IPEの果樹園 2000

今週の要約記事・コメント

6/18-25

Financial Times June 13 2000

Signs of Korean harmony emerge

韓国で高まる楽観論は、政治指導者にそれが挫折するときの危険を懸念させる。

ピョンヤンもソウルも、この首脳会談を、朝鮮半島の運命を外部勢力の介入から解放するチャンス、と見なしてきた。中国、アメリカ、日本、ロシアが、彼らの運命を握ってきたからである。韓国の野党は、この会談がナショナリズムというパンドラの箱を開けたことで、それが過熱し、アメリカや日本との同盟関係を弱める恐れがある、と述べた。北朝鮮のイデオロギーが韓国のナショナリストたちに同調者を見出すのだ、と。

南北の融和は、韓国における金正日のイメージを、悪魔の化身から、長く生き別れであった兄弟へと、劇的に変化させた。南北朝鮮が協力して、かつての植民地支配者である日本を攻撃する核爆弾を開発する、という大衆向けアクション映画が、北朝鮮に関する好意的なドキュメンタリーといっしょに、韓国では放映されている。

(コメント)多くの記事は、南北会談の表面的な大成功の本当の意味を評価することは、将来の交渉と実行次第、という点で、判断を保留したようだ。金正日や北朝鮮の社会体制に関する従来のイメージと極端に異なったイメージを、制限されたマスコミ活動や政治指導者の相互賞賛、成果の誇示だけで判断することには、当然、慎重である。

南側は、戦争の脅威を減らし、国民感情が先鋭化している「離散家族問題」と、民族の悲願である再統一に向けた話し合いを始めたかった。北側も、飢饉を繰り返す中で、国民生活を改善し、しかも政治体制や権力の正当性を傷つけない支援策を受け入れる必要があった。

モスクワはベルリンの壁を崩壊させるままにして、自国の政治体制をも転覆された。しかし北京は、香港の主権を回復し、台湾の再統一も求めている。金正日は北京に行って、市場開放と政治体制の維持とを両立させる方策について相談した、と思う。中国の現在の指導部は、アメリカ議会の恒久的最恵国待遇承認を受けて、WTO加盟と市場開放による国内改革を目指す点で、朝鮮半島の緊張緩和を支持しているだろう。

朝鮮半島が国際政治経済の強い影響下にあるとはいえ、南北の指導者が共通に目指す政治的目標は<民族の自立>である。中国とアメリカの関与が暗黙のうちに相互承認されるなら、両国政治指導者たちの関心は、民族の共通の歴史的な記憶、植民地支配の苦しみや悔しさに向かうだろう。すなわち既に開始された<統一政治>は、日本が積極的に貢献できなければ、容易に、統一朝鮮の最も憎まれる隣国として、日本を意識させるのである。

それは、中国やアメリカが積極的に再統一の条件を醸成できたのに比べて、日本の国内政治や経済状態、国際的発言や行動が、過去の忌まわしい記憶を今まで払拭できなかったことを意味する。日本政府は今も植民地支配を悔いておらず、日本の戦前からの連続性・不変性を誇示する、という姿勢を変えていない。

民主化運動の指導者であった金大中は日本から拉致され、暗殺されそうになった。北朝鮮のミサイル発射・核開発問題でも、アメリカ政府に交渉を依存した。「国体擁護」を主張する首相や、中国政府を挑発する東京都知事など、日本の政治家の偏狭さ。アジアの相互交流や信頼関係は、ビジネス以外の分野で、日本ではなく、むしろアメリカが担ってきた。中国の民主化運動が「日本人ビジネスマンを殺そう」という呼びかけに変わった、という指摘すらある。天皇や皇太后が死んだとき、国内のニュースがこぞって平和の象徴であるかのように報道することでさえ、アジア諸国は異なった感覚を持っただろう。

日本が、将来に向けて過去の反省を明確にすることは、出発点である。広島の原爆ドームに修学旅行で子供たちが行くように、アジア各地に戦争記念博物館を建て、日本の子供たちを連れて行って平和教育をしてはどうか? そして、すべての戦死者に対して献花し、この地域の平和に貢献することを教えるのである。

