今週の要約記事・コメント

3/12-3/17

IPEの果樹園 2001

もし一人で2票を投票できれば、自由党と共産党に投票したいな、と国会中継を見て思いました。不信任案を支持する自由党員の演説と、参院予算委員会で行った共産党員の質問が、なかなか良かったからです。

選挙をしても、もっぱら職場や地元の利益に従い、政党の所属や推薦で候補者を考え、あるいは既存政党の組みなおしで政権を考えるのでは、政治の意味が失われると思います。投票することで、私達は何を選択しているのか? 何が変わるのか? それを理解できないからです。

一人一票という縛り、政党あるいは国籍や住民票という縛りをなくせば、地元や支持団体への利益誘導で当選する議員が減り、何十年も議席を保持する議員や、はては2世、3世の議員が増える状態をなくせるでしょう。例えば、審議内容によっては、輪番制や議員以外の参加を大幅に認めるほうが良いのではないでしょうか? 

自民党が解党できないのは、議会で予算案や法案を可決させるのに、「自民党」というまとまった議席が必要だからでしょう。もしそうであれば、重要な政策や法案、予算案の提出や審議を、政党の枠から外すことで、政治家達を国民の要望に近づけることができるでしょう。

いっそ、有権者一人一人に20票を配分して、誰に何票入れても良い、という弾力性を与えてはどうでしょうか? その中から、各自の判断で、地元の利益を重視する人は地元の議員に多く入れ、日本の政策として閣僚達の資質に関心がある人は与野党の指導者達に分けて入れるでしょう。あるいは、マイナス票を与えるのも良いでしょう。ナショナリズムや外国人排斥を唱えて威嚇的な言動を誇示する政治家には、日本中から(あるいは世界中から)静かに追放票が寄せられるでしょう。

政党を解体するには、支持団体との関係を絶ち、政策ごとに判断を示せるよう、議会の審議や採決の方法を変えることです。期限を決めて、複数の委員会が並行して異なった改革案を作り、比較できるようにして欲しいです。どの議員も委員会を組織でき、民間からの参加も認めるのです。そうすれば、政治家は政策の提案と審議、成立に貢献した内容で判断されるでしょう。どの改革案を支持するかは、常時、インターネット上で有権者にフォーラムを提供し、さらに適時、仮想的な投票を行ってほしいです。首相の支持率がたとえ1%になっても、今の制度では、予算案や経済対策の中身は変わりません。

政治家に何を期待できるでしょうか? それは政治家たちの資質以上に、政治の制度によって制約されていると思います。どのような人物が、何のために、どれくらい政治家として働くべきでしょうか? もし政治の制度が改善できないとすれば、国民は政治から積極的に離脱するべきです。政治家や議会の権限を縮小し、予算や議席数を減らし、各権限を適切な地域に分散し、審議の情報開示、政治家の定年制や多選抑制策、などにより、政治家たちに集中した権力を解体するのです。

世界不況や金融政策の国際協調では、そのマイナスの影響を危惧して、世界の政治指導者たちが日本の政策を監視しています。他方、アジアの地域安全保障や軍備管理、世界の貧困や地球温暖化問題といったさらに重要なテーマについて、日本の発言は無視されていくでしょう。世界政治の舞台でも、日本政府からの離脱が進むのです。

Bloomberg 03/05 17:23

Argentina Names `Bulldog' Lopez Murphy to Fix Economy

By David Plumb and Richard Jarvie

Financial Times, Tuesday Mar 6 2001

Editorial comment: Argentine risk


Financial Times, Tuesday Mar 6 2001

Bilateral agreements threaten the achievements of the WTO

Jagdish Bhagwati

10年前には、多国間主義(多角主義)Multilateralismは軽視され、有効でなくなる、と多くの者が主張していた。それは間違いであった。しかし、世界が目覚めなければ、ブロック化の予言が実現するかもしれない。WTOは「地域主義」Regionalismの脅威にさらされている。


Washington Post, Tuesday, March 6, 2001

A Road Through Seoul

By Henry Kissinger

     朝鮮半島の歴史は戦乱の連続であった。190405年の日露戦争で日本による植民地化が進み、1945年に解放されたが南北に分断され、1950年に北朝鮮が侵略を開始、1950年に中国軍がこれを支援、これに対するアメリカ軍の韓国支援で、分断が維持されてきた。

