5.8 多モードホーンの最適モード合成比
最適モード合成比
多モードホーンの利得$g_1 (u)$を,
各モードのユニバーサル放射パターン
(開口径を$D$とすると,放射パターンは$u = D/\lambda \sin \theta $の関数)
の重畳として表わすと,
\begin{gather}
g _1 (u)=\frac{4 \pi |F _1 (u)|^2}{P_t}\\
\end{gather}
ここで,
\begin{gather}
F _ 1 (u) = \sum _j x_j f _{1, j} (u)
\end{gather}
ただし,
- $f_{1,j} (u)$: $j$ 番目のモードによる主偏波のユニバーサル放射パターン
- $x_j $: モードの未知係数
- $P_t$: トータル電力
例えば,
$u_e$ を円形領域の端(edge of coverage:EOC)として,
円形領域 $0 \leq u \leq u_e$ における最低利得を最大にする場合,
- 等式制約条件: $F_1 (u_e)=1$
- 不等式制約条件: $F_1 (u) \geq 1 (0 \leq u < u_e)$
これより,最大とする利得 $g_1(u_e)$ は次式で表される.
\begin{gather}
g_1(u_e) = \frac{4 \pi}{P_t}
\end{gather}
ここで,
\begin{gather}
P_t = \sum _j x_j^2
\end{gather}
したがって,$P_t$ が最小となる $x_j$ を決定すればよい.
制約条件が1次式で与えられ,最小にする$P_t$が2次式となるので,2次計画法によって$x_j$を求めることができる.
なお,モード係数$C_i$は,全電力で規格化して,次式で得られる.
\begin{gather}
C_j = \frac{x_j}{\sqrt{P_t}} \ \ \ (j=1,2 \cdots, M).
\end{gather}
さらに,サイドローブレベルのピーク値の振幅を$R(>0)$以下とする場合,
- 不等式制約条件:$-R \leq F_1 (u) \leq R \ \ \ \ (u_0 \leq u \leq u_s)$
ただし,
$u_0 (>u_e)$,$u_s (>u_0)$
はサイドローブ領域の下限値,上限値を示す.また,放射パターンの交差偏波レベルのピーク値の振幅を$X(>0)$以下とする場合,
- 不等式制約条件:$-X \leq F_2 (u) \leq X \ \ \ \ (0 \leq u \leq u_x)$
ここで,
\begin{gather}
F _ 2 (u) = \sum _j x_j f _{2, j} (u)
\end{gather}
ただし,
$f_{2,j} (u)$ は $j$ 番目のモードによる交差偏波のユニバーサル放射パターン,
$u_x$ は交差偏波領域の範囲の上限値を示す.
$M$次元列ベクトル$\VECi{x}$(要素は$x_i$)
の関数である2次形式評価関数における$M \times M$の行列$\big[ H \big]$,および$M$次元列ベクトル
$\VECi{c}$ は,
\begin{align}
&\big[ H \big] = 2 \big[ U \big]
\\
&\VECi{c} = \big( 0 \big)
\end{align}
ただし,$\big[ U \big]$は単位行列,
$( 0 )$は全ての要素が$0$となる列ベクトルを示す.