さらに、南北統一の経済過程に貢献する方法が多くある。ドイツの再統一が示す教訓とは、南北朝鮮が政治的な統合化を急ぐことは経済的な負担を膨らませる点で採用できないこと、また地域の政治経済秩序の安定化を進める中でしか長期的な目標に関する交渉は維持できないこと、であると思う。連邦制と部分的貿易自由化で南北が合意すれば、漸進主義的統合化と地域安定化の国際的枠組みを築くために、日本は積極的な提案と負担、行動を示すべきだろう。

The Economist June 3rd 2000

Losing their sparkle

デ・ビアスにとって最悪の事態は、ダイヤモンドの洪水 “a flood of diamonds”ではなく、血まみれのダイヤモンド “blood on diamonds”となった。このダイヤモンド巨大企業は長年にわたって世界の供給を操作し、高値を維持してきた。在庫を積み増して価格下落を防ぎ、インフレを越える価格上昇を演出した。これもすべて、消費者に「ダイヤモンドは永遠に」という宣伝文句を信じ込ませるためである。デ・ビアスはカルテル維持のために、世界の隅々から、たとえソ連であれ誰であれ、問題にせずにダイヤモンドを買い集めた。

それが今や最大の問題である。少なくともアフリカにおける三つの戦争がダイヤモンドに関係している。反乱軍はアンゴラでもシエラ・レオネでも、ダイヤモンドで武器を購入する。その結果、和平合意は失敗してきた。国連は反乱軍の資金、すなわちダイヤモンドを、彼らから切り離そうとしている。イギリス政府の支持で、「紛争地のダイヤモンド」に関するキャンペーンが始まった。そして、動物保護団体が毛皮産業にして来たことを思い、ダイヤモンド業界も震え上がった。

消費者団体がデ・ビアスのカルテルを粉砕して、ダイヤモンド原石の自由市場を創るなら、それは素晴らしいことだろう。デ・ビアスに反トラスト法を適用しようとしたのはアメリカだけである。デ・ビアスの集中販売組織があるヨーロッパなら、もっと多くのことができるはずだ。たとえ反トラスト規制が働かなくても、新しい供給地がカルテルに圧力をかける。しかし、それは数年を要し、その間、上昇するダイヤモンド価格が紛争地により大きな軍資金を与えることは喜べない。

短期的に反乱軍に資金を与えないために何ができるか、が問題だ。デ・ビアスは紛争地域からの原石を購入しないことにしたという。また、ダイヤモンドの世界市場があるアントワープは、その販売しているダイヤモンドが「血にまみれていない」ことを示す保証書を出すようになった。仲買人や他のオープン市場もこれに追随するだろう、とデ・ビアスはいう。

それは良いことだ。デ・ビアスにとっても良いことである。デ・ビアスは高級ブランドとしてダイヤモンドの販売を模索している。しかし、他方で、多くの原石は単にアントワープやロンドンからテル・アビブやムンバイへ迂回するだけだ、という証拠がある。反乱軍は少し安売りするだけで、国際的な協調行動がさらに必要である。すなわち、すべての原石を外部の団体にも検査させて、保証することである。デ・ビアスは、一旦、カットされれば、原産地は分からない、と反対してきた。しかし、専門家によれば、それは嘘だ。

ダイヤモンドの取引は今までほとんど規制されてこなかった。密輸されたり、盗まれたり、非合法に採掘されたダイヤモンドでも、アントワープに入って来れた。ベルギー政府やEUはこのことについて黙っている。他の市場、例えばイスラエルやインドはさらに悪い。これらを改めて、税関は入口でダイヤモンドを監視し、原産地保証と評価額登録を義務付けるべきだ。デ・ビアスや他の大企業も、ダイヤモンドを反乱軍の殺戮による鮮血に染めないためには、協力しなければならない。

