IPEの果樹園2002

今週のReview

4/8-4/13

キリスト教精神や神の意志に何度も言及する同志社の入学式には、違和感を拭えませんでした。しかし、確かに世界は、新しい宗教とも言える「越境する政治」への期待(あるいは不安)に満ちています。

曖昧模糊とした正論に終始する、本間正明氏と植草一秀氏の対論に肩透かしを食らって、NHK衛星放送を観ると、アフガニスタンの写真展を紹介する話でした。多くの男たちには仕事が無く、毎日を無為と絶望に沈んで過ごすしかない結果、家族や子供たちも目標を失い、社会全体が疲弊していく・・・。この問題がいかに深刻か、を考えました。

豊かな諸国、そしてもちろん日本の政府が、こうした戦争や災害で疲弊した国から優秀な子供たちや若者を引き受け、生活の面倒を見て、教育を受けさせるような援助を行って欲しいと思います。彼らは自分たちの故郷を再建するために、きっと短期間に日本語を修得し、必死で知識を得て、帰国することを願うでしょう。もし政府が動けないのであれば、民間団体や企業、あるいは大学が、こうした経済・教育支援を自分たちで直接に行うのを、政府は認め、手続きや情報の面で積極的に支援して欲しいと思います。

アメリカやヨーロッパは多くの難民を受け入れ、人種差別や極右集団による難民襲撃事件、少数民族問題や非合法移民の増加が問題となっています。日本は、おそらく、こうした問題を回避するために、難民や移民の受け入れをできるだけ抑えてきたと思います。しかし、自衛隊の海外派遣以上に、移民を受け入れないこともまた、国際政治において日本の発言を特殊なものとし、先進諸国にとって異質な、共有できないものとするでしょう。「日本は問題を金だけで解決できると思っているのか?」と。

お金と言えば、みずほ銀行のATMが決済システムを維持できないようなトラブルに直面しているのは、まったく予想外の恐ろしい話です。公共料金や通信料の支払いができなければ、給与の振込み先を他行へ替えられてしまうでしょう。多額の振込みがある当座預金も、団体や企業の口座を即座に失ってしまうのではないでしょうか? 日本のシステムに対する不安は高まり、海外との取引や銀行間取引で、小さなトラブルが過大な反応を引き起こすでしょう。

ポンド建の使わなかったトラベラーズ・チェックT/Cを京都のUFJで両替しました。奈良では、ドルを除いて、両替できないのです。なぜ奈良でもコンピューターに表示されているレートで直ちに両替しないのか? たとえ両替できても、なぜなかなか円を受け取れないのか、分かりません。オープン・スペースになった1階の様子は、私のT/Cが乗った皿の行方を示していました。要するに時間をかけて、何人もが紙をめくり、金を数えて、計算機をたたいているのです。

日本では巨大銀行が支え合い、預金の奪い合いを防ぐ集団安全保障を組んでいます。しかし次の嵐が来れば、いよいよ業態の根本的な転換と、機能ごとの銀行分割が待っているのではないか、と思いました。

突然、ブッシュ政権は放任政策を転換し、パウエル国務長官が中東和平に関与することになりました。シャロンやアラファトのような、あまりに多くの死者たちに責任を負いすぎた指導者よりも、もっと若い指導者たちに将来の和平を託すことが、彼の重要な任務ではないかと思います。そしてアメリカ自身を、より多角的な、国際協調の枠組みで行動する姿勢に戻して欲しいです。

日本政府も、アメリカや中国との貿易摩擦、北朝鮮の不審船引き上げ、行方不明者の捜索、銀行システムや債務企業の整理などに関して、迅速で有効な行動を示すべきです。国会が責任を追及するのは制度を悪用している者に集中し、他方、公的な目標に従う政治家の行動は強く励まし、進んで情報を開示すれば、その失敗の責任を個人に求めないことが重要でしょう。

