IPEの果樹園 2000

今週の要約記事・コメント

11/27-12/1

アメリカの政治システムが混乱し、資本市場は不安によって停止するかもしれません。しかし、もしアメリカの政治が収拾策を見出せば、アジアの混乱がいつまでも続くことはさらに危険なことであると思います。政治システムが競争し始めた印象は、必ずしも常に正しくはないですが、今に限ってみれば真実に近いでしょう。

「ASEAN+3」が、将来は、一定の枠組みとして機能するのでしょうか? それは、この地域に再び金融危機が起きた際に、何ができるか、を示すことにかかっています。

日本の政治改革は、アメリカ大統領選挙の収拾よりも遅いでしょう。しかしさらに、中国の経済改革よりも遅いとしたら、その影響はアジアや国際規模の制度的枠組みの病巣となって、中国やアメリカとの貿易摩擦と通貨危機を繰り返すかもしれません。

逆に、アジア諸国やアメリカとともに、互いの不均衡を調整する協調政策と、ショックを緩和する制度の構築に、日本は重要な貢献ができるはずです。そのためには、指導力を発揮できる政治改革を一刻も早く実現しなければならないでしょう。


Financial Times, Monday Nov 20 2000

Editorial comment: Emerging market problems

1997-98年の金融危機以後、新興市場に戻った投資家達が再び不安を感じている。1999年は75%近い上昇を記録した株式市場が逆転している。ドルで見れば、既に上昇分の3分の2を失った。それは危機前の水準より20%低い。新興市場の政府債務(国債)は危機の後も金利が下がらず、この数ヶ月はむしろ上昇している。この悲観は経済パフォーマンスによるものではない。新興市場は2000年に5.8%で成長し、インフレも抑制され、財政赤字も減っている。

この食い違いを説明するのは、三つの問題である。1.市場は経済の減速を単に価格に反映させているのか? 2.発展した経済の不均衡が新興経済に影響を及ぼしているのか? 3.金融市場の問題はどの程度まで一般に市場の信頼を失わせるのか?

金融引締めと石油価格の上昇で発展した経済は減速し、その影響は新興経済にも及ぶだろう。アメリカの減速は、EUや日本の景気回復で緩和されそうにない。第一の答えは、Yesである。

しかし、それだけで新興経済が不況に落ち込むわけではない。新興市場の株価が下落したことには、他に理由がある。それは、アメリカが国民所得の5%にも達する資本を世界から吸収しつづけて成長したことである。新興市場の投資は締め出された。第2の答えも、Yesである。

新興経済は、市場志向の構造改革を進めてきた。成長減速やアメリカへの資本流出があっても、信頼を破壊されることはないはずだ。しかし、そこにはリスクが残されている。最も可能性が高いのは、アルゼンチンの破綻である。ドルとの固定制、輸出増加、低インフレ、そしてわずかの財政赤字というアルゼンチンにも、短期債務が多く、今年末の借り換えを政府はできない、と心配されている。

それゆえ、デ・ラ・ルーア大統領には、地方政府と支出凍結の合意に達することが絶対必要である。それが、流動性危機を回避するためIMFが支援する条件である。IMFの融資が失敗すれば、市場の信頼はアルゼンチンから失われ、急速に伝染するだろう。このような状況で、新興市場が外的ショックに弱いのは明らかである。株式相場は、まだ、そのリスクの一部しか反映していないのだ。


Financial Times, Saturday Nov 25 2000

Editorial comment: Asia wobbles

日本からフィリピン、台湾からインドネシアまで、政治的指導力が混乱に陥っている。しかし、アジアの回復は統治構造governanceの改善にかかっている。投資家の中には、アジアの政治的混乱と通貨危機からの最後の避難所を中国に求める者もいる。政府主導の成長の時代が続いたために、アジアでは、国家と市場と社会の利益を新しい現実に適応させることができない。民主主義的な統治が変化への合意をもたらすもっとも効果的な手段であるが、それは必ずしも上手く機能しない。不況の中で政治指導者が失脚するのは、むしろ、歓迎すべきことだ。


