人の世界観を尊重するには謙虚さが必要となる。例えば個人の消費や余暇からの満足度を重視する世界観を持つ人は社会を含む共同体の人間関係や共同体への貢献からの充実度を重視する世界観を持つ人を知的に劣っていると見る傾向がある。逆に後者の世界観を持つ人は前者の世界観を持っている人を倫理的に劣った人と見る傾向がある。本研究会ではこのような態度は避けて研究を行う。
2024年3月末までの慶応義塾大学でのゼミも含めてゼミの先輩たちや他の人たちがしてきた研究を基に「巨人の上に立ち」、少しでも世界で誰もまだ探求したことの無い所まで見ることができるような研究を行っていく研究共同体として成長していく。
本研究では、完璧主義と楽観主義の世界観がアウトプットの完成度に与える影響につい て探究した。研究仮説は、「楽観主義の世界観を強く持つ人はアウトプットの完成度 が低くなる傾向がある」、「完璧主義の世界観を持つ人はアウトプットの完成度が高くなる 傾向がある」の二つとした。前者の研究仮説について5%水準で3本の有意で研究仮説と整合的な結果を 得た。これに対し後者の研究仮説については有意な結果は得られなかった。荒川(同志社大学)
本研究では、「同調主義の世界観が購買行動に影響を与える」という仮説を立て、アンケートを集計し回帰分析を行った。不文律は「暗黙のルール」に基づく行動を促し、非日常感は旅行など特別な状況下での購買行動に影響を与え、低価格は消費促進と抑制の両面で同調行動を引き起こす要因となった。 保阪,榎本,白坂(慶応義塾大学)
認知的不協和が強い人は、通常取るだろう選択とは逆の選択をする傾向があ ると考えた。本研究の結果から、消費者側に、行列の非効率性や認知的不協和 の認識を持たせるように助言することが、今後の行列を解消し、経済効率を上 げるために、重要な意味を持つようになるのではないかと考えた。室川,赤井,服部,藤田(慶応義塾大学)
ことなかれ主義の要素として責任回避と現状維持を挙げ、前者は日本社会の厳しい処罰文化と関係し、後者は震災後の募金増加などに見られる。同調圧力を利用し、国際協力を促す流れを作ることで、日本人の特性を生かした利他的行動を促進できる可能性がある。今後も研究を進め、日本の国際貢献のあり方を探求したい。新井,大河,片山,坂口(慶応義塾大学)
2年次演習では毎週リーディング課題と指定するインターネットの記事等の演習の予習としての各自のリーディングを基に、ディベート等で世界観についての学習を深める。これまでに取り上げた題材には、功利主義やカントの義務論といった世界観に加えて、倫理的・行動経済学的観点からみた企業のマーケティングなどがある。
3年次演習ではグループ研究により、倫理観や価値観や世界の成り立ちに関する信条などの世界観の経済行動への影響を中心に研究を進めていく。研究グループは原則として3人のメンバーで構成し、研究仮説を構築して経済行動(お金だけでなく時間も含めて希少な資源に関わる行動)と世界観を問うアンケート調査によりデータを収集し、回帰分析を行う。
慶応義塾大学 2010年-2024年
同志社大学 2023年-