1.9 相反定理の応用

等価定理

 まず,自由空間中に電磁流源 JiMi だけがある場合を考え,これによって生じる電磁界を EiHi とする.
自由空間中に電磁流源 JiMiがある場合
次に,散乱体(領域V,面S)をおくと,散乱電磁界EsHsが生じる.その結果得られる全電磁界をEHとおくと, (1)E=Ei+Es(2)H=Hi+Hs
由空間中に電磁流源JiMi,散乱体がある場合
いま,散乱体の表面における電磁界EH(on S)より 等価面電磁流源JsMsを, (3)Js=n×H(4)Ms=n×E で定義し, 散乱体のかわりに等価面電磁流JsMsをおく(等価定理).
散乱体のかわりに等価面電磁流JsMs(等価定理)をおいた場合
そして,電磁流源JiMiはそのままで,取り除いた散乱体の領域(V内部)の電磁界をゼロ,面S上には等価面電磁流源JsMsをおくと,領域Vの外側領域の電磁界はEHとなる. これは,散乱体がある場合の問題を,電磁流源の問題に置き換えて扱おうというものである.
自由空間中に電磁流源JiMi,散乱体のかわりにおいた等価面電磁流JsMsがある場合

電磁流源がある場合の相反定理

 さて,JiMiJsMsによって生じる電磁界EHとは独立に, 電磁流源JmMm によって生じる電磁界をEmHmとする.ただし,JmMmは領域Vの内部にあたる領域にのみ分布しているものとする.これに相反定理を適用すると, (5)(EJmHMm)dV={Em(Ji+Js)Hm(Mi+Ms)}dV
自由空間中の領域V(散乱体の領域)にJmMm(テストソース)をおいた場合
積分範囲は最初,全空間と考えてもよい.領域Vでは電磁界EHがゼロ,一方外側には電磁流源JmMmをおいていないため,上式の左辺はゼロである.よって, (6){Em(Ji+Js)Hm(Mi+Ms)}dV=0 電磁流源の分布している領域に積分範囲をとり,リアクションの形に変形すると, (7)Vi(EmJiHmMi)dV+S(EmJsHmMs)dS=0 あるいは, (8)[i,m]+[s,m]=0 一部,左辺に移項して, (9)Vi(EmJiHmMi)dV=S(EmJsHmMs)dS 上式左辺は,与えられる電磁流源JiMi(既知の励振条件)を含む積分,右辺は,散乱体表面の電磁流JsMs(未知数)を含む積分である. モーメント法では,左辺が励振項,右辺がインピーダンスマトリクスを含む計算に各々対応し, EmHmは試行関数に対応する.

磁流がない場合

 磁流がない場合(Mi=0),Mm=0とおいて, (10)ViEmJidV+SEmJsdS=0 ここで,J=Ji+Jsとおくと, (11)EmJdV=0 これに相反定理を適用すると,次式が得られる. (12)EmJdV=EJmdV=0