Far Eastern Economic Review, November 30, 2000

CURRENCIES: The Day of The Renminbi

By Tom Holland/HONG KONG

WTOに加盟した場合、中国経済の変化は21世紀に人民元の交換性回復を可能にし、その貿易額から見て、ただちに、USドル、ユーロ、円に続く、第四の国際通貨となるだろう。貿易および投資に関する人民元への需要は、ここ数年、外国為替市場における円の需要を侵食してきた。1970年代、80年代に円がそうであったように、中国経済の拡大が人民元を国際通貨としても拡大する。それは世界金融のバランスを変えるだろう。

現在、人民元は非公式な形でドルに固定されている。この固定制は、資本規制によって維持されてきた。アジア通貨危機において、中国の貿易収支が悪化し、人民元をさらに切り下げるのではないか、という不安を払拭するために、この体制は維持されてきた。しかし、いまや政府は次の改革に進もうとしている。

第一段階は、人民元の交換レートを市場の需給に従わせていくことである。中央銀行は次第に人民元の変動幅を拡大していくつもりである。第二段階は、国際資本移動を受け入れることであるが、これはより難しい。現在、国営銀行は巨額の不良債権を抱えている。中央銀行による低金利政策で銀行の収益を保証し、その処理を助けているが、資本取引が自由化されると資本が流出するだろう。それは国営銀行や企業の倒産を意味する。

もちろん中国政府はこうしたビッグ・バン型の改革を採用しない。むしろ、台湾が行ったような、政府の認める外国の機関投資家だけに、人民元による株式や証券の売買を行わせるだろう。こうして政府は国内の金融市場の発展と自由化とを調整し、大量の資本移動が金融システムを破壊しないようにする。

しかし、人民元の国際化は遠い将来ではない。WTOとの合意条件で、政府は加盟後5年以内に銀行業を国際競争に開放しなければならず、そうなれば資本規制の効果は失われるからである。

1970年代、80年代の日本との比較が有効である。中国の国内株式・債券市場は世界最大になるだろう。アメリカとの貿易額も既に日米貿易額を超えつつある。世界金融市場の震源地は、日本の円から中国の人民元へと移動していく。しかし、当時の日本が巨額の貿易黒字を資本輸出で還流させたのと違って、中国は資本収支も黒字である。外国投資家が中国に投資しつづけるからである。この二つの黒字は人民元を急激に増価させる。それは日本円が、1995年のピーク時に、戦後の固定レートから4倍も切り上がったより、さらに大幅になる恐れがある。

人民元の増価シナリオでは、中国から世界への投資、企業買収が急激に増えるだろう。しかし、1980年代の日本を越える勢いで、アメリカの株式や債券、不動産、企業を中国の投資家が買収すれば、アメリカのナショナリズムが政治を動かすだろう。

他方、むしろ中国の経常収支は赤字になるかもしれない。なぜならサービス産業において中国は国際的に大きく遅れているために、赤字が生じるからである。その結果、逆に人民元が減価するとは思わないが、日本円ほど大幅に増価しないだろう。中国政府は、30年前の日本ほど経済に介入できないから、むしろ投資を低開発地域に誘導して、分配の較差を減らすべきであろう。

人民元が増価するにせよ、減価するにせよ、交換性を回復した人民元が世界金融市場の中心を北京や上海に引き寄せることは確実である。政府の金融緩和姿勢はまだ続くだろうから、海外での人民元建債券市場、ユーロ人民元市場や、外国企業が中国で人民元建の資金調達を行うパンダ債市場が成長するだろう。そして中国政府はこの新たな金融力を東アジアに拡大するであろう。日本は1980年代、90年代に失敗したが、中国は21世紀に通貨ブロックの形成をより進めるかもしれない。

*******************************

The Economist, November 11th 2000

Thriller

アメリカ大統領選挙はスリラーの要素をそろえている。疑惑の誕生と制圧、筋書きはめまぐるしく変わり、最後の大詰めへと向かう。いたるところで事件が起きる。しかし、最後は二人の主人公による、すべてを賭けた決闘である。場所はフロリダ。一握りの投票の差が死命を決する。

