今週の要約記事・コメント

5/7-12

IPEの果樹園 2001

ゴールデン・ウィークは道路が渋滞する、と分かっていても、休日の子供たちにしてやれることは、大して何もありません。せめて早起きして車を走らせ、どこかに残された(?)海辺へ向かい、潮干狩りにでも行ってみようか。

しかし、家を出たのは7時半を過ぎてしまいました。ラジオから流れるのは道路情報。名神高速道路。・・・30キロの渋滞。西名阪・・・渋滞中。ローソンで子供たちの朝ご飯を買い、ガソリン・スタンドで給油してから、車は(平たくなったマンションのような?)住宅地を抜けて、(ゴジラが蹴散らしたような?)家屋と田畑との雑然と入り混じる地帯をくねくね走り抜けます。こうして漸く高速道路の入り口にたどり着きました。

何度も何度も、料金所のたびに私はハイウェイ・カードを差し出します。欧米の高速道路がほとんど無料で、しかも良いサービスを提供してくれたことを思い出します。どこかの神々が子供たちを愛してくれたせいか、料金所以外は特に渋滞なし!でした。ただし、曇り空はそのままです。

本格的な渋滞は海南ICの手前から始まって、結局、そのまま終わりませんでした。オートマチックの車が、時折、のろのろと数メートル進むだけです。山の向こうまで、見渡す限り自動車が止まっています。その中で、きっとみんな「渋滞の列の先頭には何があるのか」と愚痴ったり、口論したりしているのでしょう。「だから、ゴールデン・ウィークに車で出るのは止めとけって言ったのに。」多分、3人にひとりがそう言いました。そして眠っている子供以外は、15分おきに「いつ着くの?」と尋ねたでしょう。

悪魔と取引したファウストは、最後に都市や自然の改造に乗り出しました。ブレード・ランナーの主人公は、ラスト・シーンで、アンドロイドの恋人といっしょに荒野に向かって自動車を走らせました。社会的な、あるいは政治的な貧しさ、を感じます。自動車も、高速道路も、ラジオの与えてくれる情報も、そして多分、私の持っていないナビゲーター・システムも、私たちのゴールデン・ウィークを救済してはくれません。

白浜行きの高速道路入り口に向けて、長い渋滞の列がまったく進まないのを理解して、私たちは海南東ICで降りました。そして、海辺と潮干狩りをあきらめました。

そこには人工の埋立地「和歌山マリーナ・シティ」があり、ガイド・ブックによれば、黒潮市場やバーベキュー、温泉(!)、海釣り公園、などがあるからです。ここまで来て遊園地に入る気もせず、私たちは焼き加減のわからないバーベキューで悪戦苦闘し、混み合った海釣り公園を見に行って、決して楽しめるほど釣れていないことを示す家族たちの表情を確かめました。なぜか、温泉!温泉!とはしゃぐ元気な末っ子を連れてお風呂に来れみれば、すでに人で一杯です。とても子供たちとゆっくり遊べるようには思えません。お土産に貝殻の飾りを見つけて捜しているときだけ、少しは、子供たちも喜んでくれた・・・かもしれません。

これ以上ジタバタせずに、帰ることにしました。行楽地の評価を、ガイド・ブックではなく、利用者の投票でインターネット上に示して欲しい、と思いました。「あなたはここにもう一度来たいですか?」

ふと思いついて、近くの紀三井寺へ寄ってみることにしました。入場料は50円。1200年?の歴史を感じさせる石積みに感心し、緑に包まれた200数十段の石段を登りました。そして、蟹を探して喜ぶ子供たちといっしょに、お寺をちょっと散歩します。参拝者は少なく、甘酒を売る店が一つあるだけ。お札の張られた大きな柱や、線香の煙ですっかり黒くなった本堂の奥に、なにやら本尊が祭ってあります。脚の悪い老人たちが、一日かけてお参りに登ってくるのでしょう。

もしこの国の銀行や金融機関の40%が無くなるとしたら、この雑然と広がる住宅の40%も無くなるように、住み替えに補助金を与え、土地の細分化利用に課税してはどうか? 美しい海岸線や森はどこにあるのか? 輸送網の整備や雇用機会の分散化を統一した基準で進めて欲しい、などとつぶやきつつ、私はくたくたになって帰りの高速道路を運転していました。

「あなたはこの国のゴールデン・ウィークを楽しめましたか?」

Financial Times, Monday Apr 30 2001

Counting the cost of keeping the kingdom united

Martin Wolf

イングランドは、スコットランドを英連邦(UK)に留めるために、いくら支払うべきか? 財政的移転や議席数について、両国の関係が修正を必要とすることは明らかだ。スコットランド人にとって十分に恩恵があり、イングランド人にとって贅沢だと思えないような取引とは何であるか?

