が依拠する考えである。
アルゼンチンの窮状は、グローバル・ガバナンス全体の点検が必要なことを示した。アルゼンチンの危機を解決するには、まず、この国が債務を支払えないことを認めねばならない。アルゼンチンは1400億ドル以上の債務を負っているが、返済の希望はまったくない。しかし、企業であれば債権者の取立てから保護され、清算もできるが、支払不能になった国家はIMFの訪問を受け、危機を悪化させるような財政削減を受け入れるしかない。
アメリカの優れた破産法は、支払不能の企業に再出発を許し、「既存の債務による圧力や妨害を受けずに、新しい健全さを積み重ねる機会」を保証している。
スティグリッツは国家に破産できるシステムを要求する者の一人である。彼はその本で、国家を債務から免除したほうが、成長し、新しい債務を支払えるようになる、と主張している。「それこそ何よりも破産の合理的根拠である。債務を免除もしくは組替えることで、企業も国家も前進し、成長できる。18世紀の債務刑務所が債務者を破産しないように強く促したとしても、それは債務者が立ち直るのを助けなかった。」
国家の破産に反対する議論は、いつも、破産した国が世界金融市場から追放されて、その後も資金を借りることができない、と言う。しかし、この見解は最近のロシアの例で否定されている。ロシアは1998年に債務不履行を広く非難されたが、3年以内に借入を再開し、資本が戻ってきた。なぜか? それは債務不履行がロシアの負担を軽減し、切下げで輸出競争力が改善され、石油価格が上昇したからである。金融市場はすぐに忘れる。ロシアが成長を再開すれば、投資家たちは動き始めた。
IMFも国家の破産を受け入れる方向へ態度を変えつつある。しかし、時間をかけ、常勤の職員を置き、IMFに債務返済の繋ぎ融資を行う権利を与える、という考え方は好ましくない。しかも融資に際しては、IMFだけがその権利を持ち、世銀を排除すべきだと考えている。
もっと良い計画がthe New Economics Foundation のJubilee Researchによって示されている。 アメリカの破産法第9条は、州や町、公共企業の破産を扱っており、納税者や被雇用者は破産処理の調整に参加する権利を持つだけでなく、どのような処理策も阻止できる。これに依拠した迅速、透明、公平な破産処理を、Jubilee Researchは求めている。債務者が金融的な安定性を取り戻し、経済的な再生をもたらすと合理的に期待できるような処理でなければならないし、債権者が自治体の重要なサービス提供を妨げてはならない、とアメリカの法律は規定している。
国家の破産に市民社会が関わることは決定的に重要だろう。アルゼンチンは、非民主的な腐敗した体制が無謀な借入を行った酷い例である。西側の債権者はその体制に融資し、それを秘密にしている。破産処理に教会や組合、NGOsを参加させれば、債務国の政治エリートと債権者との癒着を排除するのに役立つだろう。
Jubilee Researchの提案では、まず、対外債務の支払が人権やその国の人民の尊厳を損なうような負担を強いている、という判断から開始される。もし国民が負担を大きすぎると考えれば、債務国は国際的な債権者と債務の削減交渉を試みる。それが成功しない場合、彼らは支払停止を申請する。
ここで破産法廷が必要になるが、債務国を債権者から守ってくれる国際的な裁判所は無い。Jubilee Researchは、国債官僚に頼らず、必要になれば事後的にパネル(陪審員制の裁判所)を設置して処理することを考えている。これは実際に1953年のドイツや1971年のインドネシアで行われ、成功している。
IMFはゲート・キーパーの役割を独占したがっている。債務の支払停止をする前にIMFの主要国が承認することで、IMFは債務国を民間の「はげたか資本」から保護してやる、と。しかし、IMFからの融資は支払停止に含まれないから、この保護にはあまりにも高い料金が請求されている、とJubilee ResearchのAnne Pettiforは言う。