不在者投票、ブッシュの兄弟が支配するフロリダ。両党の支配力が錯綜する。1万9000票の無効票。多くの投票者が間違ってゴアではなくブキャナンに投票したと訴えている。多くの謀略説が噂される。すべてを胸の内に秘めて、集計すること、再集計することである。

今や、勝者は不正を責められつづける。両党の対立は弾劾裁判以来もっとも激しい。しかし、アメリカの内紛は単なる国内問題ではない。クリントンがモニカ・ルインスキーのことで嘘をついていた間、外交政策は機能しなくなった。中東、バルカン、西アフリカ、台湾海峡、その他の鬱積する世界中の危機が、アメリカ大統領の関心に依存している。しかし、次の大統領は自国内の支配と正当性を確立することに精一杯であろう。

アメリカが統一を回復するには、超党派の政権樹立が模索され、どちらの政策も折衷的に弱められるしかないだろう。このスリラーの結末は、部分的には喜劇であるが、必ずしも悲劇であるとは限らない。


And still no winner

フロリダの発表のたびに両党支持者はジェットコースターに乗ったように振り回され、ゴアからの祝福を受けて党派を超えた和解を訴える演説に向かったはずのブッシュが2ブロック手前で引き返した。そして、アメリカ政治はブラック・ホールに吸い込まれた。

どちらにとっても選挙は引き分けに終わり、この国が決定を下せなかったことを示している。社会的にも、この国は均等に分割された。しかし、両者の支持者には明確な差もある。女性は、1996年のクリントンに対してほどではないが、より多くゴアに投票した。ブッシュはラテン系の市民に支持を広げ、ゴアは必ずしも労働者の圧倒的多数に支持されなかった。

経済の好調さを背景にゴアが楽勝できなかったことは、もっとも大きな問題である。まず、ラルフ・ネーダーを非難するのは間違いである。彼の得票はわずかにとどまった。次に、クリントンとの距離を取った戦略が失敗であった、とも言われる。クリントンからの支援は非常に少なかった。最後に、繁栄の時代に、ゴアがポピュリスト的な、中道左派の候補を演じたことは失敗だった。クリントンの行き過ぎた市場導入策で開いた社会的較差を、成長の果実の再分配で民主党の支持者拡大が可能になるはずであった。しかし、その作戦は破綻したといえる。

ゴアの支持は、民主党の基盤を越えて、より広いグループに拡大できなかった。社会保障制度への警告はむしろ逆効果となった。老人の一部はブッシュ支持に回り、特に株式を保有している層で反発は顕著であった。

当選への不確実さは、ブッシュの場合、有権者の多数を確保できていなかったことである。ブッシュは僅差で小さな州の選挙人を多く獲得した。どちらの陣営にも、さまざまな謀略説がある。特にパーム・ビーチ郡では、投票用紙のデザインが不適切なために、ブキャナンが他の地域よりも2200票ほど多すぎる、と考える者がいる。それゆえ、2200票よりも少ない差でブッシュが勝っても、彼は投票ミスで当選した、と非難されつづけるだろう。

1960年に、多くの疑惑を残してケネディが当選したとき、国中を不安定化しないために、ニクソンはそれらを敢えて不問にした。正当性が問われるのは新しい大統領が国民を統合させる手腕に対してである。そして、この選挙結果は超党派的な妥協による政権を求めている。しかし、もしそれが拒まれた場合、その結果は報復と政治システムの信用失墜であろう。少なくとも、国民が望んだことの一つは、ワシントンの政治を変えることであった。


Bye-bye, Uncle Ho

西であれ、東であれ、冷戦後の世界は市場と社会・政治原理の衝突である。分断国家の再統合として深く共通する、ベトナムやドイツ、そして朝鮮、中国の改革が今後どうなるのか? また、EU拡大や、NAFTAによるメキシコの改革はどうなるのか? 市場が政治的領土を次々と越境し、その殻を食い破った末に、社会がどうなるかについて、経済学者以外の発言が少なすぎる。

バーマンという思想家が、かつてマルクスの思想について、その核心を「(世界の)溶解観」 “melting vision”と強調した。資本制社会がもつ既存社会への強烈な破壊と革新能力に対して、ばらばらにされた人間はいかにも傷つき易く、友愛の精神など簡単に壊れてしまう。生き延びることにすべてを賭けている私達に、どのような理想が甦るのか?


