IPEの果樹園 2000

今週の要約記事・コメント

8/21-26


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日本の政治制度や、特に政治的な組織化の枠組みが、どうして大きく変化しないまま維持されてきたのか、不思議に思います。政治の世界で、年功序列や終身雇用は、大きな欠陥であったと思います。しかも敗戦で傷ついた戦後の日本人は、「ヤドカリ型」の政治行動を好み、政治的革新を極端に嫌って抑圧してきたのではないでしょうか?

アジアの貿易・通貨・経済秩序を考えると、どのような現実もそうですが、非常に多くの異なった姿に幻惑されます。経済発展や社会制度・文化の多様性は言うまでもなく、経済に限っても、単純な収斂や統合化への合意は容易に達成されそうにありません。

貿易構造を見る者もあれば、直接投資に注目する者もいます。通貨や為替レートについて、インフレ率や各国内の金融制度、アメリカの通商政策や金融における自由化政策、その反応など、さまざまな視点から、各国は類似するところもあるでしょうが、むしろ互いに競争しているように見えます。もちろん多国籍企業と中小企業との違いや、各地域による差、組織された政治集団や制度の影響力、などによって将来の目標も異なり、現実は違って見えるのです。

安全保障に至っては、深刻な対立が各地に現れており、潜在的な戦争の危険も大きいようです。中国のナショナリズムを健全に地域へ埋め込むべきものと見るか、軍事的な冒険に走る危険な徴候として日米で監視・抑制すべきものと見るか、意見が分かれるでしょう。

時々、中国を舞台としたドラマやニュースを見ますが、その都市と農村、近代的スラムの風景に衝撃を受けます。改革開放政策や近代化が実現してきたことと、今後のCatch-upの大きな可能性、そして、まだどれほど政治的・社会的な問題を克服していかなければならないか、を感じて愕然とします。アジアの地域秩序や世界の政治経済秩序が、協力と安定化によって互いの成長を実現するには、研究や相互理解が飛躍的に進み、相互に利益を拡大する経済領域への投資と協調的な調整過程が積極的に制度化されるべきでしょう。

しかし、人によっては、中国の経済規模はまだ小さく、むしろ日本やNIESの今後の調整過程が地域の秩序転換を決める上で重要である、と主張するでしょう。日本はNIESとも恒常的に協力体制を築いて、この地域の内外に、急速な秩序の調整に耐えられる合意形成と交渉の枠組みを提唱しなければなりません。

あるいは、軍事力に加えて、金融部門とIT革命で圧倒的に優位に立ったアメリカが、個別産業・企業の利益を優先した略奪的覇権の行使をあらわにして、ヨーロッパやアジアの地域主義に逆転不能な政治的プロセスを開始させるのかもしれません。

一つの理論や一つの利益、政治集団、産業転換、就職、安全保障、などに依存できなくなったことを真剣に考える人々が、アジア諸国でも日本でも、政治的革新をめざす新しい権力を担うようになるだろう、と思います。


Far Eastern Economic Review, August 17, 2000

Tariff Terminator

A free-trade agreement between Singapore and New Zealand aims at shaking up Asean

By Colin James/WELLINGTON


直接の利益がないにもかかわらず、シンガポールとニュー・ジーランドは、ASEANの貿易自由化を促すために、二国間の自由貿易協定に合意した。

シンガポールはASEANによる自由化AFTAが進まないことに苛立ち、ASEANCERをつなぐ56000万人、一兆ドルの自由な市場を目指している。他方、ニュー・ジーランドも、世界貿易が地域ブロックに分割されて、度のブロックにも属せず、孤立することを恐れている。

ニュー・ジーランドの内部には反対もある。シンガポールの自由化推進は、域内の政治的・経済的問題で自由化を遅らせる必要があるというマレーシアやインドネシアと対立する。他方、タイはAFTA-CER統合に積極的である。

