IPEの果樹園 2000

今週の要約記事・コメント

12/25-12/30


Financial Times, Sunday Dec 24 2000

Editorial comment: Troubles at the Treasury

次期大統領のジョージ・W・ブッシュは、財務長官の候補者リストから誰を指名するにせよ、議会とウォール街と他国から見て、もっとただちに尊敬される人物を選ぶこともできたはずだ。しかし、指名されたポール・オニールはアルミニウム産業のアルコア会長である。それはブッシュ新政権が、より広い経済問題を避けて、もっと狭い国内問題に焦点を絞ったことを意味している。

アメリカ財務省は、他の工業諸国の同様の官庁と異なり、金融政策も、財政政策も、直接に担当しない。金融政策はアラン・グリーンスパンの連銀が担当し、財政支出や課税は大統領と議会との交渉で決まる。財務省は、大統領に対して、公的部門の財政状態に関する助言を行い、またIMFや世銀などの国際金融機関に対して、その政策決定に影響力を発揮する。

オニール氏は、12年間、世界最大のアルミニウム企業の重役と会長を務めた人物である。しかし、ビジネスマン、さらに言えば産業界の指導者は、政府において自慢できる記録を持たない。企業を成功に導く才能は、貿易や競争の利益を認識することではないし、あるいは遠く離れた諸国の金融危機の広範な意味を熟慮することではない。

1953年、ゼネラル・モーターズの社長であったチャールズ・ウィルソンが国防省長官に指名されたとき、上院の査問会で、会社と政府の間に利益の衝突は無いか、と質問された。彼は「国にとって良いことはゼネラル・モーターズにとっても良いことでした。逆も言えるでしょう。」と応じた。それは当時も間違いであったが、今も正しくない。オニール氏は、自分がチャールズ・ウィルソンではない、ということを直ちに示さねばならない。

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The Economist, December 9th 2000

A hard landing?

1996年12月5日に、アラン・グリーンスパン議長は“irrational exuberance”に関する有名な警告を行った。四年後のまさに同じ日に、株価はその当時よりさらに高かったが、グリーンスパンは彼自身の“irrational exuberance”を市場に注射した。たった一日で、株価は600ドルも跳ね上がった。Nasdaqは10%以上も上昇し、一日としては最大の上げ幅であった。

グリーンスパンは、経済状態の悪化を示す指標は何も無い、と主張した。経済の減速は、まさに必要な範囲にあり、インフレを抑制することで、成長をさらに長期に続けるために必要である。しかし、株価の下落で始まった期待感の冷却が、グリーンスパンの慰めで、憂慮すべき循環に向かいつつある。来年には、早期に金利が引き下げられると信じて、株価が上昇した。

しかし、インフレ圧力を取り去るには、経済成長を長期的に維持可能な水準よりも低い位置でしばらく留める必要がある。またFedは、株価の水準に保証を与えるような印象を与えないように注意すべきである。

投資家の多くは、新政権の大型減税がソフト・ランディングを助けると考えている。しかし、財政政策の変更は長い時間的な遅れを伴うばかりでなく、経済のファイン・チューニングという間違った考えに依拠している。

投資家は、長い好況の後に経済を減速させることがどれほど難しいかを、過小評価している。歴史は、中央銀行がこれにめったに成功しなかったことを示している。なぜなら、成長率の低下は経済をショックに弱くする。低成長の経済は、経済的・金融的な不均衡にさらされやすい。アメリカは借入によって大騒ぎしているが、その前提は高成長における高収益による高株価である。投資増加、生産性上昇、利潤増加、株価上昇、投資増加… という好循環が、悪循環に変わるかもしれない。もしそうなれば、Fedは金利を引き下げねばならない。しかし、今はまだ、してはいけない。

「ニュー・エコノミー」論というおとぎ話はどうなるのか? 景気循環はなくならないし、(根拠の無い株価上昇ではなく)利潤が今も重要である。成長の減速は、最近の生産性上昇がどの程度まで循環的で、どの程度は構造的か、を示すだろう。もしせいさんせい、上昇率が大きく低下しなければ、インフレ抑制は利潤を低下させず、ソフト・ランディング論は説得力を増す。しかし、生産性上昇率が急速に低下すれば、Fedの任務は困難さを増す。単位労働コストが上昇し、ドルの価値も下落するかもしれない。それは金利引下げを難しくする。

The Economistは、アメリカ経済がバブルを生じているという警告を繰り返してきた。IT革命が、歴史上の他の技術革新と同様に、過度の期待をもたらした。それは、1840年代イギリスの鉄道投資マニアでも、1930年代アメリカの自動車・電気の導入でも示された。そしてバブルの破裂で、投資家を破産させた。