イングランド、スコットランド、ウェールズからなるグレイト・ブリテンの人口の8.8%を占めるスコットランドが、地方に配分された財政支出の10.2%を得ている。スコットランドの一人当り支出は、一人当りGDPがUK平均の96.5%でしかないのに、23%も多い。この追加の財政支出がGDPの約8%を占める。事実上、スコットランド人はイギリスの(低い)税金を支払って、北ヨーロッパ並みの(高い)財政支出を受けている。

この取り決めは公平でも合理的でもない。それは悪名高いバーネット計算式により、暫定的にだけ、試みられたものである。その追加的な支出配分は人口のみに拠っている。スコットランドは人口が分散しているから財政支出が拠り多く必要だ、というが、計算式には反映されていない。

スコットランドはまた、より多くの国会議員を出している。現在の人口を考えれば、スコットランドに与えられる議席は72議席ではなく、57議席で良いはずである。現在の取り決めでは、スコットランドの議員はスコットランドの内政問題に投票できない。彼らはイングランドやUK全体の問題についてだけ投票できる。労働党政府は、スコットランドの議員の多くに支持されて、イングランドの支配権を握った。

税金と代表という、二つの重要問題について、前者の方が解決しやすいだろう。歳入は、各地の必要に関する統一的な評価にしたがって、配分されるべきである。それゆえ合意は、少なくとも10年ごとに見直す必要がある。その場合、スコットランドは支出をまかなう課税変更をより大きく認められるだろう。

議席の問題では、二国(あるいはウェールズと北アイルランドを含む四カ国)を規制する容易な取り決めなどない。イギリスが大きすぎるので、連邦案は機能しない。各国をイギリスの地方政府と同じように扱うことは、主権と矛盾する。

もしスコットランドの議席が多すぎる点を改めるならば、スコットランドが連邦を離脱するかもしれない。何がイギリス人か、というアイデンティティーの問題に答えるのは難しい。しかし、その困難を回避するコストはそれほど大きくないだろう。イングランドの財政支出をむしろウェールズやスコットランドと同じ水準に引き上げるか、スコットランドの議員にイングランドの問題に対する投票を認めることも考えられる。

現在の財政移転と議席配分は維持できない。連邦を維持するために、ある程度のコストは支払うべきだ。しかし、スコットランド人がどのような修正にも応じない、と言うのなら、離脱を認めることが最善の策である。


Bloomberg 04/30

Gimme a Latte, Dude; Globalization Can Wait

By William Pesek Jr.

「私はアメリカ企業に抵抗するためにここにいる。アメリカ企業は世界中で貧困を創り出している。」

「でもあなたはそのならず者を支援しているように見えますね。」と、私は彼の履いているナイキのシューズを指差した。

「恵まれない者たちのために発言することが重要なのだ。」と彼は言う。

「厳密に言って、それは誰のことですか?」と私は尋ねた。

「そうだな。インドや中国やアフリカの人々だよ。グローバリゼーションによって痛めつけられている。」

「あなたは自分でその土地に行き、人々と話し合ったことがありますか?」

「いや、しかし私は本で読んだ。私にはわかっているのだ。」そう言うと、彼は背を向けた。

利口で、熱狂的な、理想主義に偏り、自らの善意を疑わない、こうした活動家たちが、反グローバリゼーション運動への私の疑念を強める。確かに、世界には極端な貧富の格差がある。利潤の追求が環境への負担を考えていないことに私も不安を感じる。途方も無い利益を上げるボストンのCEOたちは不愉快だ。しかし、ケベックやプラハ、ワシントンで暴れる反グローバリゼーション運動には賛成できない。アフリカや中国のいなかで、あるいはボンベイで、彼らが代表しているはずの人々に尋ねてみればよい。自由貿易を止めて欲しいですか? と。

