IPEの果樹園2002

今週のReview

2/25-3/1

深夜番組を観ていると、笑福亭つるべのトーク番組に共栄建設社長の何某氏が出ていました。この何某氏は、いくつか(8つ?)の銀行からバブルのピーク時に8000億円!を借りていた、と言います。さらに、バブルが弾けた後も、銀行はこの会社が倒産することに同意せず、今も、たとえば年間たった数万円を返済して1000億円を借りたままである、と言うのです。全部返すには4000年もかかりますよ、と自ら苦笑し、それでも銀行が融資の担保である土地を引き取って倒産させてくれないのだから、これは仕方ないのだ、と匙を投げます。果ては、この借金を全額返済することが私の使命です、とまで豪語しました。でも、どうやって?

なるほど、220日の日経新聞を見れば、RCC(整理回収機構)が債権を簿価で買い取ることを、注目の「デフレ対策」として自民党が主張しています。すると、もしかして、再びこの何某氏のような手練手管で、地主や銀行の融資担当者、役人や政治家が宴会に招かれ、大いに遊んだ上で、目の前で100万円の札束を、バチッ! と音を立てて破り(彼によれば、これが重要なのです)、皆のポケットや荷物に札を詰め込むのでしょうか? そして、「ああ、誰をも幸せにすることができる自分の素晴らしい能力があるからこそ、何千億円もの借金ができるのだなあ・・・」と納得するのでしょうか?

私はこんな宴会に招かれた覚えもないし、RCCの損失が税金やインフレ課税で穴埋めされることになると思えば、なぜ「デフレ対策」がこれほど醜い姿でしか行えないのか、自民党政治家たちに尋ねたいです。確かに、まじめに働く労働者が失業し、売上不振で倒産する企業が増える今は「デフレ対策」を必要としています。しかし、簿価買い取りは、バブルの失敗を認めず、宴会で遊んだ政治家、銀行の融資担当者、役人、その他の何某氏たちを無罪放免し、その穴埋めを国民全体に押し付けるものだと思います。しかも国民は、不良債権を処理できない銀行に生存を許すためのゼロ金利で自分たちの利子所得を失い、バブル期の住宅ローンを返済し続け、遠くの家から職場まで、毎日、高い交通費を支払って、満員電車や交通渋滞に苦しみ続けています。

公衆に対して選挙前には「国民の利益」に尽くす、と演説する政治家たちも、実際には、利益を再分配することで自分たちの重要さを示します。さまざまな利益集団が対立を深め、暗殺や武力闘争を頻発させるような国より、政治的な合意で再分配を行う国の方が良いでしょう。しかし、その結果、経済全体の安定性を損ない、活力を奪うとしたら、最後は社会的混乱と政治不信によって、同じ結末へと向かうのです。

アルゼンチンの経済を分析したE. Diaz-Bonilla & H. E. Schamisの研究に、こんな指摘がありました。「過去において、ペロニスト政権は分配問題を紙幣の増刷で解消し、軍事政権は対外債務の積み増しで解決した。革新党の政府は、対外債務もハイパー・インフレも続けられず、短期の国内債を累積させた。その目的は、1989年の大統領選挙まで為替レートと物価を維持することであった。」しかし、1989年半ばに通貨システムが崩壊し、ハイパー・インフレーションの中で新しい政治同盟が現れ、当選したカルロス・メネムは支配政党を割って、ドルとの固定制を採用します。しかし、その体制も通貨危機とデフォルトによって崩壊しました。

Financial Times, Friday Feb 15 2002

Editorial comment: Chavez's float

ヴェネズエラの大統領、Hugo Chavezは、反対派を驚かせて自慢する。通貨を変動制にするという今週の決定は、まさに人々の不意をついた。それは全体としては正しい改革であるが、もしこれで経済を再生し、政治危機を乗り超えるつもりなら、Chavez氏にはもっと多くの成すべき事がある。