     クリントン政権は、北朝鮮とのKEDOやミサイル輸出禁止で取引し、最後の一週間で国交回復を望んだ。しかしアメリカは、北朝鮮に独自の交渉権を与えるべきではない。

     韓国の「太陽政策」は評価するが、北朝鮮は実質的な譲歩をしていない。北朝鮮の擬似スターリン型政治体制と軍事的な脅威は変わっていない。ミサイル防衛構想を後退させる理由にはならない。

     北朝鮮は、韓国との交渉ではなく、アメリカとの直接交渉を望んでいる。南北宥和ムードに乗って、北朝鮮はすでに西側各国との国交を増やせた。しかし、アメリカは韓国との同盟をまず重視し、北朝鮮を孤立させておくべきだ。

     ドイツの例を見れば、朝鮮半島の統一コストは、韓国だけで担えない。北朝鮮の体制を民主化して維持することは、現実的に不可能だろう。

     統一問題は、アメリカ、日本、中国、ロシアを加えた国際交渉が必要になる。その場合、日本も中国も、朝鮮半島の急激な統一を望んではいない。

     アメリカ軍がアジアから完全に撤収することは、統一された朝鮮半島や日本に独自防衛政策をもたらし、日本、中国、韓国で競争的な軍備拡張とナショナリズムが強まるだろう。

     その時々の適切な対応だけでなく、アメリカ軍がアジアにおいて何をなすべきか、将来のアジア戦略全体を検討しなければならない。


Financial Times, Wednesday Mar 7 2001

Editorial comment: Asia arms

中国政府は、世界の軍事状況における劇的な変化に対応して、防衛支出を18%増加すると発表した。そして、アメリカがミサイル防衛網を台湾に提供する計画や、NATO軍によるコソボ介入を、その正当化に使った。中国に限らず、インドも、パキスタンの核武装と、中国の軍備増強を意識して、防衛予算を増額した。ロシアも核兵器を再強化するかもしれない。そうなればアジアは全面的な軍備拡大競争になだれ込む。

経済成長とキャッチ・アップが進むにつれて、中国はアジアにおいて断定的に振る舞いつつある。ある意味ではそれを受け入れ、歓迎する外部の見方を超えて、中国政府はアジア域内の経済的結びつきを強める地域フォーラムに熱心である。他方、周辺諸国は、アメリカが中国への抑止力としてアジアに関与し続けてほしいと思っている。しかし不幸にして、アメリカ政府はゆっくりと、中国との衝突航路に入りつつある。

共和党のタカ派は、クリントン大統領が中国に弱腰である、と非難してきた。中国の軍事専門家がイラクの施設に協力した疑いにより、その敵意は高まった。これから固まるブッシュ政権の対中国政策は、強硬なプラグマティズム、に近づくと思われる。中国政府はしばらくそれを値踏みするだろう。アメリカ政府はミサイル防衛計画について、慎重に、その直接的および間接的な結果を考慮しておかなければならない。


Financial Times, Wednesday Mar 7 2001

The mystery of the missing millions

Everett Ehrlich


Bloomberg, 03/07 17:02

The Political Economy of Japanese Toilet Tissue

By Patrick Smith

ワシントンに本部がある会員制の購入クラブであるコスコが、幕張に、日本で二軒目の店を建設した。これは、日本の消費者を変えることができる、という賭けである。

ユニクロ、コスコ、カルフールなどは、日本の旧経済モデルがどの程度まで日本人に見捨てられたかを示している。しかし私は、日本の消費者がアメリカのような倉庫型の巨大ディスカウント店に慣れるとは思わない。その結果は、何か違ったものであろう。

日本人は日本をどのように作り変えるのだろうか? 私はこの点で、エドワード・ルトワクが行った日米のガソリン・スタンド比較以上に面白い議論を知らない。

日本のガソリン・スタンドに入れば、3人か4人が飛び出してきて、自動車を磨き、灰皿を空にし、タイヤのチェックもして、ガソリンを満タンにしてくれる。あなたは80ドルも払うだろうが、手入れの行き届いた道路に戻って走ることができる。犯罪の少ない、雇用の保証された社会で、税金の少ししか福祉に使わない。

他方、対照的に、アメリカのスタンドでは誰も手助けしない。自分でガソリンを入れ、アクリル・ガラスの下から伸びてくる手に、25ドルを支払う。それからひどい状態の通りに出て、犯罪の多い、比較的失業率の高い、結局、ばらばらな社会で、さまざまな脅威にさらされた都市の暮らしに戻る。