IT革命が電機の導入よりも大きな影響を生産性上昇に及ぼす、と主張する者もいる。しかし、それは、ハード・ランディングを示唆する、もう一つの論拠となるかもしれない。グリーンスパンは、2001年12月に、その説明を得ていることだろう。


Japan: A sort of reform

12月5日に日本の森内閣は再編された。来年1月からの省庁再編に向けた準備である。それは、権力を官僚から政治家に移す、と言われているが、自民党の改革があからさまに潰されるのを見れば、かつて汚職で糾弾された官僚も、さほど悪者に見えなくなった。

驚いたことに、森は橋本隆太郎元首相を内閣に呼び戻した。その仕事は、税金の使い道について、日本の政治家にもっと発言力を与えることである。また、柳沢柏夫が金融監督庁長官に復帰したことで、銀行の債務処理が加速することが期待できる。

他方、建設業に依拠した亀井静香の今後は疑わしい。権力闘争がひとまず終わって、野中広務は自民党幹事長を辞任した。かつて鉄道員であった野中は、現在、日本の政界でもっとも権力を持つ政治家であるが、政策通ではない。彼は今、夏の参院選挙までに森と亀井を切って、自民党の人気を回復させることを考えているだろう。


India’s economy: The China syndrome

インドに流入する安価な中国製品の勢いは、市場を席巻し、産業人の悪夢となって、政府の心配の種となっている。来年3月に、WTOに従ってインドが食料品輸入に対する最後の数量規制を撤廃するために、その不安は増している。輸入急増への不安が製造業の投資枯渇に責任があるといわれている。

しかし、経済指数は好調さを示している。6%近い成長率、1年分の輸入額を超える外貨準備、石油価格上昇にもかかわらず、対外赤字はGDPの2%以下であると予想されている。輸出は、中国向けでさえ、絶好調である。

他方、投資家にとって株価は今年20%も下落した。産業は国内需要の不足に苦しみ、政府も、貧困減少に必要な8%成長の目標達成をしくじった。中国は、インドより少し大きいだけだが、10倍以上も直接投資を受け入れ、5倍以上の工業製品輸出を行っている。

インドがその目標を達成するためには、六つのマイナス要因を取り除かねばならない。すなわち、1.エネルギー・コストの削減、2.借り入れコストの削減、3.経済活動への規制解除と汚職撲滅、4.売上税と地方税の削減、5.輸送部門のコストとスピードの改善、6.労働市場の弾力化、である。

政府は、零細企業を保護してきた政策を静かに転換し、競争を促そうとしています。テレコム部門や保険業への参入規制を緩和しました。民営化には三つのメリットがある。政府債務を減らし、直接投資を引き寄せ、企業をより競争的にする。またインドはインフラ投資を増やすべきである。ハイウェイの建設は、毎年120億ドルと推定される渋滞のコストを減らし、雇用をもたらすとともに成長も促すだろう。

改革を急がなければ、工業部門はますます保護を求めるようになる。輸入全体のたった3%しかない中国からの輸入に対するパニックは過剰であるが、政府は関税率の引き上げや反ダンピング措置を検討している。半世紀に及ぶ保護措置の後、産業は保護なしに生き延びることができないかもしれない。


The many tricky ways of widening Europe

会議は何の成果もなく決裂し、首脳達は帰国しかけた、と思われた。委員会の数を制限することや、投票制度の改革といった、難しい問題は棚上げされた。特にフランスが、ドイツにより多くの投票権を認めることを嫌ったからである。またイギリスなどは、課税などの問題に手を出されないために、他の共通テーマで譲歩した。結局、ニースにおけるEU首脳会議は加盟国の拡大に見通しをつけた。しかし、長期的には非常に重要な安全保障問題などで、決定を持ち越した。

一つは、EUの中で、中核的な諸国が一層の統合化に進むのを認めるかどうか、である。もう一つが、防衛問題である。イギリスが強く懸念するように、EU独自の防衛は、NATOを弱体化させるかもしれない。舞台裏での英仏の対立はさらに深刻である。

アメリカのコーエン国防長官が発した警告と、NATOの重要なメンバーであるトルコのEU加盟問題が、この問題に深く関わっている。

EUが、将来、NATOの承認の下で独自の軍隊を持つとしても、その前に、自由貿易と政治クラブのメンバーとして、新しい諸国を参加させねばならない。それが上手く機能した場合にだけ、こうした問題が真剣に検討されるだろう。