Financial Times, March 26 2002

Editorial comment: Argentina on the edge

2001年全体を通じて、アルゼンチンはデフォルトと切下げに流された。その後、経済の内部破裂はもっとずっと急速に進行してきた。

ペソの価値は約70%も暴落した。不況が4年も続いた後で、経済はさらに悪化し、生産が今年は8%も減少すると予想されている。経済危機はさらに政府の財政赤字を膨らませる。

アルゼンチン国民はペソの輪転機がフル回転すると予想している。中央銀行は外貨の購入を制限し、小口の為替取引で有利なレートを保証してきた。しかし、いつまで外貨準備が続くのか、は不明である。

自信を示す作戦は、今、Duhalde政府にできる精一杯である。為替管理は危機の標準的な手段であり、一時的であれば、市場の信頼が戻り、信用を得る改革案の実行のために時間を稼げる。

アルゼンチンが行うとしたら、その改革案には財政赤字の穴埋めをインフレで行わないこと、銀行システムの資本を増強すること、外部からの支援、特にIMFからの支援を受けること、が必要である。

現状では、それができない可能性が高い。為替管理は政治家の汚職を疑わせ、ペソをさらに下落させるだろう。銀行システムが無ければ、経済規模の減少は続き、緊縮財政の政府案など誰も信じなくなる。こうした状況ではIMFも、これ以上の融資を焦げ付かせる考えには何の望みも無い、と思う。

もう一つの解決策は、新しい、減価した為替レートでドル化することである。しかしこれも、同じように厳格な財政引締めと、IMF融資の合意を得るという点で、難しい。また、アルゼンチンは為替レートの弾力性を失い、長期的に国内の通貨管理を強いられる、という深刻な欠点がある。しかし、ドルはどうしてもドルであって、アルゼンチン政府が印刷するわけにはいかないのだ。

完全な経済の崩壊を避けるためにアルゼンチンに残された選択肢とは、この二つだけである。どちらにも成功の保証は無い。今のところは、ドル化の方が真剣に検討されている。もしドルを基本とした経済に移行するなら、政府はその地位に留まれない。


Financial Times, Mar 26 2002

How to avert a ratings disaster

Martin Wolf

日本政府は債務不履行になるのか? 海外の信用格付け会社は明らかにそう信じている。Moody’sはすでに最高の水準から3段階も落としてAa3にしており、それはボツワナの国債よりも低い。

もしそれが正しいとしたら、世界は深刻な事態にある。昨年末の日本政府の国債残高は4304800億円余り、36800億ユーロである。日本の総債務額は、流通通貨や政府保証額も加えて、6406400億円余りである。これはアルゼンチンの公的債務の約30倍であるが、日本はアルゼンチンと違って、世界最大の債権国である。2000年末で133兆円余りの対外純資産、当時の為替レートで11600億ドル足らずの対外純資産を持つ。日本国債の名目金利は1.4%でしかなく、アメリカ政府債券の金利より4%も低い。

これは債務不履行になるような金利ではない。格付け会社が間違ったのか? それとも、国債の95%を保有する日本人が間違っているのか? 答えは、どちらも正しいし、間違っている、ということだろう。

政府は国内債務に対してデフォルトにはならない。必要なら債務を貨幣化できるからだ。しかし、ロシアのように外国人が保有している場合、政府は泥棒と見なされる。

他方、国債は完全に安全な資産でも無い。この意味では格付け会社が正しい。日本の公的債務は、このままでは必ず危機に至る。2001年末でもGDP比で132%に達し、先進国中で最大である。OECDは翌年末には149%と推定し、10年内に200%に及ぶことになる。

ある時点で、債務の大きさに関心が向かい、名目金利も実質金利も上昇するだろう。そして最後は紙幣を増刷して、インフレというデフォルトに終わるのだ。格付け会社は、現在の低金利が示すよりも、日本の債務は深刻であると信じている。

それゆえ日本は、国民が格付け会社と同じ意見を持つ前に、この罠から抜け出さねばならない。日本経済は、政府による過大な財政支出に頼ることなく、安定した成長を回復する必要がある。すべての論争は、これをどうやって行うか、に懸かっている。

