今週の要約記事・コメント
5/21-26
IPEの果樹園 2001
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かつて、あるテレビ番組で「日本経済への処方箋は?」と聞かれたフェルドマン氏は、『真実』、と書きました。
上位の者が合意に沿って改革を進めるのが、儒教的な支配の国では常道かもしれません。しかしその場合、上位の者は真実を知り、正しい改革の道を知っていなければなりません。彼は有徳の人であり、この社会の優れた知識や情報が自然と彼に集まり、その決断が公平で、社会への隠れた貢献にも手厚いものであることが、彼に対する強い信頼と反対者の服従を約束するのです。
日本の政治家や経営者は、できるだけ真実に触れない形で、民主主義や資本主義を利用してきました。それは政治的な正統性を維持し、富の増大と分配関係を維持するのに便利な名目や制度を提供してくれたからです。しかし、真実を隠すことで維持される制度は、それを仲介する者に利益の大幅な抜き取りを許します。儒教的な道徳は、それをある程度は抑制し、また、ある程度まで我慢させました。
しかし、真実の無い国で生きる人々が、いつまでも改革に夢を託すはずがありません。もはや少しも道徳的でなくなった制度に対して、非常におとなしく、口下手で、争いを好まない人々は、消費を控え、借り入れや投資を減らして、抵抗したのではないでしょうか。それでも、『真実』を語る政治システムの再生が無ければ、経済の活力と人々の信頼を回復することはできないでしょう。
たとえば、こんな『真実』という大衆娯楽SF小説が書かれるかもしれません。
2014年のある日、老人たちの日本脱出が静かに始まる。カナダやオーストラリアでは日本人コロニーが一定の規模を超え、自己増殖し始める。同時に、金融・流通・建設業の国際ビジネス複合体が、南洋の小島を次々と買収し、現地政府と組んで一連の開発に成功する。2034年、日本の財政危機と通貨危機は深刻化し、アジア人盲流が国内で論争となる。政府は、次第に増加するアジア系住民の人口爆発に対して、産児制限と人頭税の導入を強行する。他方、モンゴロイド至上主義を唱える政党が支持を伸ばし、各地でネオ神国派の叛乱が起きる。2084年、新宿の騒乱を掃討中のアンドロイド暴動鎮圧部隊が、ハッカーによる指令系統の混乱と占拠により、真理省を含む霞ヶ関の官庁街を破壊し始めても、誰もそれを不思議だとか、残念だとは思わない。・・・こうして、オーウェルの予言は100年後の日本で正しかったことが分かるのだ。
しかし、誇張されたディストピアも、現実を超えることは無いでしょう。あたりまえの真実と、それに向き合う人々への支援が必要です。真実を語る者に、もっと勇気と、権力を。彼らが協力して解決を目指す、信頼できる制度を作るべきです。その前に、たとえば首都機能を各地に分散し、必要な情報はインターネット上で公開して、行政を政治家と完全に分離してはどうでしょうか? 行政の透明性と効率性が高まり、信頼を回復できるでしょう。他方、政治システムを改革する、と断言した小泉首相が連発するキャッチ・コピー、国会における資本市場への勧誘、さらには改憲論議や靖国神社参拝宣言といった意気軒昂ぶりには、発想の貧しさを感じます。自民党の改革と景気回復のための新思考に、すべての政治資本を注ぐべきではないのですか?
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Financial Times, Monday May 14 2001
East Asia seeks its own voice
John Thornhill and Edward Luce
ばらばらだったヨーロッパ諸国が経済と政治の統合を目指す共通の基礎を持つなどというのは、かつてなら考えられないことだった。今日、東アジアの諸国が同じ道を目指すのは、一層、難しそうに見える。民族、地域、文化、言語、政治体制、経済システムがはるかに隔たり、歴史的な怨恨と相互の不信があるこの地域で、統合は進むだろうか?