A Bulgarian way into the EU

EUの首脳達がニースで新加盟国について話し合うのを、東の境界に接する人々の多くは待っていられない。たとえば、たばこの栽培を行う1350人ほどが住む、ブルガリア南部の村Godeshevoは、ギリシャとの国境から石を投げれば届く距離にある。すなわち、EUの東の端に接している。

仕事を終えた男達は、アメリカの永住権(グリーン・カード)をくじで当てた男が経営者である村のバー“Chicago”に集まる。しかし外では、多くの男達が夜の闇にまぎれて国境を越えている。畑を横切り、川を渡って、ギリシャでの非合法な仕事を探しに行く。共産主義時代には、電気を流したフェンスが人々をさえぎった。今ではギリシャの監視システムが見張っている。

今月から、EUはブルガリアを、就労以外の旅行や短期滞在に関してビザの必要ない国に含めた。その代わりに、ブルガリアはさらに東のモルドバやウクライナから人々がEUに流入することを阻止する、と同意した。

ある28歳の男は、ギリシャのSalonika付近で、アルバニア人、アラブ人、アフリカ人たちと、1日25ドルで働いた。それはGodeshevoの半月分の賃金に等しい。しかし、彼らの多くは摘発されて強制送還される。ブルガリア政府は、EUに良い印象を持ってもらうために、こうした人々を告訴する。しかし村には仕事がなく、金が無い。彼らは法廷を出れば、再びまっすぐ国境に向かう。

ギリシャの雇い主に関して、良い言葉は聞かれない。偽善者、人種差別、搾取、ダブル・スタンダード。アルバニアとの関係が良好なときは、Godeshevoからの出稼ぎを厳しく扱い、逆にアルバニアと対立すれば、Godeshevoの出稼ぎを利用するために警察も目をつぶる。

ギリシャ人はまた、ブルガリア側の国境沿いに、服や靴を生産する苦汗工場(低賃金・長時間の労働を悪条件で強いる)を建てている。ブルガリアの女性たちは、契約書もなしに、月に50ドルで働く。また、イスラム教徒はひどく差別されるから、人々は名前を変えて身を守る。

自然はGodeshevoの村を過酷に扱う。夏になれば、2日おきに2時間の給水しかなくなる。今年の日照りはタバコ畑の3分の2をだめにした。男達の4分の1はEUで働いている。それゆえEU拡大について、加盟国の有権者たちは神経質になる。


Georgia: Hot winter

1日7時間しか電気がないというのは厳しい暮らしであろう。しかし、旧ソビエトの(地理的にも政治的にも)西の端にあるグルジアは、この冬さらに悲惨な暮らしを覚悟しなければならない。12月5日、ロシア政府はグルジア国民にビザの携帯を求めた。他の旧ソビエト諸国は、今も、ビザなしで互いに移動を認めている。

グルジアの人口の約10分の1、50万人がロシアで働いているから、この措置は大きな打撃となる。その理由は、隣国チェクニアとの戦争である。ロシアは、グルジアが兵士の補充や傷病兵のための隠れ家になっている、という。グルジア政府はこれを否定し、ロシア軍がグルジア領内からチェクニアを攻撃することを認めない。

グルジアは、ロシアの勧めるユーラシア経済共同体(ロシア、ベラルーシ、タジキスタン、カザフスタン、キルギスタン)に参加するよう圧力を受けている、という。また、グルジアが求める、領土内から4箇所のロシア軍基地を撤退させる、という要求を転換させようとしている。

グルジアをさらに懸念させるのは、ロシアが領土内の二つの地区に異なった扱いを認めることだ。独立を宣言した南オセチアとアブカジアをロシア政府は支援し、グルジア国民が心配するように、いつか併合しようとするかもしれない。既に多くの人々がロシアのパスポートを持っている。

電力供給の不足に怒った市民たちが、先月、首都トビリシで暴動を起こしかけた。内戦の記憶は癒えていない。エネルギーの供給システムは崩れたままである。外国からの投資が再建しようとしたが、電力を購入できる者が少なすぎる。トビリシの巨大な化学工場が、料金を払わずに、ほとんどの電力を消費している。それでも電力を切れないほど、経済は危険な状態にある。

シュワルバゼ大統領は、ロシアが電力不足を悪化させている、という。家庭に燃料を供給する業者達も手を貸している、と多くの人はいう。シュワルナゼは汚職を非難する。しかし市民達は、暖房の効いた大統領の部屋が汚職とまったく無縁であるとは思えないのだ。


America’s Economy: Slowing down, to what?

