IPEの果樹園 2000
今週の要約記事・コメント
6/1-7
Financial Times, May 26 2000
Toshiba faces China protest
By James Kynge in Beijing
欠陥商品の疑いがあるコンピューターの補償を東芝が拒んだため、消費者と公営放送が東芝に対する猛烈な抗議を始めた。東芝はアメリカでフロッピーの操作不良を訴えられ、顧客への補償として10億5000万ドルを支払うことに合意した。それを中国人は差別だと憤慨している。中国で最も有名な消費者運動家は、「東芝製品を生涯にわたって二度と買わないだろう」と述べ、外国企業すべてにも中国の消費者を正しく扱うように警告した。
中国の日刊紙は、アメリカ人の顧客に「補償金」と書いたドルの山を積んで頭を下げる東芝重役と、その後ろで待たされたままの中国人顧客を描いた漫画を掲載した。東芝製品は店頭から下げられ、IBMなどアメリカのコンピューターを並べた店もある。「東芝の評判はもうお終いだね」と店員は言う。 e-commerce大手のSparkiceが、もはや東芝製品は売らない、と言明した。そのホーム・ページには1930年代・40年代の対日戦争の記憶が東芝の今回の行為と並べて指摘された。
3人の北京の消費者が日本企業を訴えていると言うが、訴訟が受理されたかどうかは分からない。東芝は中国のノート型パソコン市場の最大手であり、過去5年間に20万台を販売し、22%のシェアを持つ。
東芝の広報担当者は幹部の公的な説明で十分だ、とそれ以上はコメントしない。その幹部の説明によると、東芝はいかなる欠陥にも法的責任を認めないが、100億ドルの集団訴訟が起きたテキサスでの特殊なケースとして「補償」を支払った、という。
/アメリカの訴訟社会、中国の集団抗議社会、そして反日感情。さらに多分、中国民間人への日本の賠償責任問題が中国人の記憶にはある。アメリカによる最恵国待遇の議会承認直後、今後のWTO加盟を目指す中国政府と競争が厳しくなる国営企業の不満。なによりも十分な説明と、訴訟や交渉、政治的な発言力に欠ける日本社会や企業の姿勢。
日本政府が国際社会において果たせる役割以上に、日本企業が市場において拡大し続けることなどできない。撤退を決意するのも必要な選択肢だと思う。その代わりに、中国市場の開放と輸出拡大、国際ルールによる技術移転、などを通じて、日本の成長や企業展開を多面的に行えるだろう。市場シェアの拡大競争は、たとえ日本国内では重要であっても、海外展開に適当とは思えない。
単独での進出がこうしたリスクを伴うなら、日本企業が固有の競争力を持っている分野に限って、欧米企業との国際提携や中国企業との合弁企業の形で進出する可能性がある。
The Economist May 20th 2000
Vote for China’s freedom
来週、アメリカ議会は中国に恒久的な最恵国待遇を認めるかどうか、投票を行う。賛否はほぼ同数である。(その後、可決した。)議会はこれを承認すべきである。なぜなら、この法案がアメリカの狭く定義された国益に適っているからではなく、法案に反対する者も望んでいる、中国の改革を加速するからである。
この法案は両国の貿易を増やして利益をもたらす。中国の平均関税率は2005年までに24%から9%に引下げられ、中国の数量割当制や許可制度は廃止される。外国企業は中国に製品の流通・販売を行う完全な子会社を設立できるし、電話会社に49%まで出資できる。外国の銀行は中国の銀行と国内で同じように扱われる。これに対して、アメリカが譲歩したものは何か? 通商法301条による一方的な貿易制裁を課さないと約束しただけで、他には何も与えていない。
この法案に反対する者は、中国は約束を守らない、という。また、一方的な制裁の権利を放棄しなくても、中国から同じ譲歩を引き出せる、とも。しかし、どちらの主張も怪しいものだ。中国は、1992年以来、アメリカと4つの協定(知的所有権・環境・核拡散防止・民間取引紛争処理)を結び、前二者は良好、後者はやや不満な結果と失敗であった。しかしこのことから、中国が悪意で交渉を利用している、とは必ずしも言えない。中国はWTOに参加しないで、アメリカが二国間協定と制裁を利用して市場を開放させる場合、紛争それ自体がアメリカ企業の活動を制約するだろう。
法案成立に反対する理由は、経済的なものではなく、政治的なものである。恒久的な最恵国待遇の承認は、アメリカが中国の人権抑圧を肯定するものである、と反対派は主張している。「アメリカはナチス・ドイツに恒久的な正常の通商関係を承認するだろうか?」と。これは良い質問だ。
第一に、通商関係を認めることはその国を道徳的に肯定することではない。貿易は民間企業間の取引であり、政府間の協定ではない。政府は民間取引の自由を制限しないような方法で中国に抗議できる。第二に、中国は、ナチス・ドイツのような、破壊と征服に依拠した矯正不可能な悪の体制ではない。中国の指導者たちは分裂しているが、近代的な経済と社会を求める改革派を支援することが重要である。
