Title: 「年金,公的介護,および経済成長」


Abstract:

本稿では,人的資本蓄積を成長のエンジンとする内生的成長モデルを用いて,年金,公的介護の国民所得,経済成長,雇用そして所得分配に対する効果を分析する.家族制度に組み込まれた世代間の垂直的関係に焦点があてられている点,そして,人的資本への投資がおこなわれない低位均衡と投資がおこなわれる高位均衡とを包括的に分析している点が本稿の特徴である.本稿の主な結論は次の4点である.第1に,低位均衡では,小規模の年金,公的介護は成長率に対し中立的であるとともに,労働供給を抑制することにより,国民所得水準を低下させる.これは年金,公的介護の限界を示唆している.第2に,高位均衡では,年金,公的介護のいずれも正の成長率効果を持つことが示される.第3に,ある程度の規模の年金,公的介護は,経済を低位均衡から高位均衡へとテイクオフさせる可能性があることが示される.これらの結果は,年金,公的介護の有効性を示唆している.最後に,年金制度は家族介護の依存度を高め,雇用に対し悪影響を持つのに対し,公的介護制度は家族介護の依存度を下げることにより正の雇用効果を持ち得ることが示される.


JEL Classification : H55, O41


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