IPEの果樹園2002
今週のReview
3/18-3/23
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近頃、外出する際に、マスクや眼がね、ショールなどで花粉から身を守る人が増えています。なぜ以前からある杉林から、これほど有害な瘴気が、私たちの頭上に降りかかるようになったのか?
かつて日本が光化学スモッグの発生を天気予報と一緒に報せていたように、中国や他のアジア諸国で増大する工場や発電所、ますます延長される高速道路を走る自動車などから、石油を燃やした硫化水素ガスが、大量に、日本にも流れてくるのではないか、と思います。もうすぐ、アジア大気汚染予報が、毎朝のニュースで流れ、マスクや酸素ボンベを準備するようになるでしょう。
空中に広がる、この見えない瘴気から身を守るために、人々は外出を控え、特別な扮装を凝らし、さまざまな医療や薬品に支出し、効果の少ない対策の情報にも振り回される姿を見れば、こうした世界をすでにどこかで見たように思います。たとえば湾岸戦争に際して、イラクが化学兵器を詰めたミサイルで襲ってくるのでは、と、防毒マスクを買いに走るイスラエルの人々がそうでした。宮崎駿氏の『風の谷のナウシカ』で、汚染されていない最後の森と水を守ろうとする人々もそうでした。
もちろん、環境やエネルギー、食糧、情報ネットワーク、輸送システム、難民や人権擁護、などがIPEのテーマに含まれるでしょう。ある日、狂気に駆られて、アメリカ政府が核兵器や情報管理、秘密警察を、イラク政府が人間・家畜・農作物にかかわる伝染病の細菌やコンピューター・ウィルスを、北朝鮮政府が偽札や麻薬、誘拐、金融詐欺などを、敵対する世界に向けて発動する可能性は、本当にあるのです。それでも、集団的な交渉や譲歩、危機の管理を制度化する方が良い、と説得できるはずです。たとえ互いに決して信用せず、相手を抹殺するまで諦めないような集団であっても、こんな世界を自分の子供たちに押し付ける理由は無いからです。
日本経済の果てしない不況自体も、国際的な環境破壊として、監視団が必要だ、という話になるでしょう。アルゼンチンの破産処理や東ドイツの企業再編から学ぶには、旧政治家たちが引退するだけでは、まだ足りない気がします。政権政党が完全に交代し、新政府は国際監視団を自ら要請してはどうでしょうか?
私がIPEの重要な枠組みと思うものは、国際通貨制度、国際移民、国際安全保障体制、です。つまり「利益」と「理念」、そして「恐怖」を支配し、制御するために、人類が歴史的に創った制度に関心があります。(情報交換や共同研究、刺激や関心を共有できる方は、どうぞメールをください。)
今週は、イギリス中部の町で、昨年の人種暴動を調査します。短いReviewしか書けませんでした。Manchesterの天気予報は、最低2度、最高8度。曇り。雨。雨。雨。
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Washington Post, Thursday, March 7, 2002; Page A21
Bending For Steel
By George F. Will
ブッシュ大統領は、クリントンが拒んだ政策を、原則を曲げて採用した。
彼の言葉ではなく、この行動によって、木材、繊維など、他の産業が保護を求めて叫び出すだろう。輸出しにくくなった国は報復を求める。ブッシュ氏の保護は鉄鋼業界のリストラを強制もできないし、促進もしない。経済的に見て弁護できないばかりか、一人の鉄鋼労働者の雇用を維持するために、おそらくアメリカ国内の他の産業で10人が失業する。関税を避けてアメリカから工場を移す業界もある。
ブッシュ氏の関税は、アメリカの消費者に対する新しい課税である。それは自動車とトラックだけでも毎年約10億ドルに及ぶ。鉄鋼業が争点となった地域で、共和党の候補6人とブッシュ氏自身の再選を求めて、80億ドルが注ぎ込まれるのだ。
ブッシュ氏の鉄鋼政策は、知的な人々が自由貿易の原則を放棄して、政治的な機会主義のために、その知識を動員してもたらされた。
New York Times, March 8, 2002
Testing His Metal
By PAUL KRUGMAN
ジョージ・W・ブッシュは、鉄鋼業界からの保護の訴えを退けて、その気概を示すだろう、と、ほんの数日前まで思っている支持者がいた。ところが、その降参ぶりには批判するものでも驚かされる。