シンガポールとニュー・ジーランドの自由化は地域を越えて求められる。アメリカ、オーストラリア、チリを含めたP5や、メルコスールとの統合も支持している。しかし、アメリカの態度は曖昧であり、日本は地域内の二国間協定を重視している。


The Economist August 5th 2000


The electric revolution


1980年代に通信革命を起こした技術革新と競争、選択の力が、次には電力産業に迫っている。アメリカの電力市場は2200億ドルあり、移動電話と長距離電話を合わせた市場よりも大きい。

両者の類似性はいろいろな点で興味深い。その配給網で自然独占が成立する傾向はあるが、発電を切り離せば別である。テレコム分野の競争導入は猛烈な投資と革新をもたらした。電力市場でも、自由化と環境保護、技術進歩が同じような投資と革新を促しつつある。巨大な汚染源となる発電所に代わって、より小さく、より清潔な発電が価格を下げ、世界中の電力需要を刺激するだろう。

電力革命の秘密は「マイクロ発電」である。それは小型の燃料電池とガス・タービンで発電する。この数年で改良が進み、商業的な採算点に近付いた。アメリカのGEやヨーロッパのABBのような巨大多国籍企業がマイクロ発電の興奮に湧いている。

マイクロ発電は、効率、信頼性、環境への優しさ、そして次第に価格でも、優位に立ちつつある。かつて電力輸送の膨大な費用は大量生産で賄ってきたが、各地に発電所を設けて、電力需給を調節した方が効率的である。電力供給の信頼性も高まり、環境に配慮して、その燃料としては水素や天然ガスが使える。そしてマイクロ発電は貧しい諸国に非常に有益である。かれらは巨大発電産業の時代を飛び越えてしまうだろう。

しかし、それが実現するためには、課税・標準化・規制の面で改善が必要である。すなわち、巨大な電力産業は「炭素税」を免除されたり、巨額の補助金を受けている。こうした逆向きの優遇政策は廃止すべきである。また、マイクロ発電の技術には標準化が欠けている。生産者と消費者とが同時に兼ねられるように、技術を標準化して電力の双方向の売買が可能になることが望ましい。それがないために、新規設立には時間がかかり、既存の電力配給網に安全性などの名目で大幅な料金を徴収されている。最後に、規制が混乱している。余剰電力売買の不確実さが新規参入者を抑制している。

既に巨額の投資を済ませた電力会社が消滅するわけではないが、新規の発電所建設は再考されるだろう。そして各家庭、各企業に発電機が置かれ、インターネットのように、互いに電力をやり取りできるようになる。


Engage and prosper


ソ連崩壊で、90年代は世界の新しい秩序がすべて可能であるように思われた。しかし、ソマリア、ボスニア、ルワンダを経て、いかに強力なアメリカと無力な国連が望んでも、秩序は容易に押し付けることなどできない、と理解するようになった。理想主義は消えていないが、人道的介入の問題は永久に続く。

国連の平和維持活動の歴史は、それがいかに資金も人員も制度も無かったかを示している。193945年の戦争の勝者が20世紀後半のルールを書いたように、今や21世紀のルールが書かれるべきである。そして、先の戦後秩序も、IMFや世銀だけでなく、大量殺戮や国際犯罪を裁く法廷、危険な軍事技術の拡散や武器の使用を制限する条約に基づく体制を含んでいた。

しかし、国連システムの核心であるはずのアメリカは、深刻な分裂症を呈している。冷戦の勝利は、1945年と違って、必要な指導力をもたらさなかったのである。アメリカは国連への分担金を支払わず、国際法廷でアメリカ人が裁かれることを認めず、化学兵器や核開発の国際監視活動でも、他国によってアメリカの主権が脅かされると拒んでいる。他方、アメリカの同盟諸国はしばしばアメリカに過重な負担を要求し、他方でアメリカの傲慢さを非難する。