中国の軍部や反動的指導者が最恵国待遇に反対していることは偶然ではない。彼らはそれが脅威であることを知っている。貿易関係が深まれば、保守派が主張するような党の指導は機能しなくなり、普遍的な法の支配が重要になるだろう。貿易は、おそらく西側ができる最善の加担である。そして貿易を止めれば逆に作用するだろう。
Wavering Wahid
インドネシアのワヒド大統領は以前から驚くような転換をやって来た。イスラム教徒の指導者として登場し、今なお大統領でいる。しかし、経済の改革には失敗した。政権成立後、9ヶ月経っても、各地の騒乱は収まらない。
投資家は回復を確信できず、株価が下落し、通貨ルピアも下落している。ワヒドは経済について、もっと明確でまっすぐな改革方針を確立しなければならない。
America’s unfinished agenda
ジョージ・ブッシュは、中道派の支持を得るために、これまで民主党の得意な分野であった社会問題にも対応策を示しつつある。今週、ブッシュ氏は社会保障、65歳以上の年金制度、を改革する方針を示した。その提案は不明瞭であるが、頑なに年金制度について触れることも拒否するアル・ゴアと、少なくとも対照的である。
教育についても、民主党の話題であったが、アメリカの学校に金だけでなく、もっと多くの選択と自由を与えると訴えた。彼が貧しい黒人女性と写真に収まり、「われわれの社会に憐れみの部隊」を召集したとき、彼は単に共和党が見なかったものだけでなく、ほとんどの投票者にとって長く見失われていた、アメリカの貧困、を示したのだ。
長い好景気を経ても、今なおアメリカ人の8人に一人、子供の5人に一人が貧困状態で生きている。貧困率はまだ1970年代よりも高い。1996年の福祉制度の大幅な改革で、都市の母子家庭は仕事に就く割合が高まった。しかし、この働く貧しい過程を支援する方策はもっと必要である。
現代の貧困は、教育や技能の不足と、離婚・家庭の崩壊による。貧しい家庭を助ける制度が十分に利用されていない。まだ税制の問題で就労が妨げられている。子供を育てるために働きに出ることができない。それは長期に及ぶ大問題である。だからこそ大統領選挙の争点となるに相応しい。
Indonesia; The jitters return
この2週間で、インドネシアの通貨ルピアは、ワヒド政権成立以降の最安値をつけた。5月13日、首都ジャカルタの中華街で、スハルトが辞任したときのような商店や銀行の暴徒による破壊が再現した。政治的な問題が深まると、裕福な華僑の商店が標的になる。アチェの民兵部隊が裁判にかけられたが、その判決が軽すぎるという不満が高まっている。モルッカ諸島でもイスラム教徒とキリスト教徒との対立が暴動となった。
大統領の「虹の連合内閣」は、最近の解任後、内部対立が深刻になった。汚職追放だけでなく、大統領の権力確保も目的である。インドネシア銀行再生委員会の「特別顧問」として、大統領の弟が任命された。ワヒドの息子はインドネシア最大のイスラム民兵組織の支配者である。また、大統領自身の金融問題に関する発言が問題を深めた。ルピアの下落に対して、マレーシア型の資本規制を考えているようだ。IMFはその考えを好まない。
今年は1ドルが6000ルピアまで強くなると言う期待はまったく楽観的過ぎるようだが、1997年のアジア通貨危機前は2400ルピアであったものが、再び8500ルピア近くに下落してきた。上昇したはずの株価もすっかりその分を下げた。政治家たちの揉め事が経済改革を妨げ、投資家を慎重にさせている。
Argentina; Have-nots
IMFとの合意を実行するために、政府は最後の支出削減を行うと発表した。しかし、国民は緊縮策にうんざりであり、大統領は彼らの不満を思い知った。というのも、先週、8つの地方で政府批判者たちが道路を封鎖し、暴動となったからだ。
こうした反乱はアルゼンチンの貧富の格差が開き、ブエノス・アイレスの繁栄と内陸部の貧困がひどくなっていることに由来する。激しい暴動の起きたSaltaでは、住民の56%が公的な貧困水準以下で暮らしている。最も貧しい者は1日1.20ドルで生活する。批判者の多くが中産層の下層であるが、彼らは以前は支払い可能であったのに、緊縮政策で失業し、破産したのだ。例えば暴動が激しくなっている地域のでは、民営化によって石油精製会社を解雇された労働者が多い。地方政府の非効率や汚職、賃金未払いも反対運動を加熱させている。立法府と一般の労働者の賃金格差が余りに大きく、不満が集中している。
緊縮策を採用しても、デ・ラ・ルーア大統領はこうした反対運動に対応しなければならない。そこで、3500万ドルの貧困対策費や雇用開発計画を約束した。しかし、こんな計画はインチキだ。資金の半分以上は官僚たちの賃金となる。海外からの投資だけが望みであるが、今度の緊縮策で国内の不安が高まれば、投資家たちはさらに冷めてしまう。
Sierra Leone; What to do next?
