今週の要約記事・コメント

1/15-1/20

IPEの果樹園 2001

Financial Times, Tuesday Jan 9 2001

Editorial comment: Pegged out

主要国が固定為替レートを維持したブレトン・ウッズ体制は政治的経済的な緊張で1970年代初めに崩壊した。30年を経て、新興経済において、同じことがおきつつある。

固定為替レートは発展途上諸国にとって最善の選択であった。彼らは通過を主要国の通貨に結びつけることで、投資家や輸出業者に確実性を与え、しかも自国通貨と独自の金融政策に一定の弾力性を保持した。

しかし、次第に、固定為替レートの有利さは、通貨制度崩壊のリスク、という深刻なコストを伴うと分かってきた。たとえどれほど膨大な外貨準備で守ろうとしても、固定レートは投機に弱かった。しかも、もし通貨が大幅に減価すれば、企業や銀行が固定レートで契約しているから、そのダメージは莫大なものになる。

最近の研究で、IMFのス主席専務副理事スタンリー・フィッシャーは、固定為替制度が本質的に不安定で、その制度がなくなることは避けられない、と述べた。それでも変動制が適当な国とは、中国のように、為替管理が行われ、世界的な金融システムに統合されていない国か、トルコのように、デフレ過程で外部からの規律を必要とする国だけである。

このことは、近年、IMFが固定為替レートの国を安定化するために融資し、非常に高くついたことを思い出させる。もし、本当に固定為替レートが過去のものとなれば、IMFの役割はもっと重要でなくなるだろう。民間部門の債務処理が整備された国に融資し、構造改革プログラムでも助言を与えるにとどまる。


Financial Times, Tuesday Jan 9 2001

Thailand's populist billionaire

Amy Kazmin

北部の農村出身の通信王、タクシンが、タイの首相になるだろう。このタイの移動電話網を支配し、三つの通信衛星を持つ男が、同じ才覚を用いて、タイの貧しい人々を豊かにすると約束した。有権者達は、まだ、1997年の経済危機による困窮に沈んでいる。彼らはタクシンこそ彼らの救済者だと確信したのだ。

こうしてタクシンが率いるタイ愛国党は史上かつて無い大勝で、議会の過半数を制した。またこの選挙は、改革に苦悩するアジアの他の諸政府に、明確なメッセージを送った。支配政党の長引く改革は、結果を出すのが遅すぎる、と。

New York Times, January 10, 2001

RECKONINGS: Getting Fiscal

By PAUL KRUGMAN

今では自由市場の伝道者として有名であるが、彼の仕事の大部分において、彼はマネタリズムとして知られた保守的原理の王様であった。基本的にマネタリストは、政府が短期の経済管理から手を引くことを求める。それは何よりも、不況の際に減税や支出増加という財政政策を用いない、ということである。

金融政策の航路を管理せよ、というフリードマンの見解まで受け入れる経済学者は少ない。貨幣の安定供給は、残念ながら、経済の安定性を保証するものではないからだ。しかし、財政政策ではなく、金融政策が不況と闘う手段である、という立場に、ほとんどすべての経済学者は同意する。

ほとんどすべて、というのは、新政権に入る人々を除く、という意味だ。ジョージ・W・ブッシュ氏の任命する人々は、乱暴なケインズ主義の経済政策に変心したようである。それが、穏健な共和党員でさえ、やりすぎと思うような、減税を正当化するからだ。

ブッシュ政権から示された最新の見解は、主席経済顧問であるローレンス・リンゼー氏が先週末にフリードマンを逆立ちさせたことだ。すなわち、金融政策は効果がなく、財政政策が最も優れたものになった、と。「金融政策と財政政策を比べるのに、典型的なクレジット・カードの利用者を考えてみよう。先週の金利引下げは、毎週ドル紙幣2枚分を助けるが、ブッシュ氏の減税は4万ドルの年収から1600ドルを、毎週ドル紙幣を32枚も与える。」

しかし彼の主張は、三つの点で、疑わしい。1.彼は、ブッシュ氏の減税策が普通の家庭に与える効果を誇張した。2.彼は、金利引下げの小さな部分的効果だけを取り上げた。それはもちろん、住宅債務や企業の債務に対する支払を減らす。

最後に、最も重要なことだが、彼は金利引下げの作用を曲解した。その主要な効果は、すでに存在する債務への支払が減ることではなく、より多くの借入を促し、投資を刺激することにある。債券にとどまっている貨幣を実物資産に振り替えるのである。だから、ビル・クリントンが増税しても、金利引下げが先の不況からの回復をもたらしたのである。

リンゼーは、いんちき経済分析を披露した。こんなことを新しい主席経済顧問が本当に信じているとしたら大変だ。しかし、心配は要らないだろう。これは減税を支持するための経済学を馬鹿にした奴がやったことだ。結局、たとえ経済が過熱していても、リンゼー氏は減税を擁護しただろう。

さらに、それは良い前兆ではない。クリントン政権は、経済分析や報告で正直なことが一つの美徳であった。前任者たちと違って、一般に彼の経済顧問たちは、事実を捻じ曲げたり、都合の良い、疑わしい議論を振り回したり、政策を売り込むために脅したりしなかった。


Financial Times, Thursday Jan 11 2001

Taking other people's money

Martin Wolf

株主は、彼らの所有する企業で何が行われているかを知らない。しかし、経営者は内部にあって、企業の価値を高め、あるいは外部にいる株主から自分達にその価値を移転することができる。自分の所得を最大化する経営者は、しばしば、後の方の選択を行うだろう。富の移転が富の創造と結びついているなら、彼らはそれを弁護できる。

J.K.ガルブレイスは『1929年の大恐慌』で、<ベズル> “bezzle” という造語を用いた。景気が良ければ、人々は安心し、信頼しており、貨幣もあふれている。ベズル化率が上昇し、発見率は低下する。そしてベズルが急速に増加する。しかし、ストック・オプションはもっと巧妙で、合法的な富の移転である。それは「誘因」という名目で正当化される。

企業にとって、ストック・オプションのコストは莫大である。たとえばハイテク巨大企業のオラクルは、2000年会計年度に、ストック・オプションの実行で利益が失われるのを防ぐため、27億ドルを支出していた。それは年間収益の27%、純所得の43%に相当する。


Financial Times, Thursday Jan 11 2001

The IMF's agenda for the new year

Horst Koelermanaging director of the International Monetary Fund


Financial Times, Thursday Jan 11 2001

Don't apologise - explain


Financial Times, Saturday Jan 13 2001

Editorial comment: New economy myths


Financial Times, Saturday Jan 13 2001

Editorial comment: Fading yen