実際、東アジアと言うのは、要するに、単なる地理上の呼び名でしかない。ビルマの軍事的鎖国体制と民主国家の日本が、何を共有すると言うのか? しかし、1997年から98年にアジアを襲った経済危機は、アジア諸国が世界に占める位置を再考するきっかけとなり、IMFや世銀といった国際機関に対する彼らの信頼を打ち壊した。
WTOの機能麻痺やEUとNAFTAの確執は、多くのアジア諸国に多角主義ではなく地域主義が将来重要になる、と思わせた。アジア地域に広がる企業の国際投資やアジア規模の企業拡大が、経済的に地域を結び付けつつある。金融資源も融合して、東アジアは一つの株式市場を持つようになる、と言う者もいる。結果として、域内の貿易自由化など、東アジア諸国の政府はより緊密な協力を目指すだろう。
最近、ハワイで開かれたアジア開発銀行の会議に並行して、13カ国が金融危機を防止するための通貨スワップ協定実施に合意した。「ASEAN+3」が参加したこの協定は、ほとんどの国が変動制を採用している以上、まだチェンマイ・イニシアティブに沿ったわずかな前進でしかない。しかし、この象徴的な意味を軽視してはいけない。それはASEAN諸国と共通の利益を意識し、アジア共通通貨の対話を刺激するものであるからだ。
グローバリゼーションへの協力した取り組みをアジアの視点から目指す、と言うが、チェンマイ・イニシアティブの目標について一致した見解は無い。かつて日本とマレーシアが、アジアの通貨協力を進めて「最後の貸し手」となるアジア通貨基金を提唱したが、アメリカの反対で頓挫した。IMF融資を条件に、二国間でスワップ協定を積み重ねる、という日本の試みは、その穏健な修正版である。しかし、ヨーロッパの経験が示すところでは、為替レートを含む協定が進めば、より正式なルールと協力関係が求められるだろう。
13カ国の外貨準備合計額7000億ドルに比べれば、合意された10億ドルの中央銀行間支援はほんの破片である。しかし、これが中央銀行間協力の市場に対する示唆となる。さらに、日本はそれ以上の協定を次々と準備している。
アジアは共通通貨を必要としているのか? ユーロの生みの親であるロバート・マンデルは、Yes、と答える。問題はその形がどうなるか、である。ADB研究所の吉冨勝は、1997年の危機を再現しないために、アジアは「最後の貸し手」を作るべきだ、と主張する。彼は論文で、IMFの不必要に過酷な融資条件が危機を長引かせた、と書いた。アジア通貨基金があれば、より迅速に資本を供給できただろう、と。それはマレーシア政府を喜ばせる。
今はまだ世界金融システムの範囲内で穏健な通貨協力を進めている。しかし、将来は違う。
Financial Times, Monday May 14 2001
Japan's history of oversight
Ronald Dore
先週の施政方針演説で、小泉純一新首相は25分で37回も「改革」という言葉を使った。それはしばしば「構造改革」として言及された。日本の歴史で、封建制度の下の200年間に、「改革」が大きな反響を呼んだ時期は3度あった。1720年代、1790年代、そして1840年代である。それらはいずれも儒教的な意味合いが込められていた。腐敗した日本を立ち直らせるには、緊縮と苦痛を耐えて基本に返らねばならない、と。
特に関係があると思うのは、1840年代の老中・水野忠邦が行った改革である。それは小泉氏が唱えているような規制緩和と激しい競争を促すものであった。すべての商人組合を廃止し、競争によって効率性を高めることで、商人や職人が武士をだませないようにして、価格の引き下げを図ったのだ。しかし、信頼関係を破壊し、商人の信用組織を混乱させて、経済は機能しなくなり、生産が落ち込んだ。物価は上昇し、侍たちの暮らしはさらに苦しくなった。こうして短期間で水野は失脚し、商人組合は復活した。
小泉氏の供給サイドの再編・活性化策は、二番煎じと言うより、むしろ悲劇的な近視眼のようである。要するに、日本の問題とは需要が不足していることなのに、それが分かっていない。債権を放棄し、破産を促し、失業を増やして、さらに土地の価格を下落させ、それを担保としてしか借金できない零細企業を苦しめることは、問題をますます悪化させるかもしれない。生産システムへの無知、無関心が水野を失敗させたのだが、小泉氏の演説も明らかにそうだ。「製造業」という言葉は一度も使われず、日本経済の心臓である偉大な製造企業に何ら言及しなかった。