二つの基本的立場がある。「需要サイド論者」と「供給サイド論者」である。さらに中間的な立場として、「銀行サイド論者」もある。これは、銀行の金融状態が不十分な需要と供給サイドの主要な制約である、と主張している。

これはしかし、ガリバーの小人の国における論争と同じく、愚かな議論である。しかも、政治家と官僚に牛耳られた日本政府当局の無為を弁解する口実となっている。破綻した金融システムを抱えて繁栄できる近代的な経済は無い。問題の核心は、慢性化した国内需要の不足、である。それがまた全般的なデフレをもたらし、潜在的には健全な、しかし過大な債務を負う企業を、ますます苦しませる。

債務の罠は資産価格、特に土地価格の下落で一層強められてきた。そのような資産価格のデフレが終わったというのは良い報せである。土地と株式の価格は、消費者物価と1980年代前半の関係に戻っている。そこで、デフレを止めて、価格の安定性を確信させねばならない。

デフレをどうやって止めるか、で論争が続けられてきた。誰も、デフレがある意味で貨幣的現象であるから、通貨政策が重要であることを疑わない。しかし、通貨政策をどうするかでは、日銀と大蔵省・財務省との責任転嫁がこれまで続けられてきた。

日銀を公平に見れば、いわゆる「量的緩和」によるベース・マネー増大の真剣な取り組みが行われている。この12ヶ月でベース・マネー(M0)は19.4%も増加した。しかし、広義の貨幣(M2CD)はまだ3.7%しか伸びていない。他方、日銀を経由せずに広義の貨幣を増やす単純な方法がある。それは財務省が商業銀行から直接に借りることである。

通貨的な拡大は効果が無い、と言う者もいる。広義の貨幣がGDP比で1996年最終四半期の109%から昨年最終四半期の133%に増加しても、需要をほとんど刺激していないことは確かである。しかし、これはデフレの結果である。デフレが続くなら、(景気刺激のための)通貨供給の拡大はもっと大きくなる。

そのような政策転換に反対する理由は何か? 無駄である、と言うだけでは、やってみる価値が無い、とは言えない。管理できないインフレ期待をもたらす、と言うのも、何年か先のインフレ高進を心配して、今の緩やかなインフレを諦める理由にはならない。構造改革を妨げる、という主張は、破滅を説く無責任な議論だ。

信用格付け会社は独自に仕事をしている。それは正しい。日本の病気を政府債務で治すのは、結局、持続不可能である。ベース・マネーの増加やゼロ金利がデフレを解消できないのであれば、財務省は赤字を使って通貨を増やしてみることだ。これは構造改革の代わりにはならないが、それを助ける。


Financial Times, Mar 26 2002

Rethinking peace in the Middle East

Douglas Hurd

アメリカの外交政策には二つの異なる流れがあった。ジョージ・ワシントンは外国との関与を避け、アメリカの安全保障にだけ集中した。他方、ウッドロー・ウィルソンと、彼以降のほとんどすべての大統領は、自由と民主主義を広めるために、世界の闇を照らす灯台の役割を担ってきた。

911日以降、この唯一の超大国で、二つの要素が激しく爆発するのを避けてきた。ジョージ・W・ブッシュは二つを組み合わせて、アメリカが海外に介入する政策を国民に説明した。アフガニスタン、フィリピン、イエメン、グルジア、コロンビアで、1年前には考えられないほど、アメリカ軍は行動している。数日前までは、一つだけ、例外があった。占領地域の残酷さと流血は、世界中どこでも、明白である。しかしブッシュ政権は、クリントン式の和平ショーを嫌って、手を出さなかった。

その一つの理由はアメリカ国内選挙に関する政治である。さらに、イスラエルのシャロン首相が、パレスチナ人をアル・カイダと同じ、無実の人々の命を奪うテロリストだ、と述べたことが影響していた。この比喩が、イスラエルによる報復の残酷さから関心を失わせ、自衛の権利と弁解できない殖民行為やアラブ人の土地占拠を同一視させていた。

