同志社経済学会講演会
本山美彦(京都大学教授)
「アジア経済危機とその後の展開、そして日本」
5月26日(金)京田辺校地のTC2-105教室で、市民を含む約400名の学生が、本山教授の講演を熱心に聞いた。
グローバル・スタンダードの大合唱に対して、本山教授は「本当に何が日本を良くするか?」と考える。そして教授は、アメリカ流のやり方をまねること、聞こえの良いテキスト経済学が求める透明な市場を、誰もが同じように主張することの危険を指摘する。いくら英語を学んだところで、自分たちの文化の根を失うことは間違っている、と。
「銀行」とは何か?と、教授は問う。日本の銀行は低い利子でも安定した短期預金を基礎に、経済の基本となる生産力を築くために長期的な投資を助けてきた。預金量だけ大きくて利益がない、と言うのは、アメリカの<金融複合体>が押し付けるイデオロギーである。BIS規制、株式持合の解消、橋本内閣による山一証券倒産の承認…。日本の戦後経済復興を支えてきた銀行が、大蔵省の幹部とともに、次々とスキャンダルで潰された。
ファンダメンタルズが良好で、貯蓄も十分なアジア経済が、資本流出で企業や資産を叩き売りさせられた。アメリカの政治家たちは恐ろしく優秀だ。国内では大銀行を抑制しなければならない。しかし、国際的には政府や国際収支の赤字をまかなうために、資本流入を促した。間接金融から直接金融へ。そしてドル市場への資本集中と円の下落を招いた。
社会は、子供を育て、老人を守らねばならない。企業や銀行を短期的な買収の対象にするのは、間違いである。日本はアジアでもっと友人を作るべきだ。
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(参考)
本山美彦著『売られるアジア:国際金融複合体の戦略』(新書館)