グローバリゼーションが進みすぎたことではなく、それが足りないことが問題である。世界経済にもっとも深く結びついた国が、もっとも豊かであるだけでなく、同時に、もっとも自由な国でもある。反グローバリゼーション運動は、まったくばらばらで、一貫した主張が無く、むしろ第三世界の生活水準向上を妨げている。

携帯電話を持った酔っ払いの多くの若者たちが不満なのは分かる。しかし、その不満をどうやって示すかについて、もう少し考えてみてはどうか。

(コメント)

反グローバリゼーション運動が目指すのは、貧困の解消というよりも、権力やヒエラルキーの解消です。確かに資本主義は技術革新を利用し、積極的にリスクを取って革新に資源を注ぎ込む点で、もっともダイナミックな社会制度かもしれません。しかし、富を増やすことが全てではないように、市場による社会の激しい変化に不満を感じながら、それが十分に政治や制度として反映されていない、という不満は決してなくなりません。

なぜアメリカ企業や銀行ばかりが世界の富を支配できるのか? なぜ貧しい人々も公平に意見を述べ、参加するチャンスが保証されていないのか? なぜ子供たちは、生まれた国が違うだけで、これほど不幸を背負わされるのか? 大企業や自由貿易を拡大することに精出す指導者たちは、本当に自分たちの問いかけに答える気があるのか?

グローバリゼーションは、単なる自由貿易論ではありません。それは社会的・政治的な人々の公平性、正義に関する、ある種の?信頼の問題です。この不完全な政治的世界で、グローバリゼーションから多くの利益を受ける人たちは、それがもたらす不満に答え続けなければならないでしょう。


New York Times, April 30, 2001

World Financial Officials Pledge to Work to Block New Crises

By JOSEPH KAHN

ブッシュ政権からの批判に応えて、IMFの幹部たちは通貨危機の予防にもっと努力する、と約束した。他方、貧しい諸国の伝染病を撲滅する戦いを支援するために資金を出すことにも合意した。

ケーラー専務理事が、危機の「早期警戒システム」を改善すると誓ったのは、アジア諸国の慢性的な弱点を軽視して、1997年の世界的な金融危機を防げなかった責任をIMFが認め、加盟国のサーベイランスや金融市場のモニターを強めてきたからである。それはまた、ブッシュ政権のオニール財務長官の意見や、財務省の国際金融問題担当として新たに指名されたジョン・テイラーが以前から唱えるIMF廃止論にも、刺激されたものであろう。

会合の後、ケーラー氏は、危機の防止をIMFの活動の中心に据える、と語った。問題は、加盟国の信認が失われる前に、その財政や銀行システムにおける弱点をどうやって指摘できるか、である。そして今、もっとも注目されているのはトルコとアルゼンチンである。財務省の幹部はトルコがそのテスト・ケースであると認め、国内の銀行改革、民営化、財政赤字削減に努めて、投資家の信頼を回復しない限り、新たな融資はありえない、とトルコの指導者たちに警告している。

他方、金融官僚たちは、エイズ、マラリア、結核の撲滅に対する支援を表明した。オニール氏は懐疑的であるが、財務省はアメリカが参加する可能性を否定しなかった。

(コメント)

Bloomberg 05/03 に載ったWhy AIDS Matters to Global Markets Too というコラムで、William Pesek Jr.は、なぜサマーズ元財務長官がAIDS撲滅のために南アフリカのソウェトまで来たのか? という驚きから始めて、IMFやG7がAIDS対策に取り組む理由を説明しています。それは、R.N.CooperJeffrey Sachsが指摘したように、世界の健康管理システムが社会的・経済的な危機を拡大し、経済的・金融的な危機をもたらすからです。南アフリカでは平均寿命が60歳代から40歳代に低下すると予想されること、モザンビークの企業は同じ仕事に二人を雇用して、少なくとも二人にひとりが病気で働けなくなると仮定していること、今後20年間のアフリカの成長はHIV/AIDSのために約25%も減少するだろう、とILOが予測したこと、などを彼は紹介しています。