イギリス政府は軍隊をシエラ・レオネに送って反乱軍と対峙しているから、この問題に特に真剣である。デ・ビアスは貯蔵しているダイヤモンドや輸出入に関して詳しい情報を公開しないが、それは改めるべきだ。

Emerging sickness

ほんの2ヶ月前には、エマージング・エコノミーの見通しばら色であった。韓国は2000年第一四半期に12.8%の成長を実現し、香港も14.3%であった。ラテン・アメリカは9910月から20003月まで、年率7%で成長した。しかし、過去数週間で、新しいブームの話は色あせ、アメリカの株価や世界の金利上昇、ドル高やアメリカの景気減速が、むしろ不安な影を広げた。ブラジルでも韓国でも、株・債券の価格が下落し、通貨が弱くなっている。

高金利は資本の流入に対するコストを増加させ、アメリカ経済の減速は輸出を停滞させるだろう。さらに世界的な不況になれば、国際商品価格が下落する。前回、Fedが金融を引き締めたときには、新興経済の債券市場が崩壊し、メキシコに始まって、ラテン・アメリカ諸国すべてがテキーラ危機に陥った。

しかし、歴史は必ずしも繰り返さない。メキシコ危機以来、投資家もエマージング・エコノミーも多くを学んでいるからだ。アジア危機を経て、すでに資産価格のバブルは抑制されていたし、投資家が保有するリスクの高い投資額も抑制されている。投資額が小さくなっただけでなく、より浮動的でない、直接投資などの形で流入している。

エマージング・エコノミー自身が脆弱さをかなり克服してきた。最も顕著な変化は為替レート制度の弾力化である。理論上は、自由な変動が通貨価値の下落を緩和する。しかし、実際は、変動の自由が誇張されている(変動制を実施していない)。通貨価値の下落とインフレの恐怖は、ラテン・アメリカ諸国の金融政策を引き締めさせた。そして、アルゼンチンや香港のような、硬直的な為替制度を採用している諸国では、アメリカの金利上昇がただちに高金利をもたらす。

しかし彼らはより大きな流動性と強化された金融システムで対抗できる。経常収支の赤字は小さく、アジア諸国は大きな黒字を出している。財政赤字は削減され、国債発行は減った。短期借入れの比率は低下し、各国は銀行システムの強化を急いでいる。たとえ国際金融システムの改革が進んでいなくても、各国のこうした努力はきっと金融破綻を防ぐだろう。

各国がなすべきことはまだ多い。アジアでは金融部門や企業のリストラを、ラテンアメリカでは国内貯蓄の増加を、急ぐべきである。不公平に見えるだろうが、弱者ほど大きな傷を負うのであるから。

Missile Defences; A shield in space

アメリカはアラスカの小島に超高感度レーダー基地を建設し始めた。これはミサイル防衛網への最初の一歩である。ペンタゴンの他のミサイル防衛計画に比べて、これはアメリカ全土に及ぶ点で画期的である。その国際外交における意味は非常に大きい。なぜなら、この行為は、米ソ間で合意した、長距離核兵器に対する他の防衛システムをどちら側も作らない、という1972年のABM条約(the Anti Ballistic Missile treaty)に違反するからである。

その合意は、どちらにも第一撃を保証する意味で、冷戦の遺物として時代遅れだと、アメリカの右派から攻撃されている。他方、ロシアや中国は条約を破棄するものだと恐れている。なぜなら、彼らのミサイルが防衛網で無力となるのに、アメリカはいつでも容易に核攻撃できるからだ。

アメリカは二つの選択肢を持っていた。一つは6ヶ月の猶予期間を経て、この条約から正式に抜けることである。共和党議員は喜ぶかもしれないが、それはロシアや中国との関係を破壊し、大西洋同盟にもひびを入れる。他方、クリントン政権は残りの任期で、ロシアを説得して、自国のミサイル防衛システムを可能にする条約の変更を受け入れさせようとしている。そのためには、このシステムが北朝鮮やイランからの少数のミサイル攻撃に有効なだけで、ロシアからの一斉核攻撃には無効であることを、ロシア政府に確信させる必要がある。