それはビル・クリントンと対照的である。クリントン氏はブッシュ氏と同じく自由貿易を支持し、彼とは違って、その原則を守るために政治的に激しく闘った。多くの民主党員は保護主義を支持していたから、NAFTAやWTOを通過させるため、彼は共和党にも支持を求めた。1995年のメキシコ・ペソ危機を収拾する際も、1998-99年のアジア金融危機の際も、鉄鋼輸入が増加し、クリントンは両党から激しく攻撃された。その結果、クリントン氏はウェスト・ヴァージニア州の指名争いでもリードを許し、民主党に対するRalph Naderの攻撃を強めた。それでも彼は自由貿易を支持した。
確かに鉄鋼産業には"legacy costs"という特殊な問題がある。全盛時の退職者に対する年金や医療保険の給付である。しかし、経済学者がはるか前に結論したように、国内問題を輸入規制で解決するのは間違いだ。問題をその発生源で処理すべきなのである。この場合、政府はその債務を部分的に肩代わりすることだろう。
政府の行為に激しい非難が起きた。関税は「低所得と平均的な所得の人々を苦しめる増税に他ならない。」おっと、失礼。これは政府への批判ではなく、ブッシュ氏自身の通商代表であるRobert Zoellickが、彼の上官であるブッシュ氏の前で、つい数週間前に語ったことである。
何かしたいと言うのであれば、なぜブッシュ氏はlegacy costsを取り上げないのか? その本当の理由は、おそらく、補助金は明らかな財政支出であり、保護主義によるコストは、それがたとえ非常に大きくとも、大部分が見えないことである。
それは経済学として最悪なだけでなく、外交的にもおぞましい。われわれはもっとも親密な同盟諸国を激怒させている。トニー・ブレアも述べた。この行為には「正当な理由が無く、受け入れられない、間違ったことだ」と。アメリカは偽善者としてますます強く非難されるだろう。今や、われわれの自由貿易にかんする美辞麗句が何の中身も無いのが明らかであるというのに、誰がわれわれの説教を聴くだろうか?
ブッシュ氏が指導力を示しそうにない以上、彼の唱える原則は見向きもされない。
New York Times, March 8, 2002
Tariffs May Temper a Glut of Steel
By MICKEY KANTOR(secretary of commerce and United States trade representative during the Clinton administration)
(コメント)
ブッシュの保護政策を部分的に支持する議論として、二つに注目しました。カンターと次のKeeganです。カンターは、世界的規模の管理貿易型自由主義を主張し、Keeganは、保護主義に代わる、世界的規模の為替レート・マクロ政策協調によるケインズ主義的成長政策を主張します。
クリントン政権で通商代表であったミッキー・カンターはこの政策を支持する。その理由は、@WTOが正式に認めた一時的な輸入制限措置である。AOECDが薦めてきた鉄鋼業の過剰生産力削減交渉は進展してこなかった。アメリカ市場が関税を課して、世界的な交渉を一気に加速できる。B上院に提出されている貿易促進法案を通過させ、アメリカが世界貿易交渉の主導権を握れる。CEUとの間の多くの懸案事項を解決する中で、長期的に世界の貿易は自由化できる。
The Observer
Sunday March 10, 2002
How to promote free trade? Abolish it
William Keegan
(コメント)
他方、Keeganが言うように、アメリカの貿易赤字は巨額であり、しかもドル高が続いています。クリントン政権が自由貿易とNAFTAを強く支持しつつ、同時に日本には経常黒字の縮小を求めて、為替市場で円高を一気に加速させた姿勢が思い出されます。
Keeganは、自由貿易が単独で維持されることは無い、と言うのです。戦後の「黄金時代」に貿易自由化を支えたのは、為替レートとマクロ政策による成長維持に関する合意があったことでした。今再び、プラザ合意(とケインズ政策)が求められている、というわけです。
これを読んで、私はブッシュ氏の保護政策が、円安容認の日本政府支持策と、セットになっているのかもしれない、と思いました。今の日本に円高を求めることはできません。アメリカは貿易赤字が増大するのを、まだしばらく我慢するでしょう。しかし、(政治的に)鉄鋼業界にはこれ以上の負担を容認できない、というわけです。NAFTAによってメキシコも除外できるでしょう。その意味で、アメリカとEUとの交渉が通貨やマクロ政策に関しても合意できるなら、単なる貿易戦争には終わらないはずです。