もっと良い方法は、はげたか資本が得た分や英米の裁判所が扱うものも含めて、すべての債務を集め、一括した破産処理交渉をおこなうことだ、と彼女は言う。「融資や政策監視で間違いを犯した債権者やIMFに優先的な扱いを認めるのは、明らかに受け入れがたいことだ。特に、その機関が市場のルールに従って行動するというのであれば。」
国連総会の権限で、国際破産法廷は債務国と国際債権者の代表を同数指名し、彼らが同意する議長を決める。法廷は、市民社会の参加を得て、国家債務が合法的かつ適切に契約されたものであるかどうかを決める。債権者には特権が与えられず、債務処理案は公共サービスに十分な資金を与え、持続可能な回復を融資するものでなければならない。
NYT June 17, 2002
A Nation in Search of Its Mission
By DAVID GERGEN
ブッシュ大統領は、それまでの自分の考えを翻して、国内安全保障体制を整備し、中東紛争に解決策を示した。過去の多くの大統領が頑なに修正を拒み、情勢が変化する中でアメリカに深刻な損害をもたらしたことを思えば、彼のこの姿勢は賞賛されるべきだ。
彼の適応力を認めるとはいえ、国民生活に新しい目標を与えるという課題が残っている。9・11以後に示された善意や自己犠牲の精神を、をこの国の社会や文化にどうやって取り込むのか?
テロとの戦争は、どこに次の攻撃が来るのかわからない、という不安が続いている。戦況は一進一退で、まるで株価のようだ。もちろん人々は勝利を求め、大統領を応援するが、その関わり方は浅い。世論調査が示すように、彼らは経済や教育、健康が心配であり、戦争への関心は締め出されがちだ。
政府は諜報機関を改革しつつも、議会に追加の犠牲は求めない。これは、1846年のアメリカ・メキシコ戦争以来、初めて増税無しに行われる戦争だ。また、3000人の犠牲者を出してから後は、流血も暴動も、徴兵も無い。
戦争のための犠牲を求め、これから何が起こるかを示すのは、戦時下の大統領の指導力にとって基本的なものである。ブッシュ氏は、現在の犠牲を将来のより良い社会に結び付けようとした。減税や子供たちの安全への支出を訴えた。減税しつつも、議会には農民などへの補助金を認め、政府は戦争が痛みをともなわない、普通の生活でしかないことを印象付けた。しかしそれは、真実でないばかりか、ブッシュ氏の信用を高めもしないだろう。国際社会と同じ基準を国内にも求めるときにだけ、彼は信用を得て、彼の政党に対する有権者の支持を継続できる。
もし18歳から24歳までのすべての相応しい若者を、少なくとも1年間の軍務に就かせるなら、国民の公務に関する関心を大きく変えることができるだろう。この点で、ブッシュ氏は既に USA Freedom Corps の創設を呼びかけている。しかし、その中身は極めて限定されたものだ。18歳から24歳の若者は2700万人いるが、その1%に過ぎない。
今日の若者は非常に理想主義的である。彼らは進んで公務に就き、アメリカ人にとっての正しい生活を求めている。もしブッシュ氏がテロとの戦争に勝てば、彼は優れた大統領として記録される。中東に平和を実現できれば、国際的な名誉を得られる。しかし、この機を逃さず、彼が国民に新しい使命を与えるなら、彼はアメリカ大統領の中でも最前列に名をなすだろう。
ST/Bloomberg JUNE 18, 2002 TUE
GROWING DOMESTIC DEMAND
Asia rises again - bond issues show the way
By PATRICK SMITH
先月、マレーシアの国営石油公社Petronasが債券を発行し、予定額の二倍、27億3000万ドルも資金を調達した。アジアの企業としてはこれまでの最大である。その利回りを見れば、ドル建のPetronas債権はアメリカ財務省証券に175ベーシス・ポイント(1.75%)を上乗せするだけである。今月前半に、それは100ベーシス・ポイントに低下した。JP Morgan Chase & Co.が150ベーシス・ポイントを上乗せしていることと比較すればよい。