それはアフリカ大陸やアメリカの麻薬中毒の話で、日本には関係ない? しかし、世界でもっとも感染者が急増しているのは、アジア、です。バクテリアは国境を気にしません。アジア、インド、旧ソ連圏、ラテン・アメリカで、AIDSは蔓延し、その悪循環が動き始めます。患者とその世話で労働力が減少し、さらに財政負担で政府が弱体化する上に、貧困は増加して、犯罪が増えるでしょう。社会的・経済的な不安定化は隣国を巻き込んで暴動や内戦を引き起こし、市場や金融秩序が失われます。アフリカに投資する者がいないのは、まさにこうした理由です。


Financial Times, Wednesday May 2 2001

The world according to GAAP

Arthur Levitt

世界金融市場に関わったことのある者なら誰でも、配管工事(あるいはパイプ掃除?)plumbingがいかに重要か、を良く知っている。もし金融監督官や市場参加者が、投資家に正しい情報を供給するパイプの敷設に熱心でないなら、継続して価値を生み出すことはできず、資本は枯渇し、経済成長も疑わしいだろう。投資家、公開企業、会計事務所、株式市場、金融監督、の全てが、今や世界金融システムの建設のために、先進各国で利用できているような、比較可能で、統一された、良質の金融報告を求めている。それは危機によってではなく、発展過程により形成されるだろう。

市場の発達は、そのような制度を不可欠の条件としている。世界中の企業がアメリカで株式市場から資本調達するために殺到し、アメリカの金融監督当局はその会計基準(GAAP)を満たすように求める。アメリカの基準が完全とはとても言えないが、他国に比べて十分に優れている。国際的な会計基準を定めることが難しいために、アメリカの基準をそのまま世界で採用することを主張する者もいるが、それは間違いだ。

国際的会計基準は、より高度な、世界的に統合された金融システムに向けた最初の一歩である。アメリカ帝国主義の新しい姿だという者もいるが、私は経験が選択した結果だと思う。より多くの情報が、その質と速さを競っており、十分な情報開示なしに十分な資本形成も無かった。不幸にして、真実は経済・金融危機の後にわかるものである。世界は要するに余りに密接に関わってしまい、異なった情報開示システムを許さなくなった。

会計基準は将来の金融システムが必要とする一方の柱であるが、同時にこの基準を守って、情報を厳格に解釈するインフラストラクチュアがなければならない。5大会計事務所(the Big Five)が世界的に重要な役割を果たしている。金融監督当局は、会計事務所がニュー・ヨークでも、チンブクトゥでも、同じように監査を行い、信用できる報告を行うように圧力をかけるべきだろう。

この面でも、技術と競争が将来を切り開くだろう。非常に限られた投資家が期待するものではなく、ほとんど全ての投資家にとって望ましい透明性と情報公開が実現して初めて、世界的に統合された金融システム、という夢がかなうのである。


Financial Times, Thursday May 3 2001

The Keynesian genie is recalled from the bottle

Gerard Baker

全体主義国家で迫害された宗教的セクトのように、彼らは体制によって死亡を宣告された哲学にしがみついてきた。彼らの多くは絶望し、公に改宗し、正統的な思想に加わっていった。しかし突然、公式の歴史教科書がそのイデオロギー的な過ちを認めたように、ケインジアンの思想を守るこの小さな集団が公的な経済論争の先頭に現れた。

ケインジアンたちは、市場の失敗の可能性や、需要管理に占める財政政策の有効性を主張し、金融市場が本質的に恐慌をもたらすことを警告して、公共投資の経済的な価値を譲らなかった。経済権力と知性の源泉として神のように君臨する中央銀行を彼らは決して認めない。しかし、サプライ・サイド、自由市場、マネタリストという保守派のイデオロギーに打ち負かされ、30年にわたって、ケインズ派の合意は後退してきた。

この10年間で最初の深刻な景気減速を迎えて、アメリカの成功に対する確信は動揺し始め、ケインジアンへの関心がよみがえりつつある。景気の自動安定化装置として、財政政策に対する期待もよみがえった。共和党の政治家や保守派の経済学者が大幅な減税を支持することを、恥知らずな知的裏切りである、と非難されるだろう。しかし、ひとたびビンから呼び出されたケインジアンの魔法使いは、容易に元へ戻らない。