一方,等式制約条件
\begin{gather}
\big[ A_{eq} \big]^t \VECi{x} = \VECi{b}_{eq}
\end{gather}
における$\big[ A_{eq} \big]^t$および
$\VECi{b}_{eq}$(実際には要素は1つしかないのでスカラー)は,
\begin{align}
&\big[ A_{eq} \big]^t
= ( f_{1,1}(u_e) \ \ f_{1,2}(u_e) \ \ \cdots \ \ f_{1,j}(u_e) \ \ \cdots )
\\
&\VECi{b}_{eq} =1
\end{align}
また,不等式制約条件
\begin{gather}
\big[ A_{ineq} \big]^t \VECi{x} \leq \VECi{b}_{ineq}
\end{gather}
における$\big[ A_{ineq} \big]^t$および $\VECi{b}_{ineq}$ は,
\begin{gather}
\big[ A_{ineq} \big]^t =
\begin{pmatrix}
[A_c]^t \\ -[A_c]^t \\ [A_s]^t \\ -[A_s]^t \\ [A_x]^t \\ -[A_x]^t
\end{pmatrix}, \ \ \
\VECi{b}_{ineq} =
\begin{pmatrix}
\VECi{1} \\ \VECi{1} \\ \VECi{R} \\ \VECi{R} \\ \VECi{X} \\ \VECi{X}
\end{pmatrix}
\end{gather}
ここで,$0 \leq u_i^{(c)} < u_e$ において
$u_i^{(c)} \ (i=1,2, \cdots, N_c)$とすると,
$[A_c]^t$,$\VECi{1}$ は,
\begin{align}
&[A_c]^t =
\begin{pmatrix}
f_{1,1}\big(u_1^{(c)}\big) & f_{1,2}\big(u_1^{(c)}\big) & \cdots \ \\
f_{1,1}\big(u_2^{(c)}\big) & f_{1,2}\big(u_2^{(c)}\big) & \cdots \ \\
\vdots & \vdots & \\
\end{pmatrix}
\\
&\VECi{1}=
\begin{pmatrix}
1 & 1 & \cdots \ \\
\end{pmatrix}^t
\end{align}
また,$u_0 \leq u_i^{(s)} < u_s$において
$u_i^{(s)} \ (i=1,2, \cdots, N_s)$とすると,
$[A_s]^t$,$\VECi{R}$ は,
\begin{align}
&[A_s]^t =
\begin{pmatrix}
f_{1,1}\big(u_1^{(s)}\big) & f_{1,2}\big(u_1^{(s)}\big) & \cdots \ \\
f_{1,1}\big(u_2^{(s)}\big) & f_{1,2}\big(u_2^{(s)}\big) & \cdots \ \\
\vdots & \vdots & \\
\end{pmatrix}
\\
&\VECi{R}=
\begin{pmatrix}
R & R & \cdots \ \\
\end{pmatrix}^t
\end{align}
また,$0 \leq u_i^{(x)} < u_x$において
$u_i^{(x)} \ (i=1,2, \cdots, N_x)$とすると,
$[A_x]^t$,$\VECi{X}$ は,
\begin{align}
&[A_x]^t =
\begin{pmatrix}
f_{2,1}\big(u_1^{(x)}\big) & f_{2,2}\big(u_1^{(x)}\big) & \cdots \ \\
f_{2,1}\big(u_2^{(x)}\big) & f_{2,2}\big(u_2^{(x)}\big) & \cdots \ \\
\vdots & \vdots & \\
\end{pmatrix}
\\
&\VECi{X}=
\begin{pmatrix}
X & X & \cdots \ \\
\end{pmatrix}^t
\end{align}
ただし,
- $N_c$:主ビームを計算するサンプル点数
- $N_s$:サイドローブを計算するサンプル点数
- $N_x$:交差偏波成分を計算するサンプル点数
低交差偏波トリプルモード円形ホーンの励振モード係数
2次計画法より利得最大,交差偏波成分のピーク値を$X$ [dB]以下,
サイドローブレベルを$R$ [dB]以下($X=R$)として求めた励振モード係数(モード数3)
(ただし,*は基本モードと逆相)
\begin{array}{l|c|c|c|c}
\hline
X=R \ [\mbox{dB}] & -30 & -35 & -40 & -45 \\ \hline
\mbox{TE}_{11} \ [\mbox{dB}] & -0.37 & -0.61 & -0.82 & -1.08 \\
\mbox{TM}_{11} \ [\mbox{dB}] & -10.9 & -8.95 & -7.88 & -7.02 \\
\mbox{TE}_{12} \ [\mbox{dB}] & -45.0 & -25.7 & -20.5 & -16.6 \\ \hline
開口能率 \ [\%] & 77 & 70 & 65 & 59 \\ \hline
