今週の要約記事・コメント

9/24-29

IPEの果樹園 2001

ブッシュ大統領の求める「無限の正義作戦」に日本の自衛隊が参加するかどうかで、小泉政権や国会議員たちは奔走しています。むしろ政府は経済改革に邁進し、この期を逃さず、アジアの安全保障問題で議論を深めるよう関係国に呼びかけ、対応を協議してほしいです。しかし920日の朝日放送で、中谷防衛庁長官は「集団的安全保障」を唱え、民主党の官直人氏は「自衛権の行使」によって自衛隊が海外のテロ集団を攻撃すれば良い、と述べました。

アメリカは何より、自爆テロの犯人たちを支援したテロ・ネットワークを追及すべきであり、空港・飛行機の安全確保に努めるべきです。テロリズムに冒された集団を社会から排除し、暴力によって偏った意見を社会に押し付ける行為に何の正当性も与えないような、優れた民主主義を実現することです。しかし、街の至る所に暴力集団がはびこり、企業であれ石油であれ偏った富を独占する個人が賛美され、拳銃や麻薬、SEXが日常的に売買されるような社会で、もし政治的な腐敗や議会の内紛が国民生活を無視して続けば、テロリズムと闘う「正義」も犠牲者の悲しみを利用した政治ショーに変わります。

テロ攻撃がアメリカ社会の道徳的保守派をブッシュ氏の政治基盤として強化した、ということかもしれません。そうであっても、アフガニスタンの戦場にアメリカ人の若者を送る以外に、その他の選択肢を積極的に議論できるはずです。ブッシュ氏のアフガニスタン侵攻準備は、その他の多くの(非軍事的)選択肢を十分議論しない点で、「アメリカらしくない」と思いました。たとえば、

(1) 国際調査団の派遣:アメリカは、イスラム圏の国を含む複数の国からなる調査団をアフガニスタンに派遣し、オサマ・ビン・ラディンの活動内容や関係団体に関する調査・事情聴取などを行う。:イラクや北朝鮮への国際査察は、妨害や非協力に悩まされても、敵対する軍事力を削減できたと思います。報復や華々しい戦果を期待せず、国際監視や経済制裁を議論すべきです。

(2) 対テロ情報収集・諜報活動の整備:テロ活動を防止し、それに関わった者を逮捕・起訴するための情報収集や諜報活動に関するルールを定め、明確な監督の下に行わせる。:日本でも、諜報機関やテロ対策組織を強化する必要があるでしょう。問題は、それが何をしているのか、を明確にチェックすることです。

(3) 第三国への政治亡命:アフガニスタン政府は、今後の政治活動を完全に放棄することを条件に、オサマ・ビン・ラディンを中国などの第三国へ政治亡命させる。:内乱状態の早期終結を求める周辺諸国の圧力によって、多くの独裁者が、アメリカなどの第三国へ亡命しました。そして明確な証拠があれば、彼を国際法廷で裁くべきです。

(4) 新しい国際安全保障体制の合意:国家間の戦争を防ぐのではなく、国際的規模のテロ活動に関する政府間合意を形成し、恒常的な協力機関を設ける。:NHKBS7で軍事評論家の江畑謙介氏は「全く新しい国際安全保障体制」が必要なことを指摘しました。この体制の目的は、国家間の侵略戦争でも、政府批判の抹殺でもない、テロ行為の防止です。

(5) 犠牲者への同情と生活再建・テロ容認社会への浸透と経済援助:400億ドルの特別軍事予算を、むしろ遺族基金として運営してはどうでしょうか?:ドイツが行った犠牲者のための追悼集会と、日本政府が決めた難民救済のための資金援助は、優れた対応でした。

インタビューで、あらゆるオプションを検討している、と述べながらも、パウウェル国務長官は原則だけを繰り返し、作戦行動に関する情報を何も与えませんでした。戦争だから教えられない、です。資本市場やIMFに求められていた「透明性」は、軍事行動の秘密と服従だけが重視される秩序に変わってしまいました。かつては投機的資本移動が世界経済の癌でした。しかし今ではテロリズムが文明社会の癌です。