変動制への圧力は、過去数週間に、高まっていた。ヴェネズエラの輸出の75%、税収の50%を占める石油の価格が低下し始め、民間部門の投資や消費も衰えつつある。11月の過激な土地改革や経済改革に続いて、反対派への攻撃が過熱してきた。Chavez氏は急速に国民の支持を失いつつある。為替管理を心配するビジネスマンも居る。その結果、資本が流出し、外貨準備は今年になって20億ドルも減少した。

投資家たちは最悪の場合をすでに予想していたため、通貨ボリバルが19%減価したとはいえ、変動制はむしろ株価や債券価格を反発させた。しかし、相場の上昇は続かないだろう。ボリバルの減価が財政赤字や資本逃避につながる。1998年の生産水準を越えられない経済を刺激するためには、Chavez氏は他の問題でも対応を迫られる。

緊急の課題は財政規律を確立して、為替レートの変動幅を廃止した今となっては、新しいインフレ防止のためのアンカーにすることである。12.3%という昨年のインフレ率は、Chavez氏の政権の主要な成果であり、それにより貧困層の支持を得ていた。変動制と政治対立は、インフレを再燃させるかもしれない。

財政的な緊縮策は、政府をますます民間部門の投資や成長に依存させる。Chavez氏が実業界で支持を得ることが死活問題となっている。閣僚の人選や政策において、実業界の意向を汲むことも考えられる。しかし、Chavez氏が受け入れに難色を示すだろう。その結果、ヴェネズエラの混迷は深まり、Chavez型のポピュリズムがラテン・アメリカを覆う恐怖を強める。


Financial Times, Friday Feb 15 2002

Editorial comment: Sharing Tokyo's deflationary pain

日本政府がやっとデフレに対決する気になったような感触がある。しかし、あまりに長い間、日銀は、物価水準に景況を与えることは何もできないと言う、特異な、強情さを示してきた。小泉首相は中央銀行に、物価の下落と闘う大胆な手段を採れ、と命じた。おそらく、さらに金融システムに流動性が追加供給されるだろう。主要銀行は政府によって資本を強化され、中小企業には政府による債務保証が与えられるのではないか。

そのような政策は1998-99年にも試みられたが、成功しなかった。今度もまた、会計の年度が変わる時期に資産価格を一時的に引き上げるだけであろう。さらに小泉首相は、ブッシュ大統領との東京会談を控えて、日本政府は急速に悪化する経済を立て直すために何か思い切ったことをやっている、という印象を与えたいのだ。

しかし、これらが物足りない対策であることは、政府自身が知っている。小泉氏は政府幹部にデフレ退治の本格的な対策を6月までに作るよう指示した。それには、インフレ目標を明確にするような、日銀の任務変更も含まれるだろう。日銀は大量の国債を貨幣化してインフレに火を付け、円安によりアジアに不安を撒き散らすことができる。しかし、日本の周辺諸国は、日本経済が再生するのを助けると信じて、このリフレーション政策を受け入れるべきである。

海外諸国は、日本経済の回復のために海外で苦痛が生じる、ということを受け入れる必要があるだろう。ブッシュ氏は東京で、日本が経済再編に積極的に取り組むなら、苦痛を分かち合うつもりだ、と確認した。すでにアメリカの鉄鋼業界は円安を止めるように政府に圧力を加えている。議会選挙を前にしても、ブッシュ氏はこのロビー活動を拒んでいる。日本経済の回復は工業製品の競争力を短期的に失うことよりも重要であるからだ。


Washington Post, Thursday, February 14, 2002; Page A33

Steel and the National Security

By George F. Will

弱味に付けこむのも政治の一部である。しかし、ブッシュ大統領が911日のテロリストたちについて、彼らは「牛追い全国大会を見たことが無いから」アメリカ人のタフさを見くびっていたのだ、と言ったのは、パロディーすれすれの真実を含んでいた。彼は躓いたのは、「国防のために」農産物補助金を主張したときである。この台詞には、牧畜業者がのどを鳴らしただろう。鉄鋼労働者たちも、多分、気が付いた。議員たちは、連邦予算が投票を得るために農民や牧場の補助金として注ぎ込まれても、何ら問題にしないことを理解した。他方では、高潔な選挙資金規制を議論しているのに。