アラスカの基地は、まだほんの始まりであって、ノース・ダコタ、グリーンランド、イギリス、韓国、などにも建設が計画されている。最終的には10年で、250の迎撃ミサイルを用いて、数十のミサイルを打ち落とせる、という。

STAERUやATAERTVを実現しても、ロシアはこの防衛システムに関係ないだけの核ミサイルを保有している、とアメリカ側は言う。しかし、このメッセージは、ロシアを膨大な核兵器の引き金に紙一重で縛りつけるだろう。西欧の同盟諸国は、ABMの対立がロシアや中国との関係を悪化させることを心配している。

アメリカの計画は2005年を当面の目標にしているが、これは北朝鮮のミサイル開発というより、ゴアの選挙支援を意識したものだ、と言われている。ゴアはアメリカの家族を防衛することに熱心ではない、というブッシュからの攻撃を迎撃するためである。また250発の迎撃ミサイルというのは、共和党の主張するABM破棄と、陸上だけでなく、海洋、宇宙のミサイル防衛システム建設案に対抗するために、必要な規模である。

では、アメリカの市民や世界は、このミサイル防衛網でより安全になるのか? それともさらに危険な世界に住むのか? それは三つの問題に関わっている。無法国によるミサイル発射の脅威はどの程度本物か? ミサイル防衛システムは実際に役に立つのか? この計画を進めることの政治的・外交的なコストは何か?

まず、核や生物・化学弾頭ミサイルを使用する可能性は、世界の20ヶ国以上に及ぶ、とペンタゴンはいう。しかし、アメリカに届くほどの長距離ミサイルを開発できる国は少ない。ロシアと中国以外に、北朝鮮が入るだろうし、多分、イランも、そしてイラクの可能性もある。しかし、本当にアメリカに向けて発射するだろうか? 地域紛争にアメリカが関わって、一方の国が発射することはあるかもしれない。しかし、それは既に十分監視されている。むしろ、可能性が高いのは、海外の米軍基地を攻撃することや、大量破壊兵器をミサイル以外によって持ちこむことであろう。ミサイル防衛網は膨大な支出を緊急性がないことに費やし、深刻な外交的コストをもたらす。

それは役に立つのか? 一つの迎撃ミサイル基地に20年間で270億ドルを支出する。議会の予算局では、追加の衛星などは除いて、システム全体を年500億ドルを見積もっている。ペンタゴンは、それぞれ1億ドルをかけて、関連する二つの実験をしたが、一つは成功し、もう一つは厳密には失敗であった。2005年の計画目標は、重要な部分で技術が間に合わないだろう。さらに、このシステムは、特に大気圏外での模造ミサイルによる妨害を処理できない。大気圏に出る前に迎撃するには、海上発射が必要になるが、それはほとんど不可能なABM条約の変更を意味する。それを解決する空軍の空中発射レーザー開発計画は、成功する保証もないが、もちろんロシアの破滅となる。

アメリカのミサイル防衛網建設は、外交的・経済的・軍事的なコストを伴う。グリーンランドでは、レーダー施設の拡充が攻撃目標となることを心配している。カナダは、自国が防衛網にすべて覆われない限り、進入するミサイルの追跡を行うことはありえない、と激怒している。NATO諸国は、アメリカがヨーロッパの同盟諸国を切り捨てる気だ、とイライラしている。中国はこの計画が中国に対するものであり、新しい冷戦を意味すると言明して、自国のミサイル増強だけでなく、ミサイル技術の輸出で対抗するという脅しをかけている。アメリカ議会では、共和党のタカ派議員が、ABM条約を維持するためのロシアとのいかなる妥協も、ただちに議会が潰すだろう、と脅している。

ロシアの提案は、ミサイル発射に関する国際的な情報交換協定を「幅広い国際的な参加国」によって取決め、無法なミサイル生産者には商業的な宇宙開発計画に参加させたり、安全保障を約束して、そのミサイル開発計画を放棄させる、というものだ。アメリカは安全保障の約束を拒み、ミサイル開発を行う諸国に公式の賞与システムを設けることに反対している。情報交換協定をワシントンとモスクワ以外に拡大することには賛成している。