金融市場の不安を鎮めるために世界中で供給されている短期資金は、浮動的な投機資金となって各国の政治対立や戦闘の一部となるかもしれません。金融的手段をも駆使したテロリストとの戦争、という言葉が投資家たちを不安にするでしょう。アメリカがある国をテロ支援国家だ(あるいは「非協力的だ」)と宣言すれば、難民だけでなく資本も逃避するでしょう。確かに、レッセ・フェーレの時代が終わった、と感じます。そして戦争を手段とした経済管理に、資本がストライキを始めるかもしれません。

Financial Times, Saturday Sept 15 2001

Editorial comment: New rules for a world war

それは、世界規模の、数百億ドルを費やす、かつて無い戦争である。この戦争で中立であることは難しい。しかし、敵は軍事的にわずかな規模しかなく、自爆テロが主な武器だ。

ブッシュ氏が戦争を宣言したのは本気である。議会に400億ドルの追加予算を請求し、NATO第5条の集団的防衛の実施を要求した。5万人の予備役を招集し、2個師団を空輸し、インド洋のアメリカ軍基地に石油を備蓄した。

しかし、この戦争のルールも結果も不明である。国内の事情は理解しやすい。大統領は国民の怒りを満たす言葉を捜し、世界にも訴える。だが彼はもっと多くを語るべきだろう。軍事的な反撃はアメリカ人の死者を出すかもしれない。それは、アメリカ軍がこれまで戦死者を最小限に抑えようとしてきた原則を転換するものだ。テロリストの基地を破壊するには地上軍の投入も必要だが、アメリカ国民はそれを受け入れようとしている。

市民の自由は制限され、国際的な犯人引渡しのルールも無視されるだろう。戦争という言葉を使うことで、アメリカは他国に決断を迫っている。パウウェル国務長官はパキスタンの大統領に「あたかも友人に語るように、そして友人がわれわれの望むものを知るように」語りかけた、という。アメリカのこうした提案を拒否することは難しい。

しかし、イスラム過激派という、つかみどころの無い敵に勝利するには、アメリカは、ロシアも含めて、UN、EU、NATOといった、より大きな権力の支持を確保し続けなければならない。またアラブ世界の反感を買わないよう、中東和平を推進しなければならない。さらに重要なことは、あらゆる軍事行動に関して、アメリカは同盟諸国と広く相談し、注意深い計画を立てねばならない、ということだ。ブッシュ氏は、何が目的で、それをどのように達成するのか、明確にする必要がある。

軍隊やミサイルでアメリカの正義を求めるだけでなく、道徳的に高い地平を示すことが重要だ。


Bloomberg, 09/14 10:20

Revenge Is the Easy Path and the Wrong One

By Tom Vogel

アメリカがその怒りをどう示すかによって、ラテン・アメリカ経済の回復は影響される。メキシコはすでに世界的な景気減速に苦しみ、アルゼンチンとブラジルは完全な金融危機に落ち込む間際にある。

20年以上も軍事体制が続いたこの地域では、アメリカは民主主義的な安定の砦であった。アメリカは、ラテン・アメリカを含む世界中の独裁と政治的抑圧から逃れた人々のための避難所であった。それは投資家にとっても同じである。アメリカ・ドルは世界の準備通貨であったが、それはアメリカが最大の経済規模を持つだけでなく、最も安定した民主主義国の一つであるからだ。何か不安になると、投資家は「質への逃避」としてアメリカ財務省証券に逃げ込んだ。

報復の要求が、火曜日の攻撃の後、すぐに激しくなった。背筋の寒くなる論評もある。イーグルバーガー元国務長官は、「こうした攻撃に対する人々の反応はたった一つである。この事件に直接関わった者でなくても、殺すべきだ」と、CNNに語った。