アメリカの農民が桁外れに生産的で、アメリカ人はニュー・ディールの農業補助金が出る前から十分に食べていたことを、ブッシュ氏はもちろん知っていた。しかし、下院の議席が争われ、農業州の多くで投票が近づけば、170億ドルの追加補助金を出すのに反対の声は無くなった。下院は選挙資金規制法が自発的な献金として1999-2000年に27億ドルも認めたことを、恥だ、と言う。

ピーナッツへの補助金を国防上の理由で認めたブッシュ氏は、すぐにまた、苦境にある鉄鋼産業への救済策を発表した。鉄鋼不況で苦しむ15万人もの労働者とその4倍の退職者たちが、下院による農民たちへの配慮を見て、自分たちへの扱いは冷たいと激昂したのだ。もっぱら外国政府の間違った政策のせいで、世界中の鉄鋼生産は過剰になっている。それが不当な「ダンピング」であると正しく確認されたが、それはアメリカの鉄鋼産業で30企業が過去4年間に倒産した一つの理由に過ぎない。12月に39カ国で合意した年9750万トンの生産削減も、過剰生産の3分の1でしかなく、実施は2010年までかかる。

アメリカ鉄鋼産業の希望としては、さらに輸入数量規制を行い、少なくとも40%の関税を課して欲しい。しかし、これらは事実上、鉄鋼利用産業や製品消費者への課税に等しい。さらに彼らの希望は、120億ドルの「過去のコスト」という、極端に潤沢な年金給付について、政府が肩代わりすることである。これは外国の生産者を責めることなどできないし、快楽時代の先のことを考えない交渉の結果である。

これにはアメリカ人の多くが得ているよりはるかに多額の医療費給付が含まれているために、政府は事実上の二重医療保険を認めている。財政赤字や企業に対する関与が問題になっているにもかかわらず。他方、生存競争を突き進めるのも多大のコストが予想される。コミュニティーが崩壊し、60万人の退職者が苦しむ。

鉄鋼関税や割当制は国内の消費者に何十億ドルものコストを負わせる。鉄鋼労働者一人の雇用を守るために、何千ドル、何万ドルもの費用がかかる。たとえば、もし選挙資金が新しい関税や割当制の3分の1の動機であるとしたら、事実上、関税や割当制の3分の1は政治家のためにあるのだ。こうした政治家の活動は規制されるだろうか? あるいは、規制をもっと小額の個人献金に制限すべきなのか? 下院の選挙資金規制論議で答えるべき問題である。


New York Times, February 16, 2002

Show of Leadership on Shaky Japan Banks

By KEN BELSON

小泉首相が金融危機対策で指導力を発揮し始めた。ただし、まだその内容は不十分だ。

まず、金融庁に検査を厳格にするよう求めた。これで預金者や投資家の不安感を払拭したいわけですが、今まで以上の内容は見られない。特に、公的な財源を使用することが明確になっていない。現行法では、それができるのは銀行が連鎖的に破綻するような場合であり、政府はまだ日本が金融危機にあるとは認定しないからだ。

次の決算期まで、半年だけ危機を延期するだけである、と海外のアナリストは見る。日経平均も5日間だけ上げて、再び下落した。株式買い上げ機構を政府が保証する決定も、それに参加銀行は限られている。

政府はさらに整理回収機構RCCを使って、時価よりも高い値段で不良債権を買い取れるように法律を変えた。これによりRCCは、1月だけで過去1年間の申請額よりも多い、7000億円の不良債権買い取りを求められた。


The Observer, Sunday February 17, 2002

Euro's reluctant father faces facts

William Keegan

(コメント)

ドイツ連銀元総裁Karl Otto Pohlペールと、イギリスの欧州担当大臣Peter Hainヘイン、フランス銀行総裁Jean-Claude Trichetトリシェが、最近、EMUの「安定協定the Stability Pact」について発言した内容を比較しています。

ペールは、当時も今も、マーストリヒト条約に反対です。政治同盟を先行させないで、通貨同盟だけが成功するとは考えないからです。ペールが署名しなければ、マーストリヒト条約は成立しなかった、と言えます。実際、当時のサッチャー首相もそれを期待しました。

