多重2次曲面鏡系の等価パラボラ表示
回転放物面鏡と開口面との関係
回転放物面鏡の焦点を頂点とする円すいに沿う光線は反射され平行光線となる.図のように,回転軸に平行な円筒に沿う焦点を
F,焦点距離を
,回転軸に沿う単位ベクトルを
,点Fを頂点とする円すいの中心軸に沿う単位ベクトルを
,円すいの半頂角をとする.
回転放物面鏡と開口面
回転放物面鏡
焦点を原点として図に示すように,円すいの中心を軸とする座標系を考えると,半頂角
の円すいの方程式は,

2つの座標系,
一方,回転放物面の回転軸を軸,焦点を原点とする座標系を定義すると,焦点距離の回転放物面の方程式は,
ここで,オフセット角をとして,図のような軸と軸のなす角度を基に座標系の関係を考える.まず,単位ベクトルでは,
これより,任意の点の位置ベクトルを直交する単位ベクトルを用いて表すと,
両辺に単位ベクトルのスカラー積をとって,
両座標系の関係をまとめると,
上の関係式を,式に代入すると,
これを整理して,
上式と式より,を消去すると,
これは, に関して因数分解でき,
よって,
上式を式に代入すると,
整理すると,次のように円の方程式が得られる.
円の中心 ならびに円の半径 は,
いま, のとき,
となり,上側符号は円すいの に対応し,下側符号は円すいの に対応することがわかる.したがって,通常,上側符号をとって,円の方程式は次のようになる.
円すいの中心軸方向の単位ベクトルをとおくと,
より,円の半径 ,円の中心 は,
いま,焦点を含む面を開口面にとり,その面上での円形開口面の中心の位置ベクトル は,
より(は方向の単位ベクトル),
ここで,
より,
逆に,回転軸に平行な円筒に沿って光線が入射したとき,
反射光線は焦点を頂点とする円すいに沿うことになる.
なお,極形式では,焦点から回転放物面までの方向に沿う単位ベクトルをとおくと,距離は(導出省略),
だ円と双曲線の離心率
図に示すようにだ円および双曲線の長軸の長さA'Aを,中心Cから焦点FまたはF'までの距離をとすると,離心率は, %次式で定義される.
離心率はだ円面のとき,双曲線のときゆえ,
で区別できる.
さらに,
だ円と双曲線
焦点Fから回転だ円面(凹面)までの距離を,の点からもう一方の焦点Fまでの距離を
,焦点間の距離を
とすると,
ただし,
は焦点Fから焦点Fに向かう単位ベクトル,
,は
焦点F,Fからだ円上の点に向かう単位ベクトルを各々示す.
だ円面()の凹面()を鏡面とする場合
光線の進む方向に沿った単位ベクトル,を考えると,
,より,
ここで,,は光線の進む方向に沿った単位ベクトルの振幅として新たに定義したもので,
これより,離心率,曲面定数は,
このとき,は,
楕円面,凸面のとき
また,だ円面の凸面を鏡面とする場合,
%光線の進む方向に沿った単位ベクトルは,
,の関係となり,
だ円面()の凸面()を鏡面とする場合
光線の進む方向に沿った単位ベクトルの振幅は,
これより,離心率,曲面定数は,
このとき,は,
双曲面,凹面,発散系のとき
焦点Fから双曲面(凹面,発散系)までの距離を,
その鏡面上の点からもう一方の焦点Fまでの距離を,
焦点間の距離とすると,
ただし,
は焦点Fから焦点Fに向かう単位ベクトル,
,は
焦点F,Fから双曲面上の点に向かう単位ベクトルを各々示す.
双曲面(),凹面(),発散系
光線の進む方向に沿った単位ベクトル,を考えると,
,より,
ここで,
これより,離心率,曲面定数は,
このとき,は,
\begin{gather}
p\delta = 1 \cdot 1 = 1
双曲面,凹面,集束系のとき
光線の進む方向に沿った単位ベクトルは
,
の関係となり,
双曲面(),凹面(),集束系
ここで,光線の進む方向に沿った単位ベクトルの振幅は,
これより,離心率,曲面定数は,
このとき,は,
双曲面,凸面,発散系のとき
双曲面の凸面(発散系)を鏡面とする場合,光線の進む方向に沿った単位ベクトルは,
,.
