今週の要約記事・コメント
4/9-14
IPEの果樹園 2001
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USJばかりが報道されてうんざりしました。ニュースは話題性を強め合って、実際の価値を分からなくします。きっと2度行く人はいても、3度行く人は少ないでしょう。もっとほかの遊園地や行楽地を紹介して比較するニュースが見たいです。資本制社会は、投資と投票で個人に判断の自由を与えた、と自負しています。しかし、本当はもっと良質の情報と分析に社会的な資源を配分し、判断の中身を高めねばなりません。
橋本龍太郎氏の名が首相候補に挙がることでアメリカ政府やニュー・ヨークの投資家が思い出すのは、「フーバー=橋本不況」と「対米投資引き揚げ」発言ではないでしょうか? しかも政府は、金融緩和や株価維持への融資を日銀に求め、銀行・企業の破綻処理、公務員削減や官僚組織のスクラップ・アンド・ビルドにも励む、と言います。それは手におえない(実現見込みの無い)困難な方針で自滅する(信用を失う)だけかもしれません。
政策目標の優先順位や組み合わせ、時間スケジュールと、予想されるコストを示して、すべての国会議員を仮想的なグループに分けることができるでしょう。分類や調査は民間でも行えます。たとえ支持団体や所属政党・派閥に制約されていても、主要な政策選択が、無記名で繰り返し調査・公表されるべきだと思います。そうすることで、首相候補者は政策の修正や強調点の変更、同盟化や分断化の交渉、移行措置や補償など、要するに、より透明な政治が行われるからです。政党や派閥は過去の主張や政策にこだわることより、いかに迅速に政策を修正できたかを誇ればよいと思います。
行政改革ではなく、むしろ政治家や企業家の質や能力が向上しなければなりません。主要政策について、無記名投票による政策転換を頻繁に繰り返し、実際の政策変更を迅速に行うことで、旧来の金権政治・派閥力学を崩壊させてほしいです。
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Financial Times, Monday Apr 2 2001
Buying time in Argentina
by Richard Lapper and Thomas Catan
カヴァロは回復策に自信を示した。改革のための特別権力を議会に認められ、彼自身の国際的な評価を高める成果を示すつもりだ。2001年は1991年とよく似ている、と彼は言う。
問題は単純である。カレンシー・ボードが安定性を維持し、他方で国際競争力を損なっている。また、財政赤字を抑制するために行われた一連の増税は失敗であった。カヴァロは、切下げが経済を崩壊させ、歳出削減がデ・ラ・ルーアの政治体制を破壊することを知っている。彼は、固定制に手を触れることなく、アルゼンチン企業の競争力を回復させねばならない。
そのために法人税を20%カットし、ペソの過大評価で最も苦しんでいる企業部門に配慮した。さらに、投資関連項目の輸入関税を引き下げ、国際競争に苦しむ消費財生産者への保護も強めた。また、新企業への課税を廃止し、公的部門を合理化する。こうした政策の効果が現れるまでには時間がかかるから、カヴァロは金融取引に0.25%の課税を導入した。こうして、昨年末にIMFと合意した財政赤字削減目標を達成する。
カヴァロは、金融取引税が数ヶ月で効率的な徴税制度となり、企業は付加価値税や法人税の代わりに、より脱税がしにくい、この税制で支払うようになる、という。しかし、正統的な経済学者たちは彼のやり方に不満である。それは恣意的な産業政策であり、介入主義が経済に深刻な歪みをもたらし、タバコ栽培などに与えられている無駄な補助金を削る方が先だ、と批判している。
カヴァロもこうした変化が必要であることを認めているが、「改革のためには、まず景気回復が必要である」と主張する。
すでに彼の非正統的な政策は支持を広げている。過去数年間、財政再建策は野党や労組の反対で失敗してきたが、カヴァロは国内各派の支持を取り付けた。先週、議会がカヴァロの改革案に非常時の権限を与えたことで、「国民的な連帯の機運」が生まれている、という。それは、1980年代初めに民主主義が回復された最初の日々に存在したものである。
彼に対する国内の投資家からの支持は強いが、今週、ニュー・ヨークを訪れた彼が国際投資家の信頼を得るのはもっと難しいだろう。多くの投資家が、債務不履行か切下げが避けられず、アルゼンチン資産をすでにヘッジしている。また、ペソに投機的な圧力をかけ始めた者も多く、カヴァロは先週、彼らに警告を発した。
彼の復帰でアルゼンチン国債は価格が上昇(金利低下)したが、不十分である。もしアメリカの景気悪化が本格的になれば、投資家がリスクをさらに回避するようになる。カヴァロがアルゼンチンに時間を稼げたとしても、それ以上のものが必要だ。
