影像パラメータ

負荷と入力インピーダンスの関係について

 基本行列で与えられている伝送回路 (1)(V1I1)=(ABCD)(V2I2) を考え,入出力端子に負荷Z1Z2を接続する.まず,入力端子から伝送回路を見た入力インピーダンスZin,1は, V2=Z2(I2)より, Zin,1=V1I1=AV2+B(I2)CV2+D(I2)(2)=AZ2+BCZ2+D 一方,出力端子から伝送回路を見た入力インピーダンスZin,2を求めるため, (3)(V2I2)=(DBCA)(V1I1) と変形し,V1=Z1(I1)より, Zin,2=V2I2=DV1BI1CV1AI1(4)=DZ1+BCZ1+A このような伝送回路に整合負荷Z1Z2を接続する.整合条件 (5)Z1=Zin,1(6)Z2=Zin,2 より, (7)(CZ2+D)Z1=AZ2+B(8)(CZ1+A)Z2=DZ1+B 辺々,差をとれば,DZ1=AZ2.これを解くと,Z1Z2は, (9)Z1=ABCD(10)Z2=BDAC 回路が対称なら,A=D ゆえ, (11)Z1=Z2=BC

影像パラメータの定義

 出力端子に負荷Z02を接続したとき,入力端子から右に見た入力インピーダンスがZ01, 入力端子に負荷Z01を接続したとき,出力から左に見た入力インピーダンスがZ02となるようにできたとすれば, 各々の端子においてはちょうど鏡の影像のような関係になるので,Z01Z02影像インピーダンス(image impedance)と呼ぶ. このときのZ01Z02は,すでに式(10)で求めたとおりで,再記すると, (12)Z01=ABCD(13)Z02=BDAC また,入出力のルート電力比より, (14)eθγV1I1V2(I2) とおいて定義されるθγ(複素数)を影像伝送量(image propagation constant)という. そして, (15)V1=Z01I1(16)V2=Z02(I2)d より, θγ=12loge(V1I1V2(I2))=12loge(I12Z01(I2)2Z02)=loge(I1I2Z01Z02)=12loge(V12Z02V22Z01)(17)=loge(V1V2Z02Z01) 電圧,電流の比として表せば, (18)V2V1=Z02Z01eθγ(19)I2I1=Z01Z02eθγ ここで, θγ=α¯+jϕ¯とすると,α¯ [neper]は減衰を表し影像減衰量といい,ϕ¯ [rad]は位相を表し影像位相量という.また,Z01Z02θγをまとめて影像パラメータ(image parameter)という.

影像パラメータを用いた基本行列表示

 基本行列を用いて電圧,電流の比を求めると, (20)V2=Z02(I2) より, V1V2=AV2+BV2Z02V2=A+BZ02=A+BACBD(21)=AD(AD+BC)I1I2=CZ02(I2)+D(I2)I2=CZ02+D=CBDAC+D(22)=DA(BC+AD) これより, eθγ=V1V2I1I2(23)=AD+BC これを逆数で表すと, eθγ=1AD+BC=ADBCADBC(24)=ADBC さらに, coshθγ=eθγ+eθγ2(25)=ADsinhθγ=eθγeθγ2(26)=BC また, (27)Z01Z02=AD(28)Z01Z02=BC より,基本行列要素は,影像パラメータを用いて次のように表される. (29)A=Z01Z02coshθγB=Z01Z02sinhθγ(30)C=1Z01Z02sinhθγ(31)D=Z02Z01coshθγ つまり, (32)(V1I1)=[F](V2I2) ここで, (33)[F]=(Z01Z02coshθγZ01Z02sinhθγ1Z01Z02sinhθγZ02Z01coshθγ) 対称回路Z01=Z02Z0ならば, (34)[F]=(coshθγZ0sinhθγ1Z0sinhθγcoshθγ) これは,特性インピーダンスZ0,伝搬定数γ, 線路長lの伝送線路でθγ=γlとおいたときと等価である.

整合回路の縦続接続

 いま,回路が全て整合され,縦続接続すると, VN+1V1=V2V1V3V2 VN+1VN=Z02Z01 eθγ1Z03Z02 eθγ2 Z0,N+1Z0,N eθγN(35)=Z0,N+1Z01 eΘγ ここで, Θγθγ1+θγ2+   +θγN(36)=n=1Nθγn 同様にして, (37)IN+1I1=Z01Z0,N+1 eΘγ つまり,複数の回路を縦続接続した場合,接続端子での左右の影像インピーダンスが等しければ,入出力端子での影像インピーダンスZ01Z0,N+1は不変であるといえる.また,影像伝送量は単純な和をとるだけで求められる.なお,縦続接続した回路の入出力のルート電力比は, VN+1(IN+1)V1I1=VN+1V1IN+1I1(38)=eΘγ

軸対称回路

 構造が対称な回路を考え,影像インピーダンスをZ0,影像伝送量をθγとし,これを2等分する.このとき,中心の接続端子側の影像インピーダンスをZ0とする.先に示したように,このように分割された回路の入出力側の影像インピーダンスはZ0で不変,影像伝送量は半分のθγ/2となる.これより,左側の回路について基本行列を示すと次のようになる. (39)[F12]=(Z0Z0coshθγ2Z0Z0sinhθγ21Z0Z0sinhθγ2Z0Z0coshθγ2) この回路の終端を短絡,あるいは開放したときの入力インピーダンス Zsc,12Zoc,12を求めると, Zsc,12=Z0Z0sinhθγ2Z0Z0coshθγ2(40)=Z0tanhθγ2Zoc,12=Z0Z0coshθγ21Z0Z0sinhθγ2(41)=Z0cothθγ2 辺々,乗じると, (42)Zsc,12Zoc,12=Z02 よって, (43)Z0=Zsc,12Zoc,12 無損失の場合,θγ=jϕ¯とおいて, tanhjϕ¯2=jtanϕ¯2=Zsc,12Z0(44)=Zsc,12Zoc,12 よって, (45)tanϕ¯2=Zsc,12Zoc,12

影像パラメータを表す別の公式

 基本行列が与えられた回路において,終端を短絡,あるいは開放したとき,各々の入力インピーダンスは, (46)Z1,sc=BD(47)Z1,oc=AC(48)Z2,sc=BA(49)Z2,oc=DC で求めることができ,これを用いれば, Z01=ACBD(50)=Z1,scZ1,ocZ02=BADC(51)=Z2,scZ2,oc また,ADBC=1(可逆回路)を用いて, Z1,ocZ1,sc=ACBD=ADBCDC=1DCZ1,ocZ1,ocZ1,sc=ACDC(52)=ADZ1,scZ1,ocZ1,sc=BDDC(53)=BC より, eθ=AD+BC(54)=Z1,oc+Z1,scZ1,ocZ1,sc

【例題】

 インピーダンス行列要素Z11Z12(=Z21)Z22を用いて影像インピーダンスZ01Z02,および影像伝送量θを表せ.

略解

(55)Z01=Z11Z22Z00(56)Z02=Z22Z11Z00(57)tanhθ=Z00Z11Z22 なお, Z00=Z01Z02(58)=Z11Z22Z122 ただし,Z00平均影像インピーダンスと呼ばれる.