多くの経済学者が心配するバブルの後遺症に対して、金融政策が十分機能しないことを、ケインジアンは「流動性の罠」として指摘した。さらに、金融市場が投資を効果的に配分する能力についても、ケインジアンは市場の失敗を警告した。「ITに注がれた投資の全てが、本当に、公共輸送や道路、学校に対する支出よりも賢明な選択であった、といえるか?」

ケインジアンの復活は、もちろん、アメリカ経済に来年何が起きるかに懸かっている。アメリカが不況を回避し、急速に成長を回復すれば、それはかつてのように時代から取り残される。経済が深刻な悪化を示さず、過剰な投資を吸収できるなら、景気循環は失われて、ケインズも本当に死ねるだろう。


New York Times, May 2, 2001

South Korea's New Problem: Where to Send Chinese Garlic?

By DON KIRK

中国は、昨年の貿易摩擦で合意した輸入水準を韓国がまったく満たしていない、と、再び携帯電話やポリエチレンの購入停止を示唆した。しかし、ニンニクは韓国の米に次ぐ重要な商品作物であり、政治的に重要な南西地方で栽培されている。中国のニンニク輸入を放置して農民の怒りを買えば、来年の選挙で与党連合が勝利できなくなる。

そこで政府は、ニンニクを政治的な災厄から至福に変えようと考えている。「もしできれば、われわれはニンニクを北朝鮮に援助として与えたい」と、韓国の外務省・貿易局長は述べた。北朝鮮との交渉次第だが、韓国は昨年4月に合意した20万トンの化学肥料といっしょに、ニンニクを届けたいと考えている。南北和解を進め、北朝鮮ではほとんど栽培されていないニンニクを贈ることで、好意を示すことができる。

ただし、570万ドルの支払いを誰がするのか、はまだ決まっていない。携帯電話とポリエチレン業界は、その支払いを求める政府に戸惑っているが、他に選択肢はあまりない。


Bloomberg 05/03 15:02

Mexico Reluctant to Share U.S. Access With Americas

By Andrew J. Barden


New York Times, May 3, 2001

Japan Abuzz Over Rumor That Banker May Resign

By STEPHANIE STROM

日銀がその独立性を確立した法律の制定後、大蔵省と日銀は、まるで子供の喧嘩のように対立しつづけている。日銀に対する大蔵省の反感は、日銀が金融緩和政策を転換した後でデフレが強まったことがはっきりしてから、ますます激しくなった。速水総裁辞任という噂が何度も流れるのは、小泉総裁選挙の勢いを借りて、大蔵省が金融再編を強めるのではないか、という見方があるからだ。保守的な読売新聞は辞任の裏話まで報道している。総裁の健康問題などを日銀はまったく否定するが、日本のテレビは、パレルモのG7で階段に躓いた速水総裁を助けるグリーンスパン議長の様子を、何度もビデオで放映した。

しかし、大蔵省はまだ大幅な改革に消極的である。改革志向の小泉政権と日銀との関係はむしろ改善するかもしれない。

(コメント)

Financial Times, Thursday May 3 2001 の論説記事 Editorial comment: BoJ shake-upは、大蔵省との対立に固執した日銀が、デフレを回避する上で、その政府からの独立性を正しく使用できなかった、と批判しました。そして、速水総裁の辞任と、金融政策委員会に有能な経済学者を速やかに抜擢すること、また、日銀の独立性を、その目標に正しい解釈を与えることで抑制すること、を主張しました。日本政府は日銀法を改正できないまでも、プラスのインフレ目標を日銀に対して明確に要求し、圧力をかけるべきである、と主張しています。これは、いくらイギリスの金融専門紙でも、かなり強烈な(冷酷な?)日銀批判です。

日本が直面する複雑な政治経済問題を考えれば、対立する意見を示すことは歓迎すべきです。日銀と大蔵省の異なった姿勢について、明確な説明があれば、小泉政権は決断するでしょう。反対や対立があることは、政府に一定の弾力性を与えるかもしれません。すなわち政府は、自分たちの選択を国民に示して、彼らが互いに協力できる改革の方針を示す(作らせる)のです。

The Economist, April 21st 2001