アジア危機の際には、マレーシア国債に600ベーシス・ポイントを求められていたのだ。こうした例は他にもある。韓国の起亜自動車の債券も、今ではフォードやダイムラー・クライスラーより利回りが低い。政府も企業も、アジア債券は一種の新・新物である。今年は発行額が70億ドルに達し、年末までには昨年の90億ドルを超えて、1997年の190億ドルに近づくだろう。
企業は新規発行で旧債務を償還できる。アメリカ財務省証券に比べて、韓国政府債は今や113ベーシス・ポイント、中国が120、タイは130上乗せするだけだ。すると、太平洋の時代が再び来たわけか? 多分、それが正しいと思う。アメリカのハイテク・バブルが弾けてから、私は債券発行の爆発をこの地域に広がる需要の拡大という文脈で考える。非常にゆっくりではあるが、アジアはそれに代わるモデルを示しつつある。アメリカ市場に依拠した輸出指向型成長が、国内およびアジア域内の需要に転換しつつある。
債券市場で調達された資金が何に使われるのかを考えてみよう。それは金融的な投資に向かい、アメリカで行われたような自社株買いに使われないだろう。確かにこの投資の一部はアメリカ市場の回復を反映している。しかし、新投資のほとんどは域内の需要によって刺激されたものである。
危機以後、アジアは自分たちの行いを是正し、規制を整備し、企業の透明性やガバナンスを改善してきた。アジア市場の改善は進む。それは単に会計基準が押し付けられたからではなく、投資家たちがアジア企業の示すものを知るからである。
私はここで、数ヶ月前に行われたCalpersの怪しい決定に言及しないではおれない。1510億ドルを保有する年金基金であるCalpersは、東南アジアの株式市場から撤退することを宣言した。その理由はコーポレート・ガバナンスや政府的安定性が、彼らの求める基準を満たせないからである。
しかし、Calpersはフィリピンに戻りつつある。マニラ市場に続いて、タイ、マレーシア、インドネシアにも戻るだろう。タイのタクシン首相が述べたように、アジアは輸出依存から内需に転換しつつある、という説は支持者を増やし続けている。
WP Tuesday, June 18, 2002
Casino Capitalists
By Richard Cohen
(コメント)
再びRichard Cohen氏のお爺さんが登場します。彼は既に数年前に亡くなったのですが、誇り高い労働者として、前時代のアメリカを生きたようです。それゆえ、彼は強欲な資本家どもが労働者をいじめて暴利を得ていることに我慢ならないのです。以前、エンロンに憤慨してCohen氏の書斎の窓辺に現れましたが、今度はタイコーであり、ワールド・コム、アンダーセン、ルーセントです。
Cohen氏が、「企業は優れた人材を得るために高額の給与を支払わねばなりません。これが市場経済なのです。」と言えば、この老人(幽霊)は、「これはハイウェー強盗だ」と言い返します。タイコー社の Kozlowski は「自分を解雇して、1億3500万ドルの報酬を支払ったわけだ!」と。Cohen氏は「そういう契約でしたから・・・」と言うだけです。
「会社はこの男に、昨年、約3億ドルを支払った。そして会社の株は60ドルから14ドルに暴落したわけだ。その報酬が3億ドルか?」 老人の怒りは収まりません。
「奴らの話しているのが聞こえるよ。奴らは労働者の福祉要求を罵った。奴らは組合の要求に、血に飢えた殺し屋だ、と絶叫した。奴らは、怠惰な労働者どもめ、と軽蔑した。そして奴らはリスク・テイカーを崇拝した。もし私がまだ死んでいなかったら、奴らの偽善によって殺されたと思うよ。これが市場システムだって? バカな。これはコン・ゲーム(詐欺)だ。」
老人は、アンダーセンや政府を、アル・カポネに税金を免除してやる連中だ、と激昂する。「労働者は職を失い、貯蓄を失った。これに対して、お前は奴らが罰金を支払うだろう、と言うのか?」Cohen氏は「係争中ですから。」と言いますが、老人は信用しません。「よく聞け、この青二才。連中は誰一人として牢屋に入ったりしないのだ。奴らは退職金を受け取って、そのカネで最低賃金制度が悪い、などと叫ぶ。」