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Financial Times, Friday Mar 8 2002
Argentina cannot be trusted
Ricardo Caballero and Rudiger Dornbusch
アルゼンチンは再び救済融資を待っている。しかし、IMFが融資してもこの国の抱える無数の問題は解決できない。
アルゼンチンは完全に破産している。経済的、政治的、社会的に崩壊したのだ。制度は機能せず、政府は信用されず、社会の団結は支離滅裂だ。それは1920年代のヨーロッパに似ている。それは流動性の問題で1年の緊縮政策を経て回復できた、韓国やメキシコ、ブラジルのような状態ではない。
根本的な改革が必要なのだ。三つの点を基礎にするべきだ。1.問題の解決には、数年でなく、少なくとも10年はかかるだろう。経済の生産性も、信用も、制度も破壊された。物的・精神的な資本の再建には非常に時間がかかる。
2.アルゼンチンの政策は多くを約束しすぎたから、一時的に金融問題の解決だけに権力を集中すべきだ。金融的な健全性こそが、健全な財政や貯蓄、投資の先端部分にある。
3.他の世界は金融支援を行うべきだが、アルゼンチンが根本的な改革を受入れ、その財政支出を外国が管理し、通貨の発行や課税権限も握ることを条件とすべきだ。
アルゼンチンは破産し、さらに悪化しつつある。一時的な問題の緩和のために、紙幣が増刷されるだろう。じきに金融的な破綻が再建の基礎を破壊してしまう。無益な再分配に明け暮れ、労働者と資産家、預金封鎖された者とマイアミに資本逃避した者、地方政府と中央政府、労働組合と投資家、海外の投資家・債権者と正常を装いたい国とが、闘争を繰り返す。
外国からの支援無しには問題を解決できない、と平身低頭してアルゼンチンは認めねばならない。それでは、どのような支援が必要か?
それは資金だけではない。アルゼンチンの問題の根っこには社会全体の信頼の崩壊、経済の未来に対する自信喪失がある。誰も進んで権利を譲歩せず、問題を他の地域集団に転嫁しようとする。誰かが断固として国を治めるべきだが、軍事独裁は起こらないだろうし、望ましくも無い。誰もが、皆、利己的で腐敗している、と正しく理解しているから、社会契約は達成できない。社会的合意が無ければ、毎日、社会的・経済的な資本が犠牲となっていく。はるかに凄惨な結末も避けられないだろう。
アルゼンチンは長期にわたって、たとえば5年間、その通貨、財政、監督、資産管理の主権を完全に停止しなければならない。第一次大戦後、社会的に破綻したオーストリアについて、国際連盟は議会の同意により駐在総監督官を任命した。総監督官は支払請求をすべて拒み、中央銀行を監督し、改革を監視した。「総監督官は、オーストリア政府の協力の下、改革計画を実行し、その実施を監督する。彼は融資の配分について支配権を持っている。」
これこそ、アルゼンチンが新しい融資と交換に受け入れるべきことだ。監督官は、アルゼンチンから離れた小国に求めるのが良い。たとえば、フィンランド、オランダ、アイルランド、などである。小国の人々は、経済制度が安定性を確保し、繁栄の基礎を提供するものであることを、良く理解しているからだ。
また特に、経験を積んだ外国の中央銀行家がアルゼンチンの通貨政策を管理すべきだ。これによりカレンシー・ボードの多くの利点と、その必要に応じた通貨政策の採用が可能になるだろう。新しいペソ紙幣はアルゼンチンの外で印刷するべきだ。
中央政府の財政管理と、その地方政府への支払いに関しても、さらに外国による監視が求められる。財政赤字の解消には責任と資源の分担とが必要であり、脱税や汚職を止めさせねばならない。外国からこうした個別問題を管理することは不可能であるが、インセンティブ・メカニズムと有益な経験を授けることができる。
現在の中央と地方の財政分担は間違っている。これは地方政府が、30%というような、もっと少ない受取額に変えるべきだ。同時に、地方で増税する強い誘因を与えることである。そして税制をもっと簡素化し、均一税制(フラット・レイト)に近付ければ良い。新しいインセンティブ・メカニズムは汚職の抑制にも効果がある。
