大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験を禁止する条約

アメリカ合衆国、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びソヴィエト社会主義共和国連邦(以下「原締約国」という。)の政府は、国際連合の目的に従つて厳重な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する合意をできる限りすみやかに達成し、その合意により、軍備競争を終止させ、かつ、核兵器を含むすべての種類の兵器の生産及び実験への誘因を除去することをその主要な目的として宣言し、核兵器のすべての実験的爆発の永久的停止の達成を求め、その目的のために交渉を継続することを決意し、また、放射性物質による人類の環境の汚染を終止させることを希望して、次のとおり協定した。

第一条

1 この条約の各締約国は、その管轄又は管理の下にあるいかなる場所においても、次の環境における核兵器の実験的爆発及び他の核爆発を禁止すること、防止すること及び実施しないことを約束する。

a 大気圏内、宇宙空間を含む大気圏外並びに領水及び公海を含む水中

b そのような爆発がその管轄又は管理の下でその爆発が行なわれる国の領域外において放射性残渣(さ)が存在するという結果をもたらすときは、その他の環境。この点に関して、締約国がこの条約の前文で述べたように締結を達成しようとしている条約、すなわち、地下における実験的核爆発を含むすべての実験的核爆発を永久に禁止することとなる条約の締結がこのbの規定により妨げられるものではないことが了解される。

2 この条約の各締約国は、さらに、いかなる場所においても、1に掲げるいずれかの環境の中で行なわれ、又は1に規定する結果をもたらす核兵器の実験的爆発又は他の核爆発の実施を実現させ、奨励し、又はいかなる態様によるかを問わずこれに参加することを差し控えることを約束する。

第二条

1 いずれの締約国も、この条約の改正を提案することができる。改正案の本文は、寄託国政府に提出するものとし、寄託国政府は、これをこの条約のすべての締約国に送付する。その後、締約国の三分の一以上の要請があつたときは、寄託国政府は、その改正を審議するため会議を招集し、すべての締約国をその会議に招請する。

2 この条約のいかなる改正も、すべての原締約国の票を含むこの条約のすべての締約国の過半数の票により承認されなければならない。その改正は、すべての原締約国の批准書を含むすべての締約国の過半数の批准書が寄託された時に、すべての締約国について効力を生ずる。

第三条

1 この条約は、署名のためすべての国に開放される。この条約が3の規定に従つて効力を生ずる前にこの条約に署名しない国は、いつでもこの条約に加入することができる。

2 この条約は、署名国により批准されなければならない。批准書及び加入書は、ここに寄託国政府として指定される原締約国の政府、すなわち、アメリカ合衆国、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びソヴィエト社会主義共和国連邦の政府に寄託するものとする。

3 この条約は、すべての原締約国による批准及びその批准書の寄託の後に効力を生ずる。

4 この条約の効力発生後に批准書又は加入書を寄託する国については、この条約は、その批准書又は加入書の寄託の日に効力を生ずる。

5 寄託国政府は、すべての署名国及び加入国に対し、各署名の日、この条約の各批准書及び加入書の寄託の日、その効力発生の日並びに会議の招集の要請を受領した日又は他の通知をすみやかに通報する。

6 この条約は、寄託国政府が国際連合憲章第百二条の規定に従つて登録する。

第四条

この条約の有効期間は、無期限とする。

各締約国は、この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認めるときは、その主権の行使として、この条約から脱退する権利を有する。

各締約国は、そのような脱退をこの条約の他のすべての締約国に対し三箇月前に予告するものとする。

第五条

この条約は、英語及びロシア語による本文をひとしく正文とし、寄託国政府に寄託するものとする。この条約の認証謄本は、寄託国政府が署名国及び加入国の政府に送付するものとする。