従来から、MADを解決するために提唱される防衛計画であるが、もし失敗すれば、無法国からのミサイルを防げる保証も無いままに、世界は大きな外交的コストを支払うことになる。(軍事大国間の緊張)

(参考)MAD;相互確証破壊戦略;第一撃に対して、なお相手国を完全に破壊できる第二撃の報復を行えることが確実である限り、核攻撃は抑止されるという考え方。

Argentina; No fund of love for the IMF

アルゼンチンの人々は、今週、IMFの代表たちを、今までにない大群集で迎えた。531日に大統領官邸の外に集まった40000人のデモ隊は、彼らが歓迎されていないことを分からせただろう。長い緊縮政策の押し付けに怒っているのは労組だけでなく、教会の指導者も、政権側の国会議員もそれに加わっていた。

最近では、デモの2日前に、政府支出の93800万ドル削減が行われた。公務員の供与切下げや年金削減、国営企業への予算削減で行われる。IMFと合意した財政赤字の上限を超えないようにするためである。政府は経済に影響しないというが、デモ隊は満足しない。政府の支持率は11%に下落している。

IMFが責められるとしたら、もっと早く警告を発するべきだった、という点である。メネム政権下のアルゼンチンは経済が年5%で成長し、この地域で最初に大規模な民営化を行っていた。しかし、他方で、IMFは政府が財政支出を5年で50%近く増やし、債務累積を二倍以上に増やしたことに黙っていた。1998年後半に経済が減速し、現政権がそのつけを支払っている。

国家情報局長官フェルナンド・デ・サンティバネスは、今や経済問題の最高会議を率いている。彼は、赤字削減を、IMFが求めなくても、当然誰でも対処すべき長期的な問題である、という。医療制度の規制緩和、地方への財政移転削減、将来の年金引下げ。アルゼンチンはいつまでも借金に頼れない、という単純な合意である、という。しかし、反対する閣僚もいる。ラウル・アルフォンシンはIMFの政策を強く非難した。11人の与党議員も、今回の支出削減に反対した。

サンティバネスは、削減すべきかどうかではなく、何を削減するかで対立しているのだ、という。IMFの警告自体が問題ではなく、過去に何度もIMFとの合意を守れなかったことで、カントリー・リスクが高まり、将来の民間融資が受けられない恐れがあることが重要なのである。政策変更を求めているのは、IMFではなく、海外投資家である。

1991年以来、アルゼンチンはUSドルと通貨の1対1交換を保証してきた。しかし、これは最近の事態でコストをもたらした。ブラジルが17ヶ月前に通貨を切下げ、不況が続いた上に、今度はアメリカ経済が減速するだろう。そしてとうとう、忘れたはずの言葉、「通貨切下げ」が話題に上ってきた。まだ抑えられているが、赤字に苦しめば、世界中の関係者は心配し始めるだろう。彼らはラテンアメリカで失敗してきたから。

A dual act by Europe and America

アメリカとEUとの間の情勢を知りたければ、ブラッセルのアメリカEU大使の作業量を見ることだ。数年前は、その仕事の9割を貿易・投資の問題が占めていた。しかしそれは今や半分になり、防衛・安全保障問題が残りを占めている。

新しい配分はリスボンの会合で明らかになった。防衛問題が重視され、クリントンのおそらく最後のヨーロッパ歴訪が準備された。通商摩擦が重要であることに変わりないが、防衛問題もまた重要になったのだ。アメリカがヨーロッパの安全保障で占める重要性は変化しておらず、むしろヨーロッパ諸国がアメリカの独自なミサイル防衛計画を心配している。とはいえ、余り強く主張して、ロシアと事実上の協力を示すことは避けたいのだ。アメリカの側も、ヨーロッパによる安全保障体制の主張を心配している。アメリカは、世界の主要同盟国として、EUと衝突したくないのだ。