老人は決まって、存命中の彼の妻に気配りを示します。Cohen氏が彼女の誕生日を祝うことを忘れていないか確かめます。「彼女は元気ですよ。ギャンブルが大好きだから、お祝いにカジノへ連れて行ってあげます」と、Cohen氏は答えます。
カジノと聞いて、祖父(幽霊)は心配します。「自分の金で遊んでいるのか?」。Cohen氏が「もちろんですよ」と言うと、「なるほど、彼女はCEOになれなかったわけだ・・・」と言い残して、彼は冥界へと消えるのです。
FT June 19 2002
A flawed independence
By Christopher Huhne
1997年にイギリスは中央銀行の独立を認めた先進工業諸国で最後の国となった。 5年を経て、通貨政策会議(MPC)による金利の決定や安定性の維持、議論の公開や説明責任に関して、この新しい制度は賞賛されてきた。
しかし、もう一つの点では賞賛されるべきか、考える必要がある。新しいイングランド銀行は、蔵相に政策顧問の地位を与え、完全な独立性を損なっている。この点で、ECBモデルのほうが優れている。この欠陥は、イングランド銀行がインフレ的なショックに対して経済を安定化しようとする際に障害となる。
これは単なる理論問題ではない。現実の経済には、常に、さまざまなインフレ・ショックが起きている。こうした潜在的なショックに対して、われわれの通貨制度が頑健であるには、蔵相が通貨政策の緩和を求める声によほど厳格でなければならない。ところが、1998年の法律では、蔵相がMPCを支配し、短期金利の決定権限やインフレ目標を定める権限を有する。それは、歴史的に繰り返されたように、大臣によって濫用され、インフレ抑制への信頼を損なった。
深刻なインフレ・ショックが起きれば、大臣たちはインフレ目標を引き上げて、より時間をかけて物価を調整するべきだ、という圧力を受ける。労働組合の指導者たちも加わって、債務を負った企業家は政府に働きかけて、金融引締めを延期させる。たとえ蔵相がこの要求を退けても、市場はインフレへのリスクを反映して長期金利を高くするだろう。こうして、制度の欠陥が、経済に非生産的な効果を及ぼしている。
NYT June 19, 2002
From 'Cats' to Cicero
By MAUREEN DOWD
金曜日、Ari Fleischer報道官は、記者たちにブッシュ氏の今日の予定を説明した。まずフィットネス、そして資金集めの会合、さらに芝生でゲームに興じ、その後、3マイル走る。そしてまたフィットネスと、別の資金集め。・・・ ブッシュ氏にとって、時間は政治資金と健康(soft money and hard bodies)を維持するためにあるわけだ。
それから U.S.A. Freedom Corps のJohn Bridgeland が、ブッシュ氏のオハイオ大学における公共精神に関する演説の要旨を説明した。「大統領は、道義と慈愛という概念の上に、愛国心とその人間的な充足を訴えるのです。こうした考えは多くの宗教的な指導者や、ギリシャ・ローマの古典的思想家に遡り、アメリカ建国の父たちにも見られます。」と、Bridgeland氏は大まじめに説明した。
彼は、ブッシュ大統領が、TocquevilleやAdam Smith、Aristotle、George Eliot、Emily Dickinson、William Wordsworth、さらに、Pope John Paul II、Cicero、Abraham Lincoln、そして Benjamin Rush、Thomas Jefferson、 George Washingtonなどから着想を得ている、と言うのだ。
記者たちは眼を丸くした。大統領の知的レベルを誤解していたに違いない。彼の演説に、プラトンやロック、ヘーゲルが関係していたなんて・・・! ジョージ・エリオットとジョージ・ブッシュが、同じ一つの文章に出てくるとは!