私は、彼がこのようなことを言うべきではなかった、と思う。ラテン・アメリカの民主主義は完璧から程遠いが、ラテン・アメリカの大統領がイーグルバーガーのようなことを言えば、辞任するしかない、と確信する。この地域の人々には、同様の行動に走った生々しい記憶がある。

昨日、シカゴでは300人ほどの群集がモスクに向かうのを阻止され、モロトフ・カクテル(手製爆弾)がアラブ系アメリカ人のコミュニティー・センターに投げ付けられた。リオ・デ・ジャネイロの新聞は「アメリカ人は復讐を求めている」という見出しを掲げた。

私たちの友人や同僚もまだ見つかっていない。しかし、復讐と自衛は違うものだ。関係者たちは阻止され、処罰されねばならない。アメリカが支持するのは復讐ではなく正義である。われわれは世界に、特のラテン・アメリカに模範を示す必要がある。復讐の時代は終わったのだ。


New York Times, September 14, 2001

Smoking or Non-Smoking?

By THOMAS L. FRIEDMAN

この第三次世界大戦がどのような世界秩序をもたらすのか、まだ分からない。しかし、イスラエルの外相、シモン・ペレスがこんな可能性を示した。すなわち、何十年か前に、喫煙が癌を引き起こすことが分かった。そしてすぐに、人々は喫煙場所と禁煙区域を分けるよう求め始めた。テロリズムは、言ってみれば、現代の癌である。今まで、多くの国がそれを否定し、テロリストをかくまっていたが、この事件によって誰もが認めるだろう。テロは私たちすべてに危害を加える癌である、と。だからすべての国が、テロリズムを支持するか、しないか、決めなければならない。

こうした分割は起きるだろう。しかし、世界を禁煙と喫煙に分けるには、非常に注意して、慎重に行う必要がある。なぜなら、これは文明の衝突ではないからだ。本当の衝突は、イスラム教であれ、キリスト教であれ、ヒンズー教、仏教、ユダヤ教、その他であれ、近代的な進歩的宗派と、中世的な宗派との間に起きている。

リンカーン大統領は、南北戦争の後、南部について「彼らも同じ神に祈っていることを思い出して欲しい」と述べた。われわれが戦うべきなのは、憎しみの神に祈る者たちだけであり、イスラムとの戦争ではない。多くのイスラム教徒たちはわれわれと同じ神に祈っている、と中東問題専門家のStephen P. Cohenは言う。テロリストたちの目標は、アメリカに大規模な報復を行わせて、イスラム教徒として文明間のジハードを始めることなのだ。

自爆テロに走るテロリストたちを爆撃で敗北させることは難しい。彼ら自身の宗教コミュニティーだけが、彼らを真に抑制し、彼らから正当性を奪える。これはイスラム社会の内戦なのだ。われわれは内戦の正しい側を支持しなければならない。それは軍事的にだけでなく、高度で寛容な社会・政治・経済戦略を必要とする。


The Guardian, Saturday September 15, 2001

Economy pays high price for war

Charlotte Denny and Larry Elliott

歴史は、第二次世界大戦がアメリカの不況を終わらせたことを教えている。大量の余剰資源に需要を与えたからである。しかし経済アナリストたちは、ブッシュ氏の戦争が10年に渡る好景気を維持する望みを完全に断つだろう、と恐れている。

戦争は公共心や勤労意欲を高めて、成長を促す場合もある。1945年以降の局地的な戦争と軍事的緊張は、西側経済にプラスであった。軍事支出の増加が、エネルギーの価格上昇やインフレ、消費者心理の悪化よりも、経済を強く刺激した。1991年の湾岸戦争においては、原油価格が1バレル当たり40ドルまで上昇し、消費もストップしたが、迅速な勝利と、グリーンスパン議長がゼロにまで金利を下げたことで、不況を免れた。

