2.3 電磁界の一般的な積分表示式

 ストラットンの定理を基にして,電磁界の一般的な積分表示式を導出しよう.

Samuel Silver, “Microwave Antenna Theory and Design,” 3.8. General Solution of the Field Equations in Terms of the Sources, for a Time-periodic Field, McGraw Hill (1949), IEE, reprint (1984).

ストラットンの定理を基にした積分

 次の図のように,閉曲面S1,S2,,Snによって囲まれた領域Vを考え,法線ベクトルnを曲面上に領域Vの内部に向くように定義する.
閉曲面Siと単位ベクトルnの定義
まず,ストラットンの定理より, V(G××FF××G) dV(1)=S1+S2+  +Sn(F××GG××F)(n) dS ただし,法線ベクトルnは通常のストラットンの定理の式とは逆向き,つまり領域Vの内向きであることに注意すること. 上式において,ベクトルFGを次のようにおく. (2)FE(3)Gejkrra=ψa ただし,Eは電界,rは点Pからの距離,aは任意の定ベクトルを示す. このとき,ψは次に示す波源のないスカラヘルムホルツ方程式を満足する. (4)2ψ+k2ψ=0 いま,上式のラプラシアン2を,球座標系(r,θ,ϕ)で一般的に表すと, 2=1r2r(r2r)(5)+1r2sinθθ(sinθθ)+1r2sin2θ2ϕ2 であるが,ψ=ψ(r)ゆえ,θϕに依らないので, (6)2ψ=1r2r(r2ψr) 関数Gは点Pで特異点となるので,点Pを中心とする半径r0の球面Σを考え, S1,S2,,SnΣで囲まれた領域をVとする(下図参照). ただし,点Pは閉曲面Si (i=1,2,,n)上にある場合は後述するが,ここでは面Si上にないものとする.
閉曲面Siと点Pを囲む球面Σ
 ストラットンの定理はFGを用いると次のようになる. V(ψa××EE××ψa) dV(7)=S1+S2+  +Sn+Σ(E××ψa+ψa××E)n dS ただし,Σψの発散する領域を囲む閉曲面,VVの中でΣで囲まれる領域を除いた領域を示す. また,rは閉曲面Σの中の点Pと領域V中の任意の点までの距離を示す. 得られた体積積分は電界を用いて計算する式となっているので,ここでは,体積積分を変形して波源に関する積分表示を導出していく. ψa××E=ψa(k2EjωμJ×Jm)(8)=a(ψk2EjωμJψψ×Jm) また,被積分関数の第2項は,ベクトル公式 (9)××b=b2b より(aは定ベクトル), E××ψa=E{(ψa)2(ψa)}=E{(aψ)a2ψ}(10)=E{(aψ)+ak2ψ} よって,式(7)の左辺の被積分関数は次のようになる. ψa××EE××ψa(11)=a(jωμJψψ×Jm)E(aψ) 次に,体積積分を一部,面積積分に変換するため,に関する変形を行う.回転に関するベクトル公式 (12)×(ϕb)=(ϕ)×b+ϕ×b を一部移項して変形して, ϕ×b=×(ϕb)(ϕ)×b(13)=×(ϕb)+b×ϕ これより, (14)ψ×Jm=×(ψJm)+Jm×ψ また,発散に関するベクトル公式 (15)(ϕb)=(ϕ)b+ϕb を一部移項して変形して (16)(ϕ)b=bϕ=(bϕ)ϕb これより, E(aψ)={E(aψ)}(aψ)E(17)={E(aψ)}(aψ)ρϵ したがって,式(7)の左辺の被積分関数は次のようになる. ψa××EE××ψa=ajωμJψa{×(ψJm)+Jm×ψ}(18)[{E(aψ)}ρϵaψ] よって,式(7)の左辺は次のようになる. V[ajωμJψa{×(ψJm)+Jm×ψ}{E(aψ)}+ρϵaψ]dV=aV(jωμJψJm×ψ+ρϵψ)dV(19)aV×(ψJm)dVV{E(aψ)}dV 最後の項は,ガウスの発散定理より,通常とは逆にnVの内向きにとると, V{E(aψ)}dV=S1+  +Σ{E(aψ)}(n) dS(20)=aS1+  +Σ(ψ)(En) dS また,ベクトルのガウスの定理(法線ベクトルnは逆向き) (21)V×b dV=S(n)×b dS より, (22)V×(ψJm) dV=S1+  +Σ(n)×(ψJm) dS 両辺に定ベクトルaとのスカラ積をとると, (23)aV×(ψJm) dV=aS1+  +Σψn×Jm dS  次に,式(7)の右辺の被積分関数について,aとのスカラ積の形に変形していく. まず,その第1項は, (E××ψa)n=[E×{(ψ)×a}]n=(n×E){(ψ)×a}(24)=a{(n×E)×(ψ)} そして,第2項は,Maxwellの方程式を用いて, {ψa×(×E)}n={ψa×(jωμHJm)}n=jωμψ(a×H)nψ(a×Jm)n=jωμψ(H×n)aψ(Jm×n)a(25)=jωμψa(n×H)+ψa(n×Jm) 以上の結果より,式(7)は次のようになる. aV(jωμJψ+Jm×ψρϵψ)dV+aS1+  +Σ(ψ)(En) dS+aS1+  +Σψn×Jm dS=aS1+  +Σ(n×E)×(ψ)dS(26)+aS1+  +Σ{jωμψ(n×H)+ψn×Jm}dS 体積積分と面積積分で整理すると, aV(jωμJψ+Jm×ψρϵψ)dV=aS1+  +Σ{(n×E)×(ψ)(27)+jωμψ(n×H)(ψ)(En)} dS 得られた式は任意のベクトルaについて成り立つから,両辺の積分は等しくならなければいけない.つまり, V(jωμψJ+Jm×ψρϵψ)dV(28)=S1+  +Σ{(n×E)×ψjωμψ(n×H)+(nE)ψ} dS 球面Σに関する面積分は,極限では点Pにおける値で決まり,この積分について計算していく. そこで,球面Σに関する面積分を左辺に分離して表すと, Σ{(n×E)×ψjωμψ(n×H)+(nE)ψ} dS=V(jωμψJ+Jm×ψρϵψ)dV(29)S1+  +Sn{(n×E)×ψjωμψ(n×H)+(nE)ψ} dS そして,閉曲面Σの中の点Pを観測点として考える.ここで,ψrのみの関数であるから, ψ(r)=ardψdr=arddr(ejkrr)(30)=(jk+1r)ejkrrar 閉曲面Σは,点Pを中心とする半径r0の球と考えており, Σの外向き法線ベクトルをnとすると, ar=n より, (ψ)r=r0=(jk+1r0)ejkr0r0n(31)=(jk+1r0)ψ0n ここで, (32)ψ(r0)=ejkr0r0ψ0 これより,Σ に沿った面積分は次のようになる. Σ{(n×E)×ψjωμψ(n×H)+(nE)ψ} dS=Σ{(n×E)×(jk+1r0)njωμ(n×H)nE(jk+1r0)n}ψ0dS(33)=Σ[jωμ(n×H)(jk+1r0){(n×E)×n+(nE)n}]ψ0dS ベクトル公式 (34)(b×c)×a=(ab)c(ac)b より, (n×E)×n=(nn)E(nE)n(35)=E(nE)n よって, (36)E=(n×E)×n+(nE)n これより, (37)Σ{ } dS=Σ{jωμ(n×H)(jk+1r0)E}ψ0dS 立体角要素dΩを用いると, Σ{ } dS=Σ{jωμ(n×H)(jk+1r0)E}ejkr0r0dΩ(38)=jωμr0ejkr0Σ{(n×H)+ϵμE}dΩejkr0ΣEdΩ r00のとき,上式の第1項はゼロになるから, limr00Σ{ } dS=limr00(ejkr0ΣEdΩ)=EpΣdΩ(39)=4πEp ただし,Epは点Pにおける電界Eを示す.

