4.4 ダイアディック・グリーン関数の定義

ダイアディック形式のMaxwellの方程式

 Maxwellの方程式を電流源Jj (j=1,2,3),電荷ρjについて示すと, (1)×Ej=jωμHj(2)×Hj=Jj+jωϵEj(3)Hj=0(4)Ej=ρjϵ(5)Jj=jωρj いま,各々のダイアディックおよびベクトルを次式で定義する. (6)E~~j=13Ejij=j=13i=13Eijiiij(7)H~~j=13Hjij=j=13i=13Hijiiij(8)J~~j=13Jjij=j=13i=13Jijiiij(9)ρj=13ρjij ただし,ρ は形式的なベクトル表示である.これより, (10)×E~~=jωμH~~(11)×H~~=J~~+jωϵE~~(12)H~~=0(13)E~~=ρϵ(14)J~~=jωρ

ダイアディック・グリーン関数の定義

 点r=rにおける微小電流素子は, (15)Jj=cjδ(rr)ij     (j=1,2,3) ここでは,係数cj(16)jωμcj=1 となるように決めると, (17)jωμJj=jωμcjδ(rr)ij=δ(rr)ij これより,ダイアディック表示(dyadic form)では, (18)jωμJ~~=j=13δ(rr)ijij=I~~δ(rr) このようなダイアディック微小電流素子がある場合の電界E~~を, 電界に対するダイアディック・グリーン関数(the dyadic Green function of the electric type or the electric dyadic Green function)G~~eとする. (19)G~~eE~~(I~~δ) また,このときの磁界H~~を基に (20)G~~mjωμH~~(I~~δ) より,磁界に対するダイアディック・グリーン関数(the dyadic Green function of the magnetic type or the magnetic dyadic Green function)G~~mも定義する.電荷については, ρ=J~~jω=1jωI~~δ(rr)jωμ(21)=1ω2μ(I~~δ(rr)) ここで,ダイアディック公式 (fI~~)=f より, (22)ρ=ϵk2δ(rr) さて,×E~~=jωμH~~に, 式(19)G~~e,および式(20)G~~mを代入すると, (23)×G~~e=G~~m 同様にして,×H~~=J~~+jωμE~~に,G~~eG~~m,およびJ~~の式を代入すると, (24)×G~~m=I~~δ(rr)+k2G~~e さらに,E~~=ρ/ϵに, G~~e,および式(22)ρを代入すると, (25)G~~e=1k2δ(rr) また,H~~=0より, (26)G~~m=0 これより, (27)G~~e=G~~e(r,r)=j=13Ge,jij,(28)G~~m=G~~m(r,r)=j=13Gm,jij ただし,Ge,jGm,jは電界および磁界に対するベクトル・グリーン関数(the vector Green functions of the electric type and the magnetic type)を示す. また,rは観測点の位置ベクトル,rは波源の位置ベクトルを示す.

ダイアディック・グリーン関数の境界条件

 境界条件については,領域(+)()に対して, (29)n×(E(+)E())=0,     n×(H(+)H())=Js ただし,nは領域(+)側を正にとる法線ベクトル,Jsは境界面上の面電流分布を示す. これを基にして,G~~eに関する境界条件(boundary condition)は次のようになる. (30)n×(G~~e(+)G~~e())=0 境界面上r=rに微小電流素子をおいた場合,面電流に関する式はダイアディック表示で, (31)jωμJ~~s=(I~~nn)δ(rr)=I~~sδ(rr) このとき,δ(rr)は2次元のデルタ関数である. (32)δ(rr)dS=1 よって,G~~mに関する境界条件は次のようになる. (33)n×(G~~m(+)G~~m())=I~~sδ(rr)