反乱の指導者、Foday Sankohは逮捕された。国連軍の増補部隊がSierra Leoneに展開している。これで問題は解決するのか?
全く無理だ。解決への方針は何も明らかでない。国連軍の増強はどうするか? 大量の治安維持部隊と、反乱軍を攻撃する権限を持った、高度な装備と訓練を受けた精鋭部隊が必要だ。しかし、後者に相応しいイギリス軍が今後の展開にどの程度関わるか、まったく不明である。前者を担当する国連軍は、これからも襲撃や捕虜の標的になる。
サンコー逮捕の次は何をすべきか? 反乱軍RUFとの昨年のロメ和平合意に戻るべきか? そして、サンコーは副大統領になる!? 政府は和平を破棄するか、和平を示す他の指導者を捜すか、選択しなければならない。和平を破棄すれば、政府軍はRUFと戦うことになる。政府はイギリス軍の支援無しに勝利できないから、判断をイギリス政府に預けるが、イギリス政府は新植民地主義と非難されることを懸念して、カバー政府の問題だと決定を回避している。
国連の考えもまとまらない。国連のSierra Leone特別大使はロメ合意への復帰を求めている。しかしニューヨークの本部では、特に合意によるテロリストの免責が問題視されている。ロメ合意を作ったアメリカ人たちも、大統領アフリカ特使であるジェシー・ジャクソンと意見が分かれる。ジャクソンは、先週、サンコーを南アのネルソン・マンデラにたとえた。他方、アメリカの国連代表リチャード・ホルブルックは、RUFを「社会のクズどもであり、ナタを振り回す殺人鬼たち」と呼んだ。
政策の欠如はリベリアのCharles Taylorテイラー大統領が埋めるかもしれない。彼はリビアのガダフィを介してサンコーに会った。そしてRUFとサンコーが1991年にリビアから活動を始めた。それ以来、ダイヤモンドと交換に武器を供給している。
リベリアの1997年の選挙で、テイラーは国民を脅して大統領に選ばれた。今度は国際的な舞台で活躍しようと、シエラ・レオネの国連軍捕虜を交渉で取り返した。サンコーを解放すれば、残る250名も救出できると言う。援助が欲しいのかもしれないし、あるいはワシントンで感謝されたいのか、サンコーにダイヤを貢がせたいのかもしれない。
もし国連とイギリス、アメリカ、シエラ・レオネ政府が統一してリベリアとRUFに対処すれば、テイラーも言うことを聞くだろう。リベリアはアメリカ黒人が解放された地としてアメリカの黒人社会に意識され、ジャクソンも多くの黒人指導者もテイラーの個人的な友人である。さらに、たとえ局面が打開できても、この社会を再建する能力は政府に無いが、誰もそのことには触れようとしない。
Business; On the rocky road to marriage
福島の日産自動車販売店にグループのボスが来た。しかし、今までと違って、果てしないお辞儀や式辞は無い。ブラジル生まれのフランス人Carlos Ghosnは、営業における細かい質問を優先した。彼はフランス最大の自動車会社ルノーで「コスト・カッター」の評判を得た。1996年、ミシュラン・タイヤから移籍して、フランス自動車産業の劇的な転換を導いたからである。そして昨年、ルノーは6430億円を投資して、日産自動車の資本の37%を取得し、Ghosnが日産の問題点を調査し始めたのだ。彼は早口の英語で、通訳を介して、担当者からどんな車が売れているかを知ろうとする。経営会議はすでに英語である。
日産を立て直すのは大変な仕事だ。過去8年間で7年は赤字、国内シェアは最低の19%に落ちた。1兆4000億円の債務と、金融部門における1兆2000億円の債務がある。2000年度の末に経常黒字を出すのは不可能に近いが、それをやらなければ信用を失うだろう、と語った。どうやるか、彼には経験がある。納入業者に60%のコスト削減を要求している。1996年に彼がルノーに来たときも、スウェーデンのVolvo社と合併して販売車種を増やし、大規模な生産工場を閉鎖した。