アメリカが国益に合わせて国際ルールをつまみ食いすべきではない。第一に、アメリカの優位は永久ではないから、国際ルールの平和的な調整を実現するためには同盟諸国の間でも、外交的・軍事的な力だけでなく、モラルが必要である。また、アメリカが国際体制に深く関与することで、国際ルールにはアメリカの官僚ではなく、その民主的な要求が反映されるだろう。最後に、アメリカは「法による支配」を実現すると定められている。領土や航海圏、財の取引で国益を示す時代は去った。アメリカのように民主主義のイデオロギーとその拡大への使命を本質とした国家が、国際ルールの部外者でいることはできない。


Peacekeeping: The UN’s missions impossible


国連を国際社会の警察官として利用する考えは膨張してきたが、コソボ、東チモール、シエラ・レオーネなどで事態が悪化し、介入が拡大するに連れて、再び萎縮してきた。

自由世界の良心はますます他国の野蛮な行為に耐えられないと感じるが、それを止めさせるためには、通常、国連軍しか利用できない。しかし、この十年を通じて、安全保障理事会は国連軍に任務の遂行に必要な物を供給せずに、世界の警察官を動かしてきた。

安保理が決定を下すことも混乱に満ちているが、その決定を実行することは国連官僚の手に余る。アナン事務総長は、それができない使命であると分かれば、拒否するべきである。

最初の40年間は、平和維持活動として軍の展開を待つ間の秩序維持や、戦闘当事者の引き離し、停戦の監視に、国連軍は働いた。しかし、1980年代の末に、冷戦終結によって楽観した安保理が、人道的介入を行った。「人間の安全保障」という名目で、内戦や民族紛争にも関わった。しかし、それがソマリアでは国際介入への反発に会い、アメリカ軍は深刻な危険に陥った。民族浄化政策に安全な避難地区を確保するはずであったボスニア介入でも、結果は悲劇的であったし、ルワンダの大量殺戮では動揺する国連への信頼がズタズタにされた。

その後、国連は地域機関との連携を強調するようになった。バルカンにおけるNATOとの連携。ナイジェリアはシエラ・レオーネへの介入に西アフリカ機構を動かした。しかし、ヨーロッパ以外、地域安全保障はまだほとんど存在しない。何よりも費用を誰が負担するのか? 昨年、ナイジェリアが民主化されると、納税者は、なぜ彼らのお金がシエラ・レオーネの暗殺者同士の内戦を鎮圧する費用に使われるのか、疑い出した。

もちろん、国連軍は、加盟国の経済規模に応じて負担される財源を持っているはずである。しかし、実際には、アメリカのような重要な出資国が支払いを拒否して、国連軍に協力した最も貧しい国への支払いも出来なくなる。また、今後のように資源のある国には周辺国が介入して利権を確保しようと殺到するし、東チモールでは、ASEANが軍事的には機能しない結果、オーストラリアが主体の軍隊に出動を要請した。

国連軍を一つにまとめることは難しい。冷戦が終結したために、良く訓練され、装備も優れた軍隊を、かつて気前良く提供したような豊かな諸国(北欧諸国、カナダ、オランダ、など)が、軍事費を大幅に削減した。常任理事国の5大国は軍隊を維持しているが利用させない。そして巨大な軍隊を抱える第三世界の諸国が進んで国連に部隊を提供するが、訓練も装備も劣悪である。さらに、安保理の決定が行われない限り、国連軍は形成されず、決定があってから集めても人員や装備が間に合わない。

戦闘を終わらせても、その後、警察の治安維持活動が必要である。しかし、警察に予備の人員を待機させている国は無い。現地の社会から訓練するしかない。一国を管理することは、まったく別の問題であり、国連の肥大化を批判されている中で、最低限必要な問題に絞るべきである。

現地政府の要請で介入する、と言う原則にも問題がある。しばしば虐待される者が政府の敵であったり、国連軍に頼る政府は財政負担を引き受けない場合が多い。反政府軍に多くの死者をもたらし、その間に政府軍は増強しているだけかもしれない。また、第三世界の部隊からなる国連軍の司令部には、豊かな国から給与を得ている大佐や連隊長が多い。これでは、国連軍を介入のための陰謀と疑わせるだろう。

12ないし15名ほどの職業軍人を国連が雇用してはどうか? それは良い考えだが、世界政府に対するアメリカの拒否にあうだろう。国連の平和維持活動にできることは、軍事的な関与を拡大することではない。情報収集を改善して、どこかで紛争が起こる前に予知し、正しい政策を示すことである。


Time for chat about Taiwan?


