4月25日(水) 梁平先生による東洋医学の講義
13063158 法学部政治学科2回生 佐々木麻子
東洋医学について学ぶ前にまず始めに心得ておくべきなのは、東洋・西洋医学の視点の違いである。病体、心の心身両面から病人を観察し、体全体のバランスを重視する東洋に対し、西洋では科学で得られる明らかな数字やデータを重視し、病気や身体を局部的に見たうえでの治療を行う。その治療の際も、東洋医学では一時的な回復だけでなく、体自体の免疫力を高め、抵抗力をつけることによってウイルスを自分の力で退散させられる治療方法を取る。また、使用する薬も化学薬品ではなく自然の物質であるため、副作用や薬耐性が少なく、効き目も緩やかで身体に負担を掛けにくいものである。一方、西洋医学での治療は科学薬品を使用するため、効き目は速いが副作用や薬耐性が現れやすく、身体に負担を掛けてしまいやすいのである。また、今の薬は出来上がってそんなに年月がたっていない為に臨床実験が足りない上、一人一人の体質はそれぞれ全く異なっている為、一種類の薬では人間全員には対応は不可能である。
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東洋→病態・心・バランス・自癒力・免疫力を高める・複合処方・ファジー・副作用や薬耐性が少ない・緩効
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西洋→体・病気・局部・主に抗菌・免疫力抑制・単純化・可視明確・副作用・薬耐性・速効
患者の治療方法を決める際、東洋医学では「証」で適切な方法を考える。「証」とは複数の関連する病気の総称の事で、西洋医学で言う症候群と似たものである。病気が様々な「証」に見分けられ、治療法が決められる課程を「弁証論治」という。「証」の一連の症状は往々にして一緒に現れる為、ひとつの薬があればその症状はすべて治せると考えられている。例えば、口が苦く、めまい、喉が渇く、胸や脇部が張って食欲が低下する、寒かったり熱かったりするといった症状には「小柴胡湯」がよく効くため、これらの「証」は「小柴胡湯証」と呼ばれている。そしてこの「小柴胡湯」は1〜2週間ほどで「証」に対して効果を発揮するのである。また、他にも胃腸系の力が落ちる、胃腸の気が弱まる事による内臓下垂等の証に効果を発揮する「補中益気湯」などの研究も行われている。この証は「気」の不足により起こる症状である。「気」は五臓六腑と強く繋がっており、切り離せない存在である。このことからも、先述の「病気の治療の際は局所を見るだけでなく、体全体に目を行き届かせないといけない」ということが言える。
漢方について学ぶ際には、四気、五味、方向性、帰経、毒性、配合、使用上の注意といった細かな内容をすべて知り尽くす必要がある。漢方に使われる生薬は自然由来のものであり、この事は健康やバランスを考えた食事が十分薬に代わり得るということを示している。身体は、五臓の機能を高めて発育を促進するなどの「相生」や、五臓の機能を抑え、発育を抑制するなどの「相克」といった体のルールによってバランスをとっており、漢方薬(食養生)はそのバランスをとる手助けの役割をする。五味を考える場合だと、例えば苦い味は心臓によい、辛い味は肺や鼻、大腸に良いなど。また五性を考える場合だと、寒証に対してはシナモンなど熱性の食材をとり、熱証に対しては柿など寒性の食材をとることで寒熱のバランスをとったり、虚証に対しては卵などで、実証に対しては大根などでその虚実のバランスをとるといったように、体のバランスを考えることが非常に重要である。しかし、いくら効果があるといっても、バランスを損なうといくら身体に良いと言われているものでも副作用を及ぼしかねない。その時々の体調に合わせて適量、適度の摂取を心がけることが健康の為には不可欠である。
・五性の例→ 寒:くちなしの実 体を冷やす
涼:ハッカ 体を冷やす
平:銀杏 常用すれば滋養、強壮の効果
温:生姜 体を温め、興奮作用がある
熱:シナモン 体を温め、興奮作用がある
・五味の例→ 酸:収斂作用。 肝、胆、目に良い
苦:消炎、堅固の作用。 心臓に良い
甘:緩和と滋養、強壮作用。 脾、胃に良い
辛:発散作用。 肺、鼻、大腸に良い。
塩:和らげる作用。 腎、膀胱、耳、骨に良い