1988年にイギリスのNigel Lawson蔵相がそれを「ヨーロッパ中央銀行のthe "manifest nonsense"である」と発言したとき、私も同感であった、とペールは露骨に述べました。Jacques Delors議長のまとめた内容には気が進まなかったし、ドイツ連銀が無くなることに同意したくなかった。今も、それは非常に優れた合意ではなく、一つの妥協であったと思う、と。もし国民が望むなら、ドイツ連銀の廃止にも同意するが、それならドイツ連銀にならった優れた中央銀行を作るべきである。物価の安定を謳うことがそれである。

ペールは、ECBがまだ不況や金融危機に直面したことが無いことを指摘し、アメリカ連銀のグリーンスパン議長がECBの短命を警告した事を忘れていません。ペールは事実としてECBを受け入れますが、その政治的な帰結も受け入れねばならない、と主張します。明らかに、ドイツの政治指導者たちは、ヨーロッパの連邦制をさらに進めるつもりです。

連邦制は権力の分散と矛盾しないが、「英独枢軸Axis、おっと失礼! 英独同盟Partnership」によるEU改革への関心は、ブラッセルから両国政府への財政赤字に関する注意と重なっています。イギリスのヘイン氏は、ペールが「安定協定」の合意に加わらず、ECBは加盟諸国の経済政策を支援するべきだ、と考える点に賛成します。ただし、ドイツは(イギリスと違って)疑いなくヨーロッパの工業中心地である、と注意します。ペール自身が、「安定協定」の緩和に言及することは一気に財政規律を無視させる危険があるので、シュレーダー首相の対応は望ましくなかったと考えている点も重要です。

他方、フランスのトリシェは、ヨーロッパには連邦政府が無いから、「安定協定」が必要である、と主張します。ドイツでは国民がハイパー・インフレの危険を知っていたことが金融政策を容易にしたように、ECBは「安定協定」を必要とします。

しかし、イギリスにとっては、「安定協定」が長期的な政府による投資項目を区別していないことが、その再建を目指すイギリスの方針と対立します。


The Guardian, Monday February 18, 2002

Britain is again white

Gary Younge

北朝鮮がロンドン市長に選挙監視団の派遣を申し出た意図はわかるが、何の助けにもならない。同様に、ウォール・ストリート・ジャーナル紙がトニー・ブレアを「アメリカの主席大使」と持てはやしたのも、「世界を癒す」と心に決めた男の評価を決して高めはしなかった。それゆえ、Norman Tebbitが内務大臣のDavid Blunkettブランケットにより示されたイギリスの人種「観」を賞賛しても、それが酷く捻じ曲がったことであるとは言えない。

「われわれはブランケット氏に大いに感謝している。彼はわれわれが長年信じてきたことを述べてくれた。」とテビットは言う。「私が英語の試験や国家への忠誠を問うように求めたとき、人種問題の煽動家たちは私をトーリー党から追放しろと求めていた。」全くだ。黒人青年Stephen Lawrenceが死んだことについてのマクファーソン報告の3周年を記念する日に、政府の人種や人種差別に関する理解は大きく後退し、Stephen が生まれた1970年代以前に戻ってしまった。

今日の人種政策は、ポピュリストたちの基盤と本能的な差別に対応しており、進歩的な機会の平等や人道主義によるものではない。制度や私的・公的な生活、大衆文化を冒す人種差別をどうすればなくすことができるか、について、イギリスは3年前に国民的な論争を開始した。しかし今日、振り子は逆に振れて、人種問題をもっと独善的に扱い、解決すべき問題とは見なさない時代に入っている。

われわれは単一民族や、イギリス人の文化的な統一性という、粗野な、間違った神話に復帰しつつある。そこでは、非白人の存在は我慢されるだけで、しかも条件付となる。変化は単純ではないし、その宿命は決して不可避的なものではない。特にこの1年の人種論争における変化は、堅固でもあり、曖昧でもあった。論調や内容、焦点が、人種から宗教、肌の色から信条、エスニシティーから経済学へと変わってきた。

