418日  「春の薬膳」の食材・生薬の確認と試食

 

13063158 法学部政治学科2回生 佐々木麻子

 

 

季節ごとの食養生を考える場合、春は人間の身体の新陳代謝が活発になる為に新しい細胞生成に向けて動き出す時期である。その動きをコントロールするのが五臓で春に属する「肝」あたる肝臓である。この時期は健康な人でも肝臓に負担がかかりやすく、肝機能が衰えると目・筋肉・神経・爪などに症状が現れる。そのため、春の薬膳のポイントは、「涼」性の食材で陰を養い、「酸」味で肝機能を養う事である。
 春の薬膳御膳一品目である「ローズマリーティー」には、脂肪の抗酸化作用と細胞の活性化の効果があり、老化の予防に適している。
 二品目の「菜の花の温製ロワイヤル、決明子とタイムの香り」には、強い抗酸化作用、疲労回復、動脈硬化やがんを予防する効果のある菜の花、眼精疲労、肝・腎機能を丈夫にする効果のあるクコの実、目の症状に効果のある決明子などが使われており、主に肝・腎機能を高め、血圧効果作用や眼病の予防に効果がある。また、タイムは芳香を持ち、フランス料理などにおいて肉類、スープなどの香り付けにしばしば使われているハーブである。
 三品目の「白いんげん豆のスープ」は、肝機能を高め、豊富な食物繊維による腸内洗浄の効果がある。使われている金針菜は胃腸の働きを改善し、ストレスなどで弱った肝機能を助ける効果があり、また、涼性のため熱を鎮めてくれるという春にうってつけの食材である。ちなみに白いんげん豆は昨年のテレビ放送によりダイエットに効果があるとされたが、十分な加熱調理が不可欠である。
 四品目の「真鯛の香り焼きエストラゴン風味、何首烏風味のバルサミコソース」はコレステロールを減らし、動脈硬化を抑制する作用がある。真鯛はたんぱく質が多く、消化吸収しやすいため胃腸によい食材である。また、何首烏はツルドクダミともいい、強壮薬、育毛剤として使われている漢方薬である。
 五品目の「牛肉の香草パネグリエ、杜仲風味」には、血流を良くするキノコ類や菊花、杜仲、緑茶などが使われている。エリンギには鉄分が多いため、貧血の予防に効果がある。そして椎茸はノンカロリーで食物繊維が多く、便秘解消やダイエットに効果があるが、食べ過ぎると胃腸の負担となってしまう。また、牛肉には鉄分が多い為貧血の予防に役立ち、また、栄養価の高いたんぱく質やミネラルを含んでおり、体力をつけて抵抗力を高める働きがある。しかし牛肉は「温性」のスタミナ食材で身体を温めるため、もともと熱っぽい「肝陽亢盛」の回復には逆効果になる恐れがあるため、食べすぎには注意が必要である。菊花や緑茶には高い抗酸化・抗菌作用や血管拡張作用による血流の促進が期待できる。特に緑茶はお茶の中で抗酸化作用が最も高く、ほかにもビタミンCやカテキンといった有効成分も豊富である。そして杜仲は血圧の降下や肝・腎機能の機能向上に効果があるとされる。
 六品目の「春の取り合わせサラダ」には様々な野菜が使われている。セロリには「涼」の性質があり、肝にこもった余分な熱を取る作用、カリウムを多く含むことによる血圧降下作用がある。レタスもまた「涼」性の野菜で、胃腸に優しく抗酸化作用があり、ストレス解消や疲労回復に効果がある。トマトにも熱を収め、消化機能を促進して肝の解毒を助ける作用がある。他にもコレステロール値や血圧の降下作用などもある優れた食材だが、一方で体内に水分をためやすく、胃腸の負担になりやすいという面も持ちあわせている。
 七品目の「黒豆プリン」にはコレステロール値を下げ、中性脂肪を減らし、高脂血症の予防の効果がある。黒豆には血液中の脂質値を下げて動脈硬化を防いだり、免疫力を高める効果や利尿作用がある。豆腐には体内にこもった熱を収めたり、唾液の分泌を促して口内を潤す作用がある。また、胃腸を保護する役目があるため、黒豆による胃腸への負担をやわらげてくれる。
 最後の「ルイボスティー」には活性酸素消去作用や抗酸化作用があり、肌荒れ、口内炎、動脈硬化、花粉症、アレルギー性鼻炎などによい。ちなみにこのルイボスティーは薬局などでもよく見かけられるが、その品質やランクはピンからキリまで範囲が幅広い。
 春は肝のエネルギーが亢進して「肝陽上亢」「血虚」「陰虚」となりやすい。その症状には頭痛、目の充血、のぼせ、いらいら、不眠、動悸、局所的な栄養失調などがある。これらの症状は、現代医学では自律神経失調症や更年期障害などと呼ばれているが、東洋医学ではこれらを肝の熱や陰液(血・津液)不足の為と考えている。そして、それらを補うための食材を使った料理を食べるのが予防に効果的としている。そのため、その働きを持つ黒豆、クコの実、牛肉、菊花などをうまく料理して摂取し、この季節にふさわしい体調管理をおこなうのが春を健康的に過ごすための秘訣である。その際は、体調に合わせた材料を選ぶだけでなく、見た目や味を良くすることも大切である。

 

 

 

●「春の薬膳」食材まとめ●

 

@ローズマリーティー

 

・ローズマリー:脂肪の抗酸化、細胞の活性化、老化防止

 

A菜の花の温製ロワイヤル、決明子とタイムの香り

 

・菜の花(温・辛):抗酸化、疲労回復、動脈硬化やがんの予防

・決明子:目の症状改善

・クコの実(平・甘):肝・腎の機能を丈夫にする、目の疲労を回復、筋膜・骨・関節を丈夫にする

 

 

 

 

B白いんげん豆のスープ

 

・(白)いんげん豆(温・甘):胃腸に良い、むくみ

・金針菜(涼平・甘・微苦):胃腸の働きを改善、夏バテ解消、利尿作用

 

C真鯛の香り焼きエストラゴン風味、何首烏風味のバルサミコソース

 

・真鯛(平・甘):胃腸補強、むくみ、疲れ目

・何首烏:強壮

  

D牛肉の香草パネグリエ、杜仲風味

 

・牛肉(温・甘):貧血予防、体力・抵抗力をつける

・菊花:血圧降下、抗酸化作用、抗菌作用

・緑茶(寒・苦・甘・渋):視力回復、利尿作用、抗酸化、血圧降下、老化予防、血中コレステロール減少

・エリンギ:貧血予防

・椎茸(平・涼・甘):便秘解消、ダイエット、高血圧予防、夏バテ解消、抗がん作用

 

E春の取り合わせサラダ

 

・セロリ(涼・平・甘・微苦・微渋):血圧降下、めまい

・(サニー)レタス(涼):胃腸に良い、抗酸化作用、ストレス解消、疲労回復、利尿作用

・トマト(微寒・甘・酸):血圧降下、消炎、抗菌、止血、コレステロール値の降下作用、動脈硬化防止

 

F黒豆プリン

 

・黒豆(平・甘):胃腸の働きを活発化、免疫力を高める、動脈硬化防止

・豆腐(平・甘):口の渇きを解消、胃腸を保護

 

Gルイボスティー

 

・ルイボス:活性酸素消去作用、抗酸化作用、肌荒れ、口内炎、動脈硬化、花粉症、アレルギー性鼻炎