港湾、税関、その他の生産性を妨げているものは大幅に民営化することだ。卸売りと小売部門の競争を促す規制緩和も幅広く行われるだろう。経験豊富な外国の監視団は民営化プロセスを管理し、それが現在及び将来のアルゼンチン国民に利益をもたらすように監視するべきだ。
明確かつ根本的な計画を示すことで、アルゼンチンは新鮮で勇気の出る展望を与えるだろう。外国の監視する通貨当局が設置されれば、アルゼンチンは速やかに新たな一時的交換性保証計画に移行し、たとえば1USドル=2ペソにすることだ。また凍結されていた預金口座を開放し、IMFと外国の金融機関にどの銀行を支援して資金を入れるか決定させることだ。
オーストリアを監督した国際連盟はこう述べた。「最善を尽くしても、再建のために苦しめば、現在の消費に融資を使ってしまうよりも、生活は苦しくなる。昨年と同じ生活や、その改善を求めても、そんな選択はできない。もっと苦しい生活に耐えること(ただし将来には改善の希望が持てる)と、貧困や飢餓による混沌へ落ち込むことを、選択するだけである。現在支配的な状態よりもさらに厳しい改革を強制する監視に耐え、これを支持する覚悟が無ければ、オーストリアには何の希望も無いのだ。」
これこそが今日のアルゼンチンが進む道である。IMFが通常の融資をすることが大きな失敗であるのは確実だ。
Financial Times, Friday Mar 8 2002
Japan needs shock treatment
Richard Jerram
(コメント)
日本経済の低迷は、バブル崩壊や不良債権ではなく、企業部門の収益が上がらなくなったことにある、という。この場合、金融市場のブーム・アンド・バースト循環では再生できない。むしろ東ドイツの国営企業再編にならって、銀行だけでなく企業も国有化して、一気に処理するべきである。ドイツはこの方法で、東ドイツ企業1万4000社を民営化するか倒産させ、労働者の60%を失業させた、という。
ショック療法も漸進主義も、それぞれに欠陥があり、厳しい批判がある。Jerram氏は、日本政府がすべての銀行を国有化して、株主には不良債権を差し引いた資産を支払うべきだ、という。そして、たとえば1%以上の収益が上がらない企業に対しては新規融資を行わないようにする。すべての資産がRCCによって処理される。需要の落ち込みを補う財政・金融政策を行い、資産の買い手が外国人でも早期に売却を進めることだ。そのためには、RCCに認められる処理期間を限定し、政治的介入を法的に排除しなければならない。
日本に可能な他の選択肢はインフレ政策である、という。しかしJerramは、両者を比較していません。なぜ日本はインフレ政策を加速しなかったのでしょうか? インフレ政策でも(あるいはその方が見えにくいために)分配問題は熾烈であり、旧政治家の支配する政治システム、財務省、日銀との間の主導権をめぐる権力争いが、その理由の一部ではないか、と私は思います。
Los Angeles Times, March 9, 2002
U.S. Works Up Plan for Using Nuclear Arms
By PAUL RICHTER, Times Staff Writer
ブッシュ政権は軍に、少なくとも7カ国に対する核兵器の使用に関する緊急計画と、特定の戦場に使用するためのより小規模な核兵器の開発を命じた。この秘密報告は7月8日に議会に提出されたものであり、ペンタゴンは中国、ロシア、イラク、北朝鮮、イラン、リビア、スーダンへの核兵器使用を検討する必要がある、と述べている。
この記録は、核兵器を使用する仮想敵国を明確に示した最初のものである。「これはダイナマイトだ。」と、カーネギー財団the Carnegie Endowment for International Peaceの核兵器専門家Joseph Cirincioneは言う。「名指しされた国々が国連で何を言うか、私には想像できる。」軍縮を唱えながら、小規模核爆弾を開発するペンタゴンの姿は、核兵器を最後の手段として使用しないことから、ブッシュ政権が逸脱する長期的な意味を理解していないことを示す。John Isaacsも「これは非常に、非常に危険な話である。・・・ペンタゴンにはまだ、このような核兵器偏愛論者が生きている。」と心配する。