アメリカ人の関心は、大統領選挙から経済の見通しに戻ってきた。金融市場には不況への不安が渦巻いている。アラン・グリーンスパンによる125日の発言は、市場に刺激を与え、株価はほとんどヒステリックに上昇した。しかし、不安は去らない。

成長率、失業手当の申請、耐久財の受注、企業の利潤など、いずれを見ても経済が減速していることは間違いない。しかし、それはソフト・ランディングなのか、ハード・ランディングなのか?

グリーンスパンが指摘したように、これはまさに過去18ヶ月間に6回の金利引上げが目的としていたことであった。これによって経済はたるみを生じ、投資家は資産価格が下落するリスクを正しく認識する。ハード・ランディングを予測する経済学者は少ない。しかし、来年の成長率を3.0%程度とみなすのは、スーパー・ソフト・ランディングであろう。ハード・ランディングの危険が過小評価されている。なぜなら、1.金融的な緊張が高まっている。2.歴史が示すように、ソフト・ランディングは難しい。3.低成長だけは経済・金融の不均衡を是正できず、将来のハード・ランディングを回避できない。

今年、Nasdaqは、1994年以来初めて、年間を通じて下落した水準で取引を終えそうである。株価下落でアメリカの家計はすでに2兆ドルをその資産から失ったが、よくあるように過剰な楽観が過剰な悲観に交代すれば、価格はもっと下落するだろう。信用は縮小し、投資家はリスクから逃げ出し、企業の借入は難しくなっている。

グリーンスパンが、状況は1998年後半ほど悪くない、と言ったが、ジャンク・ボンドが支払う金利と財務省証券とのスプレッドは1991年以来最大であり、199810月のLTCM危機のときよりも悪い。優良企業の社債はまだ売れているが、IPOはできなくなった。銀行が信用を抑制し始めたのは、企業が融資適格さを悪化させているからである。

それに対して、グリーンスパンは、銀行が警戒し過ぎないように、むしろ融資を励ました。ウォール街では、一つの銀行倒産をきっかけに大衆の信頼が損なわれることを、Fedが心配しているからだろうと言われている。あるいは、いくつかの銀行が倒産するかもしれない企業の株式を保有しすぎており、銀行自体が危ないとも言われている。

IT関係の投資は、経済の拡大を指導してきたが、GDPに占めるその割合は過去10年で倍増した。1990年代後半、企業のIT関連支出は年率26%で増加した。それが労働生産性の上昇率を増加させている。投資増加、生産性上昇、インフレ抑制、利潤増加、株価上昇、投資増加、という好循環が続いた。また、アメリカの高成長はドル高をもたらし、インフレ抑制と低金利、高成長を促した。

それは悪循環に変わるかもしれない。いままでの“irrational exuberance”で築いた過剰設備を、企業は投資を削減して抑制しようとするだろう。IT製品の価格が下がりにくくなっていることも、将来の低投資と低成長を予想させる。投資の削減だけでも十分に不況を引き起こすが、失業の増加と株価下落に消費者がどのように反応するかにも関心が集まっている。

ソフト・ランディングが難しいのは、成長が低くなれば、ショックに対する経済の脆弱性が増すからである。また、これまでの高成長は経済の過剰を隠蔽してきた。アメリカには三つの不均衡が蓄積されている。1.マイナスの貯蓄、2.GDPの150%に達する民間部門の債務、3.1997年にはGDP比1.7%でしかなかったが、今年は4.5%に達する経常勘定の赤字、である。それゆえ、アメリカの好循環にとって、強いドルが特に重要であった。しかし、この2週間で、ドルの価値はユーロに対して6%下落した。

以上のことは、アメリカが不況になることを意味するわけではない。深刻な不況は政策の失敗を伴ってきた。1930年代は価格の下落に対して金融・財政政策が引き締められた。1990年代の日本でも、株価暴落後、日銀は1年間も金利を上げたままであったし、引き下げるのが遅かった。グリーンスパンはこうした失敗を繰り返さない。

逆に、金利を引下げを急ぎすぎる危険がある。現在のハード・ランディングを回避することで、債務の超過が残され、古典的なモラル・ハザードも生じれば、将来に一層大きな危険が残る。

1997年以来、アメリカの成長は世界経済の成長の3分の1を直接に説明し、間接的な効果を含めればその影響はもっと大きかった。世界の半分を支えてきたエンジンが止まれば、すべてのものが苦しむことになる。それは、貿易、為替レート、資本移動を通じて世界に波及する。

