今週の要約記事・コメント

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IPEの果樹園 2001


New York Times, December 27, 2000

RECKONINGS

We're Not Japan

By PAUL KRUGMAN


Financial Times, Friday Dec 29 2000

The case for a smaller state revisited

Robert Skidelsky

小さな国家が必要であるのは、非効率や公共財の改善を実現するために、国家や官僚制度ではなく市場が求められるからである。公共財が必要なくなったわけではない。かつて、サッチャー首相は政府部門の経済学者を皆くびにしろ、と叫んで有名になった。だが、公共財の問題は、経済学では解決できない。

小さな政府を主張する基本は、個人の自由を重視することである。しかし、個人の自由と個人に可能な行動とを区別しなければならない。民間部門では供給できない安全保障や、法と秩序、有効な輸送システムなどは、かつて慈善や相互扶助で供給できたが、いまでは国家が税金を徴収して実現しなければならない。

それは購買力を再配分することである。民間部門の資源や生産能力を公共財のために配分する。そのために人々は、社会にとって何が公平か、という合意を形成しなければならない。それは結局、裕福な者の負担で、貧しい者の生活を改善することになる。機会を平等にしようとすれば、より多くの公共財が求められる。それがどこまで必要か、は倫理的な原則の問題である。

そこでさらに、小さな国家を支持する者は、効率を重視する。少なくとも発達した豊かな諸国では、国家が資源を処分する割合が高くなるほど成長率が低下する。ある点を越えれば、公的部門の拡大は民間部門を「クラウド・アウト」してしまうだろう、という直感が刺激される。他方、公共財の供給には高い成長が望ましい。

最後に、公共財の量ではなく、満足できる質の向上に関する問題がある。公共財も、市場において競争的に供給されなければ、消費者の満足を得られない。

こうして、倫理と効率とがぶつかる点で、政治論争が必要なのである。


Financial Times, Friday Dec 29 2000

Spreading the world's wealth

Martin Wolf


Financial Times, Friday Dec 29 2000

それゆえ、アメリカの不況は、ユーロ圏が正しく対応するならば、日本を除いて、決して世界経済に破壊的な影響を及ぼさないだろう。日本の危機が深刻なのは、それ自身が脆弱さを深めてきたからである。

もちろんこの結論は、政治的な混乱や、特に国内市場を閉ざすような対応を主要国が採用しない、ということを前提している。今までの通貨危機でも見られたたように、不況は閉鎖的な対応を求める政治的圧力を強める。政治家の責任は、そうした間違った政策による悲劇を回避することである。

<コメント>

大幅なドル安が世界経済の再調整を可能にする、というのが、現在の国際通貨制度におけるルールです。株価暴落は主要国中央銀行の協調金融緩和で回避する、と。

しかし、この制度は特に二つの点で不満です。なぜ、今まで不均衡を調整しなかったのか? アメリカが不況であれば調整を強要し、他国が不況でも不均衡を蓄積した、という批判を免れません。また、主要通貨間の資本移動と為替レートの大きな変動が調整過程を促す、と考えますが、それによって生じる不平等な調整コストの分担、分配の問題をどうするのか? 通貨危機の頻発や強国への市場統合、独占企業の繁栄を、社会の豊かさと同一視するのは間違いです。

現在の制度は、巨大な内部市場を持つ、主要国の経済運営にますます重要な決定を集中させ、大きな政治的権力を蓄積します。しかし、その権限を独占する者たちが責任を負うのは、わずかな国民や株主、さらにわずかな制度の基幹部分を担う人たちです。そしてその現実は選挙の誤差や心理的ショックなどにますます依存しています。


Financial Times, Friday Dec 29 2000

New economy, old politics

Moies Naim

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The Economist, December 16th 2000

A treat from Nice

The Nice Summit: So that’s all agreed, then


Discomfited Japan


Argentina: Long recession, short shrift

2001年がアルゼンチンにとって良い年であるかどうかは、300億ドルにもおよぶであろうIMF融資の成否にかかっている。

12月12日、議会は予算案を可決した。上院の反対により、政府は地域補助金を削減できなかった。また政府部門の賃金カットを翻す結果になった。これに対してはデ・ラ・ルーア大統領が拒否権を発動するだろう。また政府は、既に、知事たちと財政移転を凍結することに合意している。

こうした財政改革によって、経済成長を回復するために、IMFは短期的に財政政策の緩和を認めた。それはアルゼンチンの政府債務を拡大するが、IMFが約220億ドル融資して債務不履行のリスクをなくし、借入コストを削減するだろう。

デ・ラ・ルーアは改革に向けた政治的な支持を確保できるだろうか? また、IMFは経済成長をもたらせるのか? どちらも確実ではない。IMFが求める、現地の銀行や年金基金による政府への融資は3分の1までにすることは、少なくとも70%の削減となるだろう。デ・ラ・ルーアへの国民の支持は低下し、1995年以来、初めて銀行預金が減少した。

アルゼンチン国民は、アメリカ経済が減速し、国際的な金利水準を低下するだけでなく、ドルを安くすることで、デ・ラ・ルーアの2年目が容易になることを祈るだろう。


Mercosur: Chopping block


Telecoms in Trouble: When big is no longer beautiful


First the put; then the cut


Asian economies: The future that might have been

ドイツ銀行が発行したレポートで、アジア担当者が「2001年は、われわれが1999年に起きると予想した不況の年になる」と述べている。1999年は、アメリカの需要がアジアの驚異的な景気回復を実現し、2年にわたって年率7%の成長を可能にした。しかし今度は成長率が低下し始めた。銀行部門の弱さと、累積した政府債務を考えれば、それは深刻な事態である。

電機産業とアメリカ向け輸出に依存している国ほど、その影響は大きいだろう。アジア各国は互いに貿易しているが、その最終市場はアメリカとヨーロッパである。では、アジア域内で協力してはどうか? 貿易依存度の低いインドは悪影響を免れるし、中国の株式市場は活発に上昇している。しかし、各国・各部門によって大きく異なるが、他のアジア諸国は深刻な影響を被るだろう。ただし、数年後を見れば、その展望は明るい。

2001年の谷を決定するのは、何よりもアメリカ・ドルの動向であろう。ドルが弱くなれば、ユーロや円は強くなる。しかし、ドルへの固定化を放棄したものの、政治不安が続くアジア諸国では、通貨価値が上昇せず、むしろ低下する可能性がある。それは悪いことではない。確かにドル建の債務があるが、アジアは他の地域に比べてその程度が少ない。それゆえ、債務負担の増加よりも輸出の増加のほうが重要であろう。

アジアの中央銀行にとって、対外債務よりも、株価下落の影響がより心配であろう。