Financial Times, Monday Apr 2 2001
Japan's bankers should learn from the Swedes
Gillian Tett
日本とスウェーデンは、ともに10年前、1980年代のバブル崩壊による大量の不良債権という問題を銀行部門で生じた。しかし、その後の話はまるで違った。スウェーデンは1990年代初めに痛みをともなう改革を進め、90年代半ばに処理を終わった。しかし日本は、90年代半ばまで問題を隠していた。10年経って、日本の銀行はまだ不良債権を抱えており、先月の株価下落を引き起こした。
確かに日本が被った資産価値の減少は莫大であったが、GDP比で見れば、スウェーデンも同じ深刻な損失を被った。結局、日本の指導者たちには、痛みをともなう解決策を受け入れ、それを必死に、協力してやり遂げる意志が無かった。
この点で、日本政府は何も変わっていない。柳沢金融担当相の提案も、銀行に処理を急がせ、彼らが保有する株式を政府が買い取る機関を設置する、というものらしい。最も脆弱な銀行の国有化は提案されそうにない。不良債権処理に必要な土地の売却・流動化を促す政策は有益であろう。しかし、銀行が処理を行うには、再び公的資金投入が必要になる。それを嫌って、選挙前の自民党は、柳沢にトーン・ダウンさせた。
理論的には、公的資金投入で処理できるはずだ。しかし実際には、政治的に保護された業界が倒産するのを避けるために、銀行は収益の見込みが無い企業を債務免除してしまう。
他の解決策は無いか? たとえば、ING BaringsのJames Fiorilloは、困難な意思決定を日本の銀行から切り離すことを提案している。独立の資産管理会社を設立して、そこに明確な権限を与え、問題債務者の閉鎖や債務免除と本当の再建策を決定するのである。それはスウェーデンがやったことだ。こうした処理のためには、前回の二倍の公的資金投入が必要だ、という説もある。
実際、日本にはすでに債権回収機構(RCC)がある。それはアメリカのRTCにならい、不動産市場を流動化させて不良債権の処理を迅速に行うように見える。しかし実際は、逆のことに使われている。日本のRCCは額面どおりの価格で銀行から不良資産を買い取り、それをほとんど売却せずに、担保の土地をそのまま管理している。それがむしろ日本の不動産市場を沈滞させている。
日本の銀行部門が抱える問題はまだこの先も続くだろう。10年かけて、解決するかもしれない。景気が回復すれば、5年で主要銀行の処理が終わるだろう。しかし、銀行部門の健全化に15年もかかることは、日本の政治指導者を告発するのに十分である。有権者は、スウェーデンからもう少し学ぶべきだろう。
Bloomberg 04/01
Yet Another Plan to Rig the Japanese Stock Market
By David DeRosa
銀行の保有する株式を買い取るために日銀が資金を提供するだろう、と言うニュースが伝えられた。株価を下落させずに、銀行が持ち合っている株式を市場で売却できるようにしたいのだ。
日銀の金融政策変更に加えて、政府は経済を苦しめる株価下落への対策として、政府管理の株式在庫を作ろうとしている。将来、十分な買い手が見つかれば、この基金は相場を下げずに株式を徐々に売却できる。日銀は株式が基金に売却される際の支払いを立て替えるだけである、と。
銀行は市場で株式を売却もできるが、それができないから基金に売って、日銀から資金を得る。もし基金が株式を一般に売ったとき、損失が出る場合はどうなるのか? 基金は技術的に見て、最初から破産状態にある。それは株式市場で賭けをするに等しい。
もちろん、株価が持ち直して、売却により利益が出るかもしれない。こうして、政治的圧力で、基金が銀行と利益を分け合うほうに賭けるのか? 言い換えれば、日銀に融資させることが、中央銀行に株式相場のプット・オプションを与えさせることになる。
これは、中央銀行が株価下落を防ぐために資金提供する「見事な」例である。そして、本来の中央銀行と株式とは、決して交わらない。
New York Times, April 1, 2001
The Levitating Dollar
By PAUL KRUGMAN
なぜドルは強いのか? ドルは減価して当然である。円に対して強くなるのは理解できる。しかし、なぜユーロに対しても増価するのか? ユーロに対してドル価値が増加するのは気味が悪い。
外国為替レートは、結局、市場の需給で決まる。アメリカの大幅な貿易赤字は、アメリカが市場に大量のドルを供給していることを意味する。昨年のドル高は不思議ではない。アメリカの株価上昇と好景気に対して、特にヨーロッパから、資産購入のための資金が流入したからだ。しかし、今ごろ、誰がドル資産を買うのか? すでにバブルは破裂してしまったのだ。
