紛争の義務的解決に関する選択議定書

この議定書及び千九百六十三年三月四日から同年四月二十二日までウィーンで開催された国際連合の会議において採択された領事関係に関するウィーン条約(以下「条約」という。)の締約国は、

条約の解釈又は適用から生ずるあらゆる紛争を、自国に関するものである限り、他の解決方法が締約国により合理的な期間内に合意される場合を除くほか、国際司法裁判所の義務的管轄に付託する希望を有することを表明して、

次のとおり協定した。

第一条

条約の解釈又は適用から生ずる紛争は、国際司法裁判所の義務的管轄の範囲内に属するものとし、したがつて、当該紛争は、この議定書の締約国である紛争の当事国のいずれかが行う請求により、国際司法裁判所に付託することができる。

第二条

紛争の当事国は、一方の当事国が他方の当事国に対し紛争が存在する旨の見解を通告した後二箇月の期間内に、当該紛争を国際司法裁判所にではなく仲裁裁判所に付託することにつき合意することができる。当該二箇月の期間が経過した後は、いずれか一方の当事国は、請求により、当該紛争を国際司法裁判所に付託することができる。

第三条

1 紛争の当事国は、前条に規定する二箇月の期間内に、国際司法裁判所に付託する前に調停手続をとることにつき合意することができる。

2 調停委員会は、その構成の後五箇月以内に勧告を行う。勧告が行われた後二箇月以内に紛争の当事国が当該勧告を受諾しない場合には、いずれか一方の当事国は、請求により、当該紛争を国際司法裁判所に付託することができる。

第四条

条約、国籍の取得に関する選択議定書及びこの議定書の締約国は、国籍の取得に関する選択議定書の解釈又は適用から生ずる紛争についてこの議定書を適用することをいつでも宣言することができる。その宣言は、国際連合事務総長に通告する。

第五条

この議定書は、千九百六十三年十月三十一日まではオーストリア共和国連邦外務省において、その後千九百六十四年三月三十一日まではニュー・ヨークにある国際連合本部において、条約の締約国となることのできるすべての国による署名のために開放しておく。

第六条

この議定書は、批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託する。

第七条

この議定書は、条約の締約国となることのできるすべての国による加入のために開放しておく。加入書は、国際連合事務総長に寄託する。

第八条

1 この議定書は、条約の効力発生の日又はこの議定書の二番目の批准書若しくは加入書が国際連合事務総長に寄託された日から三十日目の日のいずれか遅い日に効力を生ずる。

2 この議定書は、1の規定に基づきこの議定書が効力を生じた後にこれを批准し又はこれに加入する国については、その批准書又は加入書の寄託の後三十日目の日に効力を生ずる。

第九条

国際連合事務総長は、条約の締約国となることのできるすべての国に次の事項を通報する。

(a) 第五条から第七条までの規定によるこの議定書への署名及び批准書又は加入書の寄託

(b) 第四条の規定に基づいて行われる宣言

(c) 前条の規定に基づきこの議定書が効力を生ずる日

第十条

中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とするこの議定書の原本は、国際連合事務総長に寄託する。同事務総長は、この議定書の認証謄本を第五条に規定するすべての国に送付する。

以上の証拠として、下名の全権委員は、それぞれの政府から正当に委任を受けてこの議定書に署名した。

千九百六十三年四月二十四日にウィーンで作成した。