しかし、記者たちは信じようとしなかった。タイムズの David Sanger が「トクヴィルについて、大統領は何か読んだことがあるのですか?」と尋ねた。
「彼は読んでいます。」と Bridgeland は答えた。「私たちはトクヴィルのNicomachean Ethicsについて話し合っていたのです。」 ・・・ 嘘だろう? 彼らはふざけているのか? もしかしたら(子供向け人気番組の) Nickelodeon Ethics について大統領が話すのを聞き間違えたのではないか?
ブッシュ氏が大統領に当選したのは、彼が知性の点で抜きん出ていたからではなく、彼が自分の限界をわきまえて、彼の仕事を限定するだろう、と有権者が判断したからである。ところが9・11以後、彼は多くの大計画を実施するように求めている。彼の顧問たちは、こうした大計画には、特別なオーラが必要だ、と考えたのかもしれない。最近、モスクワで、ライス女史は大統領に『犯罪と刑罰』( “Crime and Punishment” )を読むように渡した、と述べた。記者たちは、それが「ロー・アンド・オーダー」(TVの推理番組)だろうと思った。
顧問たちは、単なる大統領ではなく、哲人大統領を求めているらしい。無駄なことだ。
WP Wednesday, June 19, 2002
The Search for Scapegoats
By Robert J. Samuelson
2000年3月に最高値を記録して以来、株式市場はその価値の約3分の1、すなわち約6兆ドルを失った。皆がこの莫大な損失を誰かのせいにしたがっている。そして今、それに相応しい容疑者が現れた。ウォール街とアメリカ株式会社である。その強欲と不正が市場を捻じ曲げた。
毎日のように新しいスキャンダルがニュースになっている。人々の怒りが集まり、企業に対する道徳的な非難に酔う。しかし、これはまるで神話の効果だ。いつでも金融の熱狂の末には犯人探しが始まる。しかし、スケープ・ゴートを見つけ出すことと、真実を発見することとは、しばしば違うことである。
ウォール街のアナリストはアメリカ人をだましたのか? メリル・リンチのインターネット売買で、アナリストたちが自分では疑わしいと思う企業の株を客たちに推奨していたのは事実だ。しかし、アナリストの意見を過大評価してはいけない。本当に人々がそれを信じているなら、株価は暴落しないはずだ。また、多くのアナリストは株価が高すぎると警告していた。1990年代後半のメリル・リンチのトップ・ストラテジストであるRobert Farrellは警告する報告書を書いた。モルガン・スタンレーのBarton Biggs は投機の拡大に反対し、Warren Buffett は1999年のFortune に批判的見解を載せる前から、疑いを抱いていた。The Economist アメリカの株式ブームを繰り返し「バブル」として描いた。Barronの編集者 Alan Abelson は、市場の過大評価を戒めた。
しかし、市場が強気を維持する限り、誰もその注意に耳を貸さなかった。私も含めて、懐疑的な意見を言う者は時代遅れと見なされた。
では、情報を正しく分析する専門家は成功したのか? それも確実ではない。世界有数の資産家の一人、ジョージ・ソロスでさえ、彼のヘッジ・ファンドがハイテク株で50億ドル以上も失うのを経験した。ウォール街の事情に通じた者が、今は倒産したテレコム企業に大金を貸していた。グローバル・クロッシングに融資したのは、J.P.モルガン・チェイス、メリル・リンチ、シティ・コープ、U.S.トラストなどである。
今は選別的な見直しが進んでいる。マスコミや政治家は人々の怨嗟を利用するのに忙しい。誰もが重役たち、会計事務所、投資銀行の強欲を非難している。彼らが罪を犯したと訴えられるのは、多くの場合、正しいのであろう。彼らは倫理的にも、法的にも、間違ったことをした。それがエンロンやタイコーの株式を無価値にした。ウォール街の企業が強気の相場を利用したのも確かだ。