日産とルノーは良く似ている。官僚主義的で、生産や販売に積極性がない。変化を取り入れようとしない。状況が余りに酷いから、逆に改善する余地も大きい、と彼は考える。企業の管理組織に頼らず、再建策を練る9つの部門間作業部会を設けた。こうしたやり方を彼はアメリカでミシュラン社とユニロイヤル・グッドリッチ社とを合併する際に初めて使った。それは他部門の作業をも知って危機を乗り切るための機関である。Ghosnは毎月すべての部会に出て、利潤を出すようにと強調する。
昨年10月に公表された日産再生計画は、16000人を雇用している5つの工場を閉鎖し、生産力を30%削って稼働率を採算の取れる75〜80%にすることを目標として、労働者に大きなショックを与えた。アメリカの好景気で解雇は避けられるかもしれない。さらに、ルノーと日産のヨーロッパにおける流通・販売を合理化しようとしている。そして将来は共通の自動車開発を行い、他社のような魅力的な新車を並べるつもりだ。工場ではボディやエンジンを共有し、異なった外観とブランドを維持するのである。
この計画は3年をめどに進められ、フランス政府のルノー株売却と一致する。その前に日産は大幅な転換を行わねばならず、ルノーから日産に乗り込んだGhosnはそれを成功させて、合併したグループの社長となれるかもしれない。
Coping with surpluses
国債の償還が次第に各国で増えつつある。かつて、アメリカ大統領よりも、ローマ法王よりも恐れられた債権市場(James Carville)が、そのうち消えてしまうのか?
5年前はGDPの4%も財政赤字があったのに、今やアメリカ政府は黒字で溢れている。クリントン大統領は、2013年までに民間の政府債は無くなるだろうと自慢した。アメリカだけでなく、多くの豊かな諸国で財政黒字が予想されている。GDPの8%に達する赤字を出す日本だけが大きな例外だ。
これには三つの異なった理由がある。まず、20年にわたる放漫財政の後、政府が緊縮策を採用した。増税ではなく、支出削減策である。次に、成長の持続が税収を増やし、失業の減少が福祉支出を減らした。最後に、第三世代移動電話の営業権競売などで、多くの政府に大きな臨時収入があった。
政府が借入れを減らすのは良いことだろう。それは貯蓄の奪い合いを減らし、民間投資を促す(”crowd-in”)。将来世代の負担を軽くする。そして財政政策を積極的に景気変動の抑制に利用できる。しかし、それは決して、すべての政府が赤字をなくすことを目標にすべきである、と理解してはならない。教育などの必要な社会支出を無視したり、成長を阻害するほどの課税で黒字を出すのは間違いである。ヨーロッパ諸政府は、赤字を減らすというよりも、支出も課税も減らすべきである。(政府部門の縮小。)
リスクのほとんど無い金融資産として、国債は金融機関の資産の一定部分を占めるように規定されており、また中央銀行はこれを使って公開市場操作が行える。そこで、国債が無くなるのを心配する経済学者もいる。しかし、それに代わる手段は見つけることができる。それでも、OECDは国債市場が無くなれば、将来、高齢化で再び借入れを開始するときに困ると言う。ノルウェイは、財政黒字でも国債を発行しつづけ、いわゆる石油ファンドとして貯めている。
しかし、そんな心配は要らないだろう。政府債の発行残高は世界で15兆ドルもある。主要国の財政状態も、不況が来ればすぐに赤字になる。なにより、財政黒字があれば、各国政府は緊縮政策を維持しないだろう。しかも政府は、将来の年金支払い義務などを計算に入れていないのだから。
The EBRD; Reluctant graduates
ラトヴィアの首都リガで開かれたEBRD(欧州復興開発銀行)の年次総会に、多くの銀行家や大蔵大臣、新聞記者が集まった。ケーラー元総裁がIMFの新しい専務理事に決定したため、その後任人事が心配されたが、すんなりとフランス大蔵省のエリート官僚であるラミー氏に決まった。しかし、厄介な問題が残されている。