双曲面(),凸面(),発散系
よって,
ここで,光線の進む方向に沿った単位ベクトルの振幅は,
これより,離心率,曲面定数は,
このとき,は,
双曲面,凸面,集束系のとき
双曲面の凸面(集束系)を鏡面とする場合,
光線の進む方向に沿った単位ベクトルは,
,の関係となり,
双曲面(),凸面(),集束系
ここで,光線の進む方向に沿った単位ベクトルの振幅は,
これより,離心率,曲面定数は,
このとき,は,
離心率
種類の異なる鏡面系を統一的に計算するために,離心率を次式で定義する.
また,
ここで,
だ円および双曲線の関係式
焦点Fから鏡面上の点Pまでの距離がのとき,光線の進む方向に焦点がある場合
,
逆の場合
として,
ただし,は点Pに入射する光線の進む方向に沿う単位ベクトル,
はこの焦点Fからもう一方の焦点Fへの方向に沿う単位ベクトルを示す.
ここで,
光線の進む方向に焦点Fがある場合,
逆の場合として,
回転2次曲面鏡系の入射光線と反射光線
符号を考慮した離心率の式を変形して,
光線に沿う単位ベクトルを,とおくと,
上の2式よりを消去すると,
ここで,
これより,
よって,
また,
いま, 入射光線群(に沿う光線)によってできる円すいを考え,の中心軸に沿う単位ベクトルをとすると,
ただし,は円すいの半頂角を示す.一方,これら入射光線群が鏡面で反射した後,反射光線群(に沿う光線)によって円すいができ,その中心軸に沿う単位ベクトルをとすると,
まず,式の両辺にのスカラ積をとると,
上式に式を代入してを消去し,さらに,式を代入しても消去すると,
両辺に
を乗じて,
単位ベクトルに関して整理すると,
上式の両辺に を乗じて,
ここで,
とおくと(は定ベクトル),
ここでは,
(一定)より,定ベクトル
(単位ベクトル)とスカラ積をとって一定値となるから,単位ベクトル
は円すいに沿う入射光線群である.鏡面で反射した光線群も円すいに沿う単位ベクトル
であり,これとスカラ積をとって一定値となる式より,
は円すいの中心軸に沿う方向である.そこで,
とおくと,円すいの中心軸方向の単位ベクトル
は,
いま, として,中心軸のみで入射光線,反射光線を考えると,
上式を式と比較すると次の関係が得られる.
これより,
ただし, は恒等ダイディクスを示す.
ここで,
とおくと,単位ベクトルは,
式より,
ここで,
とおくと,は,
行列表示すると,
このとき,次のような関係が成り立つ.
これより,
また,
ここで,より(はの転置),
また,
まとめると,
ただし,はの転置を示す.
入射および反射光線からなる円すいの半頂角
,の関係をさらに考えていこう.
ここで,式を再記して,
これより,
整理して,
ここで,
これより,
このとき,,, より,
は,
のときのをとおくと,
入射および反射光線の方向
,
の関係は,
式,式において
とおき(),
,
とすれば,
ここで,
多重反射鏡の表示式
鏡面が多数ある場合,
枚目の鏡面による反射波について,
ここで,
これより,
回転2次曲面鏡系
よって,
最終段(番目)の鏡面が回転放物面のとき,この鏡面に入射する光線の沿う円すいを示す
,
と,最初の円すいホーンの中心軸に沿う単位ベクトル
,
の間には次のような関係が得られる.
ここで,式を再記して,
最終段のパラボラ開口面(円形)の半径 ,中心 は,
上式に式,式,式を代入すると
,,
を消去でき,初段の2次曲面鏡の
,,
を用いて,
ここで,
さらに,最終段の回転放物面鏡の焦点距離の代わりに,等価パラボラの焦点距離を求めることができる.
等価パラボラを見込む円すいの中心軸の方向を とすると,
いま,
より,ダイアディクス
を導入すると,
半頂角
は不変であるが,等価バラボラの焦点位置
と円すいの中心軸の方向
が得られる.さらに,等価バラボラの開口の中心の位置ベクトル
は,次のようになる.
等価バラボラの焦点位置は最終段のパラボラとは異なり,
は,
また,
は円すいの中心軸方向に沿う単位ベクトルを示し,
ここで, はダイアディクスであり,
このとき,
このとき,次式が成り立つ.
上式より,
は直交変換を示すダイアディクスであるから,単位ベクトル
を直交変換した
も単位ベクトルである.
水沢丕雄,片木孝至,"多重反射鏡形アンテナの等価パラボラ表示とその応用," 三菱電機技報,vol.49, no.11, pp.729-732 (1975)