だから、と彼は結論した。日本のガソリンは非常に「安い」のだ、と。

では、日本はどこに向かうのか? 幕張では人々が財布でその変化に投票しつつある。しかし、トイレット・ペーパーを買う選択の結果には、何かが欠けているようだ。

日本人は、彼らの選択の政治的な意味を、まだつかめていない。消費の変化は、必ず、政治の変化をもたらす。流通革命は日本の都市化と関係しているし、それは自民党の支配を掘り崩す。というのも、友人の政治学者が教えてくれたように、現在の日本政府閣僚の誰一人として200万人以上の都市から選出されていないのである。日本はさまざまな変化に直面しているが、永田町の政治がそれを妨げている。そして日本人も、アメリカ型の集中的流通=政治システムを受け入れる準備がなく、それを望んでもいないと思う。

日本人は一度にトイレット・ペーパーを18本も買わないし、週に一度ではなく毎日、自動車ではなく歩いて買い物に行く。零細な商店を保護する規制はなくなったが、東京では地域のコミュニティーを守るために、大型店舗の規制を住民が行える。不況で新しい流通業の投資は歓迎されるが、日本人は市民として、今の良い暮らしを維持している。

コスコはすべての商品で支持されはしないだろう。


Strait Times, FRIDAY MAR 09, 2001

Battle for investments must begin in earnest

By Phar Kim Beng IN BOSTON

199772日にバーツの価値が暴落して以来、東南アジアはよろめいている。完全な政治的崩壊ではないが、インドネシアでもタイでも爆破事件が法と秩序を大きく損なった。カリマンタン、マルクス、イリアン・ジャヤでは民族対立が暴動になった。マレーシアでも武器庫が二度略奪され、元副首相のアンワルを不当に逮捕した政府に抗議するデモが散発する。

民間部門の改革には熱意が失われ、クローニズムが今も栄えている。金融危機によって損なわれた銀行部門の改革も中途半端で、それに必要な緊急性が欠けている。たとえば、タイはIMF融資によっても、その零細でクラブ的な銀行界を温存している。最新のタイ中央銀行の資料によれば、銀行の不良債権は2.5兆バーツに達し、この国の総融資残高の45%にもなる。

そのような無気力は将来の社会政治秩序と経済に深刻な意味を持つだろう。アメリカ経済が活気を失い、日本は10年間も活発に成長できていない。デフレと1兆ドルもの不良債権で、日本はもはや打つ手なしである。それは、東南アジアが良くも悪くも、もう一度、宮沢基金で金融機関を救済してもらえることはない、ということだ。IMFや世銀も、結局、国際機関に批判的なアメリカ議会で「モラル・ハザード」の責任を問われたくない。

それゆえ東南アジアは、文字通り、自活していくことになる。外国からの直接投資(FDI)を引き寄せるために、国際投資家の嗜好を満たすしかない。投資は高度に選択的であり、気難しい。専門家たちが各国の「ビジネス環境」を評価しており、それには政治的な能力や官僚の有能さまで含まれる。東南アジアは労働コストの低さ、優れた教育システム、インフラの整備、でFDIを誘致してきた。しかし、それだけではFDIを維持できないかもしれない。

この点で、2001年から2005年までのFDIに関するthe Economist Intelligence Unit (EIU)の出した報告は、アメリカ、イギリス、ドイツが最大のFDI受入国になる、と予想している。残りのFDIについても、中国、フランス、オランダ、ベルギー、カナダ、香港、ブラジルなどが多くを占める。アジアでは中国だけ(香港も含む)がFDIを大規模に誘致できる。アジア金融危機以来、経済の引力が北東アジアに移ってしまった。

シンガポールの指導力にとって、これは明らかな警告である。シンガポール政府は東南アジアと北東アジアの拡大する格差について発言してきた。東南アジアにFDIを引き寄せるには、透明性、説明責任、公平な競争、を始め、あらゆる分野で投資環境を改善しなければならない。


Financial Times, Friday Mar 9 2001

Delivering development after Cologne

Timothy Geithner (senior Fellow at CFR)

5.貿易の増加:関税・規制・補助金を減らして、輸出を増やし、経済コストを下げ、いっそうの自由化に政治的な力を与えることが重要である。

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The Economist, February 24th 2001