現時点で評価はできないが、アメリカの消費者に与えた影響は大きいだろう。FRBのナンバー2であったアラン・ブラインダー、プリンストン大学教授は、アメリカが海図の無い領域に入ったことを認めた。比較できるとしたら、1929年の大恐慌かもしれない。20世紀の世界戦争に比べて、今回の戦争ははるかに限定されたものであろう。しかし、大恐慌が消費者の心理に与えた影響が、アメリカと世界を深刻な不況に投げ込んだ。


Financial Times, Monday Sept 17 2001

This is not a war for armies

Quentin Peel

「われわれは戦争状態にある。」ブッシュ大統領はそう言った。しかし敵は誰か? どうやって敵を叩くのか? 戦争という表現は、勝利か敗北か、を意味する。敵と軍事力で戦うことを意味する。戦争は法による支配を停止させる。しかし、テロリズムに対する戦争は、これと異なっている。

あの攻撃は、一つの重要な点で、世界を転換した。アメリカの脆弱さを思い知らせた点である。ハイ・テク・ミサイルでも、生物・化学兵器でもなく、ナイフを持った狂信者がこれを行った。脅威の質が変わったのではない。エスニック紛争、宗教対立、貧困と惨めさにさらされた個人が小集団を成し、完璧に絶望することから始まる。

火曜日の攻撃に関わった国家を特定できるのか? これは国家によるテロには見えない。国家の支援も、拠点すら必要としないテロ。高度に移動性に富んだ現代では、それはヴァーチュアルな(仮想空間の)テロリズムである。彼らの手下はロンドンにも、ハンブルグにも、フロリダにも住んでいる。支援国家を捜すことは意味が無く、危険である。

クリントン氏と違って、ブッシュ氏は確認していない目標にむやみにミサイルを撃ったりはしない。しかし、どうやって「支援国家を殲滅する」のか? もし本気で行う場合、何千もの将来のテロリストを生み出さないか?

テロリストの集団は、ペンタゴンやワールド・トレード・センターを攻撃したように、アメリカでもヨーロッパでも、アラブでもイスラエルでも、資本主義国でも共産主義国でも襲うだろう。アフガニスタンのタリバンは、悲惨な貧困に苦しむ国の恐るべき政府である。彼らは中世に住んでいる。しかし、アレキサンダー大王以来の大成功を収めた。

テロリズムと闘う短期の手段は保安と諜報である。人間による諜報活動を軽視した、さまざまなハイ・テクに依存したわれわれの防衛体制はその代価を支払わされた。ミサイル防衛網は役に立たない。テロリズムを闘う長期の手段は、テロリズムの根源を断つことしかない。それは、アフガニスタンのような悲惨で絶望的な国を無くすことだ。それはまた、中東における平和を何としても実現することであろう。


The Observer, Sunday September 16, 2001

Blair must say 'don't go mad, George'

Andrew Rawnsley

「戦争:WAR」というのは単純な言葉だ。この惨状と憤慨を表すのに、戦争のようだ、と新聞も政治家も連呼するほかない。当惑し、錯乱した指導者が宣言する戦争とは、傷つき、怒りに燃えた超大国が、その大統領は強力で、戦いに勝利する、と示すためのものである。晴れた空からアメリカに恐怖が舞い降りたときから、戦争が戦いの雄叫びを上げていた。

戦争は、選択を明確にし、表明的には選択肢もはっきりする。民主主義と善の軍隊が、狂信と邪悪の軍隊に、二元論的戦いを挑む。真珠湾との対比が盛んになされる。このような議論は、アングロ・サクソン型民主主義が、確認された敵を撃破する論理的な計画を実行できる、と主張する。

この点で、トニー・ブレアは注意深く自制した演説を議会で行った。彼はテロリストを見事に非難したが、戦争を宣言しなかった。この言葉は、アメリカでの大殺戮や必要とされる高度な反撃を表現するには単純すぎるし、軽すぎた。イギリスは重要な位置に立つ。アメリカのもっとも親しい同盟国として、アメリカが試練に直面すればそれを助けるが、保守党の新指導部のようにシロ手形を切るのではない。