アメリカはEUの防衛政策が国際安全保障を満たすためだけに行われることを望んでいるし、EUに加盟していないトルコにもNATOとして十分な配慮があることを求めている。しかし、EUは、NATOと意見が食い違った場合に、どうするのか? EUが十分な軍事力を持つまでは、答える必要もないだろうが。

フランスの指導者はEUNATOに代わる長期的な防衛機構と見なす傾向がある。しかし、イギリスは補完物もしくは予備と考えている。2000年後半から、フランスがEU議長国となり、NATOとの関係も調整する。シラク大統領は、ヨーロッパ各国政府に60000台の移動部隊と、南東ヨーロッパ地域に必要な特別軍を要請した。

両者の類似性が、同盟と同時に対抗をもたらす。不統一なヨーロッパが世界により大きな発言権を求め、なすべきことを知っている以上にアメリカが大きな発言力を保持しているが故に、衝突は起きるであろう。アメリカのEU大使は多忙であり続ける。

Japanese chip makers; All together, charge

半導体産業の激しい加熱と破綻の循環boom-and-bust cycleは、数年前にマイクロ・チップの価格が暴落したときなぎ倒した日本の巨大電機グループを、ふたたび黒字に戻しつつある。移動電話、デジタル機器、ネットワーク設備が半導体不足をもたらし、価格を高騰させているからだ。しかし、3月末までの各企業の決算が明らかにしたように、日立、東芝、NEC、三菱電機は膝まで赤いインクに漬かっている。そして「シリコン・サイクル」がまたやって来る。

3年前の価格が底に達したときは、あの日立でさえ倒産に瀕していた。各社の大幅な赤字を思えば、むしろDRAMチップ価格の急速な回復に驚かされる。この5年間の生産ライン統合や工場閉鎖を経て、日本の半導体工場は今のブームに対応できる余剰生産力が無いことを心配している。そして各社は一斉に設備投資に踏み切った。

しかし、日本の半導体産業はまた失敗を繰り返すのか? 今回、彼らは違う、と誓っている。世界的に供給不足になっているのは旧式のDRAMではなく、デジタル機器にますます使用されている「システムLSI」デヴァイスや「フラッシュ」メモリー・チップである。こうした製品のマージンは決してカミソリのように薄くはなっていない。(不況が来てもマージンの増減でより多く対応できる。)より確かなことは、日本企業が投機的に動かせる資金をもはや持っていないために、投資コストを分担していることだ。

もっと深刻な問題は、日本企業がこの意外な収益に満足して、痛みの伴う改革を止めてしまうことである。製造工場を外注してしまうような「ファブレス企業」は無いし、他社のチップ製造の「鋳型」となるような技術を開発するわけでもない。そしてどの会社も、儲けの薄い分野から高度な分野に移ると話している。

目を閉じれば、90年代初めの情景が見えるだろう。(日本企業は再び「シリコン・サイクル」の餌食になる。)

To the brink, and back again

経済は好調で、インフレの兆しも無い。ところが再び、韓国の金融市場がひどくきしみだした。巨大な資金仲介者に取り付けが生じ、銀行家は金策に転げまわって、株式市場も惨めなものだ。今週は一時的に、金融危機の瀬戸際まで戻ってしまったようであった。

当面の問題は、現代財閥である。創業者家族は460億ドルに達する債務の削減と投資家の信頼回復に失敗し、債権者がグループの分割と経営からの家族の退陣を求めた。526日に、交渉は完全に決裂した。現代企業2社に対して短期融資の書き換えが拒否されたのだ。それを他の融資で埋めたものの、株価が6%も暴落した後であった。今週、再建策と創業者の引退が漸く発表された。しかし、韓国金融界の病根は全体に及んでいる。

現代の最近の問題は、現代投資信託・証券会社の健全さが4月に疑われだしたことから始まった。この会社も、他の同様の会社も、昨年倒産した大宇の発行した大量の債券やCPに投資していた。現代投資信託は12000億ウォン(11億ドル)の金融不足が生じ、今年中に3兆ウォンの債務を支払わねばならない。