台湾の新しい大統領、陳水篇の友好的な対応に、中国の指導者はどのように応えるのか? 中国は独立派の陳が当選することを拒否しつづけてきた。しかし、軍事的な威嚇が逆に庶民の反発を強め、大陸では戦争の危機感を高めた。

陳は就任演説で、攻撃されない限り独立は宣言しない、と述べ、中国に対話を求めた。頑なな拒否を続けているが、中国政府は少なくとも4年間、台湾の新しい指導者と共存するしかない。そして、中国側にも変化の条件が揃ってきた。

国内改革に忙しい北京の指導者たちに、台湾問題で大きな賭けに出る雰囲気はない。国営企業改革は、より厳しい第二段階に入っている。WTO加盟も控えている。より重要なことは、江沢民主席の権力継承問題である。彼は新しい政治局委員を説得して、中央軍事委員会に残り、主席辞任後も権力を維持しようとしている。そのためには台湾の危機が有利と思えないし、むしろ対話再開で政治的な利益を得られるだろう。

そのような変化を示すように、中国側は台湾との交渉窓口にハーヴァード出身の国際派を任命した。アメリカのコーエン事務官は北京を訪問して、台湾への武力行使は無いという確信を得た。外交的には中国政府を認め、台湾政府に道義上の連帯を示すアメリカにとって、「一つの中国」原則は扱いが難しい。この原則を認めるが、その定義には一致できないことを受け入れる、と言う1992年の姿勢に戻ることをアメリカは望んでいる。

台湾側は、中国政府がどのような反応を示すか、見守っている。アメリカと違って、対等な立場での交渉を求めている。陳政府は、将来の統一問題まで議論しなければならない。そこで、主権に関わる交渉を前に、相互の信頼を深めることが重要であるとして、民間交流を促す「三通政策(移動・貿易・通信の促進)」を支持した。そして、次第に軍備管理問題なども交渉に含めたい、と考える。

事態の推移は、中国側の変化に懸かっている。しかし、北京政府がいくら台湾を政治的に非難していても、中国と台湾のWTO加盟は両者の対話を必要とするのである。


/中国が拒否権を持つ以上、国連軍がアジアの紛争で中国を抑制する力にはなれない。アメリカ軍はアジアにどの程度関与するのだろうか? それはアメリカ企業やアメリカ人がアジアに参入する程度に依存するし、アメリカ政府が国際的な単一の統合化を主要国の協調によって実現しようとする意欲と能力に懸かっているだろう。

しかし、中国とアメリカの軍事力が拮抗することにだけ依存していては、軍事的危機を防げないだろう。貿易の拡大と自由化が機能的な統合を促すというのは、安全保障の枠組を前提とする。しかし、中米対話以外に何があるか? 例えば、日本の軍備拡張や国際的な平和維持活動への協力は、逆に中国を刺激しないか? アジア地域の安全保障を監視し、情報を共有させて軍拡の悪循環を抑制する地域機関は重視されるようになるか? 地域紛争や分配・分担問題で、独創的な協調型の解決策を提案し、それを機能させて利益を拡大し、将来的に共有できるか?