この点で、面白い話を聞いた。ドイツのエコノミスト、Hans-Werner Sinnは、ユーロの非現実的な状態(only a virtual currency)がその理由である、と言う。ユーロの現金が流通しなかったことで、ロシアのギャングなど、犯罪組織はユーロ建の取引からマルクやドルに富を移転させた。スーツケースいっぱいの紙幣を持っていても、それがどこから来たか説明する必要は無い。また純情なポーランドの農夫など、東欧諸国でも、ユーロから資産をドルに替えたかもしれない。彼らは、何世代にもわたって政府や銀行にだまされてきたから、ユーロが信用できないのだ。
それが正しいかどうか私には分からないが、もしそうした理由があるとしても、ドルの強さは一時的なものである。実際、ジョージ・ソロスのような大規模な投機家たちが、ドルを空売りし始めても不思議ではない。ドル資産を保有する投資家がその足元を見れば、そこに何も無く、暴落するしかない、と悟るだろう。
それを恐れることはない。ユーロ安は、ヨーロッパのプライドを傷付けたが、結局、ECBが金利引下げを躊躇っている間も経済を刺激してくれた。しかし、その後、金利引下げはユーロを弱くすると信じて、ECBの金融緩和を妨げたかもしれない。(ドル暴落でECBの金融緩和が決まれば、暴落は抑制される。)
ドル高の時代もすぐに終わる。それは悲劇ではない。しかし、もしドル安がFedの金融政策を国内経済よりも対外通貨価値の安定化に向かわせるとしたら、問題であろう。
(コメント)
Financial Times, Thursday Apr 5 にもAlan Beattie and Christopher Swann, A dollar of dangerous strength が載っています。世界経済にとってドルのソフト・ランディングを望むなら、ドルの減価を協調して進めること、次第にユーロが強くなることが必要です。しかし、一方で、ECBのインフレ抑制目標を国際協調に置き換えることは難しく、他方で、日本の政策次第では円とドルとのジェットコースターが動き始めるとしたら、ブッシュは安全保障や環境問題と同じく、通貨面でも、国益に沿って一方的な切下げを戦略的に選択した、と宣言しないでしょうか? 彼には、クリントン政権に好かれたものは何でも投げ捨てる、という明確な?方針があるようです。
Bloomberg 04/02
Greenspan's Clout Waning Overseas, Too
By William Pesek Jr.
ニュー・ヨークから東京、フランクフルトまで、グリーンスパンは後手に回ったと言われている。さらに悪いことに、アメリカの14年に及んだ好景気が、1999年から2000年の金融引締めを激しくし、今や、金利引下げを遅れさせている、とも言われる。
グリーンスパン批判は国内で少し前から始まったが、それは強まり続け、しかも海外に輸出されている。アジアでもヨーロッパでも、彼らにとって、グリーンスパンはアメリカ金融システムの変調をもたらした総帥である。
アメリカは経常収支赤字を補う資本流入を必要としており、そのためには株式相場を押し上げ、長期金利を低くしておく必要がある。だからグリーンスパンが神のような信頼を得てきたことが、今や問題となる。もし彼が信用を無くせば、投資家はアメリカの債券を、株式を、そしてドルを売却するだろう。
グリーンスパンは<ニュー・エコノミー>の父であり、またその破壊者である。IT革命がアメリカのインフレ傾向を払拭したことに早くから気づいた彼の率いるFOMCは、金融引締めの要求を退けた。そして1998年の国際金融危機に対しては大胆に金利を引き下げて危機を回避した。その後、株価は空前の上昇を続け、NASDQが顕著なバブルを示してから、金利を6回も引き上げた。株価が暴落してからは、今年に入って、借り入れコストを心配して金利を1.5%切下げた。それでも景気後退は金融街だけでなく経済全体に及びつつある。そして、ヨーロッパやアジアでも金融不安が広がっている。
メディアの扱いも否定的になった。``Once Unthinkable, Criticism Is Raised Against Greenspan.''というNew York Observer のコラムは、「愚かなカルト集団の時代が終わった」と書いた。とはいえ、財政政策よりも金融政策が圧倒的に重要な時代である限り、われわれは彼が失敗しないことを願うしかない。
(コメント)
New York Times, April 2,にはRICHARD W. STEVENSONのSuddenly, Critics Are Taking Aim at Greenspan がグリーンスパンへの批判を三つに特定しています。1.1998年から99年に金融緩和を続けたことで、株価や消費者の債務が不健全になったか? 2.昨年前半の金利引上げは行き過ぎであったか? 3.今年になって金利を引き下げるのが慎重すぎたか?