イギリスはヨーロッパで最も旧いワシントンの友人として、冷静に、静かな口調で、報復はむしろマイナスである、とホワイト・ハウスに告げるべきであろう。サッチャー女史は、サダム・フセインとの湾岸戦争に際して、「動揺してはいけない、ジョージ」とブッシュ前大統領を叱った。ブレアがその息子に言うべきことはさらに微妙なものだ。しかし、その核心は「正気を失うな、ジョージ」である。

イギリス政府内にも、アメリカへの本能的な連帯感とともに、傷を負ったプロメテウスの反応を危惧する気持ちがある。国民は復讐に燃え、大統領は存在感を示したがり、テロを防げなかった諜報機関は挽回の可能性を切望する。いいかげんな噂やパニックになった外国人労働者から標的を見出すこともしばしばある。恐怖には恐怖を、野蛮には野蛮を、大量殺戮に対して大量殺戮の報復を求めるアメリカ人の気持ちは激しい。好戦的なアメリカ人たちは全面戦争を求めている。憎悪の海と化した中東にワシントン製のジハードを見舞ってやれ!

ブレア氏は、アメリカが爆撃してから考えるような、短気を起こさなかったこと(少なくとも今のところ)を賞賛した。テロリストと話し合うのは無意味であるが、アメリカの空軍はアフガニスタンを石器時代に戻す攻撃力がある。アメリカはアルジェリアからパキスタンまで、あらゆるテロリスト支援国に天罰を下すことができる。

しかし、外国の多くの無垢な人々に恐怖を与えることで安全が得られるはずが無い。テロリストのネットワークを根絶する試みは、イスラム圏やロシア、中国、そしてヨーロッパの支持と連帯無しには成功しない。アメリカの反撃が世界を憤慨させれば、その強力は即座に崩壊する。

誰もが、世界は二度と同じではない、という。問題は、どう変わるか、だ。野蛮な殺戮の連鎖が将来に待ち受けているかもしれない。核兵器や化学兵器、生物兵器を用いたテロが身近に迫っている。しかし同様に、マンハッタンの灰燼から、より良い世界の可能性も見える。この地球の自由で豊かな少数派は、敵から単に自分たちの民主主義や自由を防衛するだけではない。同じ星に生きる、民主主義も自由もまだ知らないより多くの人々が苦しむ困窮と暴力に、全力で取り組むだろう。


Financial Times, Wednesday Sept 19 2001

Time for action

Martin Wolf

なぜ同時不況が起きつつあるのか? その主な背景としては、2000年の原油価格上昇が長引いたこと。アメリカとヨーロッパで同時に行われた金融引締め。「ニュー・エコノミー」部門、「技術関連」企業の株価見直し。さらに、日本の停滞、ヨーロッパ市場の低調な投資意欲、東アジア輸出部門のアメリカ・ハイテク依存、もある。そして、金融市場のリスク回避志向と新興市場からの撤退。

その結果、世界はますますアメリカ経済に依存するようになっている。この5年間で(市場価格で見た)世界需要の増加の3分の2はアメリカから生じた。アメリカが調整を必要とすることは十分に予想されていた。問題はその時期であった。そして2001年に始まった。

在庫調整と投資の減退から起きた下降局面は、Fedの金利引下げにもかかわらず続くだろう。その理由は、1.企業収益の悪化。2.アナリストたちの非現実的な予想。3.労働生産性の年3%成長という幻想。4.歴史的水準から見た株価の割高調整。5.1990年代の日本を超える、GDP比150%という企業債務。6.2002年前半の家計所得減少予想。7.GDP比7%に達する民間部門の貯蓄不足。これらに加えて、株価下落、失業増加、消費現象、投資減少、のスパイラルが起きている。