若者と老人との違い、北部と南部との違い、都市と農村との違い、そしてエスニック集団間でますます顕著となった違いが存在する。バングラデシュ生まれでBurnleyに住む若者はSloughの年金暮らしをするインド人や、Bristolのアフロ・カリビアンと、ほとんど経験を共有していない。また、Shropshireの白人ティーンエイジとバーミンガムの若者は、イギリスの人種地図が変化してきたことについて、全く異なった理解を持つ。

しかしこうした違いを超えて、一般的な傾向は明白である。3年前、人種差別こそが問題であった。しかし今では、イギリスに少数派のエスニシティーが居住していることを問題にしている。イスラム教徒たちがこの国に生活する権利は公に疑われており、公式に制限されている。

北部の都市で人種差別を解消するためには、都市の再生ではなく、英語の補修クラスや市民権教育が必要である、という。街頭で闘ったアジア系の若者の多くや、敵対した白人たちが、ここで生まれたことなど、知らぬふりで。

内務大臣は、アジア人がインドからではなくイギリス国内で結婚相手を探すべきだ、と助言することで、恋愛も法律に従わせる気だろうか。人種論争の水準ははるかに地に落ち、しかも急激に悪化した。マクファーソン報告の提言を無気力に反駁する酷い内容の報告が出た。それらは過去を弁護するわけでも、現在を正当化するわけでもなく、未来を損なう。そんな不機嫌な少数派が増大し、主張を強めている。

昨年3月のリーズ・フットボール・チームの選手3人に対する判決は、マクファーソン報告の人種差別に関する定義を非難した。さらに二つの関連する事件が、この傾向を強めた。一つは、長引く不況と、パキスタン人、バングラデシュ人の白人社会からの疎外が、北部の都市で5月と6月に人種騒動につながったこと。もう一つは、イスラム原理主義の台頭とイスラム嫌悪が、911日のテロやアフガニスタンの戦争によって強められたこと、である。

この燃え易い火薬庫に、煽動的な新任の内務大臣が加わった。ブランケットは人種論議を誤解しており、国籍やエスニシティーに関する20年来の論争を単に見失っている。「政治的な品行方正さ」、「白人、中産階級」といった言葉の使い方は、彼を大臣というより、ラジオ番組のゲストのようにした。「われわれには寛容さの規範がある。」彼は、昨年の騒動に関する12月の報告書が出る前にこう述べた。「われわれの国に来る者は、われわれが他所へ行くときにもそうするように、こうした規範を受け入れねばならない。」

彼はまるで、この国に住む非白人の半分以上がここで生まれたことを、まだ学んでいないかのようだ。イギリスを故郷とする第二、第三世代は、再び、来訪者の列に並ぶのか? 彼は全く、冬の、バスを待つ行列にやってきて、あなたにこう話し掛ける男のようだ。「寒いねえ。でも、君の国ではこんなに寒くはないだろうさ。」

彼は英語の補修クラスを提案し、アメリカ式の市民権講座も社会的な同化に有益だ、と言う。確かにアメリカには英語の読めない白人も多いだろう。しかし、イギリスの人種問題にこんな提案は正しくない。Stephen Lawrenceは、彼を殺害した暴漢どもよりも素晴らしい英語を話せただろう。もし市民権を学ぶべき者が居るとしたら、それは子供たちに人種差別的な犯罪を教え込んだ親たちであって、息子の名誉を雄弁に守ったNeville and Doreen Lawrenceではない。

しかし問題の核心は、ブランケットが黒人やアジア系の住民について理解を欠いていることではなく、イギリス人についての彼の余りに単純な考え方である。彼は国籍について、王室や憲法の規定、ヨーロッパとの統合、グローバリゼーションなど、何もかも無視して合意があるかのように話している。許婚の制度がイギリスの文化に異質であるなどと言うのは、イギリスでは、前世紀の六つの王室が外国人とのアレンジされた婚姻で結ばれたことを知らないからだ。新しい移民たちに彼が求めるアイデンティティーは、何世紀もこの国に住む人々が同意できないものだ。

ブランケットは、労働党政府にとっても、機能しない、許しがたい方針を進めている。


Washington Post, Tuesday, February 19, 2002; Page A15

End of an Era

By E. J. Dionne Jr.