Bloomberg 04/03
In U.S. Bond Outlook, Japan May Hold Cards
By William Pesek Jr.
アメリカは日本の投資家が注ぎ込む大量の資金に依存している、とよく言われる。その資金が経常赤字を融資し、株価を上昇させてきた、と。日本人がドルから逃げ出すと思うだけで、ワシントンの政策担当者やニュー・ヨークの投資家は眠れなくなる。
こうしたリスクは、近年、何度かアメリカ債券市場を襲った衝撃波に示された。もし日本政府が経済再生と株価浮揚に成功すれば、数ヶ月の内に、再び恐怖が襲うかもしれない。「日本人が日経平均の上昇にともない自国に戻ることは、アメリカ債券市場にとって実に悪い知らせである。」1月末の財務省証券の購入額を見れば、イギリスからの2050億ドル、ドイツからの870億ドルに比べて、日本からの3300億ドルは、今なお彼らが重要な買い手であることを示している。
政府による株価対策や日銀の金融緩和が、たとえ一時的にでも日本の株価を上昇させれば、アメリカの景気減速と円安のため、日本の投資家が資金を海外投資に向けにくくなる。もしそうなれば、アメリカの債券価格を支えてきた主要な柱が抜けることになる。
日米の金利差を利用した円キャリー・トレードが増加することも危険だ。低金利で円を調達して財務省証券を買っている。しかし、もし日本の投資家が経済の回復に賭け出したら、日本の金利が上昇して、投資家は円建ての融資を返済するために財務省証券を売却する。日本人が大量の売りに出たら、アメリカの金利が上昇するだろう。株価下落に加えて、借り入れコストの上昇がアメリカ経済にのしかかる。
歴史は、日本の株価上昇に対してアメリカ財務省証券の価格がいかに弱いかを示している。日本では、年度末に政府による買い介入で株価が持ち直し、その後も銀行の持ち合い株売却を吸収する政府基金設立案や、国債を売った資金で投資信託を設けて、株式を購入する案など、病を治すというより、症状を和らげる対策が次々と議論されている。
1998年の危機に際して、香港は同様の信託基金を設けて150億ドルの株式を購入した。その強烈な株価介入は機能したが、市場における香港のイメージは永遠に汚されただろう。にもかかわらず、日本では政府のてこ入れ策に対する楽観論が広がっている。こうした気分だけでも、アメリカは警戒しなければならない。というのも、日本人が資本流出させると言う思惑は、しばしば陰謀の気配として感じられるからである。日米間で対立が起これば、日本政府の官僚は東京に電話して、こう言うかも知れない。「明日の午後3時だ。持っている財務省証券をすべて売却し、アメリカから資金を引き揚げろ。」
こんな単純なものではないが、橋本龍太郎元首相が1997年7月に、その話に信憑性を与えた。彼はコロンビア大学で「実際、過去において何度も、私たちはアメリカ財務省証券を大量に売りたい誘惑を感じた」と述べた。それは日米自動車交渉の際や、為替レートが大幅に円高に振れてもアメリカ人が自国の問題しか気にしないとき、などであった。結局、「私たちはその誘惑を強く感じたが、資産管理面で、最も有利な道を採らなかった」と。
当時、橋本は、デンヴァーのG8でアメリカの官僚が日本経済について大言壮語するのを聞かされた後であった。だから日本の首相として、アメリカは日本を軽視してはいけない、と釘を刺したかっただけであろう。
今回は、経済の力が働いている。大蔵省が売却をそそのかすことではなく、日経平均が上昇することが問題である。アメリカの投資家は、自分たちにコントロールできないリスクを思い出したのだ。
Financial Times, Thursday Apr 5 2001
Editorial comment: Share plan for Japan's banks
04/04 17:16
深い穴の底から這い出すためであれば、どうやってでもよじ登ることが必要だ。日本政府が、銀行の売却する株式を購入する提案は、緊急経済対策の一部として発表される。通常では弁護の余地も無い介入策であるが、日本は非常事態にある。銀行の資本を回復し、経済を流動化できるなら、この提案にも意味がある。
提案では、政府が支援した11兆円(880億ドル)の基金を作って、銀行から株式を購入する。その3分の1は政府が残りは金融機関が出す。もし必要なら、日銀がそれを融資する。その目的は、銀行の株式保有を自己資本の130%から100%にまで下げることである。
日本の銀行システムが脆弱で、株価の下落に対して株式保有が大きすぎることが問題となっている。銀行の自己資本に保有株式のじか評価額を参入しているため、株価下落は貸し出しを抑制させる。銀行が保有する株式を減らすことは望ましいが、今の日本の株式市場には買い手がいない。銀行への資本注入が必要なのは明らかであるから、政府の提案はそれに代わるものである。
問題は、それが正統的な手法ではないと言うことではなく、それが不十分かもしれないと言うことだ。さらに重要なことは、こうした介入はより真剣な改革を促す政策と組み合わされて初めて機能する、と言うことだ。すなわち、銀行の不良債権処理を加速させ、公的資金注入をさらに行うべきである。そして、銀行が貸し出しに積極的になり、日銀はデフレ阻止に強い姿勢で取り組むなら、要約日本経済は持続的な回復に向かい、株価も自立的に上昇し始めるだろう。
Bloomberg 04/05
The Asian Crisis That Never Really Ended
By William Pesek Jr.