今やアメリカ外交は行動に復帰する。紛争のあまりの野蛮さとともに、アメリカ自身のイラク攻撃にアラブの支持が得られないことがより重要であった。イスラエルの戦車がヨルダン川西岸やガザを破壊し、策陸しているTV映像を流す中では、アラブ諸国からの支持など期待できない。

どの政府も、また市井のほとんどのアラブ人たちも、サダム・フセインを好んでいない。彼が死んでも多くのイラク人は悲しまないだろう、と私は確信する。しかし、イラク人は、イギリスやアメリカのミサイルや特殊部隊だけで、平和を追及する民主主義国家に変わるわけではない。アラブ諸国の協力が必要であり、その意味で、少なくとも占領地域の殺戮を止めねばならない。

ジニ特使やチェイニー副大統領のような政治権力者を派遣すれば、短期的に戦闘が抑制されるだろう。しかし、さらに戦闘を止めるには長期的な解決策が必要だ。エルサレムをイスラエルとパレスチナ双方の首都とし、入植の拡大を凍結し、領土の調整が必要だろう。パレスチナ人はイスラエル内の土地に帰還する権利を、事実上、主張しないように説得される。サウジ・アラビアのアブドラ皇太子の提案は、こうした要素を含むものであり、アラブ・サミットに懸けられている。イスラエルがこの提案にシャロンの政策よりも優れた安全保証を見出せば、イスラエルで入植政策や占領への反対の声が強まるだろう。

ときに、外交は地元の穏健な取り組みから一般的な枠組みを始めることが正しい場合もある。他方で、トップ・ダウンが正しい場合もある。中東では最初の戦略が何度も何度も関係者を集めて試みられてきた。もはやそうした試みは限界だ。次のアプローチに変えるときだ。

ボスニア内戦は、多くの停戦協定や地元の合意が破られて、3年間も続いた。その結果、アメリカは我慢の限界に達し、ヨーロッパの同盟国とともに、交戦する諸集団をオハイオの空軍基地に集めた。そして和平に調印するまで、彼らをそこに留め置いた。この条約には誰も喜ばなかったが、戦争は終わった。その利点は、すべての欠点をはるかに超えたものであった。

もちろん、イスラエルとパレスチナの戦いははるかに長期に及んでいる。しかし、オハイオのデイトン空軍基地が今も利用可能か見ておくことには価値がある。


Financial Times, March 27 2002

Editorial comment: Migrant denial

ドイツ大統領のヨハネス・ラウは、新しい移民法案を法律にする署名を行うかどうか、という困難な決断に直面している。中道・右派の反対派は、議会の投票だけで法案を可決することを、憲法違反として拒むように求めている。しかしラウ氏は躊躇すべきではない。この問題に、反対派は危険な政治ゲームを持ち出している。

ドイツはもう何年も移民問題に否定的であった。730万人、人口の9%以上の外国人が居住するにもかかわらず、公的にはドイツに移民はいないという路線を守っていた。それは現実を拒むものであった。新しい法律は移民の存在を認め、彼らに権利と責任とを与える点で、非常に歓迎される。長く望まれていたものである。

シュレーダー首相は移民法を超党派の合意として行おうとした。彼は移民問題が政治を分断し、選挙キャンペーンを混乱させることを知っていたからだ。それは外国人排斥を唱える極右だけに利益をもたらす。

問題は、論争が実態よりも、戦術や説得にばかり向かうことである。法案の内容はよりまともなシステムに向けて極めて慎重に進むことを意味している。移民の受入は熟練労働者に限り、国内の外国人の地位を明確にする。しかし、新移民の洪水を許すものではない。

反対派はどのような法律も制限的で、移民を減らすものでなければならないと考えている。これはどちらも間違っている。今の法案は決して自由主義的ではない。ドイツが移民や長期滞在者をより多く許容することにはならないだろう。ドイツ自身の国益と経済成長がその条件である。