The selling of a candidate


大統領候補を決める共和党全国大会は、「新しい」共和党のイメージを国民という消費者に宣伝するセールスマンたちの舞台であった。共和党は民主党のように振るまい、黒人の人気歌手が歌い、皆は飛び跳ねて踊った。プロ・レスラーも居たし、スペイン語だけの挨拶をする代表や、マハトマ・ガンディーの孫も居た。ゲイであることを公表した最初の共和党議員も演説した。

たとえ民主党でも、これほど恥知らずな生物学的混交を示したことは無い。何でもあり、と、思いやり。とにかく共和党は勝ちたいのである。しかし、共和党は変わっていない。ニュー・ヨーク・タイムズの調査は、共和党の選挙代表たちが今も、白人の、裕福な、拳銃保有者で占められていると示した。

伝統的な支持団体は、主要な綱領が実現されることを確信している。だから、共和党が中間層や新しい支持者を獲得して政権を取る戦略にも理解を示す。しかし、何百万人もの視聴者にアピールできる、というのは間違いである。多くの者はスポーツを観ており、共和党大会のTV中継を観たのは200万人、選挙人の1%に過ぎない。

しかし、この大会が偽善である、と言うのではない。限界的な投票者は平均よりも極端な見解を持っており、こうした者に共和党が投票に値すると確信させる必要があるのだ。選挙は市場の拡大を目指す戦略と一致する。

共和党の支持者たちが大統領を望んでいる気持ちが強いほど、彼らは統一を乱そうとしない。だから、こうした拡大戦略が採れるのである。ブッシュは「思いやり」路線や教育改革問題で、かつてクリントンが奪った郊外の婦人層を狙っている。また、黒人の好感を集めて中西部の黒人票も集めている。要するのブッシュは、1996年にクリントンがやっとことを逆にしているのだ。楽観的には、共和党の新しい政治的支持同盟が形成されつつある、とも言える。

それは勝利の方程式なのか? こうした問題は伝統的に民主党が扱ってきた問題であり、争点として不利かもしれない。共和党支持者も、ブッシュの姿勢を必ずしも信用していない。市場戦略は、市場の答えを待つしかないのだ。


Illegal immigration: Worth dying for


アメリカ・メキシコ国境では、カリフォルニア南部の鋼鉄の壁、リオ・グランデ川と、アリゾナの砂漠が移民を防いでいる。アメリカ移民帰化局INSがカリフォルニアとテキサスの国境に集中して監視を行う方針を示してから、アリゾナ砂漠を渡ろうとする者が急増してきた。国境警備隊のツクソン部局では過去9ヶ月間で52万人を拘束した。

しかし、砂漠の越境は一層の悲劇をもたらす。水分不足や熱射病で死者が続発し、昨年から創作救助隊が結成された。移民斡旋業者は移民希望者を騙し、引き受けても、危険を察知すると彼らを砂漠に置き去りにする。例えば、茂みで死にかかっていた二人は小便を袋に貯めて渇きを癒していた。また、救出された幼児が生き延びれたのは、死亡した母親が最後の水を子供に与えたからであった。

こうした悲劇も、決して移民を抑制しそうに無い。送り返された者は再び試みるだけである。スピード違反の切符を切られたようなものだ。


Europe’s migrants: Riding the tide


戦乱や飢餓、多くはその両方を逃れるために、アフガン、シエラ・レオーネ、クルド、スリ・ランカ、などからの移民を積んだ船が、トルコを出て、ギリシャで食糧を積み、イタリアのカラブリア海岸に向かった。ここには昨年二万人の移民が上陸した。

現在のEU議長国であるフランスは、共通移民政策を求めているが、それは容易に実現できない。今後、50年間で、500~7500万の移民流入が予想される。そしてヨーロッパの都市には貧しい第三世界の住民が増えてくる。しかし、その分布は一様ではなく、各国の対応もさまざまである。

急速に高齢化するイタリアやスペインは、農業などで移民を必要としている。しかし、ドイツ、フランス、イギリスは、熟練技術者だけを必要としている。貧しい移民船に乗ってくる人々の中には、こうした技術者の資格を持つ者はほとんど居ない。


/どれほどハイテクや世界貿易が賛美されていても、移民たちの厳しい現実は社会の統合化により多くの資源配分と強制的な介入が必要なことを示している。しかし、各国家の目標は一致せず、再分配を組織する世界政府も無い。