しかし、こうした不正行為がバブルを作った、と言うのは間違いである。強欲が上層部の者に限られていた、と言うのも真実ではない。1982年8月12日に、ダウ平均株価は776.82ドルであった。それは1990年代半ばに5000ドルを超えたが、当時、相場が上昇するのは当たり前に思われた。誰もがすぐに豊かになれた。1996年から2000年に欠けて、アメリカ人は1兆1000億ドルを株式市場につぎ込んだ。強欲は民主的であったのだ。投機の文化が社会全体を投機の光で包み込んだ。市場は資金の奔流となり、考えることも無く、インターネット技術に向かった。それはメディアに絶賛されていたのだ。
現在の反動は、会計や財務報告、企業ガバナンスの改善をもたらすだろう。しかし、改革で株式マニアは防げない。それは人間の本性に根差し、新技術への情熱に潜む。非難は行き過ぎである。上がりすぎた株価は暴落するのだ。しかし、人々が間違って企業は悪人に支配されており、帳簿のすべてが改ざんされていると思い込むなら、その下落は止まらない。病んだ市場は消費を衰えさせ、経済を損なう。それこそが脅威なのだ。
WP Wednesday, June 19, 2002
Peace Through 'De-Occupation'
By Michael Tarazi
(コメント)
中東紛争は、アラファトの排除とパレスチナ国家の樹立、イスラエルとアメリカの容認する暫定合意、などが焦点になってきました。若者たちによる自爆テロは、結局、パレスチナ人をより狭い権利と領土しかない<国家>に追い詰めてしまうのでしょうか?
PLOのアメリカにおける交渉を助けているアメリカの弁護士である筆者は、パレスチナ人がシャロンの示す暫定合意を信用できない理由を、イスラエルの入植地拡大政策である、と明言します。イスラエルは、35年間に渡って、非合法な占領地に植民地を拡大し続けてきました。1967年以来、占領地では130以上の植民地が建設され、37万人以上のイスラエル人が入植してきました。彼らは道路やインフラも拡大し、ヨルダン川西岸の土地の42%近くを支配した、と言います。1993年のオスロ合意以後だけでも、その人口は倍増したのです。イスラエルの求める暫定合意が、占領と戦争を終わらせるためではなく、すべての土地をイスラエルの植民地にする時間を求めているのは明らかだ、とパレスチナ人は主張します。
筆者は、戦争によって解決するのではなく、植民地の解消政策へ転換することをイスラエル政府に求めています。暫定合意が信用を得るには、「脱植民地化メカニズム」を確立しなければなりません。占領地に入植する人々は、イデオロギー的な理由によるのではなく、金融的な支援を求めているのです。リクードも労働党も、イスラエルの政府は占領地への入植者にさまざまな優遇策を与えてきました。融資を補助し、税率を下げ、教育を保証したのです。これを逆にして、イスラエルに帰還する入植者に優遇策を与えれば良いのです。罪の無いイスラエル人を政治的な人質にすることをやめるべきです。
筆者は、イスラエル政府が政策を逆転するには飴とムチが必要だ、と考えます。まずアメリカは法と秩序を求め、イスラエルが政策を転換しなければ援助を削る、と明言します。他方、飴として、パレスチナ難民がイスラエルの土地に帰還する権利を、パレスチナ国家への帰還によって諦めさせるように薦めます。
軍事的な占領と植民地化を、人々の平和や繁栄への願いによって、制度として逆転できることを示す提案に、私は大きな支持が集まれば良いと思います。
IHT Thursday, June 20, 2002
Japan's prospects outshine China's
Duncan Wrigley and Devin T. Stewart
日本の多くの指導的企業が、コストの点で、中国への移転を考えている。日本政府は、権力の源泉である工業部門が空洞化することを心配している。経済力で見れば、日本の日は沈み、中国に日が昇るのか? 中国の成長率は、課題に示されているが、日本よりも潜在的な上である。しかし、両国は徹底的な経済改革を進めなければならない。どちらの改革が成功するのか? そう考えると、中国の改革には、次の5つの理由で、より大きな困難が予想される。