Richard Hofstadterは、「金ぴか時代のアメリカ」を次のように描いた。「政治がこれほど経済変化によって支配された時代は他に無かった。この国のすべてが産業企業家たちの手に完璧に握られた。金ぴか時代の産業資本家industrialistsは、英雄の豪胆さととんでもない搾取の才能を併せ持っていた。すなわち、ずる賢く、エネルギッシュで、攻撃的であり、飽くことの無い貪欲さ、強欲、そして威張り散らすような者たちであった。彼らがこの国の富を増やし、成功の機会をつかみ、腐敗を支配し、この時代の音色や色合いを決めた。」

「産業」を「ハイテク」に代えれば、この叙述はそのまま1980年代と90年代の素晴らしい表現ともなる。エンロン・スキャンダルを念頭におくなら、われわれは一つの言葉に注目する。Hofstadterによれば、「金ぴか時代」に続くのは「進歩的時代」である。アメリカ人は、貪欲さ、強欲、尊大さに染まった資本主義に反対し、この国のシステムをもっと理性的なものにした。Hofstadterは、指導者たちの明敏さを、その強欲さと尊大さだけでなく、認めていた。しかし、われわれの先駆者たちが抜け目ない切れ者たちに酷い過ちを見出すようになったように、われわれもそうである。

今まで、ハイテク企業の中身については問題にしてこなかった。儲かっているのであれば、そんなこと知らなくてもよい、と。しかし、質問を出すべきである。資本主義は規制無しには繁栄できない。権力を持つ人々は、政府も巻き込んで、それをどこまでも利用する。誰かが彼らを監視しなければならない。

たとえば、もし汚染されたハンバーガーで多くの人が死んだとしよう。苦情が殺到し、ハンバーガーを買うものはいなくなる。市場はこの会社の株価を暴落させるだろう。しかし、こうして市場が「機能」しても、死んだ人は救えない。市場が企業を処罰する能力を賞賛することが、直ちに、食品や医薬品の規制を廃止することと同じではない。エンロンのケースは、市場が機能するよりも前に、避けられた損害の多いことを示した。

それゆえエンロンは一つの時代の終わりであった。長い間、われわれは、資本主義の根本的対立は所有者と労働者との間の対立であると考えていた。しかしエンロンは、真の対立がインサイダーとアウトサイダーとの間の対立であることを示した。エンロン事件で損害を被ったのは、株主と労働者であった。これは、企業内でも、アメリカ全体でも、新しい政治の誕生を意味する。

「多くの人が401(k)を保有しているから、もはや階級政治は意味をなさないと言われていた。」と、財務省の元職員で民主党の活動家であるDavid Dreyerは述べた。「しかし今では、あまりに多くの人が401(k)を保有しているから、階級政治が重要なのだ。」腐敗とインサイダーの利益優先が、市場も政治も、ともに歪めている。Hofstadterに言わせれば、政治が強力な経済主体に牛耳られている間は、正直な政府による慎重な規則や規制など無視してきたのだ。

経営幹部は株主の利益を追求する、CEOsが次の四半期に利益を増やすために何でもすることが、被雇用者や株主の長期的な利益にもなる、という二つの旧い前提は失われた。エンロン以後、CEOsたちの高所得は株主の利益を見なされないだろう。エンロンが行った損失隠しと株価引き上げは、インサイダーを除いて、誰の利益にもならなかった。

ふんぞり返った資本家たちの時代は終わった。理性的な資本家と責任ある政府が再生しつつある。われわれはそう願っているし、それを要求する。


Washington Post, Wednesday, February 20, 2002; Page A15

This Economic Slowdown Hasn't Hit Home

By Robert J. Samuelson

アメリカ経済の復活を支持する住宅市場の堅調さには驚かされる。住宅は、最後に強気市場となっている。全国不動産協会は、ほとんどの主要都市で住宅価格が上昇している、と報告した。今まで住宅市場は金利の上昇によって落ち込み、不況をもたらしてきた。しかし、今回は異なる。

