2006年7月5日(水)
グループ4
東洋医学を学ぶ2(食材と体質・医食同源・体質診断)
講師:臨床医学家医学博士 梁平先生
《体質を考える食生活》
〈栄養素について〉
西洋栄養学は栄養素についてピンポイントで見て、その物質が体によければ大量に取ったほうがいいという考え方である。しかし東方栄養学では総合的に食材を見て選ぶ。漢方に基づいた理論では食べるのは栄養素ではなく食事である。つまりAという食材にその人に合った栄養素が含まれていても、Aの持つ栄養素で合わないものがあれば選ばないという考え方だ。その人の体質にあったものをその食材の持つ栄養素全てから判断し選択していく事が、東方栄養学である。自然の食材の持つパワーから体質に合った食事を摂る事が大切である。そこでアガリクスを例にすると、アガリクスに含まれるグルカンは少量ならば抗がん効果が得られる。しかし、アガリクスにはアカリチンという発ガン促進剤も含まれており、大量に摂取してはいけないのだ。またキノコ類は消化しにくく、効果はその人の体質によって変わってくる。消化不良の人に効かないからといって過剰に摂取させれば余計に体調不良になってしまう。罪になるかならないかは量と体質に起因するのである。人それぞれ体質の差があり、全ての人が同じ食事をして健康になれるというものではないのだ。食材を選ぶ時には、服用の量と体質を考える事が大切である。
〈体質とは何か〉
体質とは1.生まれつき2.関連症状3.長期持続4.変化可能という4つの観点で判断できる。体質の形成は生まれつきだけでなく長期居住などの環境、不摂生、偏食なども原因とする。東洋医学では体質を「気血両虚」「食積痰湿」「肝陽亢盛」「気滞うっ血」「陰虚」「陽虚」「老人」「小児」「妊婦」に分類する。
・ 気血両虚
(生まれつき)胃腸が弱い 体弱
(長期的過労)長期的栄養不足
(偏食)冷たいもので胃腸冷え消化吸収障害
(不摂生)精気を過度に消耗
→消化吸収のいいものをとる。
・ 食積痰湿
(生まれつき)胃強く腸弱い
(長期居住)湿度の強い場所
(暴飲暴食)胃腸機能低下
(食痰湿)代謝の老廃物が体内に蓄積
→体内の老廃物、余分な水分・痰を取り除くこと。
・ 肝陽亢盛
(生まれつき)情緒不安定
(長期過労)神経緊張で血圧上昇
(暴飲暴食)アルコール・脂質の過食で動脈硬化
(偏食)香辛料などで血圧上昇
(不摂生)精気を過度に消耗
→リラックスすることを心がける。体を冷やす野菜をとる。
・ 気滞うっ血
(生まれつき)神経過敏 繊細
(極端な寒冷で)血液の循環障害
(長期的なストレス)気滞うっ血
(打撲傷などによる)うっ血の拡大
→ストレスをため込まず気の巡りをよくし血行をよくすること。
・ 陰虚
(生まれつき)虚弱
(不摂生)精気を損なう
(偏食)香辛料などの食品
(極度の精神的ショック)陰液の消耗
(利尿剤の過剰な使用)体の陰液を損なう
→前向きに考えること。睡眠をよくとる。
・ 陽虚
(生まれつき)虚弱体質
(長期居住)寒くて湿度の高いところ
(偏食)冷たい食物 寒性のある食物
(過剰摂取)抗生物質や苦くて寒性の漢方薬
→体を温めるものを食べる。散歩などで血行促進させるとよい。
・ 老人、小児、妊婦
それぞれ全身機能低下、成長発育のため体を温める、子宝のため温める
→消化吸収がよく体を温めるものをとるとよい。
体質は一人につき一タイプとは限らない。また事故や手術などによって体質が変化することもあるのでその時々の体質を見極めて対応していく必要がある。それぞれの特性を見極めそれぞれに合った対処法をとらなければならない。
〈食事創作における注意点〉
・ 目的 薬膳の効能を明確にする。
・ 知識 良い配合は効能を高める。悪い配合は逆効果。
・ 促進 趣効能を高めるため。
・ 抑制 毒・副作用を減らすため。
〈食事療法の調理法の注意点〉
・ 蒸す…有効成分を保つ。油分が少ない。
・ 煮込み…栄養をスープに。消化によい。
・ 軽く炒め…栄養と揮発物を保つ。
・ 炒め…油に溶ける。栄養素を得る。
・ 油揚げ…食欲増進(少量)高温殺菌。
また調味料にもさまざまな性質があり、毒性作用のある薬材もあるのでしっかりした基本知識を基にその時々に合ったものを選んでいかなければならない。
〈まとめ〉
東洋医学における食生活には体質を知り、それに合った対応をすること、そして「中庸」の考えや基礎知識がとても重要である。