日本人の自信や誇りを呼び覚ますため、日本企業のアメリカにおける特許取得や、輸出業績を見ることなく、小泉氏は市場で儲ける少数の日本人や外国人に呼びかけた。それは水野が国民のたった5%でしかない侍の暮らしにしか関心がなかったのと同じだ。税金を使って銀行の不良債権を処理しても、銀行が喜ぶだけである。しかも銀行部門は製造業より30%も高い賃金、80%も多いボーナスを取っている。
小泉氏の進める改革は、年金や個人貯蓄のますます多くの部分を貯蓄機関ではなく直接に市場へ向けるだろう。金融資産の売買が非常に投機的になって、業者にたっぷり手数料を稼がせる。また彼は郵便貯金を民営化することに大変な熱意を傾ける。日本最大の銀行を倍以上も上回る個人貯蓄が官僚の手に握られていることは、彼の怒りに火を付ける。小泉氏の仲間は、「世界金融の株式化」を信奉する。
竹中平蔵経済担当大臣は、資本を効率よく配分する最善の手段が株式市場だと確信しており、受身の貯蓄者を活動的な投資家に変え、学校でもリスクとリターン(投資の楽しみ)を教えるように提言する。彼の具体的な提案の一つに、銀行の株式保有に上限を設けて、株式の持ち合いを解消させ、企業を従業員の共同体ではなく、乗っ取りの対象として、企業買収文化を日本に普及させる、というのがある。
しかし、短期的に小泉政権がもっとも悪影響を示すとしたら、それは年金制度を解体して消費者をますます不安にすることだろう。すでに2年前に年金制度は削減された。小泉氏の勝利は、日本人の貯蓄を株式市場に流し込もうとする者たちの勝利であった。
Financial Times, Monday May 14 2001
How to lift the barriers to growth
Mike Moore(director-general of the WTO)
世界のもっとも貧しい国が経済的に辺境化される“marginalisation”を防ぐには、できるだけ広範で包括的な貿易交渉を開始するよう、11月のカタールで開かれるWTOの理事会で決める必要がある。工業製品の輸出は1990年代に年率5.6%で増えたが、LDCsの伸びは3.6%であった。その結果、LDCsの輸出シェアは減っている(1999年に0.4%)。
WTOのような国際機関は、貧しい諸国により大きな輸出機会を与えるだけでなく、技術的な支援や、彼らがWTOの規則に従えるような弾力性を与える。もちろん、LDCsの抱える問題は深刻で、貿易だけでは解決できない。特に、健全なマクロ政策と確かなインフラ、債務の削減や、良い統治、が重要である。学校や病院ではなく武器に対して支出するための巨額の財政赤字と対外債務を抱える国が、豊かな諸国の市場に参加できても、利益は少ない。
貿易は重要な支援策であるにもかかわらず、豊かな国がLDCsに対する関税は、特に農産物で、まだ非常に高い。OECD諸国の農業補助金は1999年に3610億ドルもあったが、それはサハラ以南のアフリカ諸国全部のGDPより大きい。豊かな国が農産物に関する関税を下げ、補助金を削減することで、LDCsは現在の開発援助の3倍以上を農産物輸出で得られるだろう。
ノルウェーとニュー・ジーランドは、LDCの輸出品に対する関税をすべて削減することに同意した。カナダ、アメリカ、EU、日本も、LDCsの苦境に対応策を示した。しかし、衣類や靴といった製造品の分野で、さまざまな規制が残されている。また加工度にしたがって関税率が高くなる制度は、LDCsの生産多様化や工業化を妨げている。そして、セーフ・ガードや商品規格、アンチ・ダンピングといった非関税障壁がある。
LDCsは、ウルグアイ・ラウンドの合意を実施するにも、制度や人材、資金面で能力が不足している。それにもかかわらず、さらに次の交渉を急ぐべきではない、と言う批判もある。しかし、バランスの取れた交渉だけが、より公平な貿易システムを作れるのである。