ドル価値が急落すれば、日本やヨーロッパの輸出はさらに減少するだろう。他方それは、アルゼンチンのようなドルに結びついた諸国の回復を助ける。アメリカの減速を、ヨーロッパや日本の回復が相殺するという期待はしぼんでしまった。ただし、日本よりもユーロ圏のほうが、財政的な刺激策を採用する能力があるだろう。また、ヨーロッパの家計はアメリカよりも少ししかまだ株式を保有していないから、世界的な株価暴落にも対処しやすいであろう。エマージング・エコノミーはアメリカ向け輸出に依存しているから、ハード・ランディングによって最も厳しいコストを負わされる。

グリーンスパンだけがアメリカ経済の未来に祈っているわけではない。世界経済全体の運命がアメリカにかかっている。着陸の衝撃を覚悟しないほど愚かな者はいないのである。


Turkey and the IMF: take ten billion

迅速かつ寛大な緊急融資がトルコの金融危機を防いだ。しかし、これでトルコの改革が進むとはいえない。

IMFが12月6日に総額104億ドルの融資を決めたことで、下落してきた株価は急反発し、金利は低下した。同時に、EUはニースでトルコの加盟条件を話し合っていた。IMFの行動は、1998年のブラジルやロシアの救済措置から何かを学んだ結果であろう。

ブラジルと違い、トルコの通貨は慢性的な過大評価には苦しんでいない。経済運営もかなりよく管理されてきた。突然の金融パニックは、IMFが融資する場合にあてはまる。しかし、長期的には、最近の数週間に失った外貨準備よりも大きく、トルコの出資金を越える融資は、大きなリスクを含んでいる。

先週の危機を引き起こした直接の原因は、政府の管理化にある破産した10銀行への犯罪捜査であった。著名な銀行家や、前大統領の甥までが逮捕者に含まれていたため、外国投資家たちはトルコの国債や株式を売却し始めた。それは高金利の国債購入に融資してきた銀行を資金不足に陥れ、他方への救済合併も拒否されて、銀行倒産が続くと噂された。さらに資本流出が増加し、金融市場に流動性が枯渇して、ついにオーヴァーナイトの銀行間金利が1950%に上昇した。

その責任はトルコの銀行規制・監督が劣悪であったことに帰せられる。政府は銀行の倒産を受け入れたがらなかった。さらに、深刻な汚職が政府機関全体に蔓延している。1994年の法律では、すべての銀行預金が政府によって保証され、銀行は政治家にコネのある悪党達が集まる儲けの多い産業になった。銀行は外国に口座を設けて利益を移し、倒産しても納税者がそれを支払った。

IMFは政府に、銀行改革を急ぐことや、国営企業の民営化、その労働者への賃金抑制を求めている。しかし、現政権の政治的支持は揺らいでいる。ただし、IMFへの「屈服」に関する野党の批判はまだ弱い。政府は今まで約束してきた民主化を推し進め、汚職をなくさねばならない。なぜなら、IMFとEUがトルコ政府の行動に注意しているのは、こうした点であるから。


Barriers real and imagined

ヨーロッパ単一市場に“level playing-field”の確保を主張することは、何の障害も無いことを意味しない。経済政策が何もかも調和させられる必要など無いのである。

確かに、労働者の健康や保障制度、社会保険負担などは、企業のコストに影響を与える。しかし、競争を支持するような表現で各国が調整を繰り返せば、結局、高い税金と厳しい規制を張り巡らせた「ヨーロッパ」社会的市場経済が誕生する。

生産コストの違いは貿易の基礎にあり、単一市場の目的である交換の利益を損なうものではない。むしろコストの違いこそがコスト節約的な生産構造の変化を促し、両者に利益をもたらすのである。

もしA国がB国より高い年金を給付するために給与に課税すれば、生産性が変化しない限り、A国の賃金はB国よりも低くなるだろう。A国(政府や国民)は、より高い年金を支払うために給与を引き下げたのであり、それは競争を妨げない。国民が支持すれば、そうした政策は実行される。単一市場がそれを妨げるわけではない。

経済的・社会的な選好が異なることは、単一市場を実現する障害にはならない。もちろん、政府がその政策や規制の結果を隠蔽し、賃金の調整を拒みつつ、より安全な工場やきれいな川、高額の年金を、コストもなしに手に入れられると主張すれば、政府は自国の市場を異なった選好の国から来る「不公正な」輸入財から保護することになる。

単一市場を妨げているのは、政治家であって、異なる政策や制度ではない。