等リプル特性を持つ低域通過梯子型回路の規格化素子値

 \(N\)次のチェビシェフ特性を有する梯子型リアクタンス回路を合成すると,規格化素子値\(g_k\)は, \begin{eqnarray} g_1 &=& \frac{2 u_1}{\eta} \\ g_k &=& \frac{4u_{k-1} u_k}{v_{k-1} g_{k-1}} \ \ \ (k=2,3, \cdots ,N) \\ g_{N+1} &=& \left\{ \begin {array}{cc} \displaystyle{1} & (N:\mbox{奇数}) \\ \displaystyle{\coth ^2 \frac{\zeta}{4}} & (N:\mbox{偶数}) \end{array} \right. \end{eqnarray} ただし,\(g_0 =1\) である.また,\(g_{N+1}\)は終端負荷の抵抗(最終段が直列素子の場合)あるいはコンダクタンス(最終段が並列素子の場合)を示す.ここで, \begin{eqnarray} \zeta &=& \ln \left[ \coth \left( \frac{L_{Ar}}{17.37} \right) \right] \\ \eta &=& \sinh \left( \frac{\zeta}{2N} \right) \\ u_k &=& \sin \left( \frac{(2k-1)\pi}{2N} \right) \ \ \ (k=1,2, \cdots ,N) \\ v_k &=& \eta ^2 + \sin ^2 \left( \frac{k\pi}{N} \right) \ \ \ (k=1,2, \cdots ,N) \end{eqnarray} ただし,\(L_{Ar}\)はリプルのピーク値[dB]を示す.
入力インピーダンス\(z_{in}^+\)により合成した梯子型回路
入力インピーダンス\(z_{in}^-\)により合成した梯子型回路

等リプル(0.04365 dB)を有する低域通過フィルタの規格化素子値\(g_k\)を求めると次のようになる. ただし,\(g_0 =1\),終端負荷の素子値は$N$が奇数のとき\(g_{N+1}=1\),\(N\)が偶数のとき\(g_{N+1} \big|_{L_{Ar}=0.04365}=1.2222\). このとき,通過域の反射のピーク値は\(-20\)dBである.

\begin{array}{c|cccccccc} \hline N & g_1 & g_2 & g_3 & g_4 & g_5 & g_6 & g_7 & g_8\\ \hline \hline 2 & 0.6667 & 0.5455 & 1.2222 \\ \hline 3 & 0.8535 & 1.1039 & 0.8535 & 1.0000 \\ \hline 4 & 0.9333 & 1.2923 & 1.5795 & 0.7636 & 1.2222 \\ \hline 5 & 0.9732 & 1.3723 & 1.8032 & 1.3723 & 0.9732 & 1.0000 \\ \hline 6 & 0.9958 & 1.4131 & 1.8950 & 1.5505 & 1.7272 & 0.8148 & 1.2222 \\ \hline 7 & 1.0097 & 1.4368 & 1.9414 & 1.6216 & 1.9414 & 1.4368 & 1.0097 & 1.0000 \\ \hline \hline \end{array} 奇数次のチェビシェフ特性の場合,梯子型回路の終端負荷は\(g_{N+1} =1\)であるのに対し,偶数次の場合,終端負荷は\(g_{N+1} \ne 1\)であるが,両者ともに各々の負荷に対して所定の伝送特性が得られる. 当然,偶数次の回路に\(r = 1\)の終端負荷を接続しても所定の特性は得られない. しかしながら,梯子型回路と終端負荷の間に理想変成器(\(n : 1\))を挿入して,梯子型回路から変成器(終端負荷は\(r=1\))を見た規格化入力インピーダンス(梯子型回路の最終段が並列素子の場合),あるいは規格化入力アドミタンス(最終段が直列素子の場合)を\(g_{N+1}\)とすれば,所定の特性を得ることができる. 梯子型回路の最終段が並列素子の場合,規格化入力インピーダンス\(z_{in} = g_{N+1}\)となるように, \begin{eqnarray} z_{in} &=& \frac{V_1}{I_1} = \frac{nV_2}{\frac{-1}{n}I_2} = n^2 \frac{V_2}{-I_2} \nonumber \\ &=& n^2 = g_{N+1} \end{eqnarray} よって,\(n = \sqrt{g_{N+1}}\)ゆえ,理想変成器の入出力端子の電圧,電流の関係は次のようになる. \begin{eqnarray} \begin{pmatrix} V_1 \\ I_1 \end{pmatrix} &=& \begin{pmatrix} n & 0 \\ 0 & \frac{1}{n} \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} V_2 \\ -I_2 \end{pmatrix} \nonumber \\ &=& \begin{pmatrix} \sqrt{g_{N+1}} & 0 \\ 0 & \frac{1}{\sqrt{g_{N+1}}} \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} V_2 \\ -I_2 \end{pmatrix} \end{eqnarray} 梯子型回路の最終段が直列素子の場合,規格化入力アドミタンスが\(y_{in} = g_{N+1}\)となるように, \begin{eqnarray} \frac{1}{y_{in}} &=& \frac{V_1}{I_1} = \frac{nV_2}{\frac{-1}{n}I_2} = n^2 \frac{V_2}{-I_2} \nonumber \\ &=& n^2 = \frac{1}{g_{N+1}} \end{eqnarray} よって,\(n = \frac{1}{\sqrt{g_{N+1}}}\)ゆえ,理想変成器の入出力端子の電圧,電流の関係は次のようになる. \begin{eqnarray} \begin{pmatrix} V_1 \\ I_1 \end{pmatrix} &=& \begin{pmatrix} n & 0 \\ 0 & \frac{1}{n} \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} V_2 \\ -I_2 \end{pmatrix} \nonumber \\ &=& \begin{pmatrix} \frac{1}{\sqrt{g_{N+1}}} & 0 \\ 0 & \sqrt{g_{N+1}} \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} V_2 \\ -I_2 \end{pmatrix} \end{eqnarray} これより,\(N=2,3,4,5,6,7\)について入力インピーダンス\(z_{in}^+\)で合成した回路の特性を求めると次のようになる.
2段梯子型回路の\(0.04365\)dB(反射=\(-20\)dB)等リプル低域通過特性(\(z_{in}^+\))
3段梯子型回路の\(0.04365\)dB(反射=\(-20\)dB)等リプル低域通過特性(\(z_{in}^+\))
4段梯子型回路の\(0.04365\)dB(反射=\(-20\)dB)等リプル低域通過特性(\(z_{in}^+\))
5段梯子型回路の\(0.04365\)dB(反射=\(-20\)dB)等リプル低域通過特性(\(z_{in}^+\))
6段梯子型回路の\(0.04365\)dB(反射=\(-20\)dB)等リプル低域通過特性(\(z_{in}^+\))
7段梯子型回路の\(0.04365\)dB(反射=\(-20\)dB)等リプル低域通過特性(\(z_{in}^+\))