1.中国の経済転換は、より多くの人口を移動させる。この4年間で、中国の改革は2500万人以上を国営部門で減らした。労働者間の競争は激しくなり、国営部門の整理で労働者は去らんイ削減される。もし先進国と同じような構造に向かうなら、中国の地方から都市へ、4億人が移動する。日本は生産性を高めるために、150万人を移せばよい。資本の移転も、中国のほうが深刻だ。
2.労働者の抗議は、中国の方が社会の結束に対する脅威である。中国の労働争議は、近年、増加しつつある。他方、日本における労働争議は減っている。
3.中国の社会福祉は小さく、社会混乱を回避するバッファーにならない。中国の税収は、経済規模に比べて、日本と同じ水準であるが、地方政府に偏っている。中国の成長した豊かな地方は、その財源を貧しい地方に与えたがらない。
4.中国の権威主義体制は、大衆の不満にほとんど捌け口を持っていない。メディアの自由は選別され、政府は結局、抑圧に頼るしかない。日本でも政権を担える政党が一つしかないが、それでも野党は存在し、国民は政府を替えることができる。
5.中国の失敗のコストは甚大である。日本の改革が失敗しても、経済が停滞を続けるに過ぎない。他方、中国が7%の成長に失敗すれば、指導者たちは失業が危機的な水準を超えると怖れている。彼らは言わないが、体制が崩壊する危険があるのだ。
いずれにせよ、中国からの競争圧力がしばらくは日本の改革を促すだろう。
IHT Saturday, June 22, 2002
A path to East Asian stability
Mitchell B. Reiss International Herald Tribune
(コメント)
アメリカは、日本が地域安全保障に軍事的貢献をするのをアジア諸国が認めるように、日米韓の三者間安保機関を創設するべきだ、という論説です。
The Guardian, Friday June 21, 2002
We need a fortress
Polly Toynbee
The Observer, Sunday June 23, 2002
The unholy alliance against immigrants
Will Hutton
(コメント)
前者は、移民規制がヨーロッパにとって必要だ、という主張です。Toynbeeは、アメリカのように無限のフロンティアを持つ国でなければ、自由に移民を受け入れることはできない、と主張します。なぜなら、ヨーロッパにおける労働の規則や合意を守るために、まさに「要塞」が求められるからだ、と。アメリカの自由は、国内に第三世界をもたらした。われわれはそれを許さず、EU政府とEU移民法を作って、高齢化に対応する必要な移民だけを受け入れるべきである。他方、難民受け入れは世界的な分担問題だ、と主張しています。
後者は、すべての移民を歓迎しよう、という論説です。右派が言うように、移民を排除すれば、それで自国民の雇用が増えるのか? Huttonはこうした議論を、労働市場の働きを理解していない者が持ちやすい、人種差別的な偏見である、と退けます。労働市場は、十分に安価な労働力が流入すれば、全く新しい雇用と所得をもたらします。さらに、それは経済全体にその乗数倍の成長をもたらすでしょう。他方、移民規制は社会を閉鎖的にし、経済の自由も損なう、と。
FT June 24 2002
Recovering from the dollar
By David Hale
アメリカ経済に好ましいデータがあるにもかかわらず、ドルは下げた。南アジアの核戦争について不安があっても、ドルは避難所とならなかった。ドル安は、ブッシュ政権の保護主義によって始まったように見える。ドルは他のインフレ・ヘッジ手段、たとえばオーストラリア・ドルや南アフリカ・ランド、金Goldに比べて、約10%下落した。しかし、ユーロや円に対しては下落幅が小さい。