The Guardian, Thursday March 28, 2002

Revolt of the wronged

Naomi Klein in Buenos Aires

アルゼンチンのDuhalde大統領がIMFにまだ意味の無い交渉を続けていた同じ日に、ブエノス・アイレスのAyacucho住民335人(子供19人を含む)は別の交渉を続けていた。彼らは立ち退き請求に抵抗して、住宅の周りにバリケードを築き、議会から数ブロック離れた場所で、「IMFは地獄へ落ちろ!」と掲げていたのだ。

マクロ経済にしか関心が無いIMFにとって、Ayacuchoの立ち退き交渉は不思議な話であろう。しかし、この国では人口の半分が貧困線以下にあり、国際的な債権者の決定に関係しないような社会部門は無い。図書館員、教員、その他の公務員たちがかろうじて地方の印刷した貨幣を支給されていたが、IMFはこれを止めろと言う。さらに債権者が言うように公共部門を削れば、人口の30%に達する失業者がさらに増え、ホームレスや飢えた貧しい人々が食糧を得るためにスーパーを襲うだろう。

経済分析はそのようなことを気にせず、ドル・ペッグや「ペソ化」、「スタグフレーション」を心配する。家を失う子供や手術できない患者のことは話さない。しかし政府への無慈悲な助言は外国から来る。アルゼンチンは必死に現金を求め、IMFの求めることなら何でもする。

MITの二人の経済学者、Rocardo Cabellero Rudiger DornbuschFinancial Timesに「アルゼンチンは金融に関するすべての主権を一時的に停止せよ」と書いた。「貨幣の印刷と税金の徴収は、経験を積んだ中央銀行家たちの理事会を持つ、外国機関に支配させるべきだ」と。

1976-83年に軍事独裁体制下で3万人が抹殺された国で、「誰かがこの国を強力に支配するべきだ」と、MITなどの「外国機関」が言うのは、まったく無神経である。また、Rocardo Cabellero Rudiger Dornbuschによれば、不況こそこの国を救う前提条件である。市場を開放し、歳出を切り捨て、もちろん、大規模な民営化を進めよ、と。

しかし、アルゼンチンはこうしたことを既にやった。1990年代の優等生として、市場開放、歳出削減、年金民営化など、IMFモデルを実行した。大規模な民営化は、鉄道から電話まで、外国企業に売り渡し、港や関税収入まで失うことを二人は主張する。アルゼンチンの英断を称えた連中が、今度はその強欲や腐敗を非難している。

アルゼンチンの人々に民主主義を講釈するべきではない。彼らはこの何ヶ月も政治・金融・法律のエリートたちに公然と抵抗してきた。先の選挙で最も得票した候補は、漫画の登場人物"Clemente"であった。彼には両手が無く、それゆえ盗まないから。IMFがこの国の腐敗を一掃できるとは信じられない。アルゼンチンは世界に「救済融資」を請うだけだ、という解説は、多くの国民がIMFの資金になど関心が無いことを見失わせる。彼らはむしろ、この国の政治家やIMFに対抗する新しい政治権力を熱望している。大統領はこれを非常に恐れている。

彼らasambleasは、地域産業を再生し、資産を際国有化することを議論している。さらに、IMFの専門家たちにより、長い間、哀れなほど破壊されたアルゼンチンが、融資を求めるべきではない、むしろ補償を求めるべきだ、とも話している。IMFは既にこの国を運営した。今度は国民の番だ、と。


Washington Post, Saturday, March 30, 2002

Don't Wobble on Immigration

By Ben Wattenberg

ブッシュ大統領は、われわれの文明を守るために戦う、と言った。911日のテロはイスラム教徒過激派によって行われ、すべて外国人であり、何人かは非合法移民であった。

アメリカでもヨーロッパでも非合法移民の強制送還が増えた。移民に対する攻撃が強まる傾向がある。大統領選挙に4回立候補したパット・ブキャナンが書いた『西側の死:人口減少と移民の侵略でわれわれの国と文明は危機にさらされる』という本がベスト・セラーになった。

