1.3 ポアソンの方程式とグリーン関数

静電場のスカラポテンシャル

 スカラポテンシャルを Φ,電荷密度を ρ,誘電率を ϵ とすると,ポアソン(Poisson)の方程式は, (1)2Φ=ρϵ で与えられ,観測点(x,y,z)における Φ は次のようになる. (2)Φ(x,y,z)=Vρ(x0,y0,z0)4πϵRdV0 ただし, (3)R=|rr0|=(xx0)2+(yy0)2+(zz0)2 ここで,r0 および (x0,y0,z0) は電荷のある点の位置ベクトルおよび座標, r および (x,y,z) は観測点の位置ベクトルおよび座標を示し,領域Vに電荷が分布しているものとする. 電気磁気学の静電界では,式(1)Φ のかわりに電位 V を用いていた.そして,無限遠での電位はゼロである.

ディラックのデルタ関数

 電荷密度ρのかわりに,点 (x0,y0,z0) にだけ点電荷をおいた場合を考えてみる.この場合,ポアソンの式の右辺は, ρ/ϵ のかわりにディラック(Dirac)のデルタ関数(delta function)で表すことができる.まず,1次元のデルタ関数について,変数をxとしたとき次のような関係式がある. (4)δ(xx)=(0  (xx)  (x=x))=1πlimasina(xx)xx(5)δ(xx)dx=1 このとき,次式が成り立つ. (6)f(x)δ(xx)dx=f(x) これを直角座標系において3次元に拡張すると, δ(xx)δ(yy)δ(zz) となる. 式(2)において, (7)ρ(x0,y0,z0)ϵ=δ(x0x0)δ(y0y0)δ(z0z0) とすると, (8)Φ=Vδ(x0x0)δ(y0y0)δ(z0z0)4πRdV0 ただし,領域Vは点電荷のある範囲である.

グリーン関数

 直角座標成分の3重積分より, (9)Φ=14πlzlylxδ(x0x0)δ(y0y0)δ(z0z0)(xx0)2+(yy0)2+(zz0)2dx0dy0dz0 ただし,lxlylz は直角座標系 (x0,y0,z0) の積分路を各示す.デルタ関数の性質より, (10)lxf(x0)δ(x0x0)dx0=f(x0) が成り立つので,Φ は次のようになる. (11)Φ=14πlzlyδ(y0y0)δ(z0z0)(xx0)2+(yy0)2+(zz0)2dy0dz0 同様にして,y0 に関する積分も,デルタ関数の性質 (12)lyf(y0)δ(y0y0)dy0=f(y0) より, (13)Φ=14πlzδ(z0z0)(xx0)2+(yy0)2+(zz0)2dz0 さらに,z0 に関する積分も,デルタ関数の性質 (14)lzf(z0)δ(z0z0)dz0=f(z0) より, (15)Φ=14π1(xx0)2+(yy0)2+(zz0)2=14πR ここで, (16)R=|rr0|=(xx0)2+(yy0)2+(zz0)2 この解がポアソンの方程式に対するグリーン関数(Green's function)G である.いま, x0y0z0 を, x0y0z0 に置き換え, (17)2G(x,y,z|x0,y0,z0)=δ(xx0)δ(yy0)δ(zz0) を満たすグリーン関数 G は次のようになる. (18)G(x,y,z|x0,y0,z0)=14πR このようにグリーン関数がわかれば,任意の電荷 ρ(x0,y0,z0) による Φ を次式によって求めることができる. (19)Φ(x,y,z)=1ϵVG(x,y,z|x0,y0,z0)ρ(x0,y0,z0)dV0 位置ベクトル (20)r=xux+yuy+zuz(21)r0=x0ux+y0uy+z0uz を用いると, (22)Φ(r)=1ϵVG(r,r0)ρ(r0)dV0