5.2 レメッツのアルゴリズムによる指向性合成
レメッツのアルゴリズム$^\dagger$を用いて,
サイドローブレベルの最大値が所定の値以下となる1次元開口面分布を求める指向性合成$^\ddagger$について説明する
- 抑圧するサイドローブレベルの最大値 $\epsilon$ と第1サイドローブから順に抑圧するサイドローブ数$N$ を与える.
- 初期値として電界指向性 $g_0(u)$ を与える.例えば,一様開口面分布による電界指向性(sinc関数)などが考えられる.
- サイドローブレベルのピーク方向 $u_n (n=1,2, \cdots ,N)$ を,第1サイドローブから順に$N$ 個求める.
- サイドローブ領域の電界指向性を $-\epsilon \le g(u) \le \epsilon$ とするため,
ユニバーサルパラメータ $u=u_n$ での電界指向性のピーク値が $\pm \epsilon$ となるように,
次式により係数 $a_n \ (n=1,2, \cdots ,N)$ を決定する($g(u)=a_0=1$).
\begin{gather}
g(u_m) = \phi_0(u_m) + \sum_{n=1}^N a_n \phi_n(u_m) =(-1)^m \epsilon
\ \ \ \ \ (m=1,2, \cdots ,N)
\end{gather}
$\dagger$ "アンテナ工学ハンドブック(第2版)," pp.827-828,オーム社 (2008).
$\ddagger$ 後藤 尚久,"アンテナ工学入門講座," pp.108-109, 電波新聞社 (2008).
これらの式を行列表示すると,
\begin{gather}
\begin{pmatrix}
\phi_1(u_1) & \phi_2(u_1) & \cdots & \phi_N(u_1) \\
\phi_1(u_2) & \phi_2(u_2) & \cdots & \phi_N(u_2) \\
\vdots & \vdots & & \vdots \\
\phi_1(u_N) & \phi_2(u_N) & \cdots & \phi_N(u_N) \\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
a_1 \\ a_2 \\ \vdots \\ a_N
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
-\phi_0(u_1)+(-1)^1 \epsilon \\
-\phi_0(u_2)+(-1)^2 \epsilon \\ \vdots \\
-\phi_0(u_N)+(-1)^N \epsilon
\end{pmatrix}
\end{gather}
よって,未知係数$a_n$は,
\begin{gather}
\begin{pmatrix}
a_1 \\ a_2 \\ \vdots \\ a_N
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
\phi_1(u_1) & \phi_2(u_1) & \cdots & \phi_N(u_1) \\
\phi_1(u_2) & \phi_2(u_2) & \cdots & \phi_N(u_2) \\
\vdots & \vdots & & \vdots \\
\phi_1(u_N) & \phi_2(u_N) & \cdots & \phi_N(u_N) \\
\end{pmatrix}^{-1}
\begin{pmatrix}
-\phi_0(u_1)+(-1)^1 \epsilon \\
-\phi_0(u_2)+(-1)^2 \epsilon \\ \vdots \\
-\phi_0(u_N)+(-1)^N \epsilon
\end{pmatrix}
\nonumber
\end{gather}
これより,指向性を求め,3,4の計算を繰り返し $a_n$ を更新していく.
$N$個のサイドローブレベルのピーク値が所定の値となれば反復を終了する.
3では,
- $g'(u_n)=0$ を満足する $u_n$ を$N$個計算する.
- $g(u)$ を細かく計算し,ピーク値を抽出して $u_n$ を決定する.
サイローブレベル$-20$ dB以下
サイローブレベル$-25$ dB以下
サイローブレベル$-30$ dB以下
サイローブレベル$-35$ dB以下
展開係数 $a_n \ (n=1,2, \cdots, N)$(ただし,$a_0 =1$)
\begin{array}{crrrr}
\hline
サイドローブレベル [\mbox{dB}] & -20 & -25 & -30 & -35 \\
\hline
サイドローブ数N & 3 & 5 & 9 & 9 \\
a_1 & 0.1197 & 0.1991 & 0.2624 & 0.3252 \\
a_2 & 0.0300 & 0.0058 & -0.0072 & -0.0131 \\
a_3 & -0.0323 & -0.0213 & -0.0097 & -0.0001 \\
a_4 & - & 0.0223 & 0.0147 & 0.0049 \\
a_5 & - & -0.0169 & -0.0162 & -0.0067 \\
a_6 & - & - & 0.0160 & 0.0072 \\
a_7 & - & - & -0.0148 & -0.0069 \\
a_8 & - & - & 0.0125 & 0.0060 \\
a_9 & - & - & -0.0087 & -0.0042 \\
\hline
\end{array}