以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けて、この条約に署名した。

千九百六十三年八月五日にモスクワ市で本書三通を作成した。

アメリカ合衆国政府のために

ディーン・ラスク

グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府のために

ヒューム

ソヴィエト社会主義共和国連邦政府のために

A・グロムイコ

オーストラリア政府のために

ハワード・ビール

千九百六十三年八月八日

メキシコ政府のために

アントニオ・カリリョ

千九百六十三年八月八日

カナダ政府のために

C・S・A・リッチイ

千九百六十三年八月八日

ニュー・ジーランド政府のために

G・R・レイキング

千九百六十三年八月八日

インド政府のために

ブラージ・クマール・ネール

千九百六十三年八月八日

フィリピン政府のために

アメリート・R・ムタック

千九百六十三年八月八日

マラヤ連邦政府のために

オン・ヨク・リン

千九百六十三年八月八日

リベリア政府のために

S・エドワード・ピール

千九百六十三年八月八日

タイ政府のために

ウィスート・アッタユック

千九百六十三年八月八日

イラン政府のために

マハムード・フォルーギー

千九百六十三年八月八日

ポーランド政府のために

M・ドブロシェリスキ

千九百六十三年八月八日

ベルギー政府のために

ルイ・シェーヴェン

千九百六十三年八月八日

ブルガリア政府のために

リュボミル・ポポフ

千九百六十三年八月八日

イタリア政府のために

セルジョ・フェノアルテア

千九百六十三年八月八日

アイルランド政府のために

T・J・キアナン

千九百六十三年八月八日

アフガニスタン政府のために

ドクトルA・マジッド

千九百六十三年八月八日

ルーマニア政府のために

ミルセア・マリッチァ

千九百六十三年八月八日

テュニジア政府のために

I・ヘリール

千九百六十三年八月八日

サイプラス政府のために

ゼノン・ロッシーデス

千九百六十三年八月八日

ユーゴースラヴィア政府のために

ヴェリコ・ミチューノヴィッチ

千九百六十三年八月八日

フィンランド政府のために

ペンティ・ウーシヴィルタ

千九百六十三年八月八日

チェッコスロヴァキア政府のために

ドクトル ミロスラフ・ルージェク

千九百六十三年八月八日

イスラエル政府のために

M・ガージット

千九百六十三年八月八日

ホンデュラス政府のために

セレオ・ダヴィラ

千九百六十三年八月八日

ハンガリー政府のために

ラドヴァニ・ヤノシュ

千九百六十三年八月八日

チリ政府のために

セルヒオ・グティエレス=O

千九百六十三年八月八日

ブラジル政府のために

ロベルト・デ・オリヴェイラ・カンポス

千九百六十三年八月八日

アルゼンティン政府のために

フェルナンド・J・タウレル

千九百六十三年八月八日

アラブ連合共和国政府のために

大使 モスタファ・カーメル

千九百六十三年八月八日

ギリシャ政府のために

A・マチャス

千九百六十三年八月八日

ボリヴィア政府のために

E・S・デ・ロサーダ

千九百六十三年八月八日

トルコ政府のために

T・メネメンジオールー

千九百六十三年八月九日

スーダン政府のために

O・ハダリー

千九百六十三年八月九日

エティオピア政府のために

ベルハノウ・ディンケ

千九百六十三年八月九日

オランダ王国政府のために

J・H・ファン・ロイエン

千九百六十三年八月九日

デンマーク政府のために

T・ダールゴール

千九百六十三年八月九日

ノールウェー政府のために

ロルフ・ハンケ

千九百六十三年八月九日

ガーナ政府のために

M・A・リベイロ

千九百六十三年八月九日

コンゴー(レオポルドヴィル)政府のために

M・カルドソ

千九百六十三年八月九日

ジョルダン政府のために

サアド・ジュムア

千九百六十三年八月十二日

ウルグァイ政府のために

B・オチョテコ

千九百六十三年八月十二日

アイスランド政府のために

トール・トース

千九百六十三年八月十二日

トリニダッド・トバゴ政府のために

エリス・クラーク

千九百六十三年八月十二日

スウェーデン政府のために

J・J・ド・ダルデル

千九百六十三年八月十二日

ラオス政府のために

カムパン

千九百六十三年八月十二日

レバノン政府のために

I・アフダブ

千九百六十三年八月十二日

ニカラグァ政府のために

ギリュルモ・セヴィリャ=サカサ

千九百六十三年八月十三日

ジャマイカ政府のために

ネヴィル・アシェンヘン

千九百六十三年八月十三日

イラク政府のために

アドナン・パシャシ