投資信託会社は韓国の金融的安定性を根本から蝕んでいる。それは財閥企業全体と相互に株式や債務を保有している。1997-98年の金融危機後、政府が財閥内部の相互債務を減らすように求めた結果、統計的には株式総額の200%以内に債務を削減した。しかし、それは財閥の投資信託会社に保有させただけである。銀行も大量にその社債を購入し、株式を引き受けてきた。彼らはすべて生死をともにするのだ。

政府が投資信託を公的に救済するようにも見えた。しかし、現代などの財閥に対して、政府は厳しく対処してきた。政府は株主が負担をもっと受け入れることを望んでいる。そのうちに投資家の投資信託会社に関する信頼が急速に失われ、資金が大量に流出した。その資金は、財閥に融資してきた銀行に向かわず、財閥の株式を吸収してきた株式市場にも向かわなかった。政府は財閥を改革する圧力に利用しようとして、この作戦が裏目に出た。それは以前の通貨危機に戻ることを意味しないが、韓国の黒字は輸入の急増ですぐに打ち消され、資本流入に依存するようになるだろう。その場合、金融システムが重要になる。

政府は、金融部門の清算に必要な財政支出の規模を、議会に対して明確にしたがらない。既に100兆ウォンが支出されており、さらに30兆ウォンが必要というが、これでも小さすぎる。国会の承認を得るために財源問題で政府は手間取っているが、投資信託会社の火山は間もなく噴火するだろう。

China; Getting their skates on

3500USドルの中国株式市場は東京に次いでアジアで2番目の規模を持ち、中国の庶民にも人気がある。4900万人が投資しているにもかかわらず、そこには深刻な欠陥が幾つもある。インサイダー取引、少数株主の権利、国営企業優先、企業会計の曖昧さ、高債務と低利潤、アジアで唯一上昇を続けているが、外国投資家は排除され、低迷した外貨建のB株市場でしか購入できない。

中国の証券規制委員会(CSRC)は、ツゥ・ロンギ首相に指名された指導的リベラル派の女性がトップに就いた。CSRCは旧来のイデオロギーに従わず、豊かな諸国と同じく、ハイテク・高成長企業のための店頭市場を開きたがっている。それは国営企業に支配された株式市場を打ち破り、より大きな会計責任や公開性を求めるだろう。またリスクを処理できる金融デリバティブを発達させ、そのために中国企業が新しい技術に習熟することを助ける外国ファンド・マネージャーやブローカーの誘致を図っている。

中国や店頭市場を設けたり、インターネット・バブルに興じるとしたら、世界で最も投機的な試みであろう。しかし、その背後には政治的問題がある。株式市場を管理することで国営企業に資金を集めている今の制度が、店頭市場によって民間企業に資金を奪われてしまうかもしれない。制御できない資本流出の流れに関する政府の恐怖心が、中国に海外との資本取引を禁止させている。今や、インドや台湾を参考に、改革派は「厳選された外国機関投資家」に上限付きでA株購入を認めることを考えている。WTO加盟により金融部門の競争が始まることに備えて、外国ファンド・マネージャーに地元企業とオープン・エンド型信託を運営させ、さらに合併企業も考えている。

しかし、外国の機関投資家が購入したがるような、国際的基準で見て洗練された企業が、中国市場にはまだ無い。この面でもCSRCは、外部顧問である香港証券・フューチャー委員会の元長官の指摘する、台湾をまねたすべての上場企業の株式を購入させる方法や、国営企業も含めて、完全な独立監査役を置くこと、を考えている。

その背景には、アメリカの議会におけるPNTR法案があるし、同時に、内部からの必要性があった。民間企業は資本不足に苦しんでおり、また中国政府は年金制度の将来の危機を恐れている。それは高度な金融能力を持った投資機関と発達した金融市場無しには解決できない問題である。それまでの間、国営企業も年金の負担に耐えるしかない。