政府、国際機関、市民団体の集まったブラッセル会議で、われわれは国際制度推進局an Integrated Framework programmeを提唱した。それは、重要な開発機関が貿易を優先し、その一貫した支援を協力して行えるようにする。そしてもっとも辺境化された人々に利益を保証する。市場アクセスの改善は重要であるが、インフラと能力がともなわなければ、多くの政府はその機会を利用できないからである。
05/13 02:55
Japan Swings 180 Degrees From Keynesian Policies
By David DeRosa
私が驚いたのは、小泉内閣の新しい財務大臣が、公共事業の支出を抑制したい、と述べたときである。日本の過去の政権は、いわゆる補正予算を用いて、経済成長を促す大規模支出計画を追及してきた。それこそ、ケインズ経済学のチャンピオンであった(ただし減税策は嫌ったが)。ミルトン・フリードマンは、ケインズの公共政策を失墜させる上で誰よりも貢献したが、完全雇用を口実に財政支出を増やすケインズの主張こそが政治家を非常に喜ばすのだ、と指摘した。
ケインズの教えに加えて、クリントン政権は日本政府がさらに財政赤字を増やすように、強制とは言わないまでも、説得しつづけた。そして、日本はどうなったか? 莫大な債務の累積である。1992年から98年までの6度の景気刺激策で、成長への兆しも無いまま、76兆3000億円(6230億ドル)が支出されたのだ。それは今や、自民党の支持者が特に多い建設業界を助けるためでしかなかった、と責められている。すなわち、逆買収、である。政治家たちは彼らへの投票の報酬として公共工事の発注を行った。
それゆえ、小泉政権がこれを減らすと言うのは驚きである。他方で、ブッシュ政権は日本のために新しい支出計画を練ってくれている。ブッシュ政権は日本との関係を重視し、イギリスとの「特別な関係」に匹敵する、と大いに賞賛した。そして、アメリカは日本が憲法を改正し、地域の安全保障に軍事的な責任を完全な形で分担することを望んだのだ。
そのような考えは中国政府を激怒させるに違いない。しかしそれとは別に、日本の再軍備は莫大な政府支出!が必要になる。再軍備を否定しない小泉首相は、ケインズの亡霊に頼るまでも無く、こうして新しい公共支出に向かうことができる。
New York Times, May 13, 2001
LIBERTIES: Space Cowboys Inc.
By MAUREEN DOWD
新しいSF未来スリラー、宇宙ブラック・コメディー版“ブレード・ランナー”、“ギャラクシー・クエスト”、“フェイル・セイフ”、“オン・ザ・ビーチ”風のフィルム・ノワール、というアイデアを私は得た。それは、セックス抜きの形で、ブッシュ政権が示してくれた。
時は2007年。“ブッシュ・ランナー”もしくは“How I Learned to Stop Worrying and Love the Shield”が、Oil Rig Earthの風景の中に登場する。それは荒涼とした工業地帯、もはや太陽の輝きは無く、火を吹く石油精製工場の乱立する終末世界である。レーガンのレプリカンとアニモイドたちが働いている(石油化学の合成食糧を食べる、分子生物学が合成した生き物たちである)。
大統領の第一期の公約「吸い込めない大気! 飲めない水! 食べられない食品! 危険なガス!」が目覚しい成功を遂げて、地球はアンドロイドたちだけが住む、穴だらけの星になった。ホワイト・ハウスは地球外に脱出し、円形のカプセルに包まれたthe U.S.S. Robert Borkとして、木星の第三衛星イオを回っている。政府は銀河系間・野生生物避難所にイオの採掘許可に対する支払いをしたところである。
ミサイル迎撃ミサイル、衛星攻撃用衛星、スパイ・ロケットなど、役に立たない防衛システムを、国防長官のDr. Strangerumは何でも宇宙に廃棄している。彼はディック艦長と、この球体衛星議会のラウンジを兼ねた戦争司令室で、ウィスキーを飲みながら宇宙の運命をもてあそんでいる。
「火星を見ろよ。共産主義者Redsなどいない。中国の宇宙ステーションから極秘報告が入ったが、中国人たちは共産主義仲間の北朝鮮が核ミサイルを持っているとアメリカに思い込ませて、アメリカ人たちをスター・ウォーズ計画で消耗させてやった、と自慢している。ばかな奴らだ! そんなことを仕組んだのは実はロシア人だが、われわれの方こそ北朝鮮をだましてやったのだ。われわれが北朝鮮の核ミサイルを信じたと思わせて、北朝鮮が中国をだましてそれが成功したかのように思い込ませたのだ。ヘ、ヘ! こうしてわれわれは議会から600億兆ドルも余分に軍事予算を騙し取ったというわけさ。」
