5.5 ウッドワード・ローソン法

 成形ビームなどの主ビームの指向性合成として,一つの開口において複数の波源分布を異なる方向に共相励振して所定の指向性を合成する ウッドワード・ローソン法 (Woodward-Lawson method)がある. これはビーム方向を変化させた複数の指向性関数の重ね合わせによってビームを成形しようというもので,共相励振の方向は他の指向性のヌル点と一致させ,かつ各々の指向性のヌル点も一致させる. 簡単のため振幅は全て一様とすると,指向性関数はsinc関数で表されるから, $\theta_m$ 方向の指向性のヌル点は, \begin{gather} \frac{\pi D}{\lambda} (\sin \theta -\sin \theta_m) = m \pi \end{gather} を満たす方向$\theta$である.なお,ビームの方向は対称に配置するものとする.よって,ビームの数が奇数($2M+1$),および偶数($2M$)のとき,各々,共相励振の方向$\theta_m$は次のような関係になる. \begin{gather} \sin \theta_m = \left\{ \begin {array}{ll} \displaystyle{m\frac{\lambda}{D}} & (m=0, \pm 1, \pm 2, \cdots , M (2M+1: \mbox{odd}))\\ \displaystyle{\frac{2m\mp 1}{2} \frac{\lambda}{D}} & (m=\pm 1, \pm 2, \cdots , M (2M: \mbox{even})) \end{array} \right. \end{gather} ビームの数が奇数($2M+1$)のとき,指向性関数 $g(u)$ は, \begin{eqnarray} g(u) &=& \sum_{m=-M}^M c_m \frac{\sin v_m}{v_m} \nonumber \\ &=& \sum_{m'=1}^M c_{-m'} \frac{\sin v_{-m'}}{v_{-m'}} + c_0 \frac{\sin v_0}{v_0} + \sum_{m=1}^M c_m \frac{\sin v_m}{v_m} \nonumber \\ &=& c_0 \frac{\sin v_0}{v_0}+ \sum_{m=1}^M c_m \left( \frac{\sin v_{-m}}{v_{-m}} + \frac{\sin v_m}{v_m} \right) \end{eqnarray} ここで,$\theta_{-m} = -\theta_m$ より, \begin{eqnarray} v_{\pm m} &=& \frac{\pi D}{\lambda} (\sin \theta + \sin \theta_{-m}) \nonumber \\ &=& \frac{\pi D}{\lambda} (\sin \theta \pm \sin \theta_m) \nonumber \\ &=& u \pm \frac{\pi D}{\lambda} \sin \theta_m \end{eqnarray} このとき,波源分布 $e(\bar{x})$ は,$A_m(\bar{x})=1$ として, \begin{eqnarray} e(\bar{x}) &=& \sum_{m=-M}^M c_m \left\{ A_m(\bar{x}) e^{j\psi_m(\bar{x})} \right\} \nonumber \\ &=& \sum_{m=-M}^M c_m e^{-\frac{\pi D}{\lambda} \sin \theta_m \cdot \bar{x}} \nonumber \\ &=& c_0 + \sum_{m=1}^M 2c_m \cos \left( \frac{\pi D}{\lambda} \sin \theta_m \cdot \bar{x} \right) \end{eqnarray} ビームの数が偶数($2M$)のとき,指向性関数 $g(u)$ および波源分布 $e(\bar{x})$ は,上式において $c_0=0$ とする. さらに,係数を全て等しく $c_m=1$ おけば,ウッドワード・ローソン法による成形ビームが得られる.

ウッドワード・ローソン法による成形ビームの指向性合成($M=3$)

展開係数 $b_0=\alpha=0.3420, b_1=0.2799, b_2=0.1333, \cdots, b_8=0.0293$

ウッドワード・ローソン法による成形ビームの指向性合成($M=4$)

ウッドワード・ローソン法による成形ビーム($D=10 \lambda$,$M=4$)

ウッドワード・ローソン法による成形ビームの指向性合成($M=5$)

ウッドワード・ローソン法による成形ビーム($D=10 \lambda$,$M=5$)

ウッドワード・ローソン法による成形ビームの指向性合成($M=6$)

ウッドワード・ローソン法による成形ビーム($D=10 \lambda$,$M=6$)

ウッドワード・ローソン法による成形ビームの指向性合成($M=7$)

ウッドワード・ローソン法による成形ビーム($D=10 \lambda$,$M=7$)

ウッドワード・ローソン法による成形ビームの指向性合成($M=8$)

ウッドワード・ローソン法による成形ビーム($D=10 \lambda$,$M=8$)