ラテン・アメリカは10年かかったが、アジアは急速に回復した、という印象が間違いであると分かってきた。予想外の成長によって、改革を途中で忘れたため、問題を残したまま、アジアはアメリカと日本の景気減速に対応しなければならない。
アジアの経済危機は、本当は続いているのである。タイ、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピンに流入した資本は、いわゆる「ホット・マネー」であった。逃げ足の速い投資家が、各国経済の運命を担う。
投機的資本に頼ることの危険性は、1997年や98年にアジアやラテン・アメリカで、いかに急速に資本が逃げ出したか、で示された。もし中国が切下げたり、日本の銀行システム危機が悪化したりすればどうなるか? ブラジルが混乱に陥るとか、アルゼンチンの危機がアメリカ大陸に波及するとしたらどうなるか? ウォール街の悲観論者、Henry Kaufman と Albert Wojnilowerは、金融システムの健全性を疑っている。1997年以後にアジアに回帰した資本家は、レバレッジされた短期の賭博に興じる者たちである、と。
不良債権の処理が遅れた日本と同様に、金融政策は機能しにくくなっている。クアラ・ルンプールに集まったASEAN閣僚たちは、円安に懸念を示し、国内の景気が後退しても日本は輸出拡大を目指さないように求めた。もし円安が続けば、アジア通貨は競争的な減価に巻き込まれる。日本からの資本逃避につながれば、アジア地域全体で問題が悪化する。
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The Economist, March 24th 2001
Can the world escape recession?
株式市場はこの1年間に世界中で約10兆ドルの資産を消滅させた。アルゼンチンやトルコのような周辺部から恐怖の叫びが起きている。
もしアメリカが不況になれば、1974年以来初めてアメリカと日本が同時に不況になる。株価下落がアメリカの消費者心理を損なうだろうが、Fedはそれが投資家を救済すると言う疑いをかけられないように金融緩和を行う。他方、日本は、1930年代以来、主要国が経験したことの無いデフレに苦しんでいる。
両国の景気後退は、世界経済に何をもたらすか? ヨーロッパの景気刺激策が望まれるが、ECBはまだ金利を下げない。彼らが予想する以上に、世界経済は悪化するかもしれない。実際、ヨーロッパの幾つかの国で株価の連鎖的下落が起きている。また、アジア諸国では情報産業のバブル崩壊が供給連鎖として不況を広めるだろう。
各国が自国市場を閉ざして、グローバリゼーションが後退するのを防ぐために、必要なら金利を引き下げ、減税しなければならない。
Software: Digital baroque
PCにソフトを詰め込む大聖堂型のコンピューターが、Linuxのようなネットワークに接続して常時更新するオンライン管理型に移行できるかどうか? 前者は開発費用がかさみ、その回収を販売が減速する中で価格引き上げに転化できなくなっている。後者は収益性が不確実だ。どちらにも問題がある。
Japan’s Economy: Another false dawn?