アメリカが後退しても、交代は居ない。日本もヨーロッパも、新しいエンジンにはなれない。だからこそ、政策を正しく、協調して行うことが重要である。世界は短期的には信頼を回復し、長期的には内外の金融的不均衡を調整する必要がある。しかし残念だが、こんな政策の微調整はできない。

金利引下げは行えた。しかしヨーロッパはより大きな責任を担うべきだ。日本と同様に、ヨーロッパもシステムの改善が必要だ。財政政策は重要な役割を担うだろう。幸い、アメリカにはその余地がある。われわれはパニックを避けるとともに、油断してもならない。


Los Angeles Times, September 18, 2001

EDITORIAL

Market Cringes, but Stands

アメリカ経済には驚くほどの回復力がある。この100年間に、大恐慌や1970年代の石油危機、1987年の株価暴落、そして1990年代初めの不況を乗り切った。しかし、金融センターの中枢神経に物理的攻撃を加えられたことは無かった。テロリストたちは、ワールド・トレード・センターと一緒にアメリカ資本主義を葬るつもりだった。

彼らはそれに成功しかけた。NYSEは、大恐慌以来、最長の閉鎖を強いられた。しかし19日の株価は、19871019日の下げ幅の3分の1で下落が止まり、最後は若干戻して閉じた。システムは完璧に機能したのだ。

ブッシュ大統領、オニール財務長官、グリーンスパン議長、そして「市場開始後の60分間は何一つ売らない」とCBSで宣言したウォーレン・バフェットのような投資家たちの成果である。しかし、政府と議会は残された疑問に答えねばならない。不況は来るのか? 400億ドルの緊急支出で十分か? 消費者心理は悪化し、失業率も4.9%に達した。第2四半期のGDPは年率0.2%しかない。

航空産業を始め、保険業、ホテル、リゾート、などで落ち込みが激しく、政府は補助金や融資保証を検討している。他方、防衛産業や保安、建設業などでは、需要が増大するだろう。マンハッタン南部の再建には300億ドルが必要である。ブッシュ政権は消費者を励ますことに集中しているが、財政支出によるインフレの心配もある。富裕層への減税を追加するようなことは無い、と政府は議会に約束するべきだ。

むしろ自由貿易や、特にラテン・アメリカの自由貿易圏を励ますのが良いだろう。政府が経済を動かす力は限られているが、アメリカおよび世界市場を浮揚させるチャンスをすべて活用すべきだ。


Financial Times, Thursday Sept 20 2001

A virtual meeting of minds

Jagdish Bhagwati

国際会議の開き方を、真剣に再検討すべきである。今年のIMF・世銀総会は、反グローバリゼーションの抵抗運動を懸念して会期を7日間から2日に短縮した。さらに、テロリストの攻撃があるかもしれない、ということで中止になった。

われわれは、異なった、独自の対立に応じる必要がある。反グローバリゼーションは国際機関や超国家組織を標的にする。こうした国際機関は、戦後、アメリカの進歩的リベラルが理想として築き上げたものである。G8へも、ダヴォスへも、反対派は押し寄せる。世界中のメディアが、退屈な会議と、外の騒乱状態を報道する。棍棒を持った警官の姿や、銃弾に倒れた無防備な若者が写れば、国際機関もグローバリゼーションも急速に支持を失う。

こうしたやり方が根本的に改まらない限り、国際機関が勝利することは無いだろう。改革の要点は、ダイナミックで民主的な社会、開かれた世界経済の価値を守ることである。すなわち

1.会合は、一箇所で集まって決めねばならないような、本当に重要な議題がある場合に限る。:IMF・世銀総会は、今、開かなくても良い。余った経費は、貧しい国で学校を建てるなど、国際機関の本来の目的に役立てるべきだ。

