今週の要約記事・コメント

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IPEの果樹園 2001

Financial Times, Monday Jan 15 2001

America cannot afford tax cuts

Fred Bergsten

ジョージ・W・ブッシュは、1981年にロナルド・レーガンが行ったように、財政を悪化させる減税策を準備している。アメリカの貯蓄率が非常に低いから、それは外国の投資家によって融資されなければならないだろう。しかし、1981年と今とでは、アメリカが世界最大の債権国から最大の債務国に変わった点で、大きな違いがある。

アメリカの対外経常赤字は約5000億ドルあり、対外純債務は15000億ドルを超えている。外国投資家は毎日20億ドルを供給している。アメリカの成長が衰え、株価が下落する中で、より多くの額を注ぎ込むことに逡巡するかもしれない。経常収支の不均衡はGDPの5%に達し、アメリカの対外短期債務10兆ドルは、いつでも売却して引き上げられる。アメリカ人自身がドル資産を売却することも考えられる。すなわち、アメリカは通貨の変動にきわめて脆弱になっているのだ。

民主党も共和党も、特に短期的な政治的関心が強い下院では、1981年に起きたように、財政支出を奪い合っている。確かに、レーガンの減税は海外の資本をひきつけ、1980年代初めの不況から投資と成長を回復させた。そして過去60年間に築いた対外資産を失った。さらに、1985年から87年に約50%もドルは減価し、金利が上昇してブラック・マンデー(ダウ平均株価の20%下落)の引き金を引いたのである。


Financial Times, Tuesday Jan 16 2001

Editorial comment: Asia's currencies


Financial Times, Saturday Jan 20 2001

Editorial comment: Basle gets more sophisticated

しかし、デフォルトの危険に応じて四つの「バケツ」に資産を分類するのは大雑把過ぎて、リスクの多様さを反映していなかった。さらに、これらの分類は本当のリスクを考慮できず、危険な融資を拡大する誘因にさえなった。

バーゼル協定Uは分類を増やし、最大規模の銀行が自ら行っているリスク評価システムを採用した。また「オペレーショナル・リスク」という分類を設けて、システム危機や訴訟に関するリスクを含めた。それはまた、資本市場の規律を強調し、銀行により完全な情報開示を求めた。銀行は市場条件に敏感な資金調達を行っているから、これはその意味でも重要である。


Financial Times, Saturday Jan 20 2001

Japan's economic black holes

Martin Wolf

貨幣政策は、デフレによって実質的な金利上昇が生じているのに、昨年8月、ゼロ金利政策を終わらせた。日銀はインフレ・ターゲットを採用し、国債を購入して貨幣供給を増やすべきである。

しかし、長期的に維持可能な成長を回復するには、民間部門の貯蓄と投資(海外投資も含む)が、世界実質金利と国内の完全雇用水準を実現しなければならない。現状は、余りにかけ離れている。昨年、民間貯蓄はGDPの30%に達したが民間投資は19%で、11%の経常黒字、もしくは資本輸出を行った。民間主導の成長を実現するには、国内の貯蓄・投資ギャップが無くなるか、過剰貯蓄を海外投資に向けて利潤を上げねばならない。

これは狂気の沙汰である。もし改革によって、企業に内部留保している収益を吐き出すことを強いれば、民間投資は減るが、より高い収益をもたらす。民間貯蓄も急激に減少するだろう。財政政策や通貨・金融政策は恒久的な解決策ではない。患者が根本的な処置を施されるまで延命させるに過ぎない。それが終われば、日本は民間投資が減少し、より高い収益を上げ、はるかに少ない貯蓄を行って、成長を加速するだろう。財政赤字が縮小するにつれて、経常黒字は増大し、通貨は実質的により減価する。

日本は回復可能である。しかし、そのためにはマクロ経済的な緩和剤と構造的な治療が必要である。


Financial Times, Saturday Jan 20 2001

Japan needs radical measures

Graham Turner

日本を「債務のわな」から救出するには、従来の選択肢を諦めて、もっと根本的な手段、銀行の国有化、を考える必要がある。

アメリカの連邦準備銀行は金利引下げの余地が十分ある。しかし、日銀にはない。政府がこれ以上に債務を増発して支出することはクラウディング・アウト効果によって失敗するだろう。債務の貨幣化、不胎化されない為替市場介入、インフレ・ターゲットなどが議論されるだろう。しかし、どれも機能しそうにない。「債務のわな」では貨幣需要が従来の仕方で刺激できない。インフレ・ターゲットも、期待が合理的でなく適応的であると、機能しない。マイナスの金利でさえ、日本のように犯罪の少ない社会では、現金を銀行に預ける理由にならないかもしれない。

銀行は、個別に合理的な判断から融資を減らし、債権を回収しようとするが、合成の誤謬により、それは株価や地価を下落させて倒産を増やす。日本は、倒産件数の増加を何とかして抑えなければならない。それには銀行をすべて国有化し、企業の利払いを3年程度免除することである。そして政府はすべての銀行に資本を注入して、債務不履行や担保の処分を止めさせるのである。

The Economist, January 6th 2000

Greenspan’s big surprise