(聞き飽きた部分を無視すれば)日銀は金利よりも量的緩和を目標にする、と言うが、商業銀行の準備を4兆円から5兆円に増やすと言うのは、昨年8月までゼロ金利政策の下で保有されていた貨幣量である。経済学者が薦めたような、インフレが起きるまで際限なく貨幣供給を増やす政策、は採用しなかった。
日本経済を深海から引き揚げるのはまだ可能である。しかし、包括的な政策の協調を実現するには日本の政治が弱い。三つの対立が複雑に絡み合っている。1、自民党と日銀との対立。2、森首相の退陣と後継争い。3、自民党内の改革派と保守派の対立。
そんな中で、アメリカ経済の減速は、貿易額以上に、ハイテク産業や株価を通じて影響する。昨年度の5大チップ・メーカーの投資額は、前年度の80%増で、9640億円にも達していた。株価下落は銀行の不良債権処理に悪循環をもたらしている。
すでに0.15%しかない金利がたとえ0%に下がっても、すでに債務を抱え過ぎた企業は借り入れを増やさない。もし金融緩和が景気を刺激するとしたら、円安が劇的に進むことであろう。それは再び価格が上昇することを人々に確信させる。
しかし、日銀は666兆円、GDPの120%に達する国債が心配で、貨幣供給を無制限には増やさない。もし、国債を買わせるために日銀が貨幣供給しているという不信を招けば、国債は売られ、むしろ金利が上昇する。金利支払いによる国債の累積や、歯止めない円安が起きるかもしれない。さらに、インフレで企業の債務が帳消しになると期待して、民間部門の債務削減や企業改革が延期される恐れもある。それは日本経済の長期的な成長を損なう。
しかし、株価上昇が与えてくれたわずかな時間を、日本の政治家は有効に使えない。
Highly contagious
Dancing in step
新型の金融感染が起きている、と言う者もいる。それは株式市場を感染経路として、アジア通貨危機のときよりゆっくりではあるが同じように。
より多くの人が資産のより多くの割合を株式で保有している。しかも国際的な証券投資や直接投資が増えている。たとえば、アメリカで株価が下がると、機関投資家は世界中で株式への投資を減らす。それは今のドル高を部分的に説明するだろう。また、ヨーロッパ企業はアメリカに多く投資しているため、もしドル安が起きれば収益が悪化する。
さらに、世界的なハイテク・ブームで、株価が連動性を強めてきた。国際分散投資よりも、業種によって分散すべきだ、と言う。そして、アジア経済がハイテク産業への部品供給で成長してきたことは、もっと悪質なヴィールスを呼び込むことになる。
Exchange-rate systems: Argentina in a fix
1990年代のアルゼンチンは新興市場経済の成功例であった。1991年に可決されたドル交換法は、ペソの流通額に等しいドル準備を保持すると定めた。それゆえアルゼンチンの経済危機は、新興経済の為替政策に関する正統派の合意を崩した。
それは、新興経済に二つの為替制度のどちらかを選択させるものであった。自由な変動制か、カレンシー・ボードである。たとえば、香港ではカレンシー・ボードのおかげで通貨危機を免れた。政府は金融政策の決定を放棄するが、その代わりにインフレ抑制と低金利を実現できる。1990年代のアルゼンチンの金利はブラジルよりも低かった。
しかし今やカレンシー・ボードの欠陥が明らかとなった。ドル高がアルゼンチン経済を害し、特に2年前にブラジルが変動制を採って以来、その通貨を40%も減価させたことがアルゼンチン通貨を過大評価にした。
カレンシー・ボードを採るアルゼンチンでは、切下げが非常に難しい。それはブラジル通貨の下落も懸念させる。しかし、アルゼンチンが切下げなくても、固定制の崩壊を予想した借り入れコストの上昇で、債務が支払えなくなる。投資家は為替リスクではなく信用リスクに直面し、規模の大きなアルゼンチンの債務不履行が他の新興経済に波及する。
カレンシー・ボードは問題を抱えているが、それに代わる制度も完全ではない。タイが採用していた弱いペッグも、投資家の信認を失えば、政府は外貨準備を枯渇させて通貨価値の暴落に苦しむか、マレーシアのように資本規制を導入しなければならない。また、「クローリング・バンド」制度も、インドネシアやブラジル、トルコが採用していたが、崩壊した。「フリー・フローティング」も容易な解決策とはいえない。市場が混乱すると為替レートが激変する。また、中長期的にも為替レートのミスアラインメントが起きる。
新興市場の多くで為替制度が崩壊するのは、IMFの失敗のように見える。しかし、実際は、アルゼンチンやトルコがそうであるように、各国の政治こそ危険なのである。必要な政策を実行する能力が政府に無いと投資家が思ったとき、その制度は崩壊する。