アメリカ人は将来を楽観しており、新規住宅の購入や、より大きな住宅への住み替えに積極的である。株価の下落は裕福な階層に被害をもたらすが、中産階級の資産は住宅に集中している。そして、この住宅価格を支えている主要な要因は、金利低下である。それにはまた、黒人やヒスパニックの住宅購入を支援するFannie Mae Freddie Macが貢献している。

しかし、それは次のバブルではないか? HSBC Securities のエコノミストIan Morrisによれば、住宅市場の高騰は、部分的に、株式市場のバブル崩壊の結果である。資金は住宅にシフトし、銀行も融資を住宅購入に振り向けている。「日本でも、株式市場のピークは、住宅市場のピークより前にあった。」株価は「198912月にピークを過ぎたが、不動産市場はその後も12ヶ月間上昇した。」

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Far Eastern Economic Review, February 21, 2002

Fight Evil or Win Friends

By Murray Hiebert/WASHINGTON

ブッシュに見るアメリカの立場。日本では経済改革と金融危機の兼ね合いを。韓国では金大中大統領の「陽光政策」と北朝鮮への「悪の枢軸」非難との両立を。そして中国には、経済改革やアジアをめぐる協調関係の維持と、人権などの基本政策に関する懐疑と注文を。結局、ブッシュは微笑して帰るのか、それとも国内向けに硬派のイメージを示すのか?


Financial Times, Saturday Feb 16 2002

Mr Bush goes to Asia

Richard Wolffe

東アジアでも地政学的思考が復活する。ブッシュ氏は、新しい政府の外交政策を「大国」との交渉に集中する、と示した。ロシアと中国、そして程度は劣るがインドも。テロとの戦争はブッシュ政権のアジア重視を促したが、特に中国との関係が重要になった。それは何よりも、「悪の枢軸」を敗退させるために協力を求めることである。一言で言えば、ロシアと中国に北朝鮮への支援を止めさせたいのだ。ブッシュ政権は、あれほど短期間で、北朝鮮との国交を回復したヨーロッパ諸国の態度を「(政府に弾圧された者の)血で染まっている」と非難した。韓国政府による宥和政策の評価も厳しい。まず真実を述べない限り、交渉しても無駄だ、とRiceは言う。ワシントンから見れば、すでに北朝鮮の政府は死んでいる。日本でさえ、テロとの戦争という視点から評価されている。

しかし、これらはアジア諸国の視点とは大きくずれている。もしアメリカが、イラクやイラン、北朝鮮と戦争するとしたら、彼らはどうするのか?


Washington Post, Saturday, February 16, 2002; Page A24

Messages for Asia


International Herald Tribune, Tuesday, February 19, 2002

Help China and Japan to get along 

Eric Teo Chu Cheow

ブッシュ氏が、日本と韓国と中国とをどう扱うかで、この地域の平和と安定性とが影響を受ける。周辺諸国、特に日本が経済停滞を続ける中で、中国はますますアジア地域における国際的な役割を拡大し、影響を強めようとしている。東南アジア諸国と自由貿易協定を結び、次の政権への円滑な政治的移行も確認した。他方、日本は政治システムが経済再生を実現できないままだ。韓国政府の進めた宥和政策は、ブッシュ氏の北朝鮮非難で頓挫した。

アメリカは、中国を日本と同様に世界的な大国としてあらゆる分野で重視し、安定と成長のために役立てるべきである。同時にブッシュ氏は、日本の重要性を再確認し、韓国政府の宥和政策も妨げてはいけない。


Financial Times, Friday Feb 22 2002

Editorial comment: Chinese whispers

中国の指導者は、アメリカ大統領の対応に不満であっただろう。ロシアのプーチンは牧場に招待され、一緒にビジネスの話を持ちかけられた。しかし、中国とアメリカの間には、まだ同意できないことに同意する問題がある。大量破壊兵器の拡散防止、台湾問題、テロとの戦争に協力することとスパイ飛行問題の処理、人権問題。

The Economist, February 9th 2002