「もっとでかい話をしようぜ、ディック」と、Dr. Strangerumはさらに話しつづけた。「私は銀河系ミサイル防衛構想を持っている。われわれは<ならず者の銀河系rogue galaxy>から奇襲攻撃を受けても自分たちを守れなければならない。TRW社もロッキード社もゼネラル・ダイナミックス社もわれわれの仲間だ。奴らは天の川the Milky Way全体を取り囲む特大のレーザー網を作るために、衛星ウラヌスに統合本社を作った。」
「民主党員たちがまだ木にしがみつく戦術を採ると思うのか? 一本も木が無いのに! 冥王星のゲッパートが石油企業に対して減税同盟を主張したり、金星のヨーロッパ人どもがまたも女々しい銀河系温暖化防止条約でわれわれを縛ろうとするってか? 原始人たちや、自由恋愛ヒッピーどもが、宇宙で鉱山を作るな、と喚いているだけさ。」
遠くの星で、幼い弟は大きなテレスコープを見ていた。そして兄に尋ねた。「あの灰色の飴玉の上にある黒い点は何?」
「アラスカだよ。」
Washington Post, Tuesday, May 15, 2001
Brazil's 'Destiny': An Obstacle to Free Trade?
By Henry Kissinger(a former secretary of state)
キッシンジャー元国務長官は、ブラジルがアメリカとは独自にラテン・アメリカ外交を展開する歴史と能力を持っている、と政府に警告する。さらに、EUがブラジルを通じて,ラテン・アメリカ市場を狙っている、と。
彼が支持するのは、ブラジルをラテン・アメリカ市場の盟主として、FTAAに積極的に取り込む、という戦略です。ラテン・アメリカではブラジルを、「特別な関係」として、アメリカの世界戦略におけるLA地域の特権的地位に就けるのが良い。「そのためにはブラジルとの対話を政府の最高レベルに引き上げ、大国として意識し始めた国の自尊心と威厳を傷付けないよう細心の注意を払うべきだ。・・・ブラジルとの砂糖・柑橘類・鉄鋼の貿易摩擦に関しても、解決に向けて政府が動くべきだろう。」
「われわれはブラジルと対立してはならず、二国間関係と地域交渉とを融合させなければならない。アメリカは、FTAAと対立しないメルコスールを促し、ブラジルに協調を呼びかけるのだ。この新たな特別な関係において、ブラジルはそれに値する重要性と資格を有する。」
Financial Times, Thursday May 17 2001
Coffee's bitter taste
Sergio Amaral(president of the Association of Coffee Producing Countries
/Brazilian ambassador in London)
コーヒーは、世界市場の不均等性と、価格の下落や地域的な貧困の持続を示す象徴である。今日、ロンドンやニュー・ヨークで飲む一杯のコーヒーは3ドル程度であるが、それはアフリカ諸国の小規模なコーヒー農家が一週間働いて得られる純収入に等しい。
コーヒー価格が20年来の安値にある理由は、第一に、1989年の国際コーヒー協定崩壊が自由化をもたらしたこと。第二に、コーヒー・ボード(政府買い付け)が民営化され、売買や加工で少数の多国籍企業による所有が強まったこと。第三に、生産性の上昇と金融危機による通貨価値の下落。最後に、多くの国でコーヒー生産が増大し、新規参入国も増えたこと、である。その結果、コーヒーの供給は毎年3.6%で増加したが、消費はたった1.5%しか増加しなかった。1997年から200年に、コーヒー価格はポンド当り134セントから50セントに下落した。
同時に、コーヒー生産国は消費国の再輸出に苦しんでいる。昨年、アメリカは2450万袋を輸入し、240万袋を再輸出した。そのうちの半分以上が加工したコーヒーであった。EUも4600万袋を輸入し、1300万袋を再輸出している。1970年代にアメリカはインスタント・コーヒーの輸入に非関税障壁を設け、EUは関税を9%に上げた。これはまさに輸入代替政策である。
