2.貨幣:社会的な集合力の展開と自律性
――富をめぐる通貨の秩序――
市場の誕生
★ ダグラス・ノース『文明史の経済学』
「第一に,新世界とインド亜大陸への探検,開拓,交易,植民の拡大,第二に,大きな危機と政治経済単位の構造転換,だった.拡大の最終的帰結は,世界の他の地域の西ヨーロッパ諸国への統合(西欧の拡大)であった.だが短期的帰結は,市場の拡大と利潤機会の増大であり,さらにはこの機会を実現するために,構造変化を求める政治的圧力の増大だった.」
l 社会を暴力や強制によって支配するのは難しい.報酬や合意が無ければ,監視や処罰に多くのコストがかかり,誰もまじめに働かない.
l 信仰はしばしば支配と結び付いて勢力を拡大したが,異なる信仰による戦争は残虐さと社会の崩壊を極端に強めた.
l 「有機的統合」から「機能的統合」へ.:貨幣=道路=言語
<思考実験> 10万円の弁当!?
:クラスを真ん中で分けて,半分にだけ各人に,ここでだけ通用する円とそっくりの模擬貨幣を,たとえば10万円,配る.昼食のお弁当がここに届くが,半分は途中で腐ってしまった.
:さあ,あなたならどうしますか? クラス内はどうなると思いますか?
★ ハーシュマン『情念の政治経済学』The Passions and the Interests, 1977.
★ M.フリードマン『貨幣の悪戯』:ヤップ島の虚構
戦争と革命は,ほとんどの場合,ハイパー・インフレーションの幕開けであった.
貨幣価値の実体 :社会的な相互依存関係と調整のためのシグナル
★ Adam Smith『国富論』第4篇・第2章:(神の)見えざる手
★ Karl Polanyi『人間の経済』『大転換』:悪魔の碾き臼
「近代西欧の市場システムが,人間社会それ自体の相対的機能と完全性とを剥奪し,経済的価値を支配的地位に押し上げ,人間と自然をともどもに商品に変えてしまった.すなわち,すべてが自己調整的市場という<悪魔の碾き臼>に投げ込まれる飼料となってしまった」
通貨・金融危機とドル化 :中央銀行か? 通貨市場か?
★ 貨幣:ポール・クルーグマン『世界大不況への警告』早川書房
貨幣供給を適正に行うことが,経済活動を維持する.
「ベビーシッター協同組合大論争」
★ 日本の危機
優れた社会をポケットに! :帝国の破壊者
貨幣が滅べば,帝国も社会も滅ぶ.どれほど軍事的には強国であっても,貨幣の価値を損なえば,その経済的な基礎が崩壊する.
「個人の私的な利益の追求が,社会的な広い利益と最もうまく調和するような制度,社会構造の詳細を,スミスは描こうとしたのである.」(William K. Tabb, Reconstructing Political Economy, 1999.)
★ スーザン・ストレンジ『マッド・マネー』
金融市場の動向は既に狂気を示している.「狂気とは,常軌を逸して予想しがたく,本人や他人にも害を与えかねない不合理な行動」を意味する.