他方、保守派のアナリストには、ペンタゴンがあらゆる可能な選択肢を検討するのは当然だ、特に、今や多数の国が核を保有し、テロリスト集団を抱えており、秘密の核兵器開発を進めているのであるから、という意見もある。彼らは、小型核爆弾は抑止力として重要である、と主張する。友好国への被害を恐れて、アメリカが核兵器を使用できないだろう、という彼らの慢心を破壊する、と。ヘリテージ財Heritage Foundation団のJack Spencerは、報告の内容に驚かない、と言う。「それは冷戦後の核体制を築く正しい方法だ」と。
アメリカの政策担当者は、今まで核を保有しない国には、核保有国と同盟関係を結ばない限り、一般に、核攻撃しないと示唆してきた。しかし、化学兵器や核兵器で攻撃された場合には、曖昧さを残していた。この報告書は、ペンタゴンがアラブ・イスラエル紛争や、中国・台湾、北朝鮮による韓国への攻撃で、核兵器使用を検討するよう、求めている。
これで核兵器は、使用される武器となる。
Los Angeles Times, March 10, 2002
Commentary
Secret Plan Outlines the Unthinkable
By WILLIAM M. ARKIN
(コメント)
9月11日以後の、アメリカにおける戦略思想が転換したのだ、と言います。そこには何も新しいことなど無いと思いますが、核兵器を使用するだろう、という発想を現実の選択にも組み込んだことが新しいわけでしょう。これがテロリストとどう関係するのか?
アメリカが核による先制攻撃を行えば、日本政府はそれを支持するのでしょうか? 日本にとっても、アメリカとの軍事同盟を破棄した場合の、外交、安全保障政策を準備するときでしょう。
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The Economist, March 2nd 2002
Latin America: Losing its way?
完全なポピュリズムへの逆転は起こりそうにない。政府は貨幣を自由に管理していないし、中産階級はグローバリゼーションの旨みを知ってしまったから。
アルゼンチンは、ヴェネズエラと同様に、農産物や石油という、過去の富に対する幻想によって、腐敗と失敗を繰り返してきた。それが彼らの財政規律を緩ませ、革命的な言辞で追随者を膨らませる。Duhalde政権は、すでに即興的な約束に頼り、専門的なエコノミストを無視するという過ちを犯した。政治家たちは議会を血で汚し、実りの無い改革のリップ・サービスに終始した。
彼らの失敗は、巨大な真空状態を生み出している。そしてヴェネズエラではチャベスが大統領になり、アルゼンチンの将来にも、将軍たちの登場が噂される。政治を革新して、腐敗を一掃すること。経済を革新して、特に不十分にしか投資されてこなかった労働者を教育すること。
Human trafficking: Desperate cargo
昨年の春、70人の不幸なカンボジア人が高収入の職場を期待して、タイに密入国させるという業者たちに身を任せた。しかし、そこでは黄金郷ではなく、漁船の上での奴隷労働が待っていた。インドネシアの海域でその船は地元の警察に停止させられ、家に帰ることができた。多くの移民はそれほど幸せでなかった。昨年10月、オーストラリアに密入国しようとした船が沈没し、370人が溺れて死んだ。
アジア太平洋の30カ国ほどが今週バリに集まって、犯罪組織による人身売買や密入国の取締りについて相談する。オーストラリアはこの取締りについて近隣諸国に資金援助する予定だ。
労働や売春させる目的で人々を売買する産業は急速に拡大している。世界中で、毎年70万人から100万人の女性や子供が売買されている。その半分はアジアから来る。この10年間だけでも、20万人の女性や子供がバングラデシュから出てパキスタンで売春していた。中東でも、さらに20万人がメイドとなり、少年は男娼となった。インドはネパールやバングラデシュの女性が最も向かう国である。2000年に中国の警察が人身売買から救出した人々は12万3000人に上る。彼らは自国の貧困や暴力から逃げ出そうとするが、しばしば犯罪組織の手に落ちる。
非合法移民の取締りは、国際的な政治摩擦につながる。マレーシアの取締り強化で、ますます多くの非合法移民がオーストラリアに向かっている、と政府は国境規制を厳しくした。オーストラリアは2001年の難民申請者が1万2000人でしかないが、それはベルギーの半分にも満たない。政府の強硬姿勢は選挙目当ての計画だ、と批判する者も居る。