商船ヲ軍艦ニ変更スルコトニ関スル条約

独逸皇帝普魯西国皇帝陛下･･･ハ戦時ニ於テ商船ヲ戦闘艦隊ニ編入スル為之ヲ行ヒ得ヘキ条件ヲ定ムルノ希望スヘキコトヲ考慮シ締約国ハ商船ヲ軍艦ニ変更スルコトハ之ヲ公海ニ於テ行ヒ得ルヤ否ノ問題ニ関シ一致スルコト能ハサリシニ因リ変更ノ場所ハ問題外ト為シ左記ノ規則中ニ包含セラレサルモノナルコトヲ考慮シ之カ為条約ヲ締結セムコトヲ希望シ各左ノ全権委員ヲ任命セリ

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因テ各全権委員ハ其ノ良好妥当ナリト認メラレタル委任状ヲ寄託シタル後左ノ条項ヲ協定セリ

第一条　軍艦ニ変更セラレタル商船ハ其ノ掲クル国旗ノ所属国ノ直接ノ管轄直接ノ監督及責任ノ下ニ置カルルニ非サレハ軍艦ニ属スル権利及義務ヲ有スルコトヲ得ス

第二条　軍艦ニ変更セラレタル商船ニハ其ノ国ノ軍艦ノ外部ノ特殊徽章ヲ附スルコトヲ要ス

第三条　指揮官ハ国家ノ勤務ニ服シ且当該官憲ニ依テ正式ニ任命セラレ其ノ氏名ハ艦隊ノ将校名簿中ニ記載セラルヘキモノトス

第四条　乗員ハ軍紀ニ服スヘキモノトス

第五条　軍艦ニ変更セラレタル一切ノ商船ハ其ノ行動ニ付戦争ノ法規慣例ヲ遵守スヘキモノトス

第六条　交戦者ニシテ商船ヲ軍艦ニ変更シタルモノハ成ルヘク速ニ右変更ヲ其ノ軍艦表中ニ記入スルコトヲ要ス

第七条　本条約ノ規定ハ交戦国カ悉ク本条約ノ当事者ナルトキニ限締約国間ニノミ之ヲ適用ス

第八条　本条約ハ成ルヘク速ニ批准スヘシ

批准書ハ海牙ニ寄託ス

第一回ノ批准書寄託ハ之ニ加リタル諸国ノ代表者及和蘭国外務大臣ノ署名シタル調書ヲ以テ之ヲ証ス

爾後ノ批准書寄託ハ和蘭国政府ニ宛テ且批准書ヲ添附シタル通告書ヲ以テ之ヲ為ス

第一回ノ批准書寄託ニ関スル調書、前項ニ掲ケタル通告書及批准書ノ認証謄本ハ和蘭国政府ヨリ外交上ノ手続ヲ以テ直ニ之ヲ第二回平和会議ニ招請セラレタル諸国及本条約ニ加盟スル他ノ諸国ニ交付スヘシ前項ニ掲ケタル場合ニ於テハ和蘭国政府ハ同時ニ通告書ヲ接受シタル日ヲ通知スルモノトス

第九条　記名国ニ非サル諸国ハ本条約ニ加盟スルコトヲ得

加盟セムト欲スル国ハ書面ヲ以テ其ノ意思ヲ和蘭国政府ニ通告シ且加盟書ヲ送付シ之ヲ和蘭国政府ノ文庫ニ寄託スヘシ

和蘭国政府ハ直ニ通告書及加盟書ノ認証謄本ヲ爾余ノ諸国ニ送付シ且右通告書ヲ接受シタル日ヲ通知スヘシ

第十条　本条約ハ第一回ノ批准書寄託ニ加リタル諸国ニ対シテハ其ノ寄託ノ調書ノ日附ヨリ六十日ノ後又其ノ後ニ批准シ又ハ加盟スル諸国ニ対シテハ和蘭国政府カ右批准又ハ加盟ノ通告ヲ接受シタルトキヨリ六十日ノ後ニ其ノ効力ヲ生スルモノトス

第十一条　締約国中本条約ヲ廃棄セムト欲スルモノアルトキハ書面ヲ以テ其ノ旨和蘭国政府ニ通告スヘシ和蘭国政府ハ直ニ通告書ノ認証謄本ヲ爾余ノ諸国ニ送付シ且右通告書ヲ接受シタル日ヲ通知スヘシ

廃棄ハ其ノ通告カ和蘭国政府ニ到達シタルトキヨリ一年ノ後右通告ヲ為シタル国ニ対シテノミ其ノ効力ヲ生スルモノトス

第十二条　和蘭国外務省ハ帳簿ヲ備ヘ置キ第八条第三項及第四項ニ依リ為シタル批准書寄託ノ日並加盟（第九条第二項）又ハ廃棄（第十一条第一項）ノ通告ヲ接受シタル日ヲ記入スルモノトス

各締約国ハ右帳簿ヲ閲覧シ且其ノ認証抄本ヲ請求スルコトヲ得

右証拠トシテ各全権委員本条約ニ署名ス

千九百七年十月十八日海牙ニ於テ本書一通ヲ作リ之ヲ和蘭国政府ノ文庫ニ寄託シ其ノ認証謄本ヲ外交上ノ手続ニ依リ第二回平和会議ニ招請セラレタル諸国ニ交付スヘキモノトス