波源による電磁界の積分表示式

 観測点Pにおける電界Epは,式(39)を式(29)に代入して, Ep=14πV(jωμψJ+Jm×ψρϵψ)dV(40)+14πS1+ {jωμψ(n×H)+(n×E)×ψ+(nE)ψ} dS 同様にして,点Pにおける磁界Hpは次のようになる(導出省略). Hp=14πV(jωϵψJmJ×ψρmμψ)dV(41)+14πS1+ {jωϵψ(n×E)+(n×H)×ψ+(nH)ψ} dS ただし,閉曲面Si上の電磁界は,領域V以外の領域に存在する源によって励振されるものであり,等価波源(equivalent sources),あるいは2次波源ともいう.

等価波源

 領域Vの積分で見られる源と同様にして,等価的な電流K,磁流Km,電荷η,磁荷ηmを次のように定義する. (42)K=n×H,     Km=(n×E)(43)η=ϵ(nE),     ηm=μ(nH) これより,電界 Ep,磁界 Hpの表示式は,実際の源が3次元的な分布であるのに対して,等価波源は2次元的な分布となっているだけで,式の形は同じであることがわかる. Ep=14πV(jωμψJJm×ψ+ρϵψ)dV(44)+14πS1+  +Sn(jωμψKKm×ψ+ηϵψ) dSHp=14πV(jωϵψJm+J×ψ+ρmμψ)dV(45)+14πS1+  +Sn(jωϵψKm+K×ψ+ηmμψ) dS

等価波源がある場合の双対性

 電磁流源がある場合(導電率σ=0のとき)の双対性 (46)EH,   JJm,   ρρm,   μϵ(47)HE,   JmJ,   ρmρ,   ϵμ より,等価波源についても,次のような双対性があることがわかる. (48)K=n×HKm=n×(E)=(n×E)(49)Km=E×nK=H×n=(n×H)(50)η=ϵ(nE)ηm=μ(nH)(51)ηm=μ(nH)η=ϵ(n(E))=μ(nE)

A. Ishimaru, “Electromagnetic Wave Propagation, Radiation, and Scattering From Fundamentals to Applications,” 2.8. Duality Principle and Symmetry of Maxwell’s Equations, 2dn ed., p.27, IEEE Press, Wiley (2017).