Selling America to the highest bidder

今回の大統領選挙で最大の争点は、選挙資金、特にソフト・マネー問題であった。民主主義の灯台となるはずのアメリカは、その内部から腐食している。史上最大の選挙資金が浪費されたことだろう。特定の政策に関して献金することが選挙資金を無制限にさせた。

アメリカの政治は、豊富な資金を持った特殊利益団体と、個人で資金調達できる俳優やスター、金融街のボスなどに、ますます牛耳られつつある。選挙資金が増えることは民主主義にとって悪いことである。なぜなら金権選挙は、1.「遺産」を引き継ぐ二世や妻、2.「超資産家」、3.「現職」、という三つの集団に政府の上部を支配させるからだ。回収の見込みもないのに、誰も巨額の資金を選挙に投じないだろう。こうして立法府とロビイスト、選挙資金提供者の「鉄の三角形」が完成する。


South Korea dumps the past, at last

11月8日に破産した、韓国第2の自動車メーカー、大宇モーターは、1年前に800億ドルもの債務を抱えて12に分割された大宇財閥の一つであった。労働組合が債券銀行団からの3500人解雇を含む再建策を拒否した結果、最大の債権者である国営の韓国開発銀行KDBは追加の融資を断った。

その影響は深刻である。政府の緊急会議が開かれた。労働組合が依然強く、政府が弱体な韓国で、関連会社を含めた雇用の減少は50万人に及ぶかもしれない。経済危機から目覚しい回復を示した韓国の将来に不安が広がっている。

台風の目となった大宇財閥は1967年に設立された。カッターシャツの元販売員であった男が、30年間で600億ドルの売上と20万人を雇用する多国籍企業を築き上げた。韓国では船、フランスでは電子レンジ、ベトナムでは肥料、そして自国とインド、東欧で自動車を作っている。韓国の財閥が一斉に自動車産業に参入し、200万の国内需要しかない国で500万台の生産能力にまで拡大してしまった。すでに資本参加していたGMではなくフォードをKDBが交渉相手に指名して混乱は深まり、結局、交渉が決裂した後、GMは救済ではなく分割・解体による一部買収を求めた。

日本の1945年以前に繁栄した財閥モデルを採用した韓国のチェボルは、それが大きすぎて倒産させられないことを、政治的な支配力として拡大しつづけてきた。政治は腐敗し、新興企業は排除され、これらチェボルが国内生産の80%、輸出の50%を支配した。しかし、1997−98年の金融危機と金大中政権の誕生は、こうしたチェボルの解体を目指した。それは、多くの債権を保有する韓国の銀行にも再編を迫る。

金大統領は、もはや倒産を恐れない、と明言した。韓国は、そのバンジー経済を押しつぶす倒木から、ようやく解放され始めた。

<コメント>

韓国経済の構造的欠陥を非難する道徳的論調に、この雑誌のイデオロギーを見ます。韓国の選択は、先進国市場に製品を販売する集団戦略であったでしょう。今は、危機に乗じて国際資本がそれを解体・買収する多面的な闘争になったと思います。バンジー経済と揶揄する記者の優越意識は醜悪です。


The Trade Agenda: A different, new world order

経済の成長は、ますます貿易の自由化を必要としている。しかし、誰が、どんなルールを定めるのか?