西側文明の生き残りを問うなら、移民と人口変化を見なければならない。ヨーロッパや日本の出生率低下は、前例の無い、信じられない事態である。

社会が長期的に人口を維持するには、一人の女性が2.1人の子供を生まねばならない。ところがヨーロッパや日本では、これが1.3人である。国連の予測では、2050年までにヨーロッパは12400万人を失い、人口の中央値は約50歳に上昇する。このような経済では、誰が家を建て、軍隊を維持し、年金を支払うのか?

幸いアメリカは、カナダやオーストラリアとともに、英語圏の植民地として異なった人口歴を持つ。僅かでも、移入民が人口維持に貢献するからだ。1900-1910年のピーク時には、アメリカは毎年人口の1%を移民で増やしていた。今ではその3分の1である。アメリカの出生率は2であるから、もし移民を阻止すれば人口は緩やかに減るだろう。それは文明間の戦いで敗北することを意味する。

現在、問題になっているメキシコからの移民は、第三世界からの冷酷な人口潮流であり、西側文明の価値を飲み込み、アメリカの非白人多数派に楔を打つものなのか?

でたらめだ。毎年約100万人の移民がアメリカに入るが、その約45%がラテン・アメリカから、メキシコはその半分程度である。非合法移民を入れても30%であろう。残りの70%は世界中から来ており、30%はアジアである。メキシコ系移民は、約半分が白人であり、メキシコの一人当たり所得は5000ドルを超えて、OECDの加盟国である。

侵略? 彼らの多くが芝刈りや皿洗いに従事し、アメリカの軍務を支えている。メキシコ系アメリカ人は第三世代までに英語を話し、スペイン語を話せないと祖父母が嘆く。スペイン語やポルトガル語はヨーロッパの言語であり、信仰はカソリックと、急増するプロテスタントである。

移民に関して動揺するときではない。それはアメリカの成長と繁栄の鍵である。もし西側文明のために戦うなら、われわれは生身のアメリカ人を必要とする。移民たちはまた、最高のセールスマンである。アメリカの素晴らしさを彼らほど良く話す。われわれは、経済・文化・軍事的な同盟国を増やすために、こうしたセールスマンを必要としている。


New York Times, April 2, 2002

I.M.F. Official Revises Plan for Ailing Nations

By DANIEL ALTMAN

NYT, March 30, 2002

The Limits of Force

イスラエルの怒りは共有できるが、いくら戦車を送り込んで占領地を拡大しても、長期的な平和は実現できないだろう。イスラエルは安全保障を求め、パレスチナは国家を求めている。彼らに独立の国家を認めて、テロリストの根絶に協力させるべきだ。


NYT, March 30, 2002

More War Is Not the Route to Israeli Security

By YOSSI BEILIN

テロに対して何かをしなければならない以上、パレスチナ自治政府への攻撃は意外でも何でもない。アラファトも彼の目的を和平と戦争の両方で追求してきた。しかし、シャロンの目的は軍事力だけでは達成できない。テロへの装置はパレスチナ人の心の中にある。彼らが異なる生活への希望を持てない限り、テロはなくならない。


FT March 31 2002

Editorial comment: Tactics of tragedy

パレスチナ自治政府を滅ぼし、アラファトを孤立させる、というシャロンの計画は間違っている。軍事力に頼った安全保障は公平な和平の基盤を失わせ、イスラエル市民の安全も得られない。イスラエルがパレスチナ自治政府を破壊したことで、むしろ分裂した強硬派が勢力を増した。アラファトが自爆テロを抑えることはさらに難しい。シャロンは、より多くの占領とパレスチナ人殺害を繰り返しても、平和に至らないことを理解しなければならない。


