松田 度
同志社大学 歴史資料館 調査研究員
同志社大学 大学院 博士課程後期
後藤 隆
同志社大学 工学部4回生
最終更新日 2004年2月3日
厳寒のなか、歴史資料館では先日、同志社女子中学・高等学校の新生館・黎明館で、エレベーター設置工事にともなう立ち会い調査を実施しました。残念ながら、建物を建てた時の基礎工事で、調査地点はほとんど遺跡の痕跡が削られてしまっていました。しかし、黎明館南側の調査区では、地山の一部とみられる厚さ14.3cmの粘土と砂の水成堆積を確認することができました。この堆積から、人間がこの京都盆地へやってくる前の地形をうかがい知ることができそうです。
さて、話は変わって、現在作成中の発掘調査報告書の話です。
近年、インターネットの普及によって「発掘調査報告書」のあり方も、おおきく変わろうとしています。従来通りの「印刷本」スタイルとは異なる、CDデータでの「デジタル報告書」が増えつつあります。
これらの多くは、印刷本の報告書をそのまま「画像」にし、ページをめくる要領で閲覧できるPDF(Portable Document Format)形式に編集され、CDデータでの配布という方法で公開されているものがあります。
なかには大容量のデータをインターネットを通じてダウンロードできるようにしたり、遺構・遺物実測図などを「ベクターデータ(画像ではなく、書かれた線がすべて座標をもつデータ)」の形式で公開する機関も出てきています。
このように、遺跡にまつわる情報を「デジタル化」していく事は、学術的にもおおきな意味をもっています。印刷されたものを媒介とせず、その遺跡について考えるための膨大な情報をダイレクトに共有化できる事、これは、本来目指すべき学問の理想形態に近いといえます。インターネットが秘めている可能性を最大限に活用しながら遺跡を理解するために、これまで歴史資料館でもさまざまな試みを行ってきました。
つい先日、京都市左京区の岩倉大鷺町地点で実施した発掘調査の成果を、ホームページで公開しました。この岩倉大鷺町地点の調査報告(WEB版)をつくるため、私とともに卒論をかかえながら苦労した学生がいます。歴史資料館のホームページを支える彼の声を聞いてみましょう。
近い将来、ひとつの遺跡を理解するために、インターネットという手段によって、より多くの人たちが、より多くの情報を共有化できる時代がやって来るでしょう。そして、よりオープンな情報のやりとりと活発な議論が生まれることになるでしょう。その可能性を模索していく作業を、これからも続けていきたいと思います。歴史資料館では、すでに館報等をPDFで公開してきました。
PDFは、印刷して閲覧するのには適していますが、専用のソフトが必要であるため、直接コンピューター上で閲覧するのには不便です。
そのため、今回の調査報告WEB版では、そのままブラウザで閲覧できるようにしています。
今回の調査報告WEB版では、できる限りウェブページの標準規格に準拠し、見やすく、更新しやすい形で用意したいと思いました。
幸いにも、歴史資料館のウェブページでは、更新の容易なシステムを使用しており、このシステムを利用して作りました。大変だったのは、本文と画像の関連付けです。
わかりやすい構成をと考えて、今のような形になりましたが、使い勝手はいかがでしょうか?(後藤)