湊 うらら
文学部社会学科新聞学専攻2回生
最終更新日 2004年5月27日
寒梅館1階、おしゃれなカフェを横目にまっすぐ北に歩いていくと三角のガラス屋根が目に飛び込んできます。 ここが室町時代の石敷き遺構、別名「記憶の庭」です(第41回参照)。早速ガラス屋根の中を覗き込んでみましょう。 一見するとただの石が無造作におかれているだけです。しかし、この石敷きが室町時代のもので、 さらにはそれが洛中洛外図に描かれている建物の基礎かもしれないと聞くと、単純なものですが、 なにかすごいものに思えてきます。この石敷きと私の立つ場所にはほんの数メートルの差しかありませんでした。 その間に何百年という歴史が詰まっているのだから驚きです。また、私達の歩く数メートル下を、 昔の人が歩いていたという事実に不思議な気持ちにさせられました。
ただ、私はたまたま先生という良きガイドがいたためその意味を理解できましたが、 考古学の知識のない一般の人には、ただの石にしか見えないかもしれません。 多くの人にこの歴史の実感を味わってもらうためにも、解説板以外に、ガイドなどの工夫が必要だと思いました。 また、太陽光の反射で石敷きが見えにくい時があるため、影を作るなどの改善が必要だと思いました。 それにしても、何百年先の人は私達の数メートル上を歩いているのでしょうか?興味深い話です。
次に寒梅館の中に入ります。リラックスした空間に授業を忘れるのも一つの手ですが、 少し右を向いてレンガ作りの壁に目を向けてみましょう。すると、目に映るのは「探求の窓」(第41回参照) です。一切説明書きのない壺や皿またはモニターの数々。実はこれは、モニターの映像テーマ(時代や場所など) に当てはまった遺物に光がともる仕掛けとなっているのです。気づかなければそれまでという気もしますが、 一度気づくと光の付き方が変わるたびに遺物を覗き込んでしまいます。いつもは説明書きの斜め読みで知った気になるので、 おそらくこれだけ何度も遺物を見たことはありません。一度はまると抜け出せない仕掛けとでも申しましょうか。 どうやら見事に術中にはまってしまったようです。
次に向かったのは大きなスクリーン、別名「展望の絵」です(第42回参照)。お勧めのチャンネルは洛中洛外図の人物の表情が見えるまで 近づくことができる「探索・洛中洛外図」。手元のタッチパネルのモニターを動かすグイグイした感じがとても気持ちいいです。 ただ、操作に複雑な部分があって、コンテンツを見て回るのに少々苦労しました。モニターの横に簡単な操作説明のシートがありますが、 モニター上にも少し説明書きを加えてはどうでしょう。きっとより多くの人が洛中洛外図の細やかな絵の中を、 時間を忘れて探索できるようになるはずです。現に私は見事、術中にはまってしまいましたから。
最後に向かったのが「時の井戸」です(第42回参照)。時の井戸とは良くいったもので、 間違って踏めば落ちてしまうのではないかと思ってしまいます。最も新しい寒梅館の校舎で同志社の校舎の変遷を見て、 時の移り変わりを感じてみてはいかがでしょう。
こうしてみると、寒梅館は実は昔と現代を結ぶ建物だったのではないかと思えてきます。 展示見学を終えて外に出ると、見慣れた景色に昔の風景がだぶって、タイムマシンにのった後のような不思議な気持ちになりました。 私もこの展示をもっと多くの人に見てもらうための工夫に挑戦したいと思います。