千九百六十三年八月十三日

シリア・アラブ共和国政府のために

オマル・アブー・リシェ

千九百六十三年八月十三日

コスタ・リカ政府のために

ゴンサロ・J・ファシオ

千九百六十三年八月十三日

スペイン政府のために

アントニオ・ガリゲス

千九百六十三年八月十三日

日本国政府のために

武内龍次

千九百六十三年八月十四日

パキスタン政府のために

G・アーメド

千九百六十三年八月十四日

ビルマ政府のために

オン・セイン

千九百六十三年八月十四日

アルジェリア政府のために

モハメド・フアリ

千九百六十三年八月十四日

パラグァイ政府のために

フリオ・C・グティエレス

千九百六十三年八月十五日

ヴェネズエラ政府のために

E・テヘラ=P

千九百六十三年八月十六日

コロンビア政府のために

エドアルド・ウリベ・ボテロ

千九百六十三年八月十六日

リビヤ政府のために

タジェディン・ジェルビー

千九百六十三年八月十六日

ドイツ連邦共和国政府のために

K・H・クナップシュタイン

千九百六十三年八月十九日

ソマリア共和国政府のために

オマル・モハリム

千九百六十三年八月十九日

クウェイト政府のために

T・グセイン

千九百六十三年八月二十日

エル・サルヴァドル政府のために

F・R・リマ

千九百六十三年八月二十一日

セイロン政府のために

M・F・デ・S・ジャヤラトネ

千九百六十三年八月二十二日

マリ政府のために

ウーマル・ソウ

千九百六十三年八月二十三日

ペルー政府のために

F・ベルケメイヤー

千九百六十三年八月二十三日

中華民国政府のために

蒋延黻

千九百六十三年八月二十三日

インドネシア政府のために

Z・ザイン

千九百六十三年八月二十三日

チャード政府のために

マリク・ソウ

千九百六十三年八月二十六日

スイス政府のために

H・K・フレイ

千九百六十三年八月二十六日

モロッコ政府のために

アブデサデック・エル・マズアリ・エル・グラウィ

千九百六十三年八月二十七日

ダホメ政府のために

G・ポニョン

千九百六十三年八月二十七日

カメルーン政府のために

J・クオー

千九百六十三年八月二十七日

ウガンダ政府のために

アポロ・K・キロンデ

千九百六十三年八月二十九日

大韓民国政府のために

キム・チョン・ユル

千九百六十三年八月三十日

ネパール政府のために

M・P・コイララ

千九百六十三年八月三十日

上ヴォルタ政府のために

ジョン・B・カボレ

千九百六十三年八月三十日

ルクセンブルグ政府のために

G・ハイスブルク

千九百六十三年九月三日

ナイジェリア連邦政府のために

アヌチャ・ワチュク

千九百六十三年九月四日

象牙海岸政府のために

コナン・ベディエ

千九百六十三年九月五日

西サモア政府のために

G・R・レイキング

千九百六十三年九月六日

イエメン・アラブ共和国政府のために

モスィン・A・アルアイニー

千九百六十三年九月六日

ガボン政府のために

A・イッセンベ

千九百六十三年九月十日

オーストリア政府のために

ヴィルフリート・プラッツァー

千九百六十三年九月十一日

シエラ・レオーネ政府のために

R・E・ケルファ=コールカー

千九百六十三年九月十一日

モーリタニア政府のために

M・N・コシュマン

千九百六十三年九月十三日

ドミニカ共和国政府のために

E・A・ロザリオ・C

千九百六十三年九月十六日

サン・マリノ政府のために

フランコ・フィオリオ

千九百六十三年九月十七日

トーゴー政府のために

G・アペドー=アマー

千九百六十三年九月十八日

タンガニイカ政府のために

エラスト・A・M・マンゲンヤ

千九百六十三年九月十八日

ルワンダ政府のために

ムパカニエ・ラザール

千九百六十三年九月十九日

パナマ政府のために

A・G・アランゴ

千九百六十三年九月二十日

セネガル政府のために

ウースマヌ・ソセ・ディオプ

千九百六十三年九月二十日

マダガスカル共和国政府のために

ルイ・ラコトマララ

千九百六十三年九月二十三日

グァテマラ政府のために

カルロス・ガルシア=バウアー

千九百六十三年九月二十三日

ニジェール政府のために

A・シディク

千九百六十三年九月二十四日

エクアドル政府のために

ホセ・アントニオ・コレア

千九百六十三年九月二十七日

ヴィエトナム政府のために

N・P・ブー=ホイ

千九百六十三年十月一日

ブルンディ政府のために

ピー・マスンブコ

千九百六十三年十月四日

ポルトガル政府のために

J・デ・メネゼス・ローザ

千九百六十三年十月九日

ハイティ政府のために

ロベール・テアール

千九百六十三年十月九日

(右条約の英文及び露文)〔省略〕