2.会合が必要であれば、反グローバリゼーションの諸集団も、一定の距離(たとえば50マイル)を隔てて、別の会合を開いて良い。

3.街頭デモは禁止してはならないが、暴力行為に走らないような規制は必要だ。:各グループは民主的に代表を選び、例えば、世銀の会合が開かれている本部前で、抗議活動を組織しても良い。しかし誰にも、言論の自由を口実に、静かな劇場内で「火事だ!」と叫ぶ権利は無い。

4.暴動が起きる危険性が高く、真に重要な議題を抱えた国際機関が標的となっていれば、会合を「仮想的な」集会に移すべきである。:この原則は、カタールのドーハで11911日に予定されている、WTO閣僚会議に当てはまる。

ドーハは中東にあり、来賓の安全を十分に保証できない。アメリカが反撃を開始すれば、中東情勢は一気に不安定化する。反グローバリゼーション集団は混乱を増し、ドーハからの航空機は限られているため、災難が起きる恐れがある。そうであれば、WTOの幹部は、主要国政府から承認を受けて、新ラウンドを119日からテレビ会議で始めてはどうか?

それは反グローバリゼーションへの十分な回答にもなる。われわれは、彼らが提案する以上に良い課題を達成するために、前進し続けている、と。


New York Times, September 19, 2001

What to Do

By PAUL KRUGMAN

すべてが変わった? だが、多くのことは同じままだ。特にアメリカの経済政策の苦境は、ますます危険な状態にある。

テロリストの攻撃は予算をめぐる議会の論争を終わらせた。今では誰一人、社会保障費の均衡を求めない。しかし、政府の支出計画では将来の退職者に支払う必要のある余剰を失ってしまうことは、ますます明らかになった。テロリストの攻撃はそれが正しいことを変えたわけではない。それどころか、どのような形であれ、戦争が巨額の支出を必要とする以上、長期的な財政収支はさらに悪化した。債券市場はこの点を見誤っていない。

では、経済を浮揚するために何をなすべきか? 第一に、政府は経済過程を妨げないことだ。長期的な減税案は、以前も間違っていたが、今ではさらに無責任だ。経済に刺激策が必要だ、と思うかもしれないが、それは5年後ではなく、今すぐ必要なのだ。

一時的な減税案も、率直に言って、それが富裕層のポケットに入るだけでは、追加の支出にならないだろう。裕福でない家族に減税すれば、いくらか増えるかもしれない。しかし、減税で問題が解決できるという考え方を捨てるべきだ。

最善の策は、今すぐ大規模な、一時的財政支出を増やすことだ。それは雇用を増やすために使われる。何に使うべきか、は明らかだ。ニュー・ヨークの再建、防衛構想の見直し、空港の保安体制強化、困窮する産業への支援。

不幸にして、議会の指導者たちは全くとんでもない考えを進めている。キャピタル・ゲインに対する恒久的な減税である。その経済効果は不明であるが、明らかに、株式の売りと、相場の下落につながる。人々の資産収入が減るのを一時的に止めるが、長期的には財務省に大きな損失となる。80%の利益が国民の2%に向かうような減税案が、国民に「犠牲や愛国心」を促すはずが無い。

愛国心がかけていると非難されたくないから、こんな提案をご都合主義だと批判するものは少ない。しかし数年を経て、財政が引き締められるときに、われわれの心理的なダメージを利用してこんなことをした政治家たちが、国民の団結など促さなかったと分かるだろう。


The Guardian, Thursday September 20, 2001

The free market tide has turned

Larry Elliott

報復を唱える軍人たちではなく、30年以上も政策を支配した正統派経済学が、世界不況を回避するという要求によって変わったことに注目すべきだ。財政的な刺激策が復活した。市場の自由を制限することも支持されるようになった。新しい敵とは、金融市場の混乱を狙う投機家、テロリズムに資金を与えるタックス・ヘイブン、雇用と成長を阻むデフレ政策である。

1970年代以来、インフレが経済繁栄の新の脅威であるという考えが経済政策を支配した。しかし、過去10年間は、イギリスとアメリカで逆のことが起きた。需要増加が失業を減らし、インフレにつながらなかった。今や中央銀行は至るところでテロリストの与えた損害を緩和し、世界が不況に落ち込むような消費減少を食い止めるために、金利を一斉に引き下げている。国際協調の優先目標は、成長刺激へと変わった。

マネタリストの時代には、規制の無い市場が救世主のように信じられた。政府は民営化と自由化に励み、需要・供給の容赦ない力で資源を再配分するよう、主張された。しかし、アメリカの空港で保安体制を民営化するのが良い考えだろうか? 