\end{array}
開口面電界分布の計算例($X, R=-30$ dB)
2次計画法より利得最大,交差偏波成分のピーク値および
サイドローブレベルを$-30$ dB以下として求めた励振モード係数
(TE$_{11}$,TM$_{11}$,TE$_{12}$モード)による
開口面電界ベクトル,開口面カット面の振幅分布,主偏波成分および交差偏波成分
開口面電界分布の計算例($X, R=-35$ dB)
2次計画法より利得最大,交差偏波成分のピーク値および
サイドローブレベルを$-35$ dB以下として求めた励振モード係数
(TE$_{11}$,TM$_{11}$,TE$_{12}$モード)による
開口面電界ベクトル,開口面カット面の振幅分布,主偏波成分および交差偏波成分
開口面電界分布の計算例($X, R=-40$ dB)
2次計画法より利得最大,交差偏波成分のピーク値および
サイドローブレベルを$-40$ dB以下として求めた励振モード係数
(TE$_{11}$,TM$_{11}$,TE$_{12}$モード)による
開口面電界ベクトル,開口面カット面の振幅分布,主偏波成分および交差偏波成分
開口面電界分布の計算例($X, R=-45$ dB)
2次計画法より利得最大,交差偏波成分のピーク値および
サイドローブレベルを$-45$ dB以下として求めた励振モード係数
(TE$_{11}$,TM$_{11}$,TE$_{12}$モード)による
開口面電界ベクトル,開口面カット面の振幅分布,主偏波成分および交差偏波成分
低交差偏波多モード円形ホーンの励振モード係数
2次計画法より利得最大,交差偏波成分$X=-50$ dB以下,
サイドローブレベル$R$ [dB]以下として求めた励振モード係数(モード数10)
(ただし,* は基本モードと逆相)
\begin{array}{l|r|r|r|r}
\hline
R \ [\mbox{dB}] & -30 & -35 & -40 & -45 \\ \hline
\mbox{TE}_{11} \ [\mbox{dB}] & -0.51 & -0.62 & -0.78 & -0.96 \\
\mbox{TM}_{11} \ [\mbox{dB}] & -10.3 & -9.00 & -8.06 & -7.36 \\
\mbox{TE}_{12} \ [\mbox{dB}] & ^*-32.7 & -30.5 & -22.4 & -18.6 \\
\mbox{TM}_{12} \ [\mbox{dB}] & ^*-34.2 & ^*-34.9 & ^*-37.6 & ^*-48.4 \\
\mbox{TE}_{13} \ [\mbox{dB}] & -22.9 & -28.4 & -34.7 & -43.5 \\
\mbox{TM}_{13} \ [\mbox{dB}] & -34.5 & -45.7 & -52.2 & -61.3 \\
\mbox{TE}_{14} \ [\mbox{dB}] & ^*-22.8 & ^*-27.2 & ^*-32.3 & ^*-38.4 \\
\mbox{TM}_{14} \ [\mbox{dB}] & ^*-24.2 & ^*-36.1 & ^*-54.0 & -55.0 \\
\mbox{TE}_{15} \ [\mbox{dB}] & ^*-61.3 & -30.9 & -32.8 & -39.1 \\
\mbox{TM}_{15} \ [\mbox{dB}] & -30.4 & -29.3 & -38.0 & -54.8 \\ \hline
開口能率 \ [\%] & 79 & 74 & 68 & 63 \\ \hline
\end{array}
円形カバレッジホーンの励振モード係数を次の図に示している.
ただし,$\theta =\theta _e$はカバレッジの端の方向である.
図中の細い線が主ビームの形状のみを制約条件とした場合,太い線がサイドローブレベル$-30$ dB,
交差偏波成分のピーク値$-40$ dBの条件をさらに加えた場合を示す.
開口面電界分布の計算例($X=-50$ dB,$R=-30$ dB)
2次計画法より利得最大,交差偏波成分のピーク値$X=-50$ dB以下,および
サイドローブレベルを$R=-30$ dB以下として求めた励振モード係数(モード数10)による
開口面電界ベクトル,開口面カット面の振幅分布,主偏波成分および交差偏波成分
開口面電界分布の計算例($X=-50$ dB,$R=-35$ dB)
2次計画法より利得最大,交差偏波成分のピーク値$X=-50$ dB以下,および
サイドローブレベルを$R=-35$ dB以下として求めた励振モード係数(モード数10)による
開口面電界ベクトル,開口面カット面の振幅分布,主偏波成分および交差偏波成分
開口面電界分布の計算例($X=-50$ dB,$R=-40$ dB)
2次計画法より利得最大,交差偏波成分のピーク値$X=-50$ dB以下,および
サイドローブレベルを$R=-40$ dB以下として求めた励振モード係数(モード数10)による
開口面電界ベクトル,開口面カット面の振幅分布,主偏波成分および交差偏波成分
開口面電界分布の計算例($X=-50$ dB,$R=-45$ dB)
2次計画法より利得最大,交差偏波成分のピーク値$X=-50$ dB以下,および
サイドローブレベルを$R=-45$ dB以下として求めた励振モード係数(モード数10)による
開口面電界ベクトル,開口面カット面の振幅分布,主偏波成分および交差偏波成分