1998年には2億6100万ユーロ(2億91100万ドル)の損失を出し、昨年ようやく黒字に戻した。そして非常に長くかかったが、中長期の戦略を示した。EBRDは、零細企業への金融支援だけでなく、企業の管理形態を近代化することを重視している。ロシアでは、株主の利益を守るために、多くの訴訟を起こした。また、地元の金融機関を育成することにも力を入れている。しかし残念ながら、特にロシアでは成功していない。ロシアの法体系は強力な地元利益に有利であり、破産させた企業を地元の他の企業に安く転売したり、倒産した銀行がニューヨークに資産を移したりしている。EBRDの損失は公表されていないし、これによって解雇された者もいない。
EBRDの戦略に欠けているのは「卒業graduation」条項である。EU統合にもっとも近付いた5カ国(チェコ・エストニア・ハンガリ・ポーランド・スロヴェニア)がEBRD融資の半分以上を今も得ている。経済の回復した中部ヨーロッパよりも、まだ1989年水準の40%も産出量が落ち込んでいる旧ソヴィエト圏を、もっと支援すべきであろう。
EBRDは、まだ中欧でも公的な支援無しに民間投資が行いにくい分野(地方自治体の債券発行や、鉱山・鉄道部門)は多くある、という。しかし、それが民間銀行の仕事を奪っている(crouding-out)可能性もある。大規模な融資を確保したいだけではないか?
ラミーは、できるだけ早く、EBRDの東方への拡大を指導すべきであろう。
American investing; Feelings are no longer mutual
アメリカのミューチュアル・ファンド(オープン・エンド型投資信託)は、その黄金時代を終えたのか?
アメリカのミューチュアル・ファンドは成長しつづけてきた。株価が動揺しても、小口の投資家は株式ファンドに資金を積み上げている。外国投資家がファンド・マネージャーたちに支払う報酬も上がる一方だ。例えば、イタリアのUniCreditoは、パイオニア・グループに、昨年の4倍以上の12億ドルを支払った。オランダのINGはReliaStarに61億ドルを支払った。
しかしよく見ると、ミューチュアル・ファンド業界は勢いを失っている。資金の流入は昨年だけでも1兆2000億ドルあったが、同様に資金流出も早まった。新規流入額は98年に11%、99年には30%減少した。しかもその新投資の3分の2が、Vanguard, Janus, Fidelityのたった3社に集中している。40%以上のファンドが資金を流出させた。しかも買い手のほとんどは外国人だ。
アメリカ市場の拡大は終わり、むしろ顧客の奪い合いが始まっている。マウスをクリックするだけで顧客は他社に移ってしまうから、金融商品のスーパーマーケットを目指したCharles SchwabやFidelityも難しい。配当や手数料は容易に比較できるので、投資家たちは我慢してくれない。
かつてはこうした比較も重要でなかった。1995年でも、アメリカ人の好む貯蓄は政府が保証してくれる銀行預金であった。株式市場の長期に及ぶ強気相場が、すべてを変えてしまったのだ。今や銀行よりも3分の1以上多い、およそ5兆ドルの信託勘定fund accountが保有されている。それはこの10年で3倍になった。
約600社の企業と、1万1000の個人が、投資をめぐって競争している。市場の拡大が止まれば、Fundの合併が予想される。しかしそれに価値があるとは思えない。他方、オンライン・ブローカーの進出が強まった。小口投資家にとって、ミューチュアル・ファンドは動きの鈍い、今更、リスク分散の利益も期待できないものであった。しかし、最近の株価下落で、再び注目されている。
問題は、一握りの富裕な資産家と違って、こうした新しい顧客は安価な手数料を追求させることである。Vanguardが成功したのは、Fundの運営を株式市場の指数にリンクすることで、ファンド・マネージャーへの高額の支払いをやめたからであった。こうして安い手数料で良い配当を行えるから、積極的に売り買いするマネージャーたちの桁外れの報酬は支持され無くなってきた。Vanguardは、投資信託も商品である、ということを明白にしたのだ。
こうしてますますFundは合併し、解散される。市場の弱気相場が続けば、この傾向は強められ、簡単に金持ちになれた投資家たちは貧しくなっていく。