地球上のどこでも、テロリストが資金を得るのは容易だ。資本移動には規制が無く、タックス・ヘイブンは西部開拓のフロンティア気質で活動する。それゆえ、政府はマネー・ロンダリングに対する法律を強化し、金融犯罪を取り締まる機関が疑わしい取引の解明を行う権力を与えられるだろう。あるいは、航空産業に市場型の解決を強いるだろうか? ブッシュ氏の答えは、巨額の救済パッケージであり、ケインズ主義の教科書を丸写しにした財政刺激策である。

何よりも金融市場が変わった。悲劇の後、ヘッジ・ファンドは株式市場で「ショート」のポジションを取ることを考えた。これはありふれたことだったが、それに必要な株式を、実際に保有するウォール街の機関投資家から借りることができなかった。こうした行為が投機の狂乱と市場の破滅に導くことを恐れて、機関投資家はヘッジ・ファンドに大幅なプレミアムを求めた。それが月曜日の市場を暴落から救ったのだ。

それは賢明な選択であったが、ウォール街がしたことと、機能しないし、受け入れられないとして破棄されてきたトービン・タックスの提案とを比べて、何が違うのか考えて欲しい。理論的な違いは何も無く、利益を得る者が違うだけだ。ようこそ新しい世界へ!

The Economist, September 8th 2001

このことを説教としてではなく、政策の基礎に据えるべきだ。より良い世界では、豊かな国も貧しい国も、その人が望むなら移住を自由に認めなければならない。移民たちは必ずしも市民と完全に同じ権利を持たないかもしれないが、その多くを認められ、礼儀正しい人々が生活の向上を求めて、しばしば地元の労働者ができないか、しようとしない仕事に就く。こうして彼らは公共の福祉にも貢献する。


ゴールドマン・サックスの強気で悪名高いアビー・ジョセフ・コーエンは、まだ、年末までに年初を超えると予想している。すなわち、S&P500が今の1100から1500に上昇するというのだ。強気を支持する統計も多くあるのだろう。

他方、企業収益は減少し続けており、失業も増加して消費を抑えるだろう。経済成長は、特にヨーロッパやアジアなど、世界中で減速している。日本の製造業の課税前利潤は、4月から6月で、21.2%減少した。日本の株価を評価するのは難しいが、株価収益率はまだ平均で34にも達する。

日本の株価はいつもファンダメンタルズと関係ない変動を示す。9月末に資産を時価評価しなければならない銀行が株の売り手であり、自己資本比率を満たすためにできるだけ株を売りたがっている。外国投資家は今まで日本株を熱心に買ってきた。それは日本の株式が、アメリカやヨーロッパと比べて、より多くバブルを含んでいないと思ったからであるが、国内の売り圧力を利用している面もある。

日本が12年近くもバブル後のデフレを続けていることは、アメリカのバブルがもう終わるだろうと思っている投資家たちに有益な教訓となる。1929年の暴落後も、相場が底を打つまで3年かかった。1965年までの長期の強気相場は、1982年まで底を打たなかった。この16ヶ月下げたアメリカの株価は、まだその始まりでしかない。

投資家たちはまだ株式を信じている。多くのアメリカの機関投資家はポートフォリオの70%を株式に当てている。過去のバブルは、ほとんどの投資家が弱気になっただけでなく、株式を諦めて売り払ったときに終わった。そうなるまでには、なんと多くの苦しみが待っていることか!