Bulls, bears and Greenspan


グリーンスパンは、金利の変更において、株価は目標に含まない、という。しかしこれは「連銀には従え」というウォール街の信念と異なる。実際、今年のように金融政策が引き締められたとき、株価は動揺し、1987年のLTCM危機後に金融緩和した時期には、株価が上昇したのだ。

しかし、アメリカの景気が減速したのでなければ、グリーンスパンは金融引締めの終わりを確信できない。そしてウォール街にも慎重な観方がある。特に、マネタリー・ベースの水準がどうなるのか、グリーンスパンは説明していない。ミレニアム・バグで昨年末に大幅な通貨供給を行った後、過去4ヶ月は増加しておらず、今後も増加しない場合、12月に前年度比マイナスに転じる。

株価は、金融政策がどうなろうと、既に歴史的な過大評価に達している。機関投資家の資金はこれ以上株式市場に向けられないし、個人投資家もファンダメンタルズで売買している。投資銀行は株が儲からないので、債権市場に向かいつつある。そして確かに、ファンダメンタルズが良好でも自社株を買い戻す十分な資金を持たない経営者や投資家によって、高収益の社債が発行されるだろう。これに資金供給すると言う意味で、グリーンスパンは合理的な豊かさを刺激することができるかもしれない。


/金融市場の内的関連について間違って理解しているかもしれません。ご指摘下さい。


Asian economies: Stragglers


日本以外では東アジアの経済状態は改善し、3年前の経済危機が再来するようには見えない。しかし、危機の解決が長引いていることも確かだ。特にインドネシア、タイ、フィリピンでは債務問題が解消しない。

これら3カ国は今年36%の成長を遂げているが、通貨には売り圧力が強い。インドネシア・ルピアは昨年末の1ドル7000ルピアから9000ルピア近辺まで今では下落している。タイ・バーツも1ドル36バーツ近くまで上昇した後41バーツ以下に減価している。フィリピン・ペソも1月のピークから11%下落して1ドル45ペソ辺りにある。

1997年には、投資家は短期の外貨建債務と国内の大幅な投資過剰、特に不動産バブルが破裂することを心配した。今では、政治的リスクが懸念されている。インドネシアの民主主義は脆弱で、暴力がはびこっている。フィリピン政府は銀行の処理に失敗し、タイでは選挙が近付いている。

投資家の関心が政治に向かうのは、金融破綻と債務処理問題の失敗が続くからである。特に、シンガポールのDBSが一部を所有するようになったタイのDBSタイ・ダヌ・バンクは、306億バーツの不良債権を二つの債権回収会社に売却した。問題は、その売却価格が額面のわずか29%しかないことである。それは金融部門再生委員会(FRA)の割引率とほぼ等しく、タイの金融部門がほとんど債務処理を進めてこなかったことを示した。通貨危機後、3年経っても、タイの銀行部門の不良債権率は35%以上もあり、多くの再編された融資も、二度、三度と返済不能になっている。

フィリピンは通貨危機の最悪の事態を免れたが、その中では最も悪質な融資を拡大していたフィリピン・ナショナル・バンク救済に政府が関与したと疑われている。IMFも世銀もこの銀行を倒産させるべきだと注意していたが、最近の競売では、政府が30%を保有し、大統領の側近、ルキオ・タンが買収することになった。誰も他に買い手は居なかった。

マレーシアでも、政府との結びつきが銀行の回復に関係している疑いがある。しかし、政府は不良再建の削減に成功したので、短期的な予想は良好である。他方、韓国はチェボルの債務処理に危険信号が出ている。1999年末までに債務・自己資本比率を200%以下に抑制することはできなかった。しかし、韓国の金融監督は強力であり、不良債務を処理させるだろう。

債務累積問題が三カ国を回復不能にするとは限らない。輸出が好調で、近隣の豊かな諸国が援助すれば、たとえアメリカ経済が減速しても、回復は進められる。通貨が大幅に下落しなければ、インドネシアやタイの消費回復が経済状態を改善する。しかし、この地域の景気循環が下降に転じれば、債務処理の成否が各国にはっきり現れるだろう。