利潤の分配も不公平である。Oxfamによれば、スーパーにおけるコーヒー小売価格の20%しか農民は得ていない、と言うが、場合によっては6%に落ちる。これに対して、消費国のコーヒー加工業者は約30%の利潤を上げるし、インスタント・コーヒーではネスレ社が世界市場の半分を支配している。
簡単な答えは無い。供給削減は、コーヒー輸出が貿易全体の70%を占めるいくつかの貧しい国をますます苦しめる。2000万のコーヒー農民を失業と貧困に向かわせる。長期的には、コーヒー生産国が産業構造を多様化すべきである。しかし、一日当り10億ドルにも及ぶ工業諸国の農産物補助金が、オレンジ・ジュースや砂糖、食用油、肉などの農産物市場を閉ざしている。加工度を高めることも、輸入国の不適切な累進的関税制度が妨げる。
消費国と生産国との協力が必要である。ロシアや中国のような新市場の消費を促し、市場の浮動性を抑える金融手段を開発し、コーヒーに品質や社会環境を改善する。そして、さらに公正な貿易を積極的に試みるのである。グローバリゼーションへの最善の反応は、貧しい生産者によりバランスの取れた機会を与えることである。世界はより大きな連帯を必要としている。
New York Times, May 17, 2001
Economic Scene: Wealth Depends on How Open Nations Are to Trade
By VIRGINIA POSTREL
ブッシュ大統領は、自由貿易の推進を政治的・経済的進歩のための道徳的義務であると主張した。経済学者は、アダムスミス以来、自由貿易が全ての者を豊かにする、と論じてきた。ただし、彼ら自身がそれを禁止しない限り。
二人の経済学者(イリノイ大学のStephen L. Parente とミネソタ大学のEdward C. Prescott)が、『豊かさへの障害』という本で、「より生産的な技術や効率的な労働を妨げる障壁を設ける国は、知識を効果的に利用できない。」「貧しい国では、現状維持から利益を得る特定のグループが法律を使って変化を妨げている」と述べた。自由貿易の下で残された貧富の格差は、たとえ貯蓄率や教育の差を考慮しても説明できない。
この研究は、自由貿易に反対する運動が逆立ちしている、と考える。多国籍企業は、貧しい国が必要とする生産技術の移転を容易にしている。他方、民主的として賞賛される政治権力は、豊かさへの障害となり、貧困の最大の源泉なのだ。
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The Economist, May 5th 2001
Bush’s nuclear umbrella
Arms Control: George Bush’s revolution
アメリカのブッシュ大統領が公表した武器管理計画を過小評価してはならない。相互確証破壊(MAD)による米ソの核ミサイル・バランスは、冷戦時代の兵器管理システムであったが、ブッシュ氏はこれを廃棄しようとしている。それは左派が要求してきた兵器削減ではなく、右派の思想である。
ブッシュ氏は、弾道ミサイル禁止条約(ABM)よりも一方的なミサイル削減を選択し、ロシアや中国に対抗するためではなく、アメリカとその同盟諸国をイラク、イラン、北朝鮮などのミサイル攻撃から守るために新しい防衛システムを築く、と言う。しかし多くの兵器管理専門家たちは、ブッシュ氏があたかも世界に核ミサイルをぶちまけたかのように、住み慣れた条約や協定の世界から離れたがらない。しかし、冷戦終結後10年を経て、大きく変化した世界で、アメリカが世界の安全保障と安定性に関する根本的な見直しを求めるのは正しいだろう。
しかし、いかなる革命にも計り知れない不確実性がともなう。第一に、ミサイル防衛システムは機能するのか? 第二に、ブッシュ氏はどのような防衛システムを追及するのか? 陸上、海上、空中、さらに宇宙、あるいはその組み合わせをどうするか。最後に、それは将来の兵器削減や核不拡散体制と矛盾しないか? すなわち、新たな軍拡競争を引き起こさないだろうか?