この先、ドルがどうなるかは予測できないが、ドル安を長引かせる三つの懸念すべき理由がある。(1)アメリカの経常赤字が、発達した工業国には前例の無い、4500〜5000億ドル(GDPの5%)に達する。(2)世界の投資家がアメリカの金融資産に対して大きなエクスポージャーを抱えている。財務省証券の40%、社債の24%、株式市場の13%が、外国からの投資である。総額8兆4000億ドルは、アメリカのGDPの80%に当たる。(3)アメリカの連銀は、国内支出の弱さや、イラクとの戦争で石油価格が上昇することに備え、金利を下げたまま動かさないつもりだ。
金融市場がどうなるかは、他の主要国がドル安に対して示す反応に懸かっている。1980年代後半は、ドルの下落に対して、しばしば大規模な介入が行われた。日本の介入が非常に大きかったために、日銀を共和党の政治活動委員会の代表に指名すべきだ、と言われたほどだ。1990年代の半ばには、単に介入だけでなく、日本は低金利で円高を阻止しようとした。
日本もヨーロッパも、余りに輸出依存型の成長に頼ってきたから、彼らがドル安を阻止しようとする可能性は高い。最初は介入し、その後は金融緩和も行うだろう。日銀とECBが金融を緩和すれば、韓国やオーストラリア、スイスのような小国も追随する。
その効果は、2003年から2004年にかけて、世界経済の成長を強く刺激するだろう。競争的な世界的リフレ政策は、多分、国際商品価格も上昇させ、発展途上国に多くの輸出収入をもたらす。また、株式や不動産といった、工業諸国の資産市場も価格が上昇するだろう。資産価格が上昇し、資本コストは安くなるから、消費や投資が刺激される。
ドル高が長く続いたために、多くの投資家は、ドルの減価が他国の金融政策や為替レートに及ぼす効果を忘れてしまったのである。しかし、アメリカだけが世界経済の成長のエンジンであることを思えば、他国はドルの大幅な減価に耐えられない。その結果、ドル安はただちに、自国通貨の増価を止める競争的なリフレ政策を他国に採用させるわけだ。
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The Economist, June 15th 2002
Vietnam: Land and freedom
ヴェトナムの治安警察が展開するのは、いつも同じ問題が背景にある。それは、土地問題だ。中央高地に移住してくる内地の住民に土地を再配分する政策が、ヴェトナム戦争以来の最悪の紛争を引き起こした。しかし、政府の管理する食糧生産と土地利用は複雑で、汚職の源である。さらに、計画経済からの転換が土地所有をますます混乱させている。
改革によって人々の所得は増加し、彼らは住宅を建てたいが、増加する都市人口に住宅地の供給は足りない。そこで、法的な所有権を伴わない「非公式な」市場が成立している。さらにその市場は、満足な投資対象や資産市場の無いヴェトナムで、激しい投機の対象になりつつある。腐敗した官僚たちは、高速道路の建設計画があるという情報を流して、自分の土地の価格を吊り上げる。政府調査団を装って、道路建設の情報で地価を上げ、火葬場や屠殺場の計画で地価を下げる。
政府は公正な価格形成を促そうとしている。しかし、他方で農地の宅地転用に厳罰を科す。それは、ますます投機を促すだろう。
Out of puff: A survey of China
(コメント)
中国経済の抱える問題点を整理した、興味深い内容です。
社会主義の計画経済が課した制約を取り除き、安価な資本と労働力を輸出向けの生産に導入することで高められた沿海地域の成長率は、多くの改革問題を先送りにしてきた。内陸部との所得格差、国営企業から排出された労働力の増加、国営銀行の不良債権問題、社会保障制度の財源不足。国営企業の改革は、市場の過当競争とデフレを広めている。結局は、農村の過剰人口を都市が吸収するしかない。しかし移住は規制されており、非常に不公平だ。雇用や賃金、住宅をめぐる対立は熾烈になる。
都市の不満は高まっている。共産党の指導部における世代交代が、こうした不満を解消する政治改革に成功するだろうか? 国営部門や銀行システムの改革、社会保障制度の整備にも、正しく規制された資本市場が必要だ。労働者たちが活発に成長する民間部門に吸収されないとしたら、彼らは乏しい社会保障で生きることに我慢できず、街頭に出て抗議するだろう。あるいは政府が、地域紛争や戦争の危機を体制維持のために利用する?