WTOシアトル大会が決裂してから世界貿易政策は迷走している。アメリカとヨーロッパの世界貿易シェアは拡大しているが、その保護主義も強まっている。日本とカナダを加えた四極間交渉が世界貿易政策を指導している。しかし、合意形成を必要とする多角的国際機関の強化は、むしろ小国の交渉力を強めるだろう。OECDやWTOでは、加盟国すべてが拒否権を行使できる。メキシコ、ブラジル、インド、エジプト、あるいはケアンズ・グループなどが、一定の重要な影響力をもつだろう。

しかし、中国のWTO加盟は、アメリカとヨーロッパにヘビー級の挑戦者となるだろう。中国は他の発展途上国以上に自由貿易を広範に受け入れたが、決して単なる発展途上国ではない。ロシアとともに、WTOは安全保障理事会と同じ混乱に、しばしば陥るのだろうか。コンセンサスと拒否権を認める制度が、アメリカのバシェフスキーとヨーロッパのラミーがシアトルでほとんど達成していた合意を打ち壊した。加盟国は、自国の優先順位を決して譲ろうとしない。

大国による駆け引き、自国産業の維持、貧しい国への政治的補助金、国内世論への配慮、扇情的な論調、草の根的な反対運動、などが入り乱れる。国内の保護と新しい市場の獲得をめぐって、アメリカもヨーロッパもにんじんと、ときには棍棒を振り回す。しかし、両者が新興経済を宥和することはますます難しくなった。


Petrodallars: Whither?

もし宝くじで大金を得た人がテレビに出れば、最初の質問は決まっている。「何に遣うんですか?」 しかし、OPECにそう尋ねる者がいないのは不思議である。

OPECは、これまでに累積したドル建債務の支払に充て、外貨準備としてアメリカ財務省証券を購入している。つまり、結局は、アメリカ・ドルの循環の中であり、連銀が金利引上げを止めたことで債券価格の下落も止まり、OPECのドル建債券購入は当分終わりそうにない。

それは弱体なユーロを困らせる。過去1年間のOPECによるドル建債権購入額は、ユーロ支援の介入額にほぼ等しい。石油価格上昇はアジア経済に打撃であるが、アジアの回復は債券・株式市場への資本流入により大きく依存している。精製や在庫の問題が解決されれば、石油価格の上昇は続かないだろう。それゆえ、アメリカ市場が何より必要としている流動性を供給してくれるるペトロ・ダラーを、歓迎することもできる。


Taiwan’s financial system: Too many debts to settle

アジアの経済危機を尻目に、健全な経済運営を続ける台湾の姿は輝いていたはずである。しかし、次第にアナリスト達は、台湾もアジア危機の一部であると心配し始めた。

陳水遍総統の当選以来、株価が35%下落した。1995年以来、不動産価格は50%以上も下がった。大企業は債務に苦しんでいる。国際政治で孤立させられ、IMFなどの国際機関に加盟できない台湾は、危機に対する安定化基金を持っている。しかし、株式市場への介入は無駄であった。

台湾の政治は、日本や「東アジアの虎」とよく似た「クローニー・キャピタリズム」である。国民党KMTは、50年にわたってこの島を支配し、企業や銀行の重役と人脈を通じてきた。1997年に台湾が危機を免れたのは、債務が抑制されていたからであった。台湾企業はより少なく借入れ、外貨建債務はさらに少なかった。より健全なバランス・シートを維持し、アジア諸国よりも西側経済の需要に依拠して、ハイテク投資を積極的に行っていた。

しかし、1998年後半、不動産に関連し、国民党とも緊密な30余りの企業が倒産に瀕した。当時の国民党政権は救済を決定し、銀行に融資を続けさせた。また企業は銀行を買収し、あるいは独自に設立して、アジア経済危機の病巣を拡大した。システムの崩壊を恐れた国民党は、さらに二つの銀行を国有化した。火事を消すのに、水ではなく紙を撒いたのだ、と批判されている。さらに、アメリカの株価下落や、半導体価格の下落は、台湾のハイテク産業を破壊した。政権を追われた国民党が、政府を動揺させるために、保有する株式を売却している、とも言われる。

政府は銀行を支援し、同時に外国の銀行を参加させて競争も促している。また、破産手続きを経ずに資産を売買することを許可した。しかし、不良銀行を市場から取り除くために、破産よりも、優良銀行との合併を薦めている。健全な銀行への公的資金投入もありえる。もうすぐ中国の新年を迎えて、貨幣需要が高まれば、台湾の危機が始まるかもしれない。