ブッシュ政権のラムズフェルド防衛長官は、宇宙の軍拡競争は不可避である、と断言した。アメリカは、宇宙からの、宇宙における、宇宙への軍事力を築くべきだ、と。この発言をロシアや中国が見落とすことなどありえない。ブッシュ氏の戦略は、制裁や交渉、取引を用いるが、その細部は曖昧であり、各国の疑惑を招くだろう。
Outsourcing to India; Back office to the world
インドにはバック・オフィス産業が栄えつつある。マッキンゼー社のデリー支社パートナーであるMarc Vollenweider氏は、スイス人であるが、友人とEvalue-serve社を立ち上げた。この会社は、ヨーロッパや北アメリカの顧客企業からさまざまなビジネス・サービスを、彼らの国で行うよりも安く迅速に請け負う。
第一世界の企業は、その「中核的な競争力」にとって重要でない部分に、多くの高価で不可欠な仕事を抱えている、とVollenweider氏は指摘する。こうした仕事は英語を話す教養のある労働力さえあればどこでもできるのであり、インドには第一世界の賃金のほんの一部で雇用できるこうした労働力があふれている。もし企業が製造工程の多くを中国などへ移転するのであれば、同様に、こうした仕事を電子的にインドへ送れば良いだろう。彼の計算では、典型的な西側の銀行がその支出の17〜24%を占める仕事を外部に委託できるし、それによってコストを6〜9%も削減できる。それは彼らの利潤を倍増させるだろう。
政府の電子およびコンピューター・ソフトウェア輸出促進協会は、この業界のアメリカ向け輸出が2000年の2億6400万ドルから、2005年には40億ドルに増加すると予想している。企業はコスト面だけでなく、サービスの質を高めて競争している。しかし、ここにも古くからの問題がある。あまりに多くの企業が、余りに急速に参入することである。たとえばアメリカの医療書類転写サービスは200のインド企業に委託されているが、6000人分の仕事に1000人が雇用されている。価格競争は激しくなり、転写価格は12セントから3セントに暴落し、多くの企業が倒産した。しかし、ソフトウェア産業では、インドの独立企業がさらに高度な技術に移行することで、競争や不況の波から逃れようとしている。
健康関連サービスではプライヴァシーが重要である。Spectramind社のデリー支社では、電力や電話線が中断してもバック・アップできるシステムを持つ。建物の防音タイルをアメリカから輸入し、労働者は仕事中にも輸血できるように名札に血液型を示す。また、完全な連続性を追及する電話接続業者は、スタッフにアメリカ風の名前をつけ、アメリカ人のように話し、アメリカ風のジョークが言えるように練習させている。
アメリカのバック・オフィスは、顧客サービスの点で、スタッフの転職と質の悪化に苦しんでいる。ホワイト・カラーの仕事は、誰の予想をも越えて、急速にインドへ移転されるだろう。
Huff, puff and pay
IMFの新しいボス、ホルスト・ケーラーは、焦点を絞り、優先順位を明確にして、より少ないが効果的な融資により危機管理と防止を行いたい、と考える。しかしトルコやアルゼンチンを見る限り、これは成功していない。融資条件に関しては、マクロ経済の安定化に焦点を絞って、細かい点では債務国が政治的に決定できる余地を残す、という。IIEのIMFウォッチャーであるモリス・ゴールドスタインも融資条件が増えすぎたことを批判してきた。最近のセミナーでIMFのあるスタッフは、貧困解消の条件に疑問を示した。資金洗浄や投機、債務国政府の腐敗や経済改革の持続にまで責任を負うのは、各国政府の問題に立ち入り過ぎるだろう。
問題は、IMFの政策を支配する豊かな諸国が個別の融資に特別な条件をつけることである。彼らはIMFを自国の政策手段とみなしがちである。特にアメリカは、IMFの運営に実質的な拒否権を持っている。
ブッシュ政権は巨額の救済融資に批判的であったが、トルコとアルゼンチンに関しては、さんざん怒鳴ったり持ち上げたりした後で、融資を強く支持した。これで、少なくとも今は、IMFがアメリカに貸しを作った。ケーラーはIMFを効果的にするという熱意の程を示さねばならない。