NYT, March 31, 2002

Suicidal Lies

By THOMAS L. FRIEDMAN

イスラエルとパレスチナとの戦争は、すべての文明に関わる戦争だ。なぜならパレスチナ人は、その政治目的を遂げるために、自爆テロやダイナマイトの罠、イスラエル人の扮装など、あらゆる手を使って、成功しているからだ。

イスラエル人は怯えているが、パレスチナ人たちは自分の社会を壊しながら、力を得たと高揚している。「われわれはイスラエルの弱点を見つけた。ユダヤ人は生活を楽しもうとする。われわれよりも強く死を恐れている。」と、ハマスの指導者は語った。だから自爆テロは強力なのだ、と。まさに病んだ思想である。

世界は、パレスチナ人が占領による絶望からテロに走る、と想っているが、そうではない。彼らは和平交渉で得られる条件を拒んできた。その理由は、彼らが流血と戦火によって勝利したいからである。彼らの社会全体が一致して破壊を求めており、建設を望まないのだ。パレスチナの自爆テロが勝利すれば、世界は、それをまねたハイジャックと航空機による自爆テロ、核施設の破壊などによって、滅んでしまうだろう。


WP, Monday, April 1, 2002

The Hubris Of No Fences

By Gershom Gorenberg

テロリストたちは単に歩いて入ってきた。イスラエルの入植地Elon Morehには柵が無い。彼らは街を周辺の土地やイスラエルから切り離されたゲットーにしたくなかったのだ。同様に、イスラエルにも柵は無い。

Elon Morehは、ラビン首相が進めた、過剰人口の解消策として入植地を増やす、という間違った政策の一つである。今では、それが和平交渉を難しくしている。柵の無いElon Morehは、ラビンが軍事力の圧倒的な優位でパレスチナ人を納得させられると信じていたことの現れであった。当時の防衛大臣であったシャロン首相も、この確信を持っている。

しかし、境界の無い国土と軍事力による傲慢さは、ますます多くのテロをもたらしている。テロから国民を守るには、武力の自制と国境の合意が必要である。


LAT April 2, 2002  

'We Must Vanquish an Enemy Determined to Annihilate Us'

By BENJAMIN NETANYAHU, Benjamin Netanyahu is a former prime minister of Israel.


LAT April 2, 2002  

Robert Scheer: Bush Fiddled While Mideast Burned

ブッシュ政権は誕生したときから、クリントンと違って中東和平に関心を示さなかった。中東の戦闘が深刻になっているにもかかわらず、ブッシュはシャロンを信用してテロリズムとの戦いを支持した。ブッシュが地域的な紛争に手を出さない振りをしても、歴史的に観て、アメリカが長年この地域の軍備や燃料、経済支援を支配し、和平を担ってきた。和平が成功するかどうかは、アメリカ大統領にかかっているのだ。

ブッシュはアブドラ皇太子の提案を支持しながらも、一方でシャロンのテロリスト掃討作戦にゴー・サインを出した。テロは、戦闘機も戦車も無い、訓練を受けた未成年者たちが行っている。ところがブッシュ氏は、テロ攻撃だけが問題であるかのように扱った。しかし、同じ土地を二つの民衆が奪い合えば、妥協は見出せず、怒りはテロとなって爆発する。

今までと同様に、軍事的な解決策など無い。私は、35年前に、六日戦争で勝利したダヤンが楽天的に話していた様子を、今も明確に覚えている。パレスチナ難民のガザ・キャンプにはきれいな水を引いてやれば良い、と語っていた。それで新しい平和には十分であるかのように。繰り返し理想的な占領を行おうとしたイスラエルも、近代において、占領の屈辱を受け入れる民衆などいない、ということが分かっていなかった。

パレスチナ国家を認め、サウジ案を呑んで、ブッシュ政権がこれを保証すること。入植地は廃止され、イスラエルの国境を、アメリカとヨーロッパ、そしてアラブ諸国が承認すること、である